もものはなびら舞い散る中、流れるはかのんの調べ 作:猿野ただすみ
翌朝、睡眠時間を削って早く起きたかのんは、ホテルの1階までやって来た。するとそこには。
「かのん」
「岡田さん」
岡田がロビーで、かのんのことを待ち構えていた。
「かのん。もう一度確認するけど、リハーサルの時間までには必ず来ること。いいわね?」
「はい」
「それから、無茶なことはしないように」
「…はい」
(ごめんなさい、岡田さん。たぶん、無茶なことします)
心の中で謝るかのん。
「……その間が気になるけど、あなたを信用するわ」
少し困った表情を見せる岡田に心苦しさを覚えるものの、それでこれからやろうとしていることを諦める気など、かのんには微塵もなかった。
「かのん。あなたが何をするのか、詳しくは聞かないけど、あなたがやることに間違いはないと信じてる」
「岡田さん…。ありがとうございます!」
感謝を込めて、深々とお辞儀をする。
「それじゃ…、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。気を付けるのよ」
言って、これじゃあまるで、私がかのんのお母さんみたいね、と心の中で思う岡田郁子だった。
『それでかのん。どうやって情報を集めるのじゃ。不特定多数から情報を得るには一人ではきついぞよ?』
街中の窓ガラスを通して、アポロが語りかける。しかしこの質問も、かのんには想定済みだったようだ。
「アポロ。今の世の中、簡単に情報を集める方法があるんだよ」
そう言ってかのんが向かった場所、そこは。
『成る程のう。確かここは、[いんたーねっとかふぇ]じゃったか? [ぱそこん]とかいう箱で、げぇむやら会話やら出来る公共の場じゃったな』
女神の中でも好奇心が旺盛なアポロは、意外とこういった知識があったりする。
「そうだよ。ここなら周りに目立たずに、しかも速やかに、知りたい情報が大量に手に入る。
ただ、その中から役に立つ情報を抜き出すのは、自分自身だけどね」
『フム、こういう調べ物にはまさにうってつけというわけじゃな?』
「そういうこと」
そう締めくくったかのんは椅子に座り、パソコンに[川流もも]と打ち込み検索をかけてみる。しかし目的の情報は見つからない。
かのんは名前での検索をあきらめ、別のワードを打ち込む。
『なになに、[岡山県]、[ピンクの髪]、[幽霊]か…。他の目撃情報を得ようというのじゃな?』
「うん。名前で調べてもわからないから、とりあえずは外堀から埋めていこうかと思って」
言いながら検索を開始すると、ディスプレイには大量の
『これは、なかなかに一筋縄ではいかなさそうじゃな』
アポロはひとつ、ため息を吐くが。
「そんなことないよ。ほら、ここ」
そう言って、かのんがカーソルを合わせた見出しには、こう書かれていた。
【岡山の怪談!? 桃色の髪の幽霊】
『桃色の…。確かにこれは、川流もものことで間違いあるまい』
「でしょ? これって目撃情報サイトみたいだから、なにか足取りがつかめるかもしれない」
かのんはサイトにアクセスして内容の確認を始めた。
ある情報では、
---高梁市◯◯の交差点の角でピンクでショートの女の子を目撃。カワイかったので声をかけようと思ったら、いつの間にか消えてた。
とか、また別の情報では、
---船穂の××公園の真ん中に噂の幽霊がいた! 寂しそうな表情を見せてスウッと消えてった。
といった情報が数多く寄せられている。中には「襲いかかってきた」などというものもあったが、駆け魂のことがあるとはいえももの行動には相応しくないので、偽情報として処理することにした。
『ううむ、どうやら岡山では、もものうわさがかなり広まっておるようじゃな』
アポロの感想にかのんは黙ってうなずく。かのんも、これほど噂になっているとは思ってもいなかった。
「ええと、取り敢えず…」
かのんは目撃情報のことをメールにしたため、桂馬のPFPへと送信する。
-~♪
「はやっ!?」
桂馬からの返信はほんの十数秒だった。
『どれどれ…。フム、成る程。地図に目撃地点をまーくしていく、か。
これは、どらまとかでよくあるやつじゃな』
「桂馬くんだったら『ゲームではよくあることだ』とかいいそうだけど。
……っていうかアポロ、いつの間にドラマなんて?」
かのんだって時間があいていればドラマくらい視ることもあるが、少なくともアポロが顕れてからこういった内容のドラマは視ていない。桂馬ほどではないが、記憶力には自信があった。だから断言はできる。
