東方博麗伝説   作:最後の春巻き(チーズ入り)

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連投なんやで?


巫女、戦い【後】

「ちくしょー! 何でアタイのこーげきが当たらないのよ!」

「ち、チルノちゃん、闇雲に攻撃しても当たらないと思うんだけど?」

「それどころか、姿消しても見つかるし」

「音を消しても捕まるし」

「動きが速すぎて、私の感知も意味がないし」

「「「ほんと、出鱈目だよねー」」」

 

 何度氷の弾幕を放っても、一度たりとも掠らせることが出来ず、チルノは地団駄を踏んで悔しがる。能力を活かして、周囲の空間ごと思いっ切り凍らせても、いつの間にやら距離を離されて全くダメージを与えることは出来ない。それどころか、チルノの氷が周りの味方の邪魔をしている始末である。

 チルノを宥めている大妖精も、言葉の割りには少し悔しそうにして霊夢を見ている。大妖精には転移能力がある。それはあまり遠い距離は跳べず、自分の視界に入っている場所にしか跳べないが、それでも戦闘などで使用すれば、相手の意表を簡単に衝くことが出来るほどに便利な力だ。なのに、その転移が霊夢には一切通用しない、背後をとっても、気づけば、逆に背後に立たれている。

 サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアも、また自分たちの連携が全く通用しない霊夢に、ぼやいていた。

 サニーミルクが光の屈折を利用して、この場にいる妖精組全員の姿を消しても霊夢の目を誤魔化すことが出来ず、簡単に補足されてしまう。ならばと、ルナチャイルドが霊夢の周囲にある音を消しても、嘘みたいに効果がない。スターサファイアの感知能力も、そもそもの圧倒的な身体能力の差などで追いつくことが出来なかった。

 

「出鱈目も、アタリメもないのよ! 絶対に当ててやるんだから! 行くよ、大ちゃん!」

「ま、待ってよ、チルノちゃん!」

 

 うおぉぉぉと威勢良く声を上げながら、飛び出していくチルノ。そして、その後を慌てて追い掛ける大妖精。

 

「チルノだけじゃダメだ、私達も行くよ!」

「取り敢えず、霊夢の周囲以外の音も全部消してみるよ」

「私はもっと集中して、霊夢が動く前に感知してみるわ」

「「「突撃ぃぃぃ!」」」

 

 三月精も二人の後を追い掛けるように、霊夢に向かって飛んでいく。

 無知であるが故の行動力、その中心となるチルノのお陰で、行動力は他の誰の追随を許さない。何度も何度も向かっていき、何度も何度も吹き飛ばされるが、ただの一度も諦めずに突っ込んでいく。

 

「……ふふふ、掛かってこい。何度でも相手をしてあげよう(イエーイ! 幼女! 幼女! 妖精幼女! 服とかボロボロで色んなところが、見えるッ! 見えるぞッ! 私にもあの楽園が見えるッ!)」

 

 なお、相対している霊夢(変態巫女)は、表面上は覇王モードという名の強化外骨格で取り繕っているが、内面はかなりの勢いで邪に染まっていたりする。

 模擬戦である故に、極限まで手を抜き、手刀や足刀で相手の服のみを狙い、切り刻み少しずつ少しずつボロボロにして、素肌を晒していく、という遊びをしていた。

 妖精組は、何度も突っ込んではあしらわれているために、かなり際どいところまで服を剥がされていた。

 チルノは胸から下腹部までに掛けての布が存在しない。つまり、彼女の幼い胸部が剥き出しにされており、世のロで始まる方々が、歓喜する事態に陥っていた。

 大妖精は、この中では比較的被害は少ないが、スカートが綺麗にダメージ加工されているために、動き回る度に、その隙間から彼女のストライプ柄の下着が垣間見える。

 サニーミルクは、そのロングスカートの丈が最早ミニスカート並にしか残っていない上に、赤い腹巻きも霊夢に奪い取られている。

 ルナチャイルドは、その身に付けているシックなワンピースがボロボロで、もうネグリジェにしか見えないほどに加工されていた。

 スターサファイアは、青色のドレスがズタズタにされてはいるが、比較的原型を保っている。しかし、何故かスカート部分の被害が大きく、下半身の純白の下着が丸出しになってしまっている。

