…そんな僕にも、役目はあったんだ
「…だから、言っただろう?
『僕』は、君の…」
「あそこ…何かあるわ」
彼女に誘われ向かったのは、海底都市に似つかわしくない建造物だった
この場所だけ他とは違い、白海石(白い粉の固まったようなもの)ではなく普通に石で出来ているようで、薄い灰色をしていた
入り口には階段があり、海底都市の貝殻の段差とは違い人工的に作られたといっても違和感のない現代質な造りだった
建物は大きく、けれど海底の石壁がある場所に埋め込まれて建っていたため、奥行きは確認できない
周囲に海底生物がいないかを確認して、そっと扉を開ける
ギィ、と木製特有の音がした
扉が木で出来ているのもおかしい…
海底都市には木なんて生えない
だから地上から持ってきたのだろうか
そのまま僕たちは中へと進む
先頭を彼女が、その次を隊長が、後ろを僕が、最後にエストレープが…
「…ここは教会なのかしら?
あの祀ってある物は…」
「え、えっと…なんだろうね?」
「…」
「座る所もあるね〜、まぁ何にしても怪しさ全開なんだけど…」
『結構広いみたいだ、奥にまだ部屋がある』
今入ってきた入り口の左右は椅子が並べられていて、真っ直ぐいったところに白い何かを模したような置物がある
そして右奥に扉が見えた
「本当だ…行ってみる?」
「そうね、何故こんな場所に建物があるかも知りたいわ」
「ん〜そうだね〜、行かなきゃ分からないし」
扉を開けて中に入ると、そこは誰かの部屋みたいで生活感があった
ベッドが置いてあり、壁には棚が
開けっ放しのクローゼットに、床にはカーペット
「…あら、お邪魔したかしら
貴方がこの家の人?」
彼女が見つけたのは部屋の片隅でうずくまってる少女
物置の視界に遮られた場所に、一人で
…こんな場所に人?
服装を見ても探索隊の生き残り…という訳でもなさそうだ
質素な白い服、身体は細く、血色がいいとは言えない
…けれど、その子は
「ねぇ、レフェル君…この子何かに怯えてない?」
寝ている訳でも無いらしく、今も小刻みに震えている
『…探索隊じゃないなら状況が分からない、はぐれた訳でも無いとしたら
…ここに住んでいるとしか
それに海底都市には人間の食べられるものはなかったはず』
「ん〜、ならなんなんだろう」
エストレープがそう言うと、少女と話をしていた彼女が首を傾げた
「…? どうしたの?」
その先にいる少女は、震える指で
…僕を指差した
「…?」
「そこに…アバストレークがいる」
継ぎ接ぎの言葉使いで、少女は言った
「アバストレーク?
それはどういうこと?」
彼女は聞く
少女はゆっくりと顔を上げると、その泡のような薄い海色の瞳で…僕を見た
「おかえり…わたしのパパ」
ーーーーー