東方紅妖精~Scarlet Fairy.~   作:るさりぃ
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ぎりぎりでテストを合格しメイドとなった妖精ちゃん。

しかしそれでもまだまだ未熟な見習メイド。

そんな妖精ちゃんをお嬢様が直々に鍛え上げるのだった。

※妖精ちゃんの名前は今回決まります。"お嬢様"のセンスなので深くツッコまないであげてください(すっとぼけ)


三符「レミリア様による妖精ちゃん強化計画」

「30分経過か、合格よ」

 

「へっ……?」

 

 

 最後に私が投げ捨てた剣はちょうどレミリア様が攻撃を仕掛けようとした方向に飛んだらしく、

思わず素手でそれを掴んでしまったレミリア様の手から血が垂れていた。

 

 

「完全にトドメを刺すつもりで居たからね、まさか剣が飛んでくるなんて思わなかったわ。

30分生き延びるだけでなく、ちょっとした切り傷程度であれこの私に傷をつけるなんてね……」

 

 

 期待以上の戦果だったわよ?と心から嬉しそうにレミリア様から称賛をいただいた。

でも当の本人の私は素直に称賛を受け取れずに居た。

 

 

 なぜならあの剣は"完全に諦めた私が適当に投げ捨てただけの物"であるからだ。

決してレミリア様の動きを読んだわけでも、それどころか攻撃ですらなかった。

そんな体たらくで褒められてもちっとも喜ぶ気にはなれず、私はただ苦笑するばかりだった。

 

 

「さて、これで正式にあなたを私のメイドとして雇うことになったわけだけど、それなら

名前が必要になるわよね!」

 

 

 もう雇うことは確定したらしく、嬉しそうにそう言うレミリア様。

そういえば私名乗るのすっかり忘れていたような……

 

 

「あ、レミリア様。私の名前ですけど……」

 

「生前の名前の事なら却下よ。お前は私の物なのに他人がつけた名など呼ぶわけがないだろう」

 

 

 さも当然のように私の本名を切って捨てるレミリア様であった。

いや、たしかに前世の名前だから今名乗るのはおかしいといえばおかしいけれど……

 そこまでボロクソに扱われるとちょっと悲しいです。

私のそんな心境など全くお構いなしに、レミリア様は一人あーでもないこーでもないと

ブツブツ言っている……

 

 

「(でも名前をつけてくれるのはちょっと嬉しいかも……)」

 

 

 名前をもらえれば私はこの世界で再び"生まれた証"ができる。

自分で考える手もあったけれどネーミングセンスは私には皆無だし、そもそも名前なんて

考えているほど転生してから今までの状況に余裕なんて無かったし……

 

 

「よし、決めたわ!あなたはルージュ、これからは"ルージュ・クロワッサン"と名乗りなさい!」

 

 

 渾身のドヤ顔と共に、レミリア様が無い胸を張って宣言した。無い胸なんて言ったら即座に

殺されそうだし、なにより今の姿では「お前が言うな」という話なので口には出さない。

 

 

「えっと……ちなみにどうしてそのお名前に……?」

 

「ん?しょうがないわね、聞かせてあげるわ!」

 

 

 得意げにさらに無い胸を張るレミリア様。あれ……?もっとずっと怖い人だって思ってたのに

この人こんなに可愛い人だったの……?戦ってるとき以外は意外と気さくなのかしら……?

 

 

「まずはルージュね、これはフランス語で"赤"を意味するわ。この紅魔館に住まう以上、これほど

ピッタリな名前も無いわ!赤とは至高の色、この私を象徴する色だしね!」

 

「あ、やっぱり赤色が好きなんですね……」

 

 

 全体的に紅色で統一された建物である紅魔館、さらにそこの主の名前が

レミリア・スカーレット……赤とか紅とかが好きなのは間違いないとは思っていたけど……

どうやらその通りだったらしい。

 

 

「次にクロワッサンね。これも同じくフランス語で意味は"三日月"よ。今夜はちょうど三日月

だったし、あなたの羽も三日月のような形をしているし、これもピッタリでしょ?」

 