 霊夢は嗤う。さぁ、このまま何度も向かってこいと、嗤う。そうすれば、最後まで剥けるからである。そして、剥き終わったら、模擬戦の名目の元に、お仕置き用の全力マッサージや、感度を数百倍まで引き上げたりしよう。……などという控えめに言ってもかなりの下衆な事を考えていた。

 

 

ーーー

 

 

「あーうー! 分かってたけど! 分かってたけどっ!……いくら何でも強過ぎないっ!?」

「げげげ幻想郷最強の人間は伊達ではない、とととという事なんだろう……神の力を纏わせた御柱を、真っ向から拳で打ち砕くとは思わなかったががががが」

「神奈子様、神奈子様、声震えてます」

「そっそう言う早苗は、足元ガクブルじゃないか……まさかチビったわけじゃないだろうね?」

「そっそそそ、そんなわけないじゃないですかっ!……すこーしだけ、本当にすこーしだけ危なかったですけども」

 

 別のところでは守矢一家も、霊夢の尋常ではない強さに辟易していた。

 諏訪子が大地を操作し、祟りを込めた蛇を創造し、襲いかからせても、拳のひと振り、蹴りのひと薙ぎで一蹴し、込められていた祟りの力は、その身から垂れ流されている膨大な霊力に押し潰された。

 神奈子が天候を操作し、風を起こし、雷雨を呼び込んで、けしかけても、身じろぎ一つせず。それどころか、雷の直撃を受けて、一切のダメージを負わない滅茶苦茶っぷりを披露した。

 挙句、早苗がその奇跡の力によって、特大の隕石を呼び込んでも、簡単に結界で止められ、正拳の一撃で粉々の木っ端微塵に粉砕された。……早苗も大概ではあるが、それを容易く凌駕する博麗の巫女に、二柱の神は最早呆れ果てて溜息すら出ない。

 

「取り敢えず、早苗を中心にして、私達はその補助ってところが妥当かね?……人間恐い」

「もう、それしかないよねー。私達の権能、あんまり効いているように見えないし。早苗の力はある程度は効果あるみたいだけど……本当、人間恐い」

 

 ジト目で、早苗の方を見やる二人。

 霊夢の圧倒的な武力の前に、なすすべもなく自分たちが吹き飛ばされたと言うのにも関わらず、この早苗は霊夢と真正面から戦っていたのだ。

 小細工など一切使わず、真正面から。隕石をぶつけようとしたり、その手に持った払い棒を巨大化させて、殴りつけたり。

 

「神奈子様も諏訪子様も、そんな化物を見る目で私を見ないでくださいよ!?」

「普通の人間は隕石を呼び込んだり、奇跡とか言って、攻撃避けたりとかダメージを受けなかったりだとかしないんだけどね」

「何か、霊夢と向き合って戦っている時だけ、微妙に人が変わっているし……「ミラクル! 偉大なる我が力!」って何なのさ?」

 

 少なくとも神奈子と諏訪子の二人の目には、人以外のナニかにしか見えなかった。霊夢といい、早苗といい、この幻想郷には、化物みたいな人間が多すぎて困る。これでは神としての立場が無いではないか。

 本当に人間恐い。二人が若干の恐怖と呆れが混じった溜息を吐いてしまうのも無理がないことだろう。

 

「霊夢さんに気圧されないように頑張ってるんですよ!……と、悪ふざけはこの辺で、そろそろ、次に行くとしましょうか? この私の力を霊夢さんに魅せつけておかないといけませんので」

「れ、霊夢のせいで、早苗が、純粋だった早苗が……うっ!? はぁはぁ、お腹がっお腹が痛くなってきたっ!」

「大体霊夢が悪い、私の可愛い早苗が意味不明になったのも、神奈子が実は今の状況に興奮していたりだとか、私が滅茶苦茶してる霊夢の事を割りと嫌いじゃない、逆に好ましく思っていたりだとか、全部、全部霊夢が悪いんだよ。……責任取らせてやる、絶対に許さない。あらゆる手段を使っても、絶対に責任取らせてやる、絶対に私達の、守矢のモノにしてやる」

 

