東方博麗伝説   作:最後の春巻き(チーズ入り)

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長らく待たせたが、再び諸君らと相まみえることが出来たこの奇跡に深い感謝を。

どうも、春巻きです。
何やかんや忙しく、その上、戦闘描写とか書くのすっげぇめんどkげふんげふん! 難しかったから時間掛かってしまった。
でもでも、それなりには上手く書けているんじゃないか? って、自画自賛してみる春巻きなのでした。

はいはい、下らない前口上はこの辺で、本編をどうぞお楽しみ下さい!


巫女、戦い【前】

 こちら博麗の巫女、こちら博麗の巫女、本日は晴天なり、本日は晴天なり。

 いやー今日もお日様が気持ちいい、最高に快適な一日が始まりやがりましたなー。博麗神社の縁側で、お茶を啜りつつ、しみじみとそう思う。

 こんな日は、美女、美少女を鑑賞するに限る。陽光を浴び、より一層、その愛らしさと美しさを輝かせる彼女達をじっくりと鑑賞するに限りますわ。

 太陽の光と、輝く彼女たちの笑顔のコントラスト、その肢体を光が照らし、場合によっては中身が透けて見える可能性もあるやもしれん。……うん、心が踊るね。思い描いただけで、お茶が更に美味しくなったよ。ウマァー

 

「ーーむ! 霊夢! はぁ、話を聞いているのか?」

 

 私の眼前にも美女が一人。

 彼女の名前は上白沢(かみしらさわ)慧音(けいね)……皆ご存知、けーね先生である。

 腰ほどまで伸びた、青いメッシュ入りの銀の髪。瞳の色は赤。

 頭頂部には赤いリボン、更にその上に六面体と三角錐の間に板を挟んだような形の青い帽子を乗せ、帽子には赤い文字のような面妖な模様が描かれている。

 衣服の方は胸元が大きく開き、上下が一体になっている青い服。……エロ教師め、良いぞもっとやれ。

 袖は短く白で、襟は半円をいくつか組み合わせており、それを更に白が縁取っている。胸元には赤いリボンをつけ、下半身の長いスカート部分には幾重にも重なった白のレースが付けられている。……何でそこで露出減らしたし。

 性格は面倒見がよくて、生真面目なお人好し。困っている人がいたら助けずにいられない良い娘。しかし、思い込みが激しくて、何かと物事を決めつけて行動しがちな欠点がある。……この思い込みで、永夜異変の時に私を説教した事は絶対に許しはしない。いつか絶対に【不適切な表現があります】してやる。ぐへへへっ!

 能力は『歴史を食べる程度の能力』。特定の物事の歴史を消して「なかったこと」にする力である。歴史を食べられた物事は外部から認識できなくなる、というもの。慧音は真面目だから、人里が妖怪に襲われないように、隠蔽したりすることに使っている。……簡単に言うならば、もしも私が存在していた、という歴史を消すことが出来たら、私の姿が誰にも認識できなくなり、好き放題出来るということだ。

 慧音の力を大きく超えている、高位の妖怪なんかには、歴史の隠蔽は効かないから、ゆかりんなんかにはすぐに見破られちゃうんだけどね。

 そして、満月を見ると、角が生え、髪の色が青いメッシュの銀から、緑メッシュの銀へと変化し、獅子のような尻尾がニョキニョキにょっと生えてくる。……ああ、きもけーね可愛い、可愛いよ。その角をペロペロしたり、挟んだりしたいよぉ。尻尾をモフモフしたいよぉ。

 その姿の時の力は、人間時の比ではなく、強靭な肉体に、幻想郷中の全ての歴史を知り、『歴史を創る程度の能力』という力を使うことが出来るようになる。

 歴史を創る。それは自身にとって都合の良い歴史を編纂する能力である。歴史から自分にとって都合の悪い事実を消し去ったり、自分にとって都合の良い出来事を捏造して歴史にできるのだ。

 例えば、幻想郷の美少女は博麗の巫女のものにならなければならない、なんて歴史を捏造することも可能だ。

 残念ながら、歴史を編纂するだけで人の認識まで変えたりとかは出来ないため、改ざんされた歴史を知る者には、それが改ざんされた歴史であると、バレてしまう。

 さっき例えで出した、私ハーレムな歴史で言うならば、代々博麗の巫女に関わっていたゆかりんや、その従者達ならば、そんな歴史は存在しなかった筈だ、と気付けるのである。……何事もうまい話は無いね。

 

 そんな慧音が、私怒ってます! って雰囲気を醸し出しながら、腰に手を当てて、頬を膨らませている。……けーねせんせーが可愛すぎて、私の胸がドキのムネムネしてる。

 いやーすまない、幻想郷の美女、美少女たちに思いを馳せていたら、少しばかり意識がどっかにお散歩していたみたいだ。今だけはけーねせんせーの事しか考えないから許して、はぁはぁ。

 

「聞いているとも、慧音。チルノ達と模擬戦をすれば良いんだろう?」

「聞いているなら、反応を返してくれ。……寂しいだろう」

「……邪ァッッッ!」

 

ーーゴッスンッ!

 

「霊夢っ!?」

 

 ごめん、今本能のままに襲い掛かりそうだったから、顔面パンチで無理矢理抑えたわ。

 覇王モードぱいせんが仕事できない勢いで、けーねせんせー襲おうとしてたわ。きもけーねならぬ、きもれーむが爆誕して、ワーハクタクのハクタクを美味しく頂くところだった。けーねせんせーとけだものセッ【規制】するところだった、危ない危ない。

 

「れ、霊夢? 大丈夫、なのか?」

「大丈夫だ問題ない。ちょっと居眠りしている小町が見えた気がしたが、何も問題はない」

「それ、一回死んでないか?」

 

 問題ないんやで。ちょっと額が割れて出血してるけど見た目ほど、酷くはないんやで。大量に肉食ってワインでも飲んでいたらすぐに塞がるし。……ハハッ、私、テラアンチェイン。

 

「それで、いつやるんだ? 私はいつでも大丈夫だが……」

「……今から頼めるか? チルノを筆頭に問題児たちが騒ぎ出していてな、そろそろ我慢できなくなってーー」

「霊夢ぅぅぅ! あたいと勝負しろぉぉぉ!」

「ご飯だぁぁぁ!」

「ひゃぁぁぁ!?」

「ーー襲撃してくる」

 

 お、親方! 空からおんにゃのこが!

