俺はサイヤ人の王になる   作:SHV(元MHV)

3 / 4
傲慢なりし王

無数の爆発が惑星プラントを包んでいる。

 

遂に始まったのだ。サイヤ人の反乱が。

 

しかしこの状況下において、俺は俺の飼い主であるモヤリチェと共に牢屋に閉じ込められていた。

 

モヤリチェが、ツフル王のある計画に気づきそれを止めようとした為だ。

 

“全宇宙ツフル化計画”。王が開発させているマシンミュータント、その最高傑作であるベビーと呼ばれる個体に自身を遺伝子レベルでコピーし、ナノ単位の分身を全宇宙にばらまいてありとあらゆる知的生命体を乗っ取ろうという壮大な計画だ。

 

これをモヤリチェから聞いたときは流石に驚いたが、本来の歴史であればベジータによってツフル人は滅ぼされる。これが歴史の修正力とやらかは知らんが、ひょっとしたら俺の知る歴史でも水面下で同じことが起きていたのかもな。

 

ちなみに俺がその計画の詳細を知っているのは、牢屋に閉じ込められた際モヤリチェから全部聞き出したからだ。これまでの忠義立てした態度が役に立ったぜ。

 

「……くく、さあて。お前はどうするんだ? モヤリチェ」

 

俺はこれまでの態度を豹変させるように口を歪ませ、本性を剥き出しにしてモヤリチェを見下ろす。

 

ガキのような身長のモヤリチェはそれを受けて一瞬怯むが、すぐに腹を据えると俺と面と向き合い自身の覚悟を伝えてきた。

 

「……あのような恐ろしい計画を知った今、僕には父を、王を止める義務がある! ロマネス、僕に力を貸してくれ!!」

 

「ふふ……はっはっはっはっは! 俺の本性を前にしてまだそんなことを抜かせるのか! 面白い……勝手に着いてきな!」

 

俺は笑いながら牢屋の一角を仕切る特殊強化ガラスへと近づく。

 

既に試したが、素手でもエネルギー波でもこいつを破ることは難しい。これの素材自体が衝撃に対して瞬時に硬化する層と衝撃を受け止める素材、さらにはエネルギーを拡散する層で作られているからだ。

 

だがまあ、今の俺からしてみればそれだけだ。

 

俺は自身の右手を鉤爪のように曲げ、ガラスをゆっくりと引っ掻いていく。たしかにこのガラスは瞬間的な衝撃に強い。だがモノを切り裂くほどに鋭く尖らせた気でゆっくりと引き裂けば──驚くほどあっさりと崩壊する。

 

「な、なにごとだ!?」

 

物音に慌ててこちらへ向かってきたツフル人の武装警備員を掴まえ、そのまま頭を握りつぶす。

 

「最っ高の気分だぜ! 歯向かう連中は皆殺しだ!!」

 

後ろでモヤリチェが俺を止めようとしている。悪いが、嫌だね。

 

「はーはっはっはっはっ!!!!」

 

俺は笑いながら武装警備員を次々とバラバラに引き裂いていく。今度は両手に鉤爪状の気を展開し、まるでバターのように連中を切り裂いていく。

 

血を浴び調子に乗っていると、連中は俺を驚異と見たのか隔壁を下ろして距離と時間を稼ごうとし始めた。

 

「甘いなぁ……甘い甘い!!」

 

今の俺はこれまで抑えていた加減を止めていた。戦闘力を向上させる訓練として、これまで俺はそれなりの年月を鍛えてきたが、表面的にはその戦闘力も5000で頭打ちのように見せていた。

 

解放した気が溢れ、全身を満たしていく感覚に恍惚となりながら、俺はあえて素手で隔壁を引き裂き顔を覗かせる。

 

「ひ、ひぃぃぃっ!」

 

「化け物だぁっ!?」

 

慌てるツフル人どもが俺に向かって恐慌状態とり、顔面に向かって激しい銃弾を浴びせてくる。

 

並みのサイヤ人ならそれで死んだかもしれないが、俺には虫が飛んできたようにしか感じない。

 

なぜならば、今の俺の戦闘力は──

 

「そ、そんな馬鹿な! 大猿にもならないでこんな戦闘りょぐがっ!」

 

──感覚にして10万を超えるのだから。

 

銃器に似た器具をこちらに向けて戦闘力を計測していた指揮官らしき男へ一足で飛び付き、膝で上半身を爆散させる。

 

「そらそらどうしたぁ!! 自慢のロボット兵士を寄越しやがれ!!」

 

