とある鎮守府の日常   作:さと(仮)

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クリスマスということで、クリスマスに因んだ話を作りたくなった。後悔はない。


鎮守府クリスマス戦争

「えー、それではこれより『対提督クリスマス会議』を始めます」

ある日の昼下がり。提督立入禁止の札の掛かった鎮守府大会議室では、100名を超える艦娘が集っていた。普段は面倒臭がる初雪の様な艦娘もいる。その目的は、提督に対するサプライズプレゼントをみんなで決めようというものであった。

 

一年前。

クリスマスプレゼントをバラバラに決めた結果、提督の部屋がプレゼントで埋め尽くされ、妖精さんに救助されるということがあった。その反省から、今年はみんなで決めようということになったのだ。

 

司会進行の叢雲が続ける。

「ルールを説明するわ。まず、お色気はもちろんダメ。あまり大きな物もダメ。消耗品もやめた方がいいわね。以上3つの事を守った上で司令官に喜ばれると思うものを考えてちょうだい。もちろん相談もありだし、複数人での共同提案もありよ。以上始め!!」

 

鎮守府クリスマス戦争が、今幕を上げた。

 

 

─────────────────────

 

「そろそろ、意見もまとまってきた頃じゃないかしら」

叢雲が声を掛けた。異議は出ないので話を進めることにした。

 

「はいっ」

一番手には隼鷹が出た。見ると千歳、那智なども一緒の様だ。なんとなく嫌な予感がしたが、聞くだけは聞こうと思う。

「なに、隼鷹さん」

「日本酒とかどうよ」

やっぱりか。お約束の展開に軽い目眩を覚えつつ答える

「いやだから消耗品は……」

「分かってる分かってる。あたしが言いたいのはね、希少価値のあるお酒の事を言ってるのさ。珍しいお酒はコレクションとしての価値もある。だから酒をプレゼントして、見て楽しんで欲しいなって思ったのよ」

「そのうち押しかけて開封させそうな気もするけど……まあいいわ」

ホワイトボードに、「珍しい日本酒」と書き加えられた。

 

 

「じゃあ次の人、いるかしら」

会議は進む。隼鷹が口火を切った事で、我も我もと手が上がっていた。その中から…

「北上さん、どうぞ」

普段は会議に参加していてもあまり議論に参加しない北上が珍しく手を挙げていた。

「そうだねぇ〜……安楽椅子とかどう?」

変わったチョイスだ。なんとなく提督が座っているのをイメージしてみたら、ちょっと笑ってしまった。

「それで……安楽椅子にした理由は?」

「まあなんとなく、座ってまったりして欲しいなぁって思ってね〜……私も座ってみたいし」

それが本音か。

「提督の為ってより、自分の為じゃないの」

却下しようとしたら、北上が近くまで来てそっと言った。

 

「それに、提督の膝の上に座る事で、更に距離を縮められるかもよ」

「安楽椅子で決定にしましょうか」

 

『ちょっと待てええええい!!!!』

全員から総ツッコミを受けた。

「北上ー!!叢雲に何を吹き込んだクマー!!」

「いやー?そんな大したことじゃないよ〜。ただ叢雲の提督に甘える時間が増えるかもよ〜ってね」

『!!!!』

全員がハッと息を呑む。この発言の意味するところを全員が感じ取ったようだ。

「ま、まあ、とりあえず候補の一つとして挙げておいて、後でゆっくり議論するクマ」

絞り出すように球磨が言った。その一言で、叢雲も我を取り戻したようだった。

「そ、そうね。とりあえず、候補としておきましょう」

ホワイトボードに、「安楽椅子」と書き加えられた。

 

 

