もものはなびら舞い散る中、流れるはかのんの調べ 作:猿野ただすみ
『どーも。宇宙一の天才、鷲羽ちゃんでぇす!』
パソコンのディスプレイには赤毛の、13~14歳くらいの少女が映し出されていた。
「え、あ、あの…!?」
かのんは突然のことに頭の回転が追いつかない。
『いいねえ、その反応。最近はみんな、そこまで驚いてくれなくてねぇ』
しみじみと語る、鷲羽(わしゅう)と名乗った少女。しかし少しふざけた感じを匂わせているあたり、どこか胡散臭い。
「……ええと、あなたは
軽く愚痴をこぼしている間に気を落ち着かせたかのんが、鷲羽へ尋ねる。すると鷲羽が悪い笑みを浮かべ言った。
『へぇ、なかなかに気持ちの切り替えが速いねぇ。それに質問も的確だわ。
名乗ってるのに「誰」はないからね』
褒められてはいるものの、鷲羽の観察するような視線に背筋が寒くなる。
「あの…?」
『おっと失礼。これは職業病みたいなモンでね』
そう言われたと同時に、感じられていたプレッシャーは霧散した。
『さて、私が何者かだけど、わかりやすく言やぁ並行世界の宇宙人ってとこかね』
「……………………はい?」
あまりにもの突拍子のなさに、かのんの思考が再びフリーズする。
『なんだい、私の話が信じられないっての。あなた自身が特異な存在なのに。
ねえ、人気アイドルの中川かのん殿』
「!?」
『かのん殿の中にいる誰かさんのことは、やっぱり秘密なんでしょう?』
『……おぬし、なぜそのことを』
ごく一部の者、マネージャーですら知らないことを見抜いた鷲羽に対して、アポロが危機感を抱く。
しかし当の鷲羽はどこ吹く風で、アポロの疑問に答える。
『なに、モニター越しにかのん殿のアストラルデータを確認したら、アストラルパターンが2つ、確認できたんでね。
通常なら同調率30%はないと憑依現象は起こせないことを考えると、二人は寄生、もしくは共生関係にあるってとこかしらね』
「アストラル…、精神…」
かのんのつぶやきに頷き、鷲羽が続ける。
『もっとも、それよりも驚いたのが、かのん殿のアストラルパターンがもも殿のアストラルパターンに近いことだね』
「もも!? それって、川流ももさんのこと!?」
いきなり飛び出したワードに、たまらずに食いつくかのん。
『そのとおり。いやね、かのん殿の声がもも殿の声とそっくりだったから、なんとはなしに調べただけなんだけどね。それにしたって髪色も似てるし、誕生日まで同じ3月3日だし。
並行世界の同一人物なんじゃないかと疑っちゃったわよ』
かのんは驚愕した。ももとの類似性はもちろんだがそれよりも、自分と話しながらあの短時間でそれだけのことを調べた鷲羽に対してだ。
しかも彼女の言うことが本当なら、時空を超えた並行世界からそれを成しているのである。
「すごい…」
『言ったじゃない。宇宙一の天才だって』
かのんが漏らした一言に、鷲羽は胸を張って言い返した。
『こりゃ、かのん。飲まれるでない。それよりも大事なことがあるであろう。
これ、鷲羽とやら。おぬし、ももとはどういった関係なのじゃ』
普段、「
『ああ、そうだったね。いやぁ、あんたらがあまりにも興味深い素材だったもんで、つい、ね』
『なんじゃ、まるでメルのような奴じゃの』
メル、ユピテルの姉妹の末妹メルクリウスの趣味は、興味を引いたものの観察、らしい。
『さて、私ともも殿との関係だけど、直接はないね。
私の実験に偶然もも殿が巻き込まれて、直接行動ができない私はそれを解決するために、居候先の家主のご子息に色々と手伝ってもらったのさ』
『ぬ、ご子息?』
「……あれ、それってもしかして、『天地先生』?」
鷲羽はほう、と漏らし。
『あんたら、天地殿を知ってるのかい。
そのとおり。柾木天地殿は
「それじゃあ鷲羽ちゃんは、ももさんを助けるために私たちに…」
『ああ、いや、それも間違いじゃないんだけど。
実を言えば、事件はすでに解決済みでね。これはアフターケアみたいなものさ』
「アフターケア?」
鷲羽の言葉に、頭にはてなを浮かべるかのん。
『かのん殿は、もも殿がどういう存在なのかはわかっているんだろう?』
「……うん。ももさんは、残留思念が自我を持った存在、だよね?」
かのんは、少し辛そうな表情で答えた。
『ええ、そうよ。もも殿本人に関してはなんとかなったんだけど、そのときに亜空間に焼き付いたもも殿の思念が、何かの作用でそちらに出現したの。そんな彼女をサルベージするために、そちらで彼女と接触した人物を捜していたのよ。