 慧音が言い終わる前に、青と水色の影、黄と黒色の影、そして、その影に引っ張られている緑と青色の影が、私目掛けて突っ込んでくる。……やれやれ。

 

「……馬鹿者共め」

「はぐぅ!?」

「ふげぇ!?」

 

 無謀にも私に突っ込んできた三つの影のうち、青と水色、黄と黒の影を、その頭を引っ掴まえて衝撃ごと無理矢理力で押さえ込む。

 抑え込んだ際、お仕置きの意味も込めて、最小限にした衝撃が二人に行くように調整した。……本当に最小限だよ? デコピンくらいの痛さに抑えてるんやで?(霊夢基準)。

 

「あ、頭がいたぁぁぁい!?」

「ふぇあぁぁぁっ!?」

 

 頭を抑えてゴロゴロとその場で転がっている青と水色の少女がチルノちゃん。

 髪は薄い水色で、ウェーブがかったセミショートヘアーに、青い瞳。背中には氷で出来た六枚の羽を持っている。

 頭には青色のリボンを付けており、服装は白いシャツの上に青いワンピースを身に着け、ワンピースにはスカートの縁に白のギザギザ模様が入っている。また首元には赤いリボンが巻かれており、足は水色のストラップシューズを履いている。

 子供っぽくて悪戯好き。頭はあまり良くないが、その代わりにおバカ故の行動力は全く予想がつかない。良くも悪くも天真爛漫で、人懐っこいため、基本的に誰にも物怖じせずに接することが出来る稀有な存在である。

 霧の湖に住まう妖精で、年がら年中その身体から冷気を溢れ出させている。そのためか、チルノちゃんの周りは冷っこい。夏場の抱き枕にぴったりの冷っこさである。我が博麗神社では、冷房の代わりにチルノちゃんを常在させる事で、快適な夏の一時を満喫している。……その間はチルノちゃんを拉致監禁、もとい餌付けして、一ヶ月近く博麗神社に閉じ込めているのは、此処だけの話である。

 能力は『冷気を操る程度の能力』で、自分の周囲の冷気を自由に操ることが出来る。下げる温度に限界は無く、瞬時に物体を凍りつかせることも出来るため、それなりに強力な力だ。使う本人が全然自分の力を理解できていないから、本領を発揮することはあんまりない。……私が彼女の能力をゲットしていたならば、火照った身体を冷やすのに使うね。私、熱持ちやすいし。

 

 妖精二人の横で、涙目で額を抑えている黒い少女がルーミアちゃん。

 髪は黄色のショートボブで、赤い目を持った幼い少女の姿をしている。……ほんと、幻想郷、幼女、多い、好きぃ。

 服装は、上は白の長袖ワイシャツに、その上に黒い服を身に着けている。そして、下は黒のロングスカートを身に着けている。

 頭には左の側の側頭部に赤いリボンの様な、お札が付いている。

 このお札はルーミアちゃん本人では取ることが出来ず、誰が何のために付けたのかは分からない。……私の目には、ルーミアちゃんの力を縛っている様に見えるため、何かしらの封印的な役割を果たしている、と考えている。

 かなり強力な封印で、そのせいかルーミアちゃんは中級妖怪程度の力しか出せなくなっている様子だ。……もしも解除したならば、その実力は私がそれなりに本気にならないと危ないレベルまで、一気に上昇するだろうね。

 性格は幼くて単純、容姿そのままに子供みたいに自分の気の赴くままに行動する。目的意識なんてものは一切なく、その辺をフラフラと浮遊している姿が度々目撃されている。

 後、食べることが好きで、食事を求めて頻繁に博麗神社に訪れる。

 いくらでも食べさせてあげるから、脱げよ、オラ。……最近、一品ごとに服が一枚無くなっていく遊びを教え込んだ。単純な娘って、扱いやすくって興h……心配になるよね。

 能力は『闇を操る程度の能力』で、文字通り闇を操ることが出来る。自分から闇を作り出すことも出来るが、基本的には夜など、光が少ない場所で本領を発揮する能力である。闇に物体を捕食させたり、自身の姿を闇で覆い隠したり、と闇は決まった形がない不定形であるため、自由度が高い。ゲームなんかでもラスボスクラスの敵が使う能力であるため、使いこなせたら一気に最強クラスに成長できるだろう。……私が闇を操れるなら、闇に紛れて少女を襲う。そして、じっくりと捕食(意味深)する。ジュルリ。

 

 二人共、私のお仕置が相当痛かったのか、まだ立ち上がれていない。……くぁいいねぇ(クズの極み)。

 何か厳しくね? って思うだろうけど、コレばっかりは仕方ないよね。私、一応はこの娘達を指導する立場ですし、お寿司。この娘達の成長のために、断腸の思いで、厳しくしているのだよ(建前)。

 決して、痛みに涙目で震えて、悶えている美幼女の姿に興奮なんてしていない、していないったらしていない。……ところで、席を外しても良いかね? ちょっと下着だけ着替えたいんだ(大洪水)。

 

「えっ!? えっ!?」

 

 そして、最後に残った緑と青色の影……大ちゃんを優しく抱き止め、そのままお膝の上に不時着させる。

 何が起きたのか理解できていない様子で、頭に疑問符を浮かべて忙しなく周囲を見回している姿に思わず、心のマーラ様がもっこり、もといほっこりしている。

 緑色の髪を、左側頭部でサイドテールにし、黄色のリボンで結んでおり、髪の色と同じ緑の瞳をしている。

 服は白のシャツに青いワンピースを身に着け、首には黄色いリボンを付けている。更には、その背中からは虫とも鳥ともつかない、縁のついた一対の羽が生えている。

 大ちゃん……大妖精は、妖精でありながら見識が高く人間並みの知力があり、その幼い見た目に似合わず大人びた考えを持っている。そのため、妖精達の中では保護者的な立場に置かれることも少なくないが、押しに弱いため、こうして他の妖精たちに押し切られて騒動に巻き込まれることもしばしば。

 基本的に良い娘で、悪い事はあんまり出来ないので、こうして一人だけお仕置き対象から外したのである。

 決して、大ちゃんの小さくて可愛らしいお尻の感触をこの膝で味わいたいとか、そんな下劣でイヤらしい事は一切考えていない。

 逃げられないように、お腹に手を回している上に、お腹をさすさすしてるけど、別に手触り良いとか、どうせなら上のお胸大ちゃんを揉み解したいとか、そんな某脳まみれの邪な考えなんて一切抱いていない。

 私、淑女ですから、ね?