「じゃあ次の人、いるかしら」

会議は進む。一度は混乱しかかっていたが、落ち着きを取り戻しつつあった。

「はい!」

元気な声と共に手を挙げたのは文月。幼さが強く残るが、その明るさで艦隊内でもムードメーカーとなっている子だ。

「じゃあ文月ちゃん、どうぞ」

そう呼びかけると、元気よく立ち上がった。

「あのねあのね、あたしオルゴールが良いなって思うの」

「どうしてそう思うの?」

「司令官にはいつもあたしたちを思い出して欲しいっていうのと、あたし達との思い出のものとかできた時に、そこにしまって欲しいって思ったの〜」

無難な理由だが、前二つの事を考えると随分といい理由にも聞こえるのは気のせいなのだろうか。

「思い出の品を入れるオルゴールか……良いわね……」

「でしょでしょ〜、それで司令官にはそのオルゴールを見て幸せな気持ちになって欲しいな〜って思うの〜」

天使か。

「わかったわ。とりあえず候補にしておくわね」

ホワイトボードに、「オルゴール」と書き加えられた。

 

 

「じゃあ次の人、いるかしら」

会議は進む。天使を見たせいか、心なしみんな手を上げづらそうにしている。そんな中、

「はいっ、はいはいはい!」

元気に手を挙げたのは深雪。艦隊内でも随一の元気を誇る艦娘。いつも元気よく走り回っているイメージがある私の姉。

「じゃあ深雪姉さん、どうぞ」

「ニン〇ンドースイ〇チが欲しい!!」

「り、理由は……?」

「司令官とスマ〇ラがやりたい!!!」

なんとなく提督に対してっていうより、自分に対してのプレゼント感がある気がする。

しかしまあ、一応提督に対してのプレゼントとは言っているので、候補には加えておく事にする。

ホワイトボードに、「ス〇ッチ」と書き加えられた。

 

 

その後も、様々なものが書き加えられた。ティーセット、アルバム、皿、たんすといったものまで書き加えられ、最終的に20品程度がリストアップされた。

 

 

「さて、そろそろ出揃ったかしら……」

上がる手がなくなってきたところで、叢雲が言った。ここからが難所になると思いながら、叢雲が続ける。

「じゃあ、この中からどれを選ぶかだけど……」

そこまで言った所でもう一つの声に遮られた。

「ティーセットがいいデース!!」

金剛だ。普段からお茶会を開いていたが、これを機に提督専用のカップを用意してもいいかも、との事である。

ここに付いたのは金剛型と、意外にもロシア艦だった。ロシアンティー繋がりということだろうか。

 

「絶対に安楽椅子クマー!!」

球磨が声を上げた。球磨型を始めとした、少なくない艦娘が安楽椅子派になった様だった。その中の大多数は、当初の建前通りにリラックスさせる気はなく、提督に甘える場を作らせる心づもりなのだろうか……

 

「日本酒がいいよなぁ!?」

呑兵衛とされている艦娘は、日本酒派となった様だ。普段缶チューハイばかり飲んでいる提督に日本酒などを教えて引き込もうとしているのだろう。

 

「オルゴールがいいにゃしい!!」

睦月型をはじめとして、駆逐艦の大多数、そして大型艦の一部はオルゴール派となっている。駆逐艦は精神的な幼さが取り沙汰されることが多いが、思い出という言葉には敏感に反応する傾向がある。過去の記憶がそうさせているのだろうか。

 

「スマブ〇がやりたい!!!」

そう言ったのは深雪だ。いやスイッ〇って言っただけで〇マブラにするとはまだ決まってないんだが……

〇イッチ派となったのは、いわゆる元気系艦娘とされる子に加えて、海外勢がここに付いた。やはりゲームは国境を簡単に超えるということなのか。

 

そして、比較的支持した人の少なかった他の物に関しては、今回は候補から除外する事となった。そして、残った5種類で話し合いは続いていく……

 

……数十分後。

話し合いは平行線だった。お互いがお互いに譲らないので、議論が一歩も前に進まないのだ。果ては相手派閥から人を呼び込むために、交渉に走る者も出た。

 

こうなったらやるしかない。

「みんな、議論が白熱してるところ悪いけど、進みが悪くなってきたから、投票で決めようと思うわ。良いわね?」

皆、この空気に飽き飽きしていたのか、全会一致で決戦投票となった。

「それじゃあ、決選投票の前に、各人主張があったら言ってちょうだい」

 