その条件が、もも殿に関する情報を集め、さらに順愛学園にまで行き着いた者だったってわけさ』
つまりは、始めに「川流もも」と打ち込み、最後になんとはなしに順愛学園をクリックしたことが鷲羽へと繋がったということだ。
『そして作用した何かについても、あんたたちを見て推測が立てられたよ。
おそらくは、かのん殿の中の誰かに似た何かが取り憑いて、残留思念のもも殿に自我が芽生えた。その何かはそちらの世界の存在だったために、もも殿の思念はそちらに現れてしまった。……とまあ、大体そんなとこじゃないかねぇ』
『……ふむ。天才というのも、あながち間違いではないようじゃな』
「うん。あんなに少ない情報で『駆け魂』の存在にまでたどり着いてるよ」
推測とはいえ、桂馬が色々な情報を仕入れ導き出したももと駆け魂の関係を、あっさりと看破したのだ。
『駆け魂、ねえ。かのん殿、そのあたりのこと、もう少し詳しく説明してもらえないかしら?』
「え…?」
判断に迷ったかのんが、コンパクトに映るアポロへと視線を移す。
『まあ、別にかまわんじゃろ。性格に難はあるようじゃが、得た知識を悪用する輩にも見えんからの』
『なんだかひどい言いようだね。あんた、何様だい?』
『ん? わらわは神じゃが?』
『……は?』
今度は鷲羽が目を丸くする番だった。
「ええと、そこのところも含めて説明するね?」
『神と悪魔ねぇ…』
ディスプレイの向こうの鷲羽が、腕を組んで考え込んでいる。
「……信じられないかな」
かのんが気になって尋ねると。
『ん? いや、そういうわけじゃないんだけどね。
こちらの地球にもギリシャ神話やローマ神話はあるけど、あくまで創作物でしかないから。
宇宙レベルだと、高位次元生命体を指すことになるし、いわば世界によるギャップに驚いたってとこさ』
そういうものなのか、と納得する
「それで、なんだけど。鷲羽ちゃんはももさんの心の隙間の原因に心当たりないかな。
ももさんの心の隙間を埋められれば駆け魂を追い出せるかもしれないし、それが無理でも駆け魂との結び付きを弱められるかもしれないの」
『ふむ。
「孤独…?」
『ええ。詳しいことは省くけど、あの子は時空漂流者でね。特に「川流もも」として生きてきたときは家族と呼べる者もなく、常に孤独を感じていたんだよ。
だからこそ人との繋がりを強く求めている節があったね』
鷲羽の説明を聞き、ももが誰かに見つけてもらいたがっていたことが見事に繋がった。
その表情を見た鷲羽がかのんに言う。
『どうやらやるべき事が見つかったようだね。
もも殿ならおそらく、日中は順愛学園にいるはずだよ。学生は学校にいる時間だからね!』
「うん。ありがとう、鷲羽ちゃん!」
かのんは力強く応えた。
ハクア「ハクア…」
清音「清音の…」
ハクア・清音「あとがき代わりの座談会コーナー」
ハクア「……って、どうして天地キャラと一緒に!?」
清音「私が美星との出演を拒否したら、こっちに回されたのよ。苦労人同士、息も合うだろうって」
ハクア「うわっ、ひどい理由ね。まあ、確かに私もエルシィには苦労をかけさせられたけど」
清音「うーん。その気持ちは私にもわかるわね。
……あ、因みにここでは、本編の設定が適用されていないわ。ハクアさんがエルシィさんを覚えてても、文句を言ったりしないでくださいね」
ハクア「フォローありがと。さて、いい加減コーナーを進めないとね」
清音「まずは、かのんさんの気持ちの切り替えの早さだけど、これは芸能界での突発的事態の対応で鍛えられた結果らしいわね」
ハクア「うーん、私もそこは鍛えないとなぁ。
さて、次に鷲羽が言った『同調率30%はないと…』ってあたりだけど、これは天地無用!でも『魎皇鬼』の方の世界観からのネタらしいわ」
清音「天地さんの弟さんが主役の小説から引用したみたい。
次は…、ももさんと声がそっくりで、髪色が似てて、誕生日が3月3日で同じっていうのは作者がこの話を書くきっかけね」
ハクア「これもひどい理由ね。そのうち地獄にでも送ろうかしら(悪魔ギャグ)。
最後に、アポロの神発言に鷲羽が驚いた理由だけど、それはこっちの鷲羽には三命の頂神、つまり神様だって設定がないからよ」
清音「あの設定は現段階では、『魎皇鬼』シリーズのみでの設定だからね。そこを間違えないように!
……さて、それじゃあそろそろお開きにしましょうか」
ハクア「それではみなさん」
ハクア・清音「次回も見てくださいねー!」