 話している途中から、いきなり豹変したように、口調が傲慢が隠し切れない丁寧口調に変わっている早苗。

 そんな早苗の変わり様を見て、痛そうにお腹を抑えている神奈子。……心無しか、頬を紅潮させて、息遣いを乱している。

 そして、残った諏訪子はそのくりくりした愛らしい瞳からハイライトを消し。全身から強大な祟りと神力を溢れ出させ、ぶつぶつとおっかない企みを呟き続けている。

 彼女たちの状態、その全てに博麗の巫女が関わっているのだと言うから驚きである。

 その肝心の巫女はというとーー

 

「……権能だろうと、何だろうと、使えるもの全てを使って向かってこなければ、私には届かないぞ?(早苗ノールちゃん来たァァァ! アドバイス通りに成長してくれてて、博麗の巫女大歓喜だよ! 奇跡起こす系傲慢おっぱいとか、ジャンルの開拓が著しくて、霊夢の霊夢がエマァァァジェンシィィィ! そして、二柱の神々も最高! 実はかなりのドMな神奈子様とか! 実は闇が深くてヤンデレの素質がある諏訪子ちゃんとか! もうっホントに守矢最っ高!)」

 

ーー荒ぶっていた。

 

 何だコイツ、クソうぜぇ。

 もしも、霊夢の頭の中が覗ける奴がいたならば、瞬時にそう返すであろう、とても頭が悪そうな事を考えていた。

 霊夢の頭の中では、既に目の前に立っている守矢の三人をどんな風に弄り倒してやろうか? という考えしか無い。

 先輩後輩プレイで、憧れの先輩に求められて、ついつい身体を差し出してしまう、みたいなシチュエーションで、早苗の早パイをどのようにして揉み解し、トドメに自身の胸に溺れさせることで、完全に堕としてやる、と邪な考えを巡らし。

 隠れドMである神奈子を、これでもかとイジメてあげることで、威厳溢れる彼女の内側に隠れていた欲求を表面化させ、色々と卑猥な単語を言わせたりしたい、など外道な考えを巡らし。

 諏訪子のヤンデレの才能を開花させて、自分を殺したいほど好きというくらいの状況に持っていって、愉しみたい。ぶっ殺されるくらいに求められたい、などとドン引きな考えを巡らしていた。

 ちなみに、こんな思考を巡らしている間も、普通に戦闘を継続している辺り、この変態巫女の実力が規格外過ぎる事が見て取れる。

 今この瞬間にも、早苗曰くの奇跡の力を片手間に防ぎ、彼女の巫女服を少しずつ削ってダメージ加工。……胸元の部分がかなり削られており、その乳房が溢れてしまいそうである。

 神奈子の天候操作による雷が直撃するも無傷で、瞬きの間に接近し、神奈子に回し蹴りを見舞い、その服の一部を奪い取る。……ついでに霊夢は痛みを快楽に変換するように、細工をしたため、神奈子は別の意味で息を乱している。

 諏訪子の創造した石で出来た蛇の群れも、指先から飛ばす光線で消滅させ、その光景を見て驚愕し、隙を晒す諏訪子の胸ぐらを掴み上げ、投げる。……当然ながら、掴んだ部分の布を引きちぎりながらである。

 激戦の中、遊びながら服を剥いでいく。博麗の巫女は今日も平常運転であった。

 

 

ーーー

 

 

「かーっ! やっぱりアイツは強いなっ! 手も足も出ねぇ!」

「でも、さっきのは惜しかったねー」

「後一歩で、あの済ました顔に一撃入れられたんだけどなー。やっぱ簡単には当たってくれないかぁ」

 

 この場で唯一の妖怪同士のチームを組んでいる萃香とルーミア。

 彼女たちは、今の所、一番霊夢に食らいつくことが出来ているチームである。

 ルーミアが、闇を周囲の空間全域に広げ、萃香が、その闇に自身の身体を散らして紛れ込み、神出鬼没の奇襲を何度も仕掛け続けているのである。

 闇にはルーミアの妖力が、つまりルーミア自身の気配が染み付いている。それが一種のカモフラージュの役割を果たし、萃香の位置を補足させないのだ。相手が霊夢でさえなければ、最初の奇襲で勝負が着いているほどに、二人の連携技は巧みだった。