『いや、かのんが仮眠をとっているとき、たまにちょこっとな?』
「ときどき目覚めが悪いときがあったけど、アポロが原因だったんだ…」
デスクに両手をつき項垂れるかのん。
「ううん、今はこんなことで挫けてる場合じゃないよ。せっかく桂馬くんがヒントをくれたんだから!」
気持ちを切り替えたかのんは、右手をギュッと握りしめ、力強く言い放った。
「……よし、だいたいこんなもんかな?」
パソコンに岡山の地図を呼び出し、出来るだけ多くの目撃地点をマーキングしていたかのん。ようやくその作業が終わり、ホゥ、と大きく息を吐く。
『それにしても、これはまた見事な…』
アポロが感嘆の声を上げた。なぜならば、マーキングしたポイントの最も外側を結んだその形が、ほぼ真円に近かったからである。
「ほんとだね。
でもここまで見事だと、これが行動の限界の範囲なのか、それともなにかの作為が働いてるのかで迷うとこだよ」
『確かに。じゃが、考えてばかりもいられんぞ? かのんが自由に行動できる時間は限られておるからのう』
そうなんだよねー、と言いながら頭を悩ませるかのん。桂馬に相談しようかとも思ったが。
(ううん、桂馬くんに相談するのはやることやってからだ)
そう、かのんはまだ、この手のお約束を実践していない。相談するのはその後で十分。
考え直したかのんは気持ちを切り替えて、再びディスプレイとにらめっこをする。
「ええっと、まずはこの円の中心線を複数本引かなきゃなんないんだけど…」
言ったものの、さすがにそこまでコンピューターに詳しいわけではない。そもそもインターネットカフェのパソコンでそんな作業をしてもいいのかさえわからない。
仕方がないのでかのんはソーイングセットから小さなものさしを出した。
ものさしを円に当て、最長を示したところでその半分の位置にマーキングをする。
さらに角度を変え、同じ作業をくり返す。
こうして中心点と思われる位置を導き出したかのんは、地図を拡大してその場所を特定するつもりなのだ。もちろん誤差はあるだろうが、その周辺にももと所縁のありそうなモノが見つかれば御の字だ、とかのんは思っている。
そして。
「私立、順愛学園?」
その名前に目が留まる。そしてもももまた、学校の制服を着ていたことを思い出していた。
「関係、あるのかなぁ」
そう言いながら、合わせていたカーソルを何とはなしにクリックする。するとディスプレイが暗転し、次の瞬間、赤い髪の少女の姿が映し出された!
「ええっ、なに!?」
『いったい何事じゃ!?』
驚くふたりに、少女は言う。
『どーも。宇宙一の天才、鷲羽ちゃんでぇす!』
と。
美星「美星…」
ノイケ「ノイケの…」
美星・ノイケ「あとがき代わりの座談会コーナー」
美星「……って、ノイケは『愛・天地』には出てなかったんじゃ?」
ノイケ「どうやら作者は、『天地無用!』シリーズのメインキャラクターで攻めていくみたいよ?」
美星「ええ~、それじゃあ清音や雨音も一緒に出ればよかったのにぃ」
ノイケ「TVシリーズの清音真備さんなら、全力で辞退なさってましたよ?
雨音さんは外伝シリーズのレギュラーなので、作者が除外したようですね」
美星「もう、意地悪な作者さんね」
ノイケ(雨音さんは感謝してましたが)
美星「ん? どうしたの、ノイケ」
ノイケ「いえ、なんでもないわ。
それよりも、この作品の解説をしないと」
美星「あっ、そうだった。
えーっと、今回は、ももさんに関する情報収集をする回だったっけ?」
ノイケ「ええ。時代に沿ってインターネットを活用していたけど、これはアニメ版『神のみぞ知るセカイ』でかのんさんがブログ更新しているシ-ンを見た作者が、かのんも簡単な操作くらいは出来ると践んで書いたみたいね」
美星「やーねえ、今時の若い子ならそれくらい出来るわよ」
ノイケ「作者は昭和人だから」
美星「年齢を言い訳にするのは、良くないと思うの。
まあ、いっか。それで次だけど、ついに出ましたねー」
ノイケ「ええ。ついに出たわ、鷲羽様」
美星「作者さんの中では、『天地シリーズのあかいあくま』って呼んでるみたいよ?」
ノイケ「どこのFateシリーズですか!? ……否定する要因もありませんが」
美星「次回はそんな鷲羽ちゃんからの情報提示みたい」
ノイケ「まあ、都合よく接触した段階で、かなり怪しいものね。
というわけで、次回もまた見て下さい」
美星「見てみろりん」
ノイケ「また、古いネタを…」