血がどうしようもなく滾る。街へ出れば、そこには溢れるようにツフル人がいた。ツフル王ナバナが全宇宙ツフル化計画の一端として、全宇宙のツフル人を集めたためだ。

 

俺は目の前に降りてきたロボット兵士を殴り壊しながら、統制の取れていないその動きにベジータが科学塔へと突入したことを知る。

 

「けっ、まともに連携もできないんじゃただのガラクタだぜこんな連中」

 

振り向きもせずにモヤリチェの後ろに迫ったロボット兵士の頭をエネルギー波で消し飛ばす。

 

「ロ、ロマネス……君はいったい……」

 

「お前が飼ってたサイヤ人さ。ただし、頭に“最強”のと付くがな」

 

俺はモヤリチェを抱え、道案内しろと指示を出す。恐らくこの混乱の中、ツフル王は逆転の一手を打つため科学塔ではない場所へ向かっているはずだ。

 

モヤリチェによって所在のバレたベビーを、いつまでも同じ場所に隠しておくとは思えない。

 

「おい! ツフル王が使うシェルターはどこだ!!」

 

空中を高速で飛び交いながら、時折現れるロボット兵士を全身に纏った気からエネルギー波を拡散して撃墜していく。

 

「王族専用のシェルターがある! 恐らくはそこに……!!」

 

「“ベビー”もいるってことだな!!」

 

俺はモヤリチェの指示する方向へと飛びながら、さらに自身の潜在能力を引き出していく。

 

勘だが、恐らくこの先にいる相手には全力を出さねばいけない気がする。

 

10分ほど飛んだだろうか。一見すると何もない荒野に、不自然な金属室の建物があった。

 

「あれだ! あれは地下に大半が埋まっているが、宇宙船も兼ねている!!」

 

「野郎逃げる気か!!」

 

ここでツフル王を逃せば最悪ベビーとやらの能力でフリーザ一族を乗っ取って襲ってくるかもしれない。そうなれば、今の俺では勝つことは難しい。

 

ちなみに今、惑星プラントのあちこちでは満月と同じ光を放つ光球が浮いている。あれこそはベジータが開発した切り札、パワーボールだ。

 

満月と同じ量のブルーツ波を放つというあの光。それが惑星中に展開されたことで、全サイヤ人が一斉に大猿化して暴れまわるという事態が発生している。

 

俺が大猿化しないのは単純だ。牢屋に入れられる時に尻尾を切られているからだ。

 

おかげで、尻尾に電流を流されることもなく大暴れできているんだがな。

 

シェルター前に降り立つと、そこにはモニター越しにこちらを見つめるツフル王ナバナの姿があった。

 

『ふん、モヤリチェの飼っていた奴隷の猿か。まさかそれほどの戦闘力を隠ししていたとはな』

 

皮肉ではなく、むしろ称賛するような態度を俺は意外に感じる。こいつにとって、今はそんな余裕がある事態じゃないはずだ。

 

『へ、陛下! お早く奴めを始末してくださいませ!』

 

そんな王の後ろに、俺は二人の姿を見つける。王にいつも付きまといかしずいていた大臣の老人と、そいつに鎖で繋がれた首輪を見せるサイヤ人の女の姿。女は、目を潰されたのか、両の瞳からは血の涙を流していた。

 

その様子に言い様のない苛立ちを感じながら、俺は円形状のスペースから競り上がってきた男を見て嫌な予感が確信したことを悟る。

 

青白い肌に、ツフル製のボディーアーマーとガントレットを身に付けた男。確か、王が買っている宇宙人の戦闘奴隷だったはずだ。

 

「ぎゃっ!」

 

「なにっ!?」

 

一瞬だった。何かが光ったと思った時には、俺の後ろにいたモヤリチェの胸を光線が貫いていた。

 

『リルドよ。不完全な調整で済まないが、その男も始末しろ』

 

「御意」

 

リルドと呼ばれた男はその太い腕をゆっくりと持ち上げると、多少距離があるにも関わらずそれを勢いよく振り下ろした。

 

「うがっ、はっ……!!」

 

たったそれだけ。奴がしたことは腕を振り下ろしただけだというのに、俺は勢いよく吹き飛び岩山を幾つか貫いてようやく止まる。

 

「け、桁がまるで違いやがる……!!」

 

あくまでゆっくりと、こちらへ近づいてくるリルドという男に俺は戦慄する。だが感じた実力差以上にダメージは少ない。奴が遊んでいるのかと思ったが、近づいてくる奴の目には油断も隙もない。

 

「死ね」

 

「ぬおっ!?」

 

動作がゆっくりなのが幸いした。俺はモヤリチェの胸を貫いた光線を間一髪避けると、反撃と言わんばかりに左手首を掴んで立てた二本の指先から連続エネルギー波をお見舞いする。