 

「やっぱりお酒だよなぁ?たくさんコレクションして、その後パーっと飲もうぜ!!」

やっぱり本音はそっちじゃないの。

 

「提督専用のティーセットを作って、毎日提督とティーパーティーするデース!!」

毎日ティーパーティーとかそれはそれで結構突き抜けてる気がするけど、さっきの隼鷹の話を聞いたあとだとマトモに聞こえるから不思議でならない。

 

「やっぱりスマ〇ラだよな!!みんなで遊べれば楽しいし!!!」

深雪姉さんは完全にスイ〇チからス〇ブラに切り替わっていた。そのままだとソフトをプレゼントする流れになりそうなのだが……

 

「やっぱり安楽椅子だよね〜。日なたで座って一日過ごしたいよ〜」

安楽椅子派は最早提督にあげるという建前すら忘れているのではないのだろうか……

でも、あの人とゆっくり過ごす時間も悪くないなって、そう思うことは多々ある。

 

「オルゴールにクリスマスパーティーの写真を入れて、聴きながら写真を見たら、きっと元気になれると思うの。そして、みんな無事に来年もクリスマスパーティーを開けるように頑張りたいなって思うと思うんだ〜」

やっぱり天使か。

 

この後、予定通り決選投票が行われた。そして投票の結果……

 

 

─────────────────────

 

『かんぱーい!!』

クリスマスの日。大講堂ではクリスマスパーティーが開かれていた。艦娘達は大いに飲み、食べ、談笑し、日頃の疲れを癒していく。酒も料理も振る舞われ、大賑わいのパーティーとなった。

そして、パーティーも佳境に差し掛かった頃……

 

「えー、秘書艦の叢雲よ。司令官、壇上に上がって頂戴」

この時がやってきた。談笑していた艦娘達は一斉に話をやめ、静寂が講堂を包んだ。

「叢雲、これは一体どうした」

提督が壇上で叢雲に聞いた。それには答えず、一つの包みを出した。

「私達、艦隊一同からアンタにプレゼントよ」

「おお、ありがとう。早速開けるとしよう」

スピーカーから、包み紙をあける音が響いた。皆、壇上を凝視している。

「これは……オルゴール?」

 

 

結果として、オルゴールは大きく差をつけて得票数1位となった。理由は推測するしかないが、やはり明日の活力を得るというのは重要であるということだろう。艦娘というのは、戦いで傷付き、時には沈む可能性も考えなくてはいけない。そんななか、想ってくれる人がいる。その事実は生への執着を生み、結果として私たちの家、帰還の可能性を押し上げるのだ。

 

他のものを提案した人達も不満を表す事はなく、オルゴールで決定したことで、クリスマス戦争は無事閉幕した。

 

 

 

「ありがとう。大事にするよ」

「実はそのプレゼント、まだ完成してないわ」

「なんだって?」

提督が驚くのをよそに、みんなに声をかける。

「みんな、壇上に上がって頂戴。青葉さん、お願いします」

「了解です!」

 

あっという間に写真撮影の準備が整う。青葉がタイマーをセットして、シャッターを押した。

 

ピピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ

 

タイマーが進む。その間に提督の横顔を見る。戸惑いつつも状況を理解し、カメラに向かって笑顔を向けている。

 

ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ

 

シャッタータイムが近付く。この先もずっとずっと、戦いが終わっても、隣の人と過ごせたらいいなと、そんな事を考えた。今日も明日も来年も。変わらぬ日々を、日常を。

 

ピピピピピピピピピピピピ

 

青葉が言った。

「せーーーの!!」

 

『メリー、クリスマス!!!』

 

カシャッ

 

─────────────────────

 

次の日から、執務机に小箱が一つ追加された。

その中には、オルゴールと、集合写真、そしてひとひらの桜が入っている。




クリスマスにクルシミマス。

クリスマスの日に追加しようとしていましたが、大遅刻してしまった……
許してくださいなんでも((ry

私は一人で一人忘年会です……虚しい

それでは皆様、良いお年を。
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