もものはなびら舞い散る中、流れるはかのんの調べ 作:猿野ただすみ
ホテルへと戻ってきたかのん。入り口からそろりと中へ入って行くと。
「かのん!」
やはりというか、当然のことながら、待ち構えていた岡田マネージャーに見つかってしまった。
「あ、あの、岡田さん…?」
「こっちへ来なさい!」
岡田はかのんの腕を掴み引っ張っていくと、そのままエレベーターの中へと連れ込んだ。そして扉が閉まった瞬間、岡田は言った。
「部屋に戻ったら、覚悟しておきなさい」
眼鏡の奥の瞳が怪しく光る。
(ひえぇ、岡田さん、本気で怒ってるよー)
とはいえ、今はもう既に深夜と呼んでもいい時間。10代の、
(……うん、仕方がないよね)
それが判っているだけに、このあと待ち構えているだろうお説教を甘んじて受けようと、心に決めるかのんだった。
部屋に戻って、およそ一時間。かのんはこってり絞られた。これほど叱られたのは、昨年11月の長時間番組の収録を抜け出したとき以来だろうか。
「……もう、随分と遅くなったからこれくらいにしておくけど、あまり親御さんに心配かけないようにしなさい」
「……はい」
かのんは素直に返事をする。
「それじゃあ早く寝て、明日は…」
「岡田さん!」
岡田の言葉を遮って、かのんは言った。
「明日一日、わたしに時間をください!」
「かのん!?」
「私の我儘だし、みんなに迷惑をかけることもわかってます。だけど、それでも、どうしても助けたい子がいるんです!!」
「……それは、一日でどうにかなることなの?」
「どうにかします!」
かのんの熱い想いに、岡田はしばらく考え込み。
「……やっぱり、一日なんてとても無理ね」
首を横に振った。
「岡田さ…」
「だからせめて、リハーサル迄には間に合わせなさい!」
「あ…」
岡田の優しさに、一瞬言葉に詰まり。
「ありがとうございます!!」
頭を下げて、心の底からお礼を述べた。
『さてと、かのん。まねーじゃー殿にはああ言ったが、何か助ける手だてはあるのかの?』
岡田が部屋を出てすぐ、アポロが問いかけてきた。
「今はまだ無いよ。だから、こういったことに詳しい人から知恵を借りようと思うんだ」
そう言ってかのんはケイタイを取り出し、メールの作成を始める。
『成る程、あやつならば確かに…。でもよいのか、かのん。お主はまだ…』
「ありがと、アポロ。でも、私なら大丈夫だよ。気持ちの切り替えは出来てるから」
かのんは少し困ったような笑顔で言う。アポロはため息を吐いて。
『やれやれ、難儀なものじゃのう』
半ば呆れながらつぶやいた。
所変わってとある地方都市、舞島市。そこの、さらにとある家のとある部屋。
既に夜半も過ぎたというのに、薄暗い部屋の中で美少女ゲームに没頭する少年が一人。
「カナちゃん。今日はバンドの練習、休みかな?」
とか、
「アヤナ、キミの走ってる姿は素晴らしいよ」
などと言いながら6本同時にゲームを進める姿は、不気味の一言に尽きる。
そんな中、一つのゲームがあと
ピロリン♪
『メールだよっ!』
「のわっ! なんだ、こんな夜中に!?」
絶妙のタイミングで邪魔されつつも、メールを開いてみると。
「……かのん?」
中川かのんからのメールだった。メールにはこう書かれている。
『こんばんは、桂馬くん。夜分遅くにスミマセンm(__)m
実は駆け魂について、相談したいことがあります。
ちょっと特殊なケースみたいで、頼れるのは桂馬くんしかいません。だから、迷惑だとは思いますが相談にのってください。お願いします。
「駆け魂…」
つぶやくと少年、……桂木桂馬はしばらく考え込む。そして。
「やっぱり、アイツも一緒の方がいいか」
結論がでた彼は、すくりと立ち上がった。
かのんがメールを送って十数分。
---〜♪
着信音に慌ててメールを開くと。
『電話する』
と一言。
「え、電話? 桂馬くんって確か通信手段がPFPくらいしか…」
そう言ってるそばからケイタイの着信音が鳴り響く。慌てるあまり、相手の名前も確認せずに電話に出るかのん。
「も、もしもし?」
『あっ、かのんちゃん?』
聞いたことのあるその声は。
「あ、エルシィ…、じゃなくてえりさん」
女神による記憶の補完で、改竄前と改竄後の記憶があるために新悪魔のエルシィと人間の桂木えり、両方で認識してしまうのだ。