 

 ちなみにフランス語での表記は「Rouge Croissant」となるらしい。

なんでフランス語なのかは知らないけど……レミリア様の故郷だったりするのかしら……

 

 

「どう?これ以上ないほど素敵な名前でしょう?正直まだまだ未熟なあなたには

もったいないけど、名前に負けないようにこれから頑張りなさい!」

 

「は、はい……!素敵なお名前をありがとうございますっ!」

 

 

 実際ネーミングセンスなんて無いんだし特に変な名前でもないので素直に喜ぶことにした。

 

 

「それで……メイドのお仕事ですがまずは何をしましょうか……?」

 

 

 如何せんメイドなんてやったことがない私には具体的な職務内容は当然わからない。

漠然と主の世話や、家事や掃除、洗濯をするであろうことくらいはわかるけれど……

 

 

「そうねぇ……まずは紅茶を淹れなさい。掃除や洗濯とかは眷属共でもできるんだけど、

あいつらには紅茶を淹れるなんて芸当はできないしね。まぁ番犬代わり以上の役割なんて

あいつらには求めてないしいいんだけど」

 

「紅茶、ですか。わかりました、ではキッチンへご案内いただけますか?」

 

「あー、そういえば案内すらしてなかったわね。いいわ、着いてきなさい!」

 

 

 

――――――――――

 

 

「できましたレミリア様、どうぞお飲みください」

 

「ふーん……意外と様になってたわね。あなた生前紅茶淹れてたの?」

 

 

 キッチンの場所と食材、食器等の場所を教わりはしたが、紅茶を淹れる動作は特に

口出しする箇所がなかったらしく、レミリア様にそう訊ねられた。

 

 

「そうですね……仕事としてではなくあくまで趣味の一環ですけど。私も紅茶好きなので」

 

「それじゃあ味にも少しは期待しようかしら。……あぁ、もし不味い紅茶淹れたらただじゃ

おかないから覚悟しておくことね」

 

「淹れた後でそういうことを仰るのは卑怯だと思うのですが……不味いから殺すわね、

なんて言わないでくださいよ?」

 

「不味かったらそうするかもしれないわねー、私にとってメイドの良し悪しなんて

美味しい紅茶が淹れられるかが最優先だし」

 

「まぁ……たしかにそのお言葉には同意しますけど……」

 

 

 不穏なことを口走るレミリア様だが、見た目や香りの段階ではダメ出しされることはなく

普通に楽しんでいるように見えたため、味に関してもある程度は自信があった。

 

 

「……あら、悪くないわね。特別美味しいってわけでもないけれど。なかなかやるじゃない!」

 

「ご満足いただけたようで光栄です」

 

 

 悪くない、なんて言いつつ表情は結構笑顔だし翼もパタパタと動かしている。

まだ共に生活し始めたばかりだが、ご機嫌そうなのは動作から読み取れた。

 というか戦闘が絡まないと本当に可愛いですねこの人は……思わず抱きしめたい

可愛さです!……実際にやったら殺されそうなので我慢ですけど。

 

 

「これなら今後はティータイムが楽しくなりそうね!いい働きよルージュ」

 

「ありがとうございます!レミリア様」

 

 

 ブラックって言っていた割になかなか素敵そうな職場なんですけど……

なんかもう永久就職でいいとか思えてきちゃいました。

 

 

 非常にご機嫌なレミリア様を見て、私もここに来てよかった……と心から思えるように

なってきた。

 

 

 そう、ほんの初日だけは―――――

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

「ひいいいぃぃぃっ!?レミリア様助けてくださいー!?」

 

 

 楽しく過ごした紅魔館のメイドさん勤務初日、その感動のまま翌日を迎えた私は

昨日までの気持ちがキレイに消し飛んでいた。それは今の状況である。

 

 

 そう、ここは吸血鬼の住む館であり……この世界にはそれを退治するのが仕事の

人間も居ることを知ったからだ。現在進行形で私はそのヴァンパイアハンターさん

に追い掛け回されている……今の時刻は昼間であり、当然吸血鬼であるレミリア様

はお休み中。眷属の人たちも頑張って?いるみたいだけど敵わないようで

絶賛お掃除中だった私はその人に見つかり……追い掛け回され……

 