 勿論、それだけではない。萃香は疎と密を操る力を十分に活かして、自分の攻撃が霊夢に通用するようにしているのだ。

 霊夢の身体は、その身から溢れ出ている強大な霊力によって常に守られている。簡単に言うなれば、常に分厚い鎧を着込んでいるようなものなのだ。萃香は自身の能力を全力で行使し、霊夢が纏っている霊力を霧散させてから攻撃を仕掛けているのである。

 萃香の攻撃を、霊夢が避けている事から、当たりさえすれば、少なからずダメージを与えることが出来る。萃香達はそう考えていた。

 

「でも、まだまだ本気は出してないみたい」

「ちくしょう舐めやがって! って言いたいところだけど、私らが弱いのがイケないんだから文句は言えないよなぁ。……霊夢といい、幽香といい、幻想郷は規格外の化物だらけで、本当嫌になるよ」

 

 だが、霊力の鎧を突破できているからといって、簡単に攻略できる筈もない。

 何せ相手は博麗の巫女、この幻想郷で最強と呼び称されている存在なのだ。現に霊夢は当たらなければどうということもない、と言わんばかりに、萃香達の攻撃を全て紙一重で避け、迎撃している。……それも、相手である萃香達を傷付けないように遊びながらである。

 

「せめて真面目にはさせたいよねー」

「本当にな、何か知らんけどあのアホ巫女、私らに直接的に攻撃はしてないみたいだしな。……代わりに服がボロボロだけども」

「私はもうワイシャツしか残ってないよー……これ以上は無理、ギリギリだよ。このままだと裸にされちゃう」

「安心しろ、私は大事なところしか隠れていない! 霧になっているのに服だけ持って行かれたからな!」

 

 ルーミアは黒い服の全てを持っていかれ、地肌にワイシャツ一枚という非常に扇情的な姿にされていた。

 萃香に至っては、大事な部分を辛うじて隠しきれているだけで、大変危うい格好をしていた。……大きなお友達大歓喜である。

 

「服が無くなるまでに、どうにかしてケリを付けてやる! 行くぞ、ルーミアっ!」

「がってんだよ! 萃香っ!」

 

 二人の妖怪幼女は、決意を新たに霊夢に向かって飛んでいく。……果たして、服が完全に剥ぎ取られるまでに、決着を付けることが出来るのだろうか?

 少なくとも霊夢はーー

 

「……何、まだまだ終わらせんよ(裸ワイシャツのルーミアたんが可愛すぎて、私のハートがアハトアハト。次は上からボタンをどんどん奪っていこうかしら? そして、萃香よ。お前さん、もう殆ど布無いで? このまま向かってくるともれなく全裸コースやで? 私は萃香たんの鬼っぱいとか、鬼の花園とか色々と拝見できるから大変ありがたいんだけどね? むしゃぶりつくように見るよ? むしろ今もガン見しているよ? はぁはぁ)」

 

ーー長引かせる気満々である。

 

 博麗の巫女に自重はない。

 美少女たちの艶姿をこの目に焼き付けるために、どんな下劣な手段でも使う所存である。

 霊夢の脳内は既に桃色に染まりきっていた。ショッキングピンクである。脳内で繰り広げられている光景は、とてもではないが、描写することは出来ない。

 目の前に立っているルーミアや萃香をあーんな事やこーんな事であはんうふんのくんずほぐれつ的な妄想で、滅茶苦茶に乱していた。覇王モードによる行動抑制が無かったら、本物のルーミアと萃香が大変な目に遭っていただろう。

 実は霊夢、今日はロリな気分なのである。別に触ったりえっちぃ事が出来るなら、美女でも何でものいいのであるが、出来れば、抱え込めるような小さい少女を弄くり回したい、と考えていた。

 そんな変態、もとい博麗の巫女の前には、極上の美幼女がいるのである。……故に、この巫女が自重できる筈もなかった。

 計画としては、服を剥ぎ取り終わった後に、色々とコスプレさせてから着せ替えつつ、偶然を装って、かつ覇王モードに引っかからない程度に二人を堪能する腹づもりであった。

 ルーミアを押さえつけ、覆い被さり、ルーミアのルーミアに霊夢の霊力で作り出した霊夢でドッキング、熱いリビドーに身を任せ前後運動をすることで、ルーミアに天国を見せ、更にルーミアのルーミアに霊夢の霊夢から放たれた熱く煮えたぎる真っ白な霊力の塊が放たれる。

