海底都市の管轄保護区   作:片椅子

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「…パパ」
わたし、ずっと待ってたの
だから…いっしょにいて


泡沫の夢は果たされ、残留した意思と狭間の心

何も無い街の、何もない場所に僕はいた

家族はいない

家族と呼べるものが…僕にはいなかったんだ

気づけば僕は誰かの家にいた

その家の人達は僕の家族だと言った

家族のいない僕は、それだけで救われた

だから望みを叶えた

だから努力をした

だから…いつか報われると信じていたんだ

僕の、この空っぽな人生を、暖かな何かで埋められると

…それが何であっても良かった

それが優しさで包まれているなら

 

 

『…ご、め、エストレープ』

レフェル君が震える手で紙に急いで文字を書いていた

…ごめん?

「どうし…」

レフェル君の方を見ると、レフェル君は手からペンを落とした

「…え」

そして拾いもせずに、レフェル君は少女の方へ進んで行く

ちらと見たレフェル君の後ろ姿に、俺は違和感を覚えていたんだ

一度振り返ったレフェル君の目は

 

「君は、気づいていたんだね」

「パパ…わたしのパパ…おかえりなさい、おかえりなさい」

「ああ、ただいま

いい子にしていたかな?

シーク・レティレンディ…」

少女は喜んでいる

解けた表情、これは喜びの感情

…これが僕の求めていた事?

「待ってた…ずっと待ってたよ?

わたしいい子?アバストレーク」

「いい子、いい子

遅れてごめんね、

やっと見つけたんだよ、僕の代わりをね」

これが僕の役目?

この場所に、僕たちは誘導された?

そして少女は手に入れた

『アバストレーク(影)』の親を

それなら…きっと意味はあった

 

少女に近づいて、抱きしめたかと思えば、レフェル君は

『少女の名を呼んだ』

「…は?

レフェル君?」

「待ちなさい…!

あなた…誰なの?」

「レフェル君…じゃないよね

第1…レフェル君は声が」

ふふ…と、レフェル君は笑った

そしてゆっくりと後ろに振り向くと

髪の隙間から見える表情が、少し暗くて

「皆酷いな…僕はレフェルだよ?

声が出ないって言うのは嘘

だって、これは僕の声でしょ?

ね?エストレープ…」

笑顔で、そう、笑顔で

レフェル君が俺の方を見た

その目は、俺の知らない目

「…っ、それは」

「けれど、その子は誰なの?」

レスフィールがレフェル君に問いかける

少女がレフェル君の後ろに隠れる

「…パパ」

と小さな声で服の裾を引っ張っている

「ふふ、紹介するね

この子はシーク・レティレンディ…

僕の、あの子との子供さ」

「え、…子供?」

「うん、あとはあの子さえ戻ってくれば全てが元どおりだよ

…そうだ、手伝ってよ

僕たち、仲間だよね?」

「…お前、影だろ」

「あなた…これが影なの!?

なら、レフェル君は」

「口封じに声を奪われ、逃げられないように視界を奪った

…全部、レフェル君を殺す為」

「僕のこと疑うの?

いいよ、別に疑われてもどうでもいいし」

「あ…えっと、来てくれるんだよね?」

「どうする…?」

「…ここで拒否してもレフェル君は戻ってこない」

なら…

「行くしか…ないんだ」

俺は…まだ、見つけてない

「ふふ、あぁ、ありがとう

僕の事、守ってね?」

そう言って、レフェル君は…

レフェル君を操る影は言った

…笑いながら

きみの、姿で

 

 

 

ごめんね…レフェル君

 

 

 

 

レフェル君の首の鎖の模様は、綺麗に消えて無くなっていた

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