ごめんなさい…
聞こえた声は掠れて…
意味のなせない羅列となって消えた
「大丈夫…助けてあげるから」
「…ぁ…が」
『影』は、僕を視界に捉えると目の前まで飛びかかって、僕の目を隠すように爪で隠した
思いっきり…ぎちぎちと、締め付けていく
どうして…?
今度は本当に殺されるのかな…
腕を振りほどこうとしてもあまりの力差に抗うことが出来ない
「………っ!!」
ぎりっ、という音と同時に液体が垂れた
「……っ〜〜〜!?」
瞬間痛みが走った
頭がちかちかして、でも痛みからは逃れられなくて…っ
痛い…、痛いよ…っ
「………ぁ、…っ」
助けなんて呼べない、声が出ない…
「……ぃ、」
やがてまたピリピリとしては感覚が薄れていく
痛みが引いて、僕はぐったりしてその場に倒れ込む
「………ぁ……」
右目の方が暗くて見えない…
かろうじて見える左目で姿を捉えた
血のせいでぼやけた視界の中に、『影』は立っていた
「………!」
はくはくと、口を動かしても声は出ない
もう、選択をしてしまったんだ
『生きたい』
と言う願いを
そして、声を奪われた
『二度と選択を変更させないように』
僕は、無くした右目を手で抑えながら
残った左目で影を見た
「………」
影はなにをするでもなくただ立っていた
やがて、僕の体力が限界に近い事を察したのか、影が少しずつ近づいてきた
「………い、タイ?」
「………」
痛い? そう聞いたのかな
僕は黙って頷く
「………いきタイ、から生かしタ
その、クビノ…それがお前ノ最後」
「………?」
「…それ消えタトキ、呪いハ発動スル」
ーーーだから、足掻イテ
「………」
その声は、僕に忠告をしていたんだろう
…けれど僕は、その全てを聞く前に、
ぼんやりとした意識を手放した
「………ぇ、ねぇ」
「………っ」
「起き…あれ、どうした?
突然抱きついてきて…」
「〜〜〜っぅ、…ぁ…っ」
「…まだ、痛みが引かない?」
「いいよ、好きなだけ泣いていいから」
僕が見つけた時、レフェル君は右目から血を流して倒れていた
額に強く締め付けられた跡があったから…もしかしたらレフェル君のいう影に遭遇したのかもしれない
…でも、どうして?
第2防壁地帯からは距離があるし
わざわざレフェル君を探してた?
「………ぁ、」
「………ん?」
まだ目に涙を浮かべてるけど、なんとか紙を取り出すと、震える手で字を書いていく
『僕の、首の鎖…消えちゃうと呪いが発動して…僕、死ぬかもしれない』
「…え」
「………」
「少し、細くなってるみたい
時間が無いってことかな」
「………」
『分からない』
「どちらにしても、その右目、早く治療しないといけない
今から戻るのは大変だよね?
もう行くしかないけど、行く?」
『…うん』
「じゃあ、辛くなったら教えて
片目だけじゃ、武器も存分に使えないでしょ?」
『ごめん…』
「いいよ、ほら…早くしないと襲ってくる」
『…行こう』
「うん」
海底地下都市の奥深く
光などささない闇の世界
そこには人類の期待が詰まっていて
そこは人類の悲しみで溢れていた
家族のいないもの
自身を試したもの
地上にいられなくなったもの
その全てが、この地で散っていった
僕は
僕は
僕は…
まだ、まだ足掻いていたい
こんな中途半端で死ぬのなら
最初から自殺した方が良かった
あの家から出る時も
あいつの手を取る時も
何をする前に死んでいればよかったんだ
こんな僕が
こんな僕のせいで
君は…
ーーー