 

「れ、霊夢さん?」

「ふふふ、大ちゃんは良い娘だな」

「ふぇぇぇ」

 

 気分はムツ○ロウさん。

 これでもかと頭をナデナデしつつ、愛情と恋情と元気と情熱と友情と希望と勇気とほんの少しの劣情を込めて、壊れない程度に力いっぱい抱きしめる。

 これまでの人生、私がこうすることで、喜ばぬ美少女はいなかった。

 現に見よ、大妖精の表情を、顔を真っ赤にしつつ、照れたように目をしきりにあちらこちらへと巡らせ、指をもじもじと動かしている。身体を密着させていることで、彼女の心臓の早鐘を打ったような心臓の鼓動もしっかりと伝わっているから間違いないね。……何処ぞのアゴ()とは格が違うのだよ、格が。

 はいはい、存分に撫で終わったことですし、お膝から下ろしましょうねー……ちょっとだけ残念そうにしている大ちゃん、可愛い。持ち帰りたい、あ、ここ私の家だ。

 

「全く、襲撃するならせめて声は出すな。声を出すのは二流、三流のすることだからな。……その点では、お前たちは優秀だな、サニー、ルナ、スター」

「あ、やっぱりバレてた」

「まぁ、そう上手くは行かないか」

「流石は霊夢、隙が全然ないわ」

 

 私の声に応え、背後より三つの影がその姿を表す。

 三人の少女だ。それぞれ赤、黄色、青を強調させた服を着込んでいる。名前を、赤がサニーミルク、黄色がルナチャイルド、青がスターサファイア。

 三人合わせて光の三妖精と評される妖精トリオ。それぞれが太陽光、月の光、星の光を司るという妖精であり、いつも三人で行動するほどに仲が良い。

 

 サニーミルクは日の光の妖精。

 オレンジのかかった金髪のセミロング。そして、その両側を赤いリボンで二房のツーサイドアップで括っている。瞳の色は青。背中には笹の葉っぱにも似た四枚の羽があり、チャーミングポイントは、無邪気で可愛らしい印象を強調させる八重歯である。……正直、萌える。

 服装は袖の大きな長袖ブラウスと赤のロングスカートを身に着け、頭の上には白のヘッドドレス、首元には黄色いリボンを巻いて、腰の方に赤い腰巻を着けている。

 日光を司る妖精だからなのか、表情豊かで明るい元気な娘。妖精らしく悪戯好きで、私を始めとした色んな人物に様々な悪戯を仕掛けている。

 悪戯と言っても、背後から背中をツンツンして、振り返ってもそこには誰もいませんよ? などというとても可愛らしいレベルの悪戯なので、害は全くない。

 私としては、サニーちゃんには、もう少しレベルを上げて貰って、大人の悪戯を所望したいところである。……本音を言えば、むしろ私が悪戯したい。悪戯したい、したいッ(真顔)。

 能力は『光の屈折を操る程度の能力』で、この力により、光を屈折させて自分の姿を隠したり、軽い幻を見せたりする事が出来る。……もしも私が彼女の能力を手に入れることが出来たなら、透明になって幻想郷中の美少女という美少女にあんなことやこんなことを白昼堂々から出来るのにね。誠に残念である。

 

 ルナチャイルドは月の光の妖精。

 亜麻色に近い金髪のくるくる縦ロールに、赤い瞳をしており、背中には上方に反り返った三日月型の羽が生えている。何よりも特徴的なのが、その栗みたいな口である。その造形から、我々、紳士淑女一同からは親しみと抑えきれない欲望を込めて「栗みたいな口しやがって」と呼ばれる。……何度あの口に突っ込んでみたいと、考えたことやら。

 何よりも、何よりも彼女の特徴だと言えるのが、そのジト目! ジ ト 目! Hooooo!……是非ともその目で見て罵倒して欲しい。「このっ変態っ!」って、涙を滲ませたジト目で罵倒して欲しい。

 服装は、白地に黒いリボンをふんだんにあしらったシックな装いのワンピースで、靴はスリッパのような物を履いている。……そんな靴を履いているからなのか、頻繁に転んだりする。可愛い。

  妖精らしく悪戯好きで子供っぽいが、サニーちゃんやスターちゃんに比べるとどことなく慎重な性格で、ツッコミ役に回ることが多い。

 三妖精の中で最も知的好奇心に溢れていて、妖精なのに新聞や本を好んで読んでいる。読書用の眼鏡まで持っているのだから筋金入りだろう。……金髪縦ロールジト目メガネ属性とか、最高やろ。

 コーヒーやふきのとう味噌などの苦みのあるものが好きで、ぬいぐるみや人形などの人工物を拾ったりと、普通の妖精とは明らかに違っている、ずれた部分がある。

 能力は『周りの音を消す程度の能力』で、読んで字の如く、自分の周囲の音を消すことが出来る。悪戯に最適な能力であり、誰かから隠れたり逃げたりする時にも重宝する。ルナちゃんはその能力での静かな悪戯(サイレントトリック)を得意としており、彼女の能力の餌食になった者は数知れず。また、消す音の範囲を自由に操ることが出来るため、誰かから隠れつつ仲間と悪戯の相談をしたりも出来る。……もしも私に彼女の能力があったなら、人気の無いところに美少女を引きずり込んで、真っ昼間から嬌声を上げさsげふんっげふんっ。

 

 スターサファイアは星の光の妖精。

 さらさらしている腰まである黒髪ロングの前髪ぱっつんヘアー、目はタレ気味で、瞳は黒。背中からはアゲハ蝶のような大きな羽が生えている。

 服装は青色のドレスを身にまとい、頭には青いリボンが着けられている。

 外見だけ見るならば、かなり清純な印象で、古き良き日本の少女と、言わんばかりであるが。妖精なので、その本質は悪戯好きで子供っぽく、サニーちゃんやルナちゃんとどっこいどっこい。

 他の二人と比べると、したたかな一面があり、機転もあるため、何度か私のお仕置きから逃れた経験もあったりする。……まぁ一回逃げられた程度で私が諦めるわけもなく、後日改めて割増でお仕置きをしてあげた。

 その能力は『動く物の気配を探る程度の能力』で、レーダーの様に、自分の周囲の生物の存在を探る事が出来る。……ぶっちゃけ、私の探査回路と似たような能力だ。

 私直々に能力を鍛え上げるのに手を貸したせいか、こと回避能力に関して言えば、この幻想郷でもトップレベルの技量を持つに至った。……自分に近づいてくる存在を感知して、ほぼ条件反射の域で回避する。ただそれだけであるが、単純であるが故にその技量の高さが際立つ。この私でもそれなりに真面目にしないと捉える事は出来ない。……まぁ、逃さないんだけどね?