 

「まったくもうっ!!使えないわねルージュ!!どこの世界に侵入者を主の場所

まで案内するメイドが居るのよ!!」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃ……!」

 

 

 結局しばらく鬼ごっこを演じた結果、睡眠を妨害されたレミリア様が起きてきて

ヴァンパイアハンターさんを瞬殺、そのままの流れで私は正座でお説教されている

 

 

「私との初戦の時の頑張りはなんだったのよ!!あの程度の敵なら頑張れば

ルージュでも始末できたでしょ!?」

 

 

 激おこぷんぷんなレミリア様に対し、ただただ謝る以外に術の無い私……

でも生前人間だった私には、まだこの世界のバイオレンスな部分には順応できず、

当然人間を殺すなんてことはできない。

 頑張ればなんとかなったかもしれないのに逃げ回っていたのはつまりそういう

ことなのだ。

 

 

「そもそも逃げるにしたって相手は人間なんだから飛べばよかったでしょ?

その羽はなんのためについてるのよ!」

 

「え……?羽……ですか?」

 

 

 そういえば羽の存在をすっかり忘れていた……

まぁ仮に覚えていたとしても元人間の私に羽を動かして空を飛ぶなんて芸当は

できず……。それを察したのかレミリア様も呆れてため息を吐いていた。

 

 

「あー、あんたそう言えば元人間だったわね、羽の筋肉なんて動かし方すら

知るわけないってことか」

 

「……お恥ずかしながら、そういうことになります……」

 

 

 飛べないのでは何のために羽がついてるのかわかったものではなかった。

 

 

「はぁ……しかたないわね。この私が飛び方を教えてあげるわ」

 

「ほ、本当ですかっ!?」

 

 

 羽があるからには空を飛んでみたいと思っていたし、飛べることで戦闘も有利に

なるに違いない。もちろん二つ返事で特訓をお願いする。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

「無理無理無理!飛べない!!」

 

「うるさいさっさと飛べ!」

 

 

 飛行訓練に際し紅魔館で一番高い場所である時計台へとやってきた私とレミリア様。

きっと最初は優しく羽の動かし方とか教えてくれるんだろうなーっと期待していた

私を待っていたのは、レミリア様による実践オンリーの超絶スパルタ教育であった。

 時計台に着くなりいきなり「さぁ、飛べ」とだけ言われて必死に食い下がる

ヘタレの私。当然許してくれないレミリア様。

 

 

 「飛べ」と「無理!」の押し問答が続いていた。

 

 

「獅子は我が子を谷に突き落とすって言うでしょ?あんたのダメ加減は技術以前の

問題なのよ。まずはその軟弱な精神を鍛えなさい!」

 

 

 だいたい妖精のあんたならこの程度の高さから落ちたって死なないわよ、と

補足されるがそういう問題ではない。死ななければ何してもいいとか

人権無視良くない!今の私は人間じゃないけど!

 

 

「あーもううるさいわね!ほらさっさと行け!」

 

「きゃあああぁぁぁっ!?」

 

 

 業を煮やしたレミリア様が私を時計台から蹴り落した。

レミリア様のドS!!つるぺた吸血鬼いいいぃぃぃ!!

 頑張って背中に意識を集中しようとするものの、落ちながらでは当然

集中できるはずもなく急速に地面に近づいていく……

 

 

「もうダメぇっ……ぐえっ!?」

 

 

 地面に激突する寸前急に上から襟を引っ張られた。

あの……襟引っ張るのやめてください息ができません……

 

 

「あんたなにそのまま落ちてるのよ、羽動かさないとダメでしょうが」

 

「簡単に言わないでください!落ちながらじゃ集中できないんですぅ!!」

 

「本当に追い詰められないと成長しないとかぽんこつすぎるのよあんた」

 

 

 

 結局空を飛べるようになるまでに一週間かかりました。

 

 

 

 

 







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