同じ女神がいる子でも、クラスメイトの高原歩美や、バンドのメンバーである五位堂結なら既に慣れてるだろうけど、かのんは仕事の関係で同じクラスでありながら接触が少なく、未だに慣れていないのだ。
『わぁ、お久しぶりです。にーさまが「用もないのに電話なんかするな」って言うもんですから、って、ちょっ…』
えりの声が途切れ、何か操作をする気配。そして。
『待たせたな、かのん。えりの携帯はスピーカーにした。これでお前の話を二人で聴ける。
……さて、話してもらおうか。お前の言う駆け魂の特殊なケースとやらを』
「……ありがとう、桂馬くん。
それじゃあ説明するよ? まず最初に…」
一瞬、宇宙世紀の若き少佐姿の桂馬を幻視しながらも、かのんはお礼を述べ、ホテルで声を聞いた辺りから帰り道でのアポロとの会話までを、なるべく事細かに説明した。
「……以上なんだけど、これで何かわかるかな?」
『すまない、少し質問させてくれ。まずはアポロ。ももだったか? そいつに取り憑いてた駆け魂の強さはわかるか?』
『残念じゃが、わらわには奴らの強さの基準がわからん。ただ、片言ながら言葉を発しておったから、ある程度力を取り戻してはおるようじゃな』
『
感覚が駆け魂を追い出している頃に戻ったのか、えりの事をエルシィと呼ぶ桂馬。
『あわわっ、え、えっと、おそらくですけど…』
突然のことにあたふたしながらも、えりは答える。
『その駆け魂は
『結のときと同じ…。
ついでに聞くが、残留思念体に駆け魂が取り憑いたことをどう見る?』
『ええっ、また私ですか!?』
『駆け魂について一番詳しいのは、残念ながら元駆け魂隊のお前だからな』
『うえぇ、え〜と、え〜と…』
姿は見えないものの、かのんには頭を抱えている様子が手に取るようにわかった。
『あくまで私の推測なんですけど…』
『構わない、言ってみろ』
『はい。ももさんに取り憑いたのはおそらく、はぐれ魂だと思います』
「はぐれ魂?」
『なんじゃ、そのパチもん臭のするのは?』
女神がパチもんって、とか思いつつ、えりは説明を始める。
『はぐれ魂は宿主を持たない駆け魂の事です。普通は宿主をさがしてさ迷ってる状態なんですけど、中には物に憑依したり、あるいは直接人間に干渉して負のエネルギーを集めてる者もいるって、聞いたことがあります』
『成る程、大体わかった。それを踏まえてかのん、お前に聞きたいことがある』
「えっ!? な、何かな?」
突然振られてドギマギするかのん。そんなことは気にかけず、桂馬は問う。
『かのんはももを、どうしたいんだ?』
と。
天理「あ、鮎川天理…」
ドクロウ「ドクロウの…」
天理・ドクロウ「あとがき代わりの座談会コーナー」
天理「って、何で十年前のどーちゃん!?」
ドクロウ「作者が言うには、二階堂由梨だと動かしにくいみたい。そしてツンデレよりもクーデレの方がいいって言ってた。後半になって感情が豊かになっていく所もまた良し、だって。よくわかんないけど」
天理「そ、そう…(汗)」
ドクロウ「……」
天理「……(な、なに話せばいいんだろ)」
ドクロウ「あの」
天理「ふえっ!?」
ドクロウ「今回の話のコメントしよ?」
天理「あ、うん、そうだね(そういう主旨だった)」
ドクロウ「今回の見どころは、やっぱりお兄ちゃん」
天理「そうだね。中川さんには悪いけど」
ドクロウ「お兄ちゃん、彼女が出来ても変わらないね」
天理「ゲームは桂馬くんにとって空気みたいなものだから」
ドクロウ「次に、えりさんから語られたはぐれ魂の情報」
天理「アニメ版とマンガ版、両方の【かのん100%】の設定を足した感じだったね」
ドクロウ「この辺はエルシィさんを覚えてることも含めて、作者の推測が入ってるみたい」
天理「そうなんだ。
……それから最後の、桂馬くんの問いかけ」
ドクロウ「回答によって、ももさんの攻略ルートが決まるんだって」
天理「桂馬くんのことだから、単純に『助けたい』って事じゃないんだろうね」
ドクロウ「うん。かのんさんの想いが試される質問だね」
天理「……きっと、大丈夫だよ。だって、桂馬くんに救われた人だもの」
ドクロウ「……うん。
じゃ、そろそろ終わりにしよ」
天理「そうだね。
えと、そ、それじゃ皆さん。次回もまた、見てください」
ドクロウ「ん、がっ、んぐ」
天理(古いなぁ…)