 

 三人共、博麗神社の裏にある大木に住んでいて、ちょくちょく遊びに来る。

 毎度毎度飽きもせずに、私に悪戯を仕掛けようとあの手この手で頑張っているのだ。……今の所は、私の全戦全勝であるが、最近になってからは、徐々に怪しくなってきた。

 段々と能力の練度が上がってきたのか、最初は肉眼でも違和感を感じていたサニーちゃんの透明化も自然になってきたし、ルナちゃんの音消しも、乙女の秘密を知るために鍛え上げた私の聴力を持ってしても、最早何も聴き取ることが出来ない。スターちゃんに至っては、私が行動する前の一瞬の意思までも感じ取れるようになったのか、悪戯実行、撤退への判断力が的確になってきた。……流石の私でも油断していたら、隙を突かれてしまうかもしれない程だ。

 私の知る中でも、最も成長率の高い少女たちである。流石に妖精故に素の力は小さいが、三人で協力すれば自分よりも強大な大妖怪クラスの存在とでも渡り合えると予想している。

 

「慧音、これで全員か?」

「いや、それがな……」

 

 少し言い淀む慧音。……えぇーまだ増えるんでござるかぁ?

 まぁでもぉ? 私ってば最強、さ い き ょ う ですしぃ? どれだけ数を揃えようと関係なく相手できますしぃ? 何なら、幻想郷中の美少女が相手でも一向に構いませんしぃ?

 それに沢山美少女が増えると、私、とても嬉しい気持ちで一杯になっちゃいますしね。……弾幕を躱す度に翻るスカート、そこから垣間見える色とりどりの魅力的な三角形。風に靡く髪、僅かに香る少女たちの芳しき体臭、少女たちの美しい肢体が宙を舞い、それにともない揺れる胸。勿論、揺れないものもあるが、それはそれで素晴らしい物がある。ええ、本当に最高だと思いますよ。ゴチになります。

 

「邪魔するよ」

「お邪魔しまーす!」

「霊夢さん、お邪魔しますね!」

 

 返答を待たず、博麗神社に入ってきたのは、三人の女性。

 注連縄を背負った美女、目玉が付いている謎の帽子を被った幼女、どこか私に似ている巫女服を身に付けた少女である。

 三人合わせて守矢一家。ごく最近、この幻想郷に外の世界から引っ越してきた。

 外の世界での信仰が無くなり、この幻想郷に避難してきた。そのため、信仰を獲得するために日夜奮闘している。

 一回、信仰を欲するあまり、家の神社の譲渡やら、営業停止やらを要求してきたけど、ね? いくら美女や美少女、美幼女の願いでも、ね?……取り敢えず、三人共大変眼福でした。ありがとうございますね。あの時の幸せな光景は、永久に私の脳内にて奉らせて貰いますね。やったね! 神奈子ちゃん! 信仰獲得できたよ!

 

 神奈子ちゃんは、フルネームを八坂神奈子。

 髪の色は紫で、サイドが左右に広がった、非常にボリューミーなセミロング。瞳は茶色に近い赤眼。そして背中に、複数の紙垂を取り付けた、大きな注連縄を輪っか状にしたものを装着している。

 服装は、全体的に赤いシルエットをしており、上着は赤色の半袖、袖口は金属の留め具で留めている。上着の下には、白色のゆったりした長袖の服を着用しており、小さな注連縄が首元、白い長袖上着の袖、腰回り、足首、とあちこちに巻かれている。

 スカートは、臙脂色のロングスカートで、裾は赤色に分かれ、梅の花のような模様が描かれている。 足は、裸足に草履を履いている。……顕になっているお御足が大変色っぽくてね。正直舐め回したいわ。

 胸には黒い鏡……真澄(ます)の鏡と呼ばれる諏訪大社の宝物。頭には冠のようにした注連縄を頭に付け、右側には、赤い楓と銀杏の葉の飾りが付いているのが特徴的だ。

 ただでさえ豪奢な見た目なのに、戦闘時には、四本の御柱までも装備する。……それで何故あんなに動き回れるのか理解に苦しむ、ええい! 諏訪大社の風神は化物か!

 性格は基本的にフランクで堅苦しい雰囲気はあまり好まない。お祭り大好きで、博麗神社で開催されている宴会には毎回と言っても良い程に参加している。

 だけど、締めるところではきちんと締めるので、その際には神らしく、威厳たっぷりの口調に変わったりする。

 後、本人に自覚有るのかは分からないけど、隠れドMである。お仕置きの際に、一番悦んで、欲しがっていたからから間違いない。

 能力は『(けん)を創造する程度の能力』で、乾……すなわち『天』を自由自在に創り操ることが出来る。風神様とさえ称される神奈子ちゃんのその能力は平たく言えば天候操作である。雨だろうと、風だろうと、雷だろうと自由自在に生み出し、操作する絶大な力を行使できる。 

 大自然である天候を操るその力、まさに神のみに許された能力と言える。……能力をフル活用し始めたら、近づくことは難しいだろう。

 

 諏訪子ちゃんは、フルネームを洩矢諏訪子。

 金髪のショートボブ。瞳の色は基本的には水色であるが、興奮すると黄金に輝く。見た目は完全にロリであるが、言葉の言い回しや、行動の節々から年季と確かな威厳を感じさせるため、対面した者に下に見られることはない。……初対面で強烈なハグをかました私のセリフじゃないけどね。

 服装は青と白を基調とした、壺装束と呼ばれる女性の外出時の格好をしている。更に、足には白のニーソックスを履いており、その頭にはまるで蛙の様に二つの目玉が付いた特殊な帽子を被っている。また服の各所には鳥獣戯画の蛙が描かれている。

 普段は温厚かつお気楽な雰囲気で、行動もどことなく見た目相応で子供っぽいが、惚けることが結構多く、何を考えているのかその心中を窺い知ることは難しい。

 先に述べた通りに日本の古き神であり、語るも恐ろしい祟り神、その元締めで、土着神の頂点に君臨する最強クラスの神格である。……暗黒ロリとか言ってはいけない。萌えるけども。

 同じ守矢神社で祀られている神奈子ちゃんとは大の仲良しで、「ケンカするほど仲が良い」関係である。二人で悪ふざけして早苗を困らせたりしている光景はデフォである。

 実は早苗の祖先であるため、早苗を猫可愛がりしている。……端から見ると、お姉さんに構ってもらいたい妹の図にしか見えない。おいおい、可愛いな土着神。

 守矢神社に訪れたら、必ずと言っても良いくらいに突撃してくるので、私のお膝の上は常に彼女で塞がっていたりする。……神様の威厳は何処?