 

しかし貫通力を優先したそれらはリルドの皮膚をまるで滑るように流れ、周囲の岩山を貫くに留める。

 

「太陽拳!!」

 

「ぐっ……!」

 

奴が攻撃するより先に、俺は次の手を撃った。俺を始末するつもりで放った一撃が空へと飛んでいき、パワーボールのひとつを消し飛ばす。

 

「だぁらっ!!」

 

逃げたところで何も解決なんぞしやしない。俺はリルドへと急接近すると、奴の後ろへ回り込んで太い首へと腕を回す。

 

サイヤ人はどちらかというと殴ることを主体にして戦う場合が多い。だが絞め技、極め技というのも馬鹿にはできないことを俺は“知識”で知っている。

 

こいつの体の構造が人間に近いなら、必ずこの攻撃は通用する。

 

しかしどこかすがるような俺の考えは、リルドの放った肘鉄で否定された。

 

「ごほっ……!」

 

肋がまとめて砕かれた。幾つかは肺に刺さったのか、口からは鮮血が飛び出す。

 

「選択は悪くないが、お前と俺では圧倒的に地力が違いすぎる」

 

悠然と俺の頭を掴んだリルドが、俺の首を掴んで地面へと叩きつける。

 

何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。

 

「あ……ぅ……」

 

もはや力は入らない。全身の骨が、筋肉が、文字通りバラバラになってしまったようだ。

 

それでも死なないサイヤ人の生命力のせいで長引く苦しみに苛まれながら、俺の体は宙を飛びある場所まで投げられる。

 

そこには、胸を貫かれたにも拘わらずまだ絶命していなかったモヤリチェがいた。

 

「ごぼっ……えぶ……」

 

奴は俺を見るなり血を吐きながら、必死にこちらへと向かって這い寄ってくる。

 

「無駄なあがきももう終わりだ。何をしたところで、お前達はこれで死ぬ」

 

リルドの言うとおり、もうどんな手段も通用しないだろう。俺もモヤリチェも死にかけだ。

 

だがモヤリチェはニヤリと笑って、貫かれることのなかった方の胸ポケットから注射器を取り出すと、それを勢いよく俺の首へと突き刺す。

 

「う……」

 

何かが、俺の体に流れ込んでくるのを感じる。血を、骨をまるでひとつひとつ観察するかのように。

 

「無駄かどうか……思い知るが……いい」

 

その言葉を最後に、モヤリチェは俺の上に被さるようにして死んだ。

 

俺は、全身を駆け巡る未知の感覚に震えながらゆっくりと立ち上がる。

 

「……こんな切り札を隠し持ってやがったとはな」

 

先程まで死にかけていた俺が立ち上がったことにリルドは警戒し、距離を詰めずにこちらを観察している。

 

俺は再生した銀色の尻尾を眺めて微妙な表情を浮かべつつ、リルドと向き直った。

 

「モヤリチェ、お前のことは別に好きじゃなかったが……お前の意志は俺が継いでやるよ」

 

常に修行ばかりしていた俺だが、モヤリチェと話す機会がないわけではなかった。

 

奴もまた他のツフル人の例に漏れず科学者であり、ある防衛装置を研究していた。

 

その名も“ビッグゲテスター”。僅かなエネルギーさえあれば、宇宙をさ迷うデブリを材料に惑星規模の拠点を作り出すことが可能な集積回路。

 

完成しているとは思いもよらなかったが、ナノマシン状だったそれが俺の肉体を材料に起動し、俺の意思の元に壊れた体を再構築し、モヤリチェの残した無数の知恵がダウンロードされていく。

 

やがて銀色の尻尾がメタリックシルバーへと変わり、それに応じて俺の髪の色もメタリックシルバーのそれへと変化していく。

 

逆立つ髪の毛は、俺の遺伝子に眠る可能性の力そのものだ。

 

「貴様……何者だ!」

 

驚愕するリルドが俺を見据えて叫ぶ。

 

「俺か? 俺はロマネス。サイヤ人の王になる男だ……!」

 

不敵に嗤う俺の言葉を受けて、叫ぶリルドへと俺は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 




前のやつ(R)とか前の前のやつ(C)で没になった設定がちらほらあります。もちろん本編の内容は大半私の妄想です。没ネタって言ったのは、本来ここで終ってしまったからなんですよこのお話。打ちきりエンド的な(笑)
まあ今回は熱烈な感想や応援メッセージを送ってくれる方に向けて書いている部分もあるのでもうちょっとだけつづくんじゃよ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。