海底都市の管轄保護区   作:片椅子

21 / 21
影の苦しみも、俺の悲しみも
きっと誰にも分からないんだ


完成の少女と虚しきハリボテ

ボロボロと崩れ出す地下都市

血のように赤く綺麗な空間は、守るべきものが消えた事で何も残らない事を知っていたんだ

細い糸は切れ、人々の死骸の上にこぼれ落ちる

…ああ、なんて綺麗なんだ

「…?

行くよ?上の階に逃げないと…

…エストレープ?」

「…ねぇ、レフェル君」

「…」

「その子を連れて早く行きましょう!」

「…うん」

 

 

上の階に戻れば、何も無かったように揺れはおさまっていた

「gooooooooo…」

「海底生物が襲って来ない…」

「呪いが解けたということ?」

「なら…もうここで死人が出ることはないのかな」

「…教会に行ってみる?」

「そうね…あの子がまだいるかもしれない」

 

教会につけば、女の子はまだいて、パパ…パパ…とよんでいる

 

「…あれ?パパは?」

「レティ…君の」

 

いないなんて、言えなかった

悲しむ顔なんて見たくない…

 

「パパ…パパは!どこにいるの?」

「…」

 

…でも、教えないといけないのか

 

「ねぇ、教えて…?

パパはどこ?」

「…君のパパはね」

 

不意に指を指す

…そこには倒れているレフェル君がいる

 

「そこに寝ているの?

でもパパじゃない…」

 

分かっていたんだ、この子はあくまで影に反応していた

もう、教えるしかないのか

 

 

「…パパは、いなくなっちゃったんだ」

「…どう、して?」

 

「どうして?どうしてパパはいないの?」

 

「…」

 

パパは…死んだから

 

 

「…ああ、僕は生きているんだ」

 

声が聞こえる

 

「声が出るってことは…傷塞がってる?

直してくれたのか、ありがとう」

「…レフェル君?」

「あー、えっと、………誰だっけ?」

「………俺の事、覚えてない?」

「嘘だよ、エストレープ

ど忘れしたんだ、怒らないで」

「そっか、良かった」

「所でさ、ここはどこ?

その子は迷子?」

「あぁ、この子は…」

「パパ? パパ?」

「え?パパ?」

「パパ…だよね?パパなの?」

「あー、そういう事?

僕はまた変な事をしたのか

そうだよ、僕はパパさ」

「…それって」

「パパだ…パパだ!」

 

それって、つまり

 

「あ、僕のこと知ってるみたいだね

ねえエストレープ…?」

「え、あー…」

『ねぇ、エストレープ』

『なに?』

『レフェル君…まだ戻ってきてないの?』

『…レティが反応している

これはレフェル君じゃない』

『なら…もう』

「…ねえレフェル君」

「ん?なに?」

「地上に戻ろう?」

「え?地上?ここが地上だろう?」

「…あ、ごめん、庭に出ようって言おうと」

「そうなの?

なら、行ってらっしゃい」

「…うん」

 

 

 

 

「ねぇ、エストレープ

彼、影の記憶を受け継いでいるんじゃないかしら」

「そうみたいだね…ここが地上だって当たり前そうに言ってたし」

「…なら、地上に戻るのは諦めた方がいいのかな」

「レティが消えていない事もあるし

…ここで過ごすの?」

「…レフェル君のそばにいられるなら、俺は別に構わないさ」

「なら、私達も残ろうかしら」

「…え」

「どうやら、地上の人達、この場所に入れなくなったみたいなんだ」

「それって…」

「この呪いの効果が変わったみたいね

この水の不可視化が侵入を拒んでいるみたいなの」

「それに、ここには金銀財宝がある訳でもないしな」

「…でも、食料は?」

「…どうやら、用意してくれるそうだね」

「皆?僕達これからご飯作るんだけど…食べる?」

 

 

「この場所に人間の食べれるものがあったとは知らなかったわ」

「でも、あるんだからな…不思議なものだ」

「…ってことはさ」

「ここ、今俺たちしかいない?」

「そう…なるわね」

「独り占めか!」

「なら、この場所をさ、俺達の拠点にしようよ!」

「ボク達の?拠点?」

「海底生物が襲って来ないなら…

この場所って何処よりも安全だよね」

「確かに…」

「海底都市の管轄保護区!

この場所を管理する…そして」

「ここでこの子を守り抜く事が俺達の使命なんだ…そうすれば」

「…レフェル君ね」

「…いつか、レフェル君が戻ってきた時のために」

「影の未練を晴らしてあげよ?」

「地上に戻ってもボク達は今度は戦争の兵士だからなあ…」

「ね、なら一緒に過ごそ!」

「そうね…それもそれで面白い」

「じゃあ…これからよろしく」

「ええ」

「うん!」

 

「おそいよ!

もう食べちゃうからね?」

「あ、今行く!」

「…これで、良かったのよね」

「そうだよ、きっと良かったんだ」

 

 

月明かりの鈍く差し込む海底地下都市

影の消滅によって歪められた呪い

けれど、僕は構わない

いつか全てを思い出した時のために…

僕は待ってるよ

君が来てくれることを

 

 

 

おしまい




最終話
これにてこのお話は終わりです

質問などはどうぞお気軽に


では、また次のお話で…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。