 能力は『(こん)を創造する程度の能力』で、坤……つまり大地を生み出し、操る力である。

 岩石、土、水、マグマなどを無から創造、操作などはお茶の子さいさいでやってのけ、生命の創造すらやってのける絶大な力を持っている。この幻想郷広しと言えども、生命の創造などという規格外の力を使えるのは諏訪子ちゃんだけだろう。

 私でも一人で生命創造するのは無理だ。二人なら出来るかもだけども。……やっぱめしべとめしべでは無理かな?

 

 早苗は、フルネームを東風谷早苗。

 胸のところまで伸ばされた緑のロングヘアー、その髪の左側を一房髪留めでまとめて、前の方に垂らしている。瞳の色は髪よりも濃ゆい深緑。年齢の割りに発育が良く。たわわに実った美味しそうな果実が二つ、その胸にある。……吸いてぇ(真顔)。

 白地に青の縁取りがされた上着、水玉や御幣のような模様の書かれた青いスカートを着こなしている。原作の博麗霊夢が着ている巫女装束とデザインが共通していて、特徴的な脇出しスタイルまで同じ。……早苗の場合は、その隙間から、豊かに実った部分がこんにちはしちゃうから色っぽさが増している。

 頭には蛙の髪飾り、髪には白蛇の髪飾りを身に着けており、それぞれ蛙は諏訪子ちゃん、白蛇は神奈子ちゃんの象徴としているものである。こんな些細な部分からでも、守矢一家の繋がりの深さが窺い知れる。……髪飾りから膨大な神力が感じ取れるあたり、神奈子ちゃんと諏訪子ちゃんは当分の間、子離れ出来そうにないね。

 素直で責任感が強く、純粋で他人に影響されやすい。二柱の神の元で、修行してきた影響か、真面目で自信家であるが、惚けたところもある。社交的で、誰とでもすぐに仲良くなれるところが強み。……私ともこれからもっと仲良く(意味深)なろうね!

 元々は外の世界、所謂常識で塗り固められた世界の住人だったせいか、この幻想郷の感覚に未だ慣れていない。倫理観などが特にそう。自分の意識と、幻想郷のルールとの差異に四苦八苦している様をよく見かける。

 最近になって「この幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね!」などと迷言を言い放ち、突飛な行動が多くなってきた。……前の宴会で神奈子ちゃん「早苗が暴走しててお腹痛い」と愚痴られた。普段、振り回す側なのにね。可哀想にね。今度永琳あたりに胃薬を処方してもらおう。神に効くかは分からないけど、気持ち的には楽になるやろ。

 能力は『奇跡を起こす程度の能力』で、本来は神奈子ちゃんと諏訪子ちゃんの力を借りて発動する能力であり、天・地・海すべてを操ることができるとんでもない代物。しかし、力を奮っている内に、何故か早苗自身に信仰が集まってしまい、人として生きる身でありながら神の力を得るに至ってしまった。所謂現人神になってしまった、というわけである。……さなパイは尊いからね、仕方ないね。そりゃ信仰したくもなるよ(性欲馬鹿)。

 

 三人共、違った属性を持った美少女で大変私は満足している。

 大人の魅力と、よいてーこーしょーの魅力を醸し出す、神奈子様。

 大人の魅力を醸し出しつつ、姿は幼女であるという背徳的な魅力を醸し出す、諏訪子様。

 特に早苗という巫女仲間の後輩が増えて、私は感謝感激雨あられって感じだよ。年齢も近くて接しやすいし、何よりもおっぱいがデカイ、何よりもおっぱいがデカイ。大事なことなので二回言っておいた。お仕置きの時みたいに、また、さなパイ滅茶苦茶揉みしだきたいものである、ぐへへへ。

 

「お前たちまで参加するとは珍しいな。こんな事には興味はない、と思っていたのだが……」

「私達もやられっぱなしは性に合わないって事さ。……今日は、我ら守矢の神としての威厳をたっぷりと堪能させるつもりだ」

「神様だってのに、私も神奈子もいっぱい修行したんだからね! 前と同じだと思ったら……ケロケロ、すぐに終わらせちゃうよ?」

「ほう? それはそれはーー」

「「っ!?」」

 

ーー楽しみだ。

 

 神としての威厳を出し、その身体から強力な神力を放出させる神奈子ちゃんと諏訪子ちゃんの二柱の神の姿に、思わず全身から霊力を迸らせてしまう。

 最近はまともな戦いなんてあんまり出来ていないからね。仕方ないね。自分でも笑顔になっているって分かるくらい頬が吊り上がっちゃってるよ。

 

「ちょぉぉぉっと待ったっ! 私を置いて三人だけで盛り上がらないで下さいよっ!?」

「何だ早苗、居たのか?」

「おや、早苗。今日は留守番している筈では?」

「早苗、ごーほーむ」

「霊夢さんも神奈子様も諏訪子様も酷い! 霊夢さん、神奈子様達と入ってきたの見てたじゃないですか!? 神奈子様、一緒に来ましたよね!? 諏訪子様は覚えたての英語を使って帰れって言わないで下さい!」

 

 擬音にするなら、むきぃぃぃだろうか? 早苗は地団駄を踏み、腕をブンブン振り回しながら「ひぃぃぃどぉぉぉいぃぃぃでぇぇぇすぅぅぅ!」と騒いでいる。……ウザ可愛い。

 やはり、早苗と接する時は意地悪するに限る。涙目で騒いでいる姿は本当に可愛らしい。神奈子ちゃんと諏訪子ちゃんも私と同じ気持ちなのか、ニヤニヤが抑えられていない様子だ。

 

「私だって、沢山修行したんですからね! 霊夢さんなんてギッタンギッタンにしてやるんですからね!」

「フッ、ギッタンギッタンか。……そうかそうか、早苗は私をギッタンギッタンにするんだな」

「ブフッ! ギッタンギッタン……早苗はまだまだ子供だねぇ」

「むしろ、あざといよねぇー」

「ぐぬぬぬ!」

 