 萃香に自分と同じデザインの巫女服を着せ、手を縛り身動きが取れなくなっているところを、背後から萃香の萃香に狙いを定めて、霊夢の霊力で作り出した霊夢をコネクトし、激しくビートを刻みながら、お互いに真っ白な世界を垣間見る。そして、全身に走る電流と共に、霊夢の霊夢から放たれた膨大な霊力が萃香の萃香を通して、彼女の小さな身体に注ぎ込まれる。

 ここまで全部、霊夢の妄想の一部である。何処からどう見ても、性犯罪者の思考で、コイツ本当に幻想郷の守護者なのか、と疑問に思えてくるほどに、博麗の巫女は絶好調だった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 濡れるッ!

 こんなに沢山の美少女がッ! 私をッ! 私をッ! 求めてくれているッ!

 その事実に何処とは言わないが、私の身体の一部分がとっても拙い状態になっている。濡れ濡れである、大洪水である。ノアの方舟が必須レベルでの大災害である。ひゃっはーッ!

 模擬戦が楽しすぎて、私の心がプリティーでキュアキュアのマックスハートォォォ! ちなみに私は初代派です。ブラックとホワイトの肉弾戦には感動した。 感 動 し た ッ(大事なことなので二回言った)!

 

 それは兎も角、模擬戦も漸く佳境に入ろうとしていた。

 私の周囲を囲んでいるのは、チルノを筆頭とする妖精組。早苗を中心にしている陣形を組む二柱の神。闇を操る妖怪ルーミアと鬼の四天王萃香のタッグコンビである。

 こいつぁ油断できねーぜぃ。さっきまでの様子とはえれぇ違いだぃ!

 さっきまでのこの娘達は、妖精組は妖精組で、守矢組は守矢組で、妖怪タッグは妖怪タッグで、と一つのチームごとにバラバラに私と戦っていた。

 無論、その程度では私には通用する訳もない。軽々とあしらってやりましたとも。……ついでに剥ぎ取りショーも出来て大変楽しかったです(小並)。

 

 そんなバラバラだった彼女たちが、一致団結して私と向かい合っている。私を倒すために手を取り合い、向かい合っているのである。

 正直、この状況に興奮している。こんなに複数の少女たちが、私を倒す(意味深)ためだけに、種族も性格も、何もかもが違う少女たちが、私を倒す(意味深)ためだけに、団結しているっ!

 最後の最後に主人公の前に立ち塞がるラスボス達の心境が今、私にも理解出来る。これは良い、これは良いものだ。そうか、彼ら彼女らは、この興奮を味わっていたのか(お前だけ)。

 

 あの娘達がその気であるなら、私もそれなりに礼を持って応じるのが筋というもの。おふざけの時間は此処で終わりだ。ここからは少々本気で、彼女たちを恥ずかしm……叩きのめしてあげようっ!。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 霧の湖上空。

 現在、此処で行われているのは模擬戦。博麗霊夢対妖精組、守矢組、妖怪タッグによる模擬戦である。力を高め、両者が睨み合い。何時戦いの火蓋が切られても、可笑しくはない。周囲は異様な緊張感に包まれていた。

 

「個々の力で太刀打ちできないのなら、数で囲んでしまえば良い。成る程、そう考えたわけか。……フッフフフッ、随分と単純な解だな」

 

 そんな中、最初に動き出したのは、当然と言うべきか、博麗霊夢であった。

 彼女はまるで庭を散歩しているような、何の気負いもしていない様子で、悠々と歩み出した。薄い笑みを浮かべ、ゆっくりと相対する少女たちに向かって、近付いていく。

 

「数と力で叩けば、私を潰せるとでも思っていたのか? 甘いな。……いや、おそらくは元来、力というものの認識そのものが、お前たちと私では異なっているんだろう。教えよう、力とはーー」

 

 刹那、霊夢の姿が消え失せる。

 

「ーーこういうものを言うのだ」

 

 再び霊夢が姿を現したのは、神奈子の背後である。片腕を振り上げ、今