何度も夢で殺された
何度もあの風景が蘇る
…だからこそなんだろうね
僕は惹かれているんだ
「…………」
前線に1番近い探索者の休憩所
僕がここに連れられてからは4日が経った
相変わらず声は出ない
掠れた、声にならない音は出るけれど
その後すぐに喉が痛くなって咳が出る
その咳ですら痛みが走るから、もう随分と前に声を出すことは諦めていた
「(…4日前、僕が倒れていたことは街じゃもう噂になっているみたいだ)」
「(僕が起きた事を全て伝えられたらいいんだけど…『これ』があるからなんだろうね)」
僕の首元にあるこの『黒い模様』
鎖の様に輪が連なり、傷跡の周りに円になっていた
「…」
そっと触れる
何があるでもない、皮膚があるだけ
触れた感覚が変わるわけでもなく
見えなければないのと同じだ
「………」
けれど、それも誰も『見えていない』
鏡にも映らなかった
でも…
白海の物質で作られたこの『クリートリペル』
その光沢に映された僕の姿には
くっきりと模様が映されていた
「(影にかけられた…呪いのようなもの?)」
海底都市の見えない水のように
『影』についてのことが認識されないように
そして…僕の首元の模様
これら全てに共通するのは…
『海底地下都市』
これが本当ならば…もしかして
海底都市の明かされていないこと
それになにか関係しているってことになる
「………」
もう一度、海底都市に行けば
何かわかる?
「(ならば…行くしかないね)」
僕が手も足も出なかった影
でも、僕が生かされたということは
もう一度…行くチャンスを貰ったということ
…だから、お願い
僕のこの恐怖を消して…
震えを、止めて
たった一度の敗北
どうしてここまで拒絶しようとするんだろうか
僕は…僕の意識はまだ
あの場所に囚われている
「…」
休憩所から公共施設を使って僕の住んでいた地域に帰った
しばらくは海底都市に行っていたから
ここに戻ってくるのも久しぶりだな
「ーーーーー」
ちらほらと人影が見えてくる
街は少し広くて、何番外にも重なり
その度土地が上がっていき、土地代も上がっていく
1番低い土地は8番台で、流れる川が扉の下まで浸かっている
雨が降れば扉を閉めないと水が中まで入って来る
水を弾き、乾燥性もいい材料で出来ているものの、人は住まず見た目だけの状態で放置されている
僕は普段からここには戻ってこないから、使われない8番台の部屋を借りている
最近は雨も降らず、中はそこまで湿ってはいないだろうけど
街を歩いてしばらく、家が見えて来ると…
「(…?花が添えてある)」
家の扉の前には花束が置いてあった
「(誰か来た? でも…誰かな)」
水路の石の上をを飛び越えて
家の扉を開く
「………?」
誰もいない…
ゆっくりと部屋の中に入る
「(…誰もいないなら何のために花束を置いたんだ?)」
用があるなら中で待っているかもしれないと思っていたけど…
…そう思って扉を閉めようとしたとき
ふと視界が暗くなった
「(………誰かいる!?)」
後ろを振り返る
だがその前に…
「………っ」
何か強い衝撃を与えられ、僕はそのまま意識を失った
「………あ」
そんな声を出して倒れた少年を見下ろしたのは、花束を左手に抱え、口元を袖で隠している、くせっ毛が特徴的な少年だった
「あれ〜? 帰ってきてたと思ったら
レフェル君だったのか〜、
うっかり攻撃しちゃった…まぁいいか」
首元の服を掴んで引きずったまま、少年は部屋の中に入っていった
「あはは、ばいばい〜」
ーーー