 怒れば怒るだけ、幼児退行していく早苗マジ天使。

 羞恥で顔を真っ赤に染め、目の端に涙を溜めて、プルプルと震えている。……泣く一歩手前ってところか、別に泣いてる姿も可愛いから良いんだけど、私の趣味じゃないから、意地悪はここまでだな。

 ニヤニヤしている神様二柱に、アイコンタクトで意地悪終了の合図を送りつける。……ニヤけつつグッドサインを返す神様共は、かなり俗世に染まりきっていると思うついこの頃。はいはい、また今度ね。

 

「お前の反応が可愛くてな、私も神奈子達もついつい意地悪したくなってしまうんだ」

「そんなぁ、もう意地悪しないでくださいよぉ」

「ふふふ、すまないすまない、今日はもう意地悪しないよ。……早苗、お前は本当に可愛い奴だな」

 

 ほーらほら、ごめんねー。博麗の巫女反省してるから許してねー。

 正面から、謝意と労りを込めて、優しくハグして、頭をナデナデしてあげる。お腹に当たるさなパイの感触が大変よろしい。マシュマロみたいに柔らかく、グニグニと形を変えている。

 お返しに私の胸に顔を埋める権利をあげようじゃないか、早苗の顔をゆっくりと私の胸の谷間に埋めてあげる。……ほーれほれほれ、柔らかいやろ? モチモチしてるやろ? 気持ち良いやろ?

 大きさ、ハリ、柔らかさ、ありとあらゆる全てを、じっくりと育成した最高峰の胸だからな、どんな相手だろうと、一瞬で堕落させる事が出来ると、自負しているよ。

 

「うぅ……やっぱり、意地悪ですよぉ」

 

 早苗もまた、私の魔乳の魅力に囚われ、トロンッとした目で、胸に顔を埋めながら、上目遣いに私を見ている。……フッ、堕ちたな。

 これで私の魔乳の犠牲になった美少女の数は二十三人目だ。お前もおっぱいフェチにしてやろうかぁ!

 

 早苗も落ち着かせたことだし、これで全員……なわけないかぁ。

 頭上から気配を感じ取る。よく知っている気配だ。……そうだよね、こんな面白そうな祭りが始まろうって時に、あの娘が黙って見過ごすわけないよねー、知ってた知ってた。

 

「話は聞かせて貰ったぁぁぁ! 私も混ぜろぉぉぉ!」

 

 突如、天井から姿を現したのは立派な角を持った鬼の少女。

 目を輝かせて登場したのは、我が博麗神社のすぐ隣に住居を構えている鬼幼女、萃香ちゃんである。

 直前まで、存在に気づけなかった。……ああ、なるほどね。自分の気配と言うか、存在そのものを霧散させ博麗神社に分散させることで、私を欺いたのか。

 彼女が起こした異変、初めて相対したあの時とは比べ物にならないくらいに、能力の技量が上がっている。その上、妖力の総量も跳ね上がっているな。

 

「異変の時のりべんじまっちってやつだ!」

「良いだろう萃香、お前を含めたこの場に集まっている全員、まとめて相手をしてやる。……安心しろ、怪我はしないように優しく倒してやる」

 

 カッチーンと頭にきた様子で、慧音を除いた全員が、顔をムッとさせている。……うんうん、これなら皆、全力全開で向かってきてくれることだろう。

 

 数というのは、良くも悪くも油断を招くものだ。

 集団で行動している故の安心感、自分が何かミスを起こしても、誰かがフォローしてくれるだろう、という無意識な甘えが表面化しやすい。皆本気で掛かっては来るだろう、しかし本気なだけで全力ではないし、油断もするだろう。

 この私を相手にして、全力を出さず、油断する。それは、相手が美少女だとしても、許しがたい。……思わずお仕置きの名目の元に、ぐちゃぐちゃのどろどろにして壊してやりたいくらいにはね。

 ごく一部の例外を除けば、私を脅かせる者などいないのだ。だからこそ、君たちには全力を出してもらわなければ意味はない、私も楽しくないし、何よりも君たちのためにならないからね。

 

「話は決まったみたいだな。……では、場所は霧の湖にしようか。あそこなら回りの被害をあまり考えなくても、大丈夫だろう」

 

 慧音先導の元、霧の湖へを向かう、私達一行。

 正直なところ、楽しみではある。妖精が、妖怪が、神が、人間が、徒党を組んで私と戦おうというのだ。

 どんな手段で、どんな作戦で、どんな連携で、私を追い詰めてくれるのか、非常に興味がある。……幽香と戦った時の並みの高揚感を得られたら嬉しいところだ。

 

「双方前へ!……皆、準備はいいか?」

「問題ないよ、慧音」

「……覚悟してくださいよ、霊夢さん!」

「……ギッタンギッタン」

「〜〜〜ッ!?」

 

 何だかんだ、道中何事もなく霧の湖へと辿り着くことができた。

 お日様も出ているし、どうせならこのまんま、模擬戦なんてせずに、皆でピクニックしたい気分である。……さっきの挑発のせいで、皆殺気立ってるから不可能だけどもね。

 慧音だけを残して、皆空中を舞い。私と対立する形で向かい合う。後、ダメ出しに挑発したけど許してね早苗、今夜は満足するまで胸枕を堪能させてあげるから。

 

「ルールは簡単だ、どんな手段を使ってもいいから、相手を行動不能にすればいい。ただし殺傷行為だけは禁止する。ではーー」

 

ーー始め!

 

 慧音の声と共に、一斉にこっちに向かって飛び出してくる。

 チルノを中心とした妖精たちが、守矢の神々と早苗が、鬼の萃香とルーミアがそれぞれ力を極限まで高めて、突っ込んでくる。……楽しめそうだ。

 

ーーさぁ、始めようか。

 

 私とお前たちとの模擬戦(デート)をな!

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 寺子屋にて教師を務めているワーハクタク、上白沢慧音は、本日何度目になるか分からない溜息を吐いていた。

 彼女の溜息の原因は、視界の先で行われている模擬戦。

 一対複数による模擬戦だ。普通に考えれば勝負になる筈がない。一人を複数人が囲んで、一方的に叩きのめして終わるだろう。ではーー目の前の模擬戦はどうだろうか?

