海底都市の管轄保護区   作:片椅子

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…君だけ、気づいてない


嘲る愚行の選択と酩酊

開始から数分

『ねぇ、後ろ来てないようだけど?』

「やっぱり弱いんだよ〜」

『いや…体力の温存じゃないかな

多分この競争僕達が勝つよ』

「…ま、俺達が勝ったらもうきみのこと悪く言わせないし」

『…そう、ありがとう』

「じゃあ早めに行こ」

『うん』

 

 

「タルテット…?

勝負はやらなくていいの?」

「うん…ここで無意味に体力を使ってね、レフェル君は分かってたみたいだけど…」

「なら、ゆっくり行ってもいいわけね

…それでなのだけれど」

「レフェル君…だよね

彼が離れてから、突然海底生物達が現れた」

「…何かあるみたい」

「まぁ、ひとまず今は…これを何とかするぞ」

「ええ…タルテット」

鞄からクリートリペルを取り出して構える

小型のナイフの様な形で、接近戦

または、取り付けられた糸を使って遠距離戦も出来る

「はは…、つまらない

こんな敵雑魚中の雑魚だよね

そんな奴に負けたら…今度こそ顔向け出来なくなっちゃうよ…」

「…そうね、でも油断をしてはいけないわ」

「分かってるさ…じゃあ早く殺さないと…ねっ!」

『ギュ、ググァァァァァ!!!』

すっと、足踏みをして敵に向かって走る

手に持ったナイフを投げつけ、怯んだところを2本目のナイフで切りつける

「はは…あははは」

…ボクは弱くない

ボクは…弱くない

「…ちっ」

ボクが、こいつらを全員殺したら、

皆…皆見直してくれるかな

弱くて…惨めなボクの事

 

 

「レフェル君…」

『ん?何かあった?』

「いや…、2人、来るの遅いと思うな〜…って」

「…」

エストレープ…君が持ちかけたんだろう?

と、少しジト目で見た

「…う〜、まぁもし敵に見つかってぼろぼろにされて来ても知らないし」

『心配になるなら、そんな事提案しなければよかったのに』

「ん〜、じゃいいや、どうせ俺達の勝ちだし〜

もう付いたし…

印つけて戻ろーか」

「…」

『そうだね』

 

 

 

無惨に散らばった海底生物の手足や胴体

頭には無数の刺傷

目はえぐり取られ、潰されて辺りに散漫していた

あちこちの柱に血が飛び散り、まだ乾ききっていないどろりとした生臭さがある

地面には、魚の鱗や肉片が散らばり

所々潰された跡がある

…この全てが数分前に行われた戦闘の全貌を顕にしていた

何体ともいえない死骸の山

その傍らに、その姿はあった

少女の姿はない

隊長…タルテットのみが、全身に血を浴び、真っ赤に染まったまま座り込んでいた

「…」

近くに来ても起きる気配はない

試しに名前を呼んでみたが返答は無かった

全身を赤く染める血は、返り血なのか

…本当に、本人の血なのか

目立った外傷は見えない

けれど、打撲して血を大量に流せば

大して他とは変わらない

「………タルテット?」

ぴくりとも動かない

こんな場所だ、昼寝なんていうことをする人なんていない

そんなことをすれば食べてくれと言わないばかりだ

なら…それはつまり

「…起き、て」

エストレープが隊長を揺さぶる

しかし、揺さぶられた体は、その衝撃の方向に動くだけで一切の抵抗をしない

「………」

本当に… てしまった?

僕のせい?

俺のせい?

「……ごめん」

『どうする?埋めてあげる?』

僕は隊長の顔を見て、エストレープに言った

「…そこの基地に埋めてあげよう」

エストレープが隊長を背負って来た道を戻る

ガチャ…と隊長が手に持っていた武器が落ちた

「…え」

そして、エストレープの首元にそれは突きつけられていた

「…ボクがそう簡単に死ぬって思ったのが誤算だったね?」

「…タルテット?」

「そうだよ…気づかなかったでしょ?

こうやって、死んだかと思ってたら後ろから殺されたりするから気をつけてね」

「…じゃあその血は」

「勿論返り血

うっかり浴びちゃって、どうせならってレスフィールが提案したんだ」

「…これで分かったでしょう?

この海底都市はなにが起こるかわからないの

…食料の問題があるわけでもないのよ?

別行動は控えましょう?」

『だとさ、エストレープ』

「レフェル君は気づいてた?」

「レフェル君は最初から気づいてたよ?」

「う〜、いいよ、きみが弱くないことは分かったから…さっさと行こ」

「はは…良かった」

「…良かったね、タルテット」

「うん…」

 




はは…だから、言ったのに
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