今回は一航戦のお話となっております。お楽しみいただけると幸いです
ある夏の日の昼下がり。
「加賀さんが倒れた!?」
突如舞い込んだ急報に私は驚きました。
加賀さんは鎮守府でも特に精強を誇る一航戦の一員、そして私、赤城の相棒として鎮守府のみならず、一般にも広くその名を知られた艦娘です。普段は冷静沈着で、ともすれば冷淡であるという誤解を与えることも多いですが、実際にはその胸の奥に、優しさと強い情熱を秘めています。
そんな加賀さんが訓練中に倒れたそうです。心配になった私は、加賀さんの様子を見に医務室に向かいました。
「赤城か。君も加賀の様子を見に?」
医務室に向かう途中で提督に会いました。提督も加賀さんの様子を見に行く所だった様です。
「はい、加賀さんが心配で……」
提督も心配だった様で、一緒に医務室に行くことになりました。
「極度の過労ですね」
医務室では明石が待っていて、加賀さんの状態について説明してくれた。曰く、訓練のしすぎで加賀さんの身体がついてこなくなり、倒れたとのことでした。本来なら自室で休んでも良いのですが、医務室に担ぎこまれた時に高熱を発していたため、体調が落ち着くまでは隣の部屋のベッドで寝かせておくとのこと。
許可が出たので、赤城さんのベッドの横に座らせてもらう。提督は「最近訓練申請が多かった様に感じる」と仰っていました。それでもすぐに部屋に戻ったのは、加賀さんに気を遣った…からでしょうか。
加賀さんは、今は熱も引いたらしく、穏やかな顔で眠っています。やはり相当疲れていたのかなかなか目を覚ましません。普段は自分のコンディション管理に厳しいはずの加賀さんが過労で倒れるのは何か理由があるのでしょうか。はじめは、心配から考えが至りませんでしたが、加賀さんが落ち着いてきたら原因の方も少し気になってきました。
「ん…っ」
日もかなり傾いた頃、静かな部屋に小さく声が響きました。ベッドを見ると、加賀さんが目を覚ましていました。
「ここ、は…」
「医務室ですよ」
声を掛けると加賀さんが驚いた顔でこちらを向きました。
「赤城…さん」
「はい、おはようございます。加賀さん」
その瞬間、加賀さんが弾かれたように飛び起きました。
「そうだ、訓練!!」
慌ててベッドに押し戻します。
「加賀さん!無理しないで下さい!!」
やはり本調子じゃないのか、思ったよりあっさりベッドに倒れこみました。驚いた顔で加賀さんがこちらを見てきます。
「加賀さん、あなた訓練中に倒れて医務室に運ばれたんですよ」
そう告げると、加賀さんは色々納得した顔で「そう…」とつぶやき、ベッドに戻りました。
「みんな心配していましたよ。もちろん、私も」
「そう…心配させてすみません」
加賀さんが珍しくしおらしくなっていました。
「呼吸も脈も安定、うん、大丈夫そうですね」
明石さんが加賀さんに言いました。ただ、大事をとって、明日の朝まではこの部屋にいるように、とのことでした。
明石さんが退室して後、しばしの沈黙の挟み、加賀さんがぽつりと口にしました。
「その…ごめんなさい。ご迷惑をおかけしました」
私は加賀さんに、気になっていた質問をしてみました。
「加賀さんはどうしてそんな過剰な訓練をしていたのですか?過剰な訓練は怪我の元ってよく言ってたじゃないですか」
その質問をした時、初めは言い淀んでいましたが、やがて、ゆっくりと話し始めました。
「その…赤城さんが、改二になって、私では追いつけない遠い所に行ってしまう気がして、それで赤城さんに追いつきたくて…少々無理をしました」
そんな加賀さんの答えを聞いて、私は少し笑ってしまいました。
「赤城さん!私は…!!」
加賀さんが少し怒ってしまったので、謝りながら話します。
「すみません、加賀さんも同じように思っていたのかと思うとつい…」
そういうと、加賀さんの瞳が驚きに染まりました。
「加賀さんも…ってまさか赤城さん、貴女も…?」
「ええ、私も…加賀さんに追いつきたくて…だから改二の改装案が来た時にすぐに同意したんです…それで加賀さんがすぐに追いついちゃったら、私の立つ瀬がないじゃないですか」
そういったら加賀さんはキョトンとした顔でこちらを見てきました。そしてひとしきり見つめ合った後、二人で笑いあいました。
ひとしきり笑った後、加賀さんに言いました。
「隣の芝生は青く見えるものですね…
だから…もうこんな無茶しちゃだめですよ。」
やや照れた顔で加賀さんが答えました。
「私の場合は青いというより赤いですけどね。
わかりました、今後は気を付けます」
その答えにまた二人で笑い。
そうして二人の夜は更けていきました。
それから、加賀さんが過剰な訓練を課すことはなくなりました。
はい、という事で、今回は一航戦のお話でした。
やっぱり仲間から改二が出たら他の子はちょっと焦るんじゃないかなとは思います。
以下謝辞です。
原案 makari様(@makari_sig)、本作の掲載について快諾頂きまして、ありがとうございます。
それでは、次作までゆっくりお待ちください。