 

「どうした? この程度なのか? お前たちの力は……」

 

 見目麗しき少女が薄く嗤う。

 劣勢なのは当然一人の方……ではなく、複数人いる方だった。

 無傷で余裕を露わにしている巫女服の少女。そして、その周りをボロボロの格好で取り囲む、息を乱している少女たち。

 

 一人の少女は巫女だ。この幻想郷で最も有名な存在、博麗の巫女。その名を博麗霊夢という。

 ただ空中で佇んで不敵な笑みを浮かべているだけだというのに、その身体から、押し潰されそうな程に強烈な威圧感を溢れ出させている。

 模擬戦に参加せず、遠くから観戦しているだけの慧音ですら、その威圧に当てられ、無意識の内に身体が一歩、また一歩と後退し、震えが止まらない。

 本能が叫んでいるのだ。目の前の存在の危険性を、敵対することの愚かしさを、必死になって理性に訴えかけているのだ。

 それはまるで、被捕食者が捕食者に見つかった時の様な、逃れられようのない災厄を目前にしてしまったかの様な、どうしようもない絶望的な状況、それの再現に近い。

 これが博麗の巫女。幻想郷最強と呼ばれ、数多の神魔霊獣から恐れられている人間。

 

「そうだ、分かり切っていたことじゃないか」

 

 慧音にとって、目の前に広がっている光景は不思議な事ではなかった。

 博麗霊夢という人間が規格外であるのは、今に始まったことではない。心・技・体の全てで他の追随を許さず、あらゆる存在を超越している幻想郷においての伝説。

 数多の異変をその身一つで完璧に解決し、幻想郷に仇をなす存在達を完膚なきまでに叩きのめしてきた、恐るべき人間なのだ。

 どれほど数を揃えようが、どれだけ力ある存在を並び立てようが、彼女の前では塵に等しい。突出した個による暴力は、数の暴力を凌ぐ、それを体現できる常識外れの怪物(人間)なのだ。

 

「恐いな、霊夢。私はお前が心底恐くて堪らないよ」

 

 恐いからといって、嫌っているというわけではない。むしろ、慧音個人としては霊夢の事は好ましく思っている。

 自分の仕事を手伝ってもくれるし、自分と同じかそれ以上に、人里の人間達を慈しみ、守ってくれている。大切な友人である妹紅の事も気に掛けてくれる。そんな霊夢を好ましく思うのは、むしろ当然とも言えた。

 だが、慧音にとって、霊夢は好ましいが、同時に恐ろしい存在でもあった。

 霊夢の性格は知っている。誰よりも幻想郷を愛し、誰よりも幻想郷に住まう存在達を慈しんでいる心優しき少女だ。

 困っている人は見過ごせない。誰にでも手を差し伸べ、最後まで寄り添うことが出来る……そんな、とても情の深い娘だ。

 だからこそ、慧音はその優しい霊夢が、友人と思ってしまった人に対して何処までも親身になれる霊夢の事が、恐ろしく思えた。

 

 慧音は以前、妖怪の集団に徹底的に痛めつけられた経験がある。

 人里の周辺に出現した妖怪の集団。真っ昼間だと言うのに、その尋常じゃない数で、人里に襲撃を掛けようとしていたのだ。

 妖怪の頭目は、それなりに名の知れた妖怪だった。幻想郷の名だたる大妖怪には及ばないまでも、それに準ずる程度の力を持った妖怪だった。

 慧音はそれを防ぐために、一人立ち向かい……敗北した。夜だったら、せめて満月の出ている夜だったならば、もう少しは抵抗できた。しかし、これは太陽が輝く昼の出来事、人間としての力しか使えない慧音では、下級の妖怪や、中級の妖怪はともかく、その頭目である強力な妖怪の相手は無理があったのだ。

 

 全身に傷を作り、手足を折られ、妖怪共に地面に押さえつけられる。そして、今まさに止めを刺されるという刹那ーー霊夢が現れた。

 慧音を押さえつけていた妖怪を一瞬の内に引き裂いて殺し、優しく慧音を抱き上げ、安全地帯に運んだ。

 その時の霊夢の表情を、慧音は今も鮮明に思い出せる。慧音を心配そうに労る表情をしていながら、その内側に見え隠れする感情は暴力的な物だった、霊夢の内側から漏れ出ているその感情が、慧音の目にハッキリと映って見えた。

 

ーー殺意。

 

 あるいは憎悪。黒い黒いドス黒い漆黒の感情が、霊夢の内側から漏れ出ていた。霊力を伴って辺りに放出される黒い感情は、地面を叩き、天を衝く。

 あの光景を見た時、慧音は自身の身体を襲う痛みすら忘れて呆然とした。

 目の前にいる霊夢が、いつも優しい笑顔を浮かべているあの霊夢が、コレほど禍々しい、恐ろしいモノに変わってしまっている。……まるで、知らない誰かになってしまったように。

 黒い感情が向かう先にいるのは、慧音を痛めつけていた妖怪達だ。

 妖怪たちは固まっていた。蛇に睨まれてしまった蛙のように、身体が固まって動くことが出来ない。動くどころか、霊夢が発する殺意に飲まれ、死に絶える者すらいた。

 傷ついた慧音の頭を何度か優しく、壊れ物を扱うように優しく撫で付け、結界で保護した後ーー殺戮が始まった。

 

 霊夢が動く度に、誰かの身体が引き千切れ、砕かれ、抉り取られる。

 霊夢の手が、足が、妖怪たちの身体を破壊し、破壊し、破壊し、破壊し、破壊し尽くしていく。

 しかも、どういうわけか、妖怪たちが感じる痛みは、通常よりも大きかった。

 ほんの少し身体を切られただけで、まるで身体を真っ二つにされたかのような、痛みが襲いかかる。

 ほんの少し頭を打たれただけで、まるでその直接脳みそをかき回されたかのような、衝撃的な痛みが襲ってくる。

 霊夢の手による痛覚の増大。それにより通常よりも大きな痛みを感じやすくなってしまったのである。

 謝ろうとも、泣き叫ぼうとも、殺してくれと懇願されても、精神が折れ、頭が可笑しくなっていようとも、霊夢は構わず妖怪たちを甚振り続けた。

 壊れたように「よくもっよくもっよくもよくもよくもよくもよくも」と小さく呟き続けながら、何度も、何度も、何度も。

 声を上げる妖怪が一匹もいなくなる、その最後まで。

 

