砂糖が書きたくなった。それだけだ。
「ふぅ……ようやく終わった〜…」
深夜、クリスマスパーティーが終わり、間宮さんたちの片付けを手伝っていたが一段落した。提督と叢雲はどちらが言うともなく執務室に移動していた。
「お疲れ様、司令官」
叢雲が温かいお茶を出してくれた。
「ありがとう。茶菓子をだすからこっちに来るといい」
「いや、お菓子はもう良いわよ……」
そう言いながら応接椅子に座る。温かいお茶が身体に染み渡る。
時計の音だけが響いている。賑やかなパーティーも嫌いではないが、やっぱり静かな時間は落ち着いていていい。昼間に比べて格段に静かな時間は、叢雲と私の二人しかいないのではないかという錯覚すら覚える。
そういえば、貰ったオルゴールはまだ聴いていなかった。
「なぁ叢雲、早速オルゴール聞いて良いか?」
「聞いて良いわよ、っていうかもうアンタのものなんだから一々聞かなくて良いわよ」
さいですか。
ゆっくりとゼンマイを回し、手を離す。曲が流れ始めた。
「叢雲、この曲って……」
「気に入ったかしら?」
初めて聞いた曲。だが、どこか懐かしさのある曲。
「ああ、気に入った。ありがとう」
「気に入って貰えてよかったわ」
しばらくオルゴールに聞き入った。
ふと、桜が舞っているような気がした。
窓を見ると、雪が降っていた。
「おっ、雪だな」
叢雲がこっちに来て言った。
「どうりで寒かったのね…」
よく見ると手もみをしている。余程寒かったのだろう。
叢雲をこちらに引き寄せ、そっと肩を抱く。
「ちょっとちょっと、何よ!」
「いや、寒そうだからちょっと暖めようと思って」
「もう……何よそれ…」
そう言いながらも、拒否しないのでそのままの体勢でいる。
「今年ももうすぐ終わるな……」
提督がポツリと漏らす。
「そうね……」
叢雲も静かに答える。再びの静寂。
「ねえ、司令官」
不意に叢雲が呼んだ。
「どうした?」
「来年も、クリスマスパーティー、しましょ?」
随分と急な話だ。
「おいおい、まだ今年のクリスマスパーティーが終わったばかりだぞ?」
「わかってるわよ!!」
軽い軽口の応酬。そして、ゆっくりと叢雲が話し始めた。
「私達は、深海棲艦を倒すという以前に、日常を守る為に戦うの。アンタが私達を想ってくれるという、その事実だけで私達は頑張れるのよ。
知ってる?アンタ、自分が思っているより多くの子に慕われてるのよ?」
予想外の言葉に、なんと返すべきか困ってしまう。
無言の提督を余所に、叢雲は続ける。
「だからアンタは迷わないで指揮をして。仲間第一のアンタの指揮を信頼してるから。アンタは自分のことをして。それでももし迷ったら……」
叢雲が言葉を切る。そして顔をこちらに向けて言った。
「仕方がないから、私がアンタをサポートしてあげるわ」
相変わらずの上から目線。そして自信に満ちた勝気で綺麗な瞳。そう、私はこの目に恋をしたのだ。
戦おう。海が平和になる日まで。
勝気で、それでいて仲間思いのこの女の子を、来年も、その先も、ずっとずっと傍で見ていられるように。
「ありがとう、叢雲…」
万感を込めた一言、叢雲もそれに応える。
「ええ、どういたしまして」
静かに雪は降り積もる。二人を隠すかのように。
外は白く、染まっていた。
ご覧いただき、ありがとうございました。
おそらく今年はSSはこれで終わりになる予定です。
来年もゆっくり書き上げる予定なので是非ともよろしくお願いします。
では、良いお年を。