 殺戮を終えた後、慧音の元に戻った霊夢は「安心しろ慧音、お前を苦しめた奴らは、一匹残さずいなくなったぞ」と何時もと変わらない優しい笑顔を浮かべて言い放った。

 その笑顔が、殺しを行った後に浮かべたその笑顔が、手を血で染め上げ、屍の山を背後に笑いかけているその姿が、どうしようもなく歪に思えた。

 霊夢は優しい。しかし、その優しさは何処か危うさを孕んでいる。霊夢の優しさは、彼女が友誼を結んだ相手にのみ、より強く発揮される。

 何が彼女をそうさせているのかは知らないが、嫌われていようと、邪険にされていようと、ただただ親身に、いっそ健気に思えるほどに友人に尽くすのが、彼女の在り方だ。

 そんな霊夢だからこそ、自分の友人を傷つけられることを極端に嫌う。傷つけられないように、あらゆる手段を講じて見守るし、簡単に傷付いてしまわないように、修行を課して力を付けさせる。

 そして、もしも傷つけられてしまった場合、報復する。全力全開で、報復するのだ。殺すだけでは足りない、自分から死にたいと願うまで、甚振り、甚振り、甚振り、甚振り……この世の地獄をこれでもかとその身体に刻み込み、極限の恐怖を味わわせて殺す。

 

 慧音とて、友人が害を受けたら怒るし、相手を殴ってやりたい、とは思いはする。それでもあそこまで、あそこまでの暴虐の限りを尽くして報復することなど、とてもではないが出来はしない。

 知性ある生き物には、どうしても倫理観という物が付属してしまうものだ。その倫理観に則って、人を傷つけてしまう事に躊躇いを、自分の手が血に染まるのを恐れるのが普通だ。

 しかし、霊夢は、その倫理観が薄い。いや、皆無と言ってもいいかもしれない。そのため、報復に上限というものが無いのだ。自分の友、自分が守る対象、それ以外の存在に対しては、何処までも冷徹に、残酷に、理不尽に振る舞うことが出来る。

 例え掠り傷程度でも、少しの罵倒でも、肉体にしろ、精神にしろ、少しでも自身にとっての大切な存在が傷つけられたら、それだけで相手を殺すだけの理由になる。……それが、博麗霊夢の狂気。

 

 その底なしの狂気が、優しさの裏側に見え隠れする悍ましい狂気が恐かった。何故ならーー

 

「恐いんだよ、霊夢」

 

ーーいつかその狂気が、お前を壊してしまいそうで。

 

 あの優しさが、私達を包み込んでくれるあの笑顔が、消えてしまいそうで。

 

 今回の模擬戦を企画したのは慧音だ。

 遊びたい盛りのチルノを上手く焚き付け、他の面々も話に乗っかるように上手く誘導を掛けた。道中で守矢神社の早苗も引き込み、異変の時の敗北の話などをチラつかせ、二柱の神々までも焚き付けた。

 話をするのに、博麗神社を選んだのも、神社の近くに居を構える鬼を引きずり出すためである。上手く誘導が嵌まり、こうして霊夢との模擬戦をさせることが出来た。

 全ては霊夢に思い知らせるため、自分たちがただ守られるだけの存在ではないと、霊夢に知ってもらうために、それだけのために、この模擬戦を企画した。

 霊夢の狂気の根底にあるのは、他者……それも霊夢自身にとって、友と呼ぶべき者たちに対する依存だ。そして、その依存は、友に対する心配なのだ。

 だからこそ、慧音は考えた。どうすれば、霊夢の依存を薄めることが出来るのか、彼女の心配を少しでも軽くしてあげるにはどうすれば良いのか?……考えて、考えて、考えて、思い至った。

 この幻想郷で唯一、霊夢の過保護の対象から外れている人物がいる。その人物とはーー風見幽香。

 『幻想郷最強の妖怪』の名を欲しいままにしている。この幻想郷の数ある実力者達の中でも頭一つ二つ分くらいは軽く飛び抜けている強者。

 あの霊夢ですら、手を抜けば、例え自分であってもただでは済まないと言ってしまう程の本物の実力者。

 

 ここで慧音は確信した。

 霊夢の狂気を薄めるには、私達が強くなる他ない、と。あの風見幽香の様に、霊夢が「守る必要がない」と思えるくらいに実力を認めさせれば、霊夢の心配もなくなるのではないか、と。

 だからこその模擬戦なのだ。

 

 慧音は知っている。

 チルノは自分の能力の限界値を高めるために、頭が足りないなりに頑張っていた。

 ルーミアは本来強力で応用力の幅が広い自身の能力を、自由自在に操れるように、操作の練習を。

 大妖精は、瞬間移動の力をより早く、より正確に繰り出せるように、何度も反復練習を。

 三月精は、それぞれの能力を高めつつ、三人での連携を重点的に。

 あの守矢の神々も早苗も、鬼の萃香ですら、霊夢に実力を認めさせるために、勝つために修行に励んでいた。

 

 膠着状態が終わり、再度両者がぶつかり合う。

 それは先程の様に一方的な展開になりはしなかった、霊夢に勝つために全力で、認めさせるために力を振り絞って、あらゆる手を使って戦ってる。

 

ーーどうか頑張って欲しい。

 

 慧音は霊夢と戦っている少女達に願う。

 今回、自分は審判役であるために参加出来なかったが、どうか霊夢に少しでも実力を示して欲しい。

 

ーー認めて欲しい。

 

 そして、何よりも霊夢に願う。

 守られるだけの非力な存在じゃないんだ、と。自分たちだって肩を並べられるんだ、と。分かって欲しい。

 

「……霊夢っ!」

 

ーー絶対にお前を壊させはしない!

 

 人里の守護者は、吠え願う。愛する友を、その心を守るため。

 

「……(やだ、慧音せんせーがすっごい熱い目で私を見ているわ! もしかしてあちきの勇姿に惚れた!? 惚れちゃったのね!?……んっ、ふぅ、危ない危ない、後もう少しで達するとこだった。霊夢のラブスプラッシュが溢れ出るところだった)」

 

 なお、本人はただのガチ百合変態アホの模様。

 戦っているさなかだと言うのに、慧音の視線を感じ取り、その視線に含まれる想いを下衆な妄想で勘違いし、微妙に身体……特に下半身の方をガタガタと震わせていた。

 




かくたのぉ!

前編はどうも人物紹介とかが中心になっていた感じがする。
読みにくかったらゴメンね。許してくださいよ。

何となく、色々と弄った感がすごかった気がするんだけど、どうでしたかね?
どんな感想が来るのか戦々恐々としております。

取り敢えず、後編も投稿しておくので宜しくね。

まぁ、何はともあれ次話の投稿まで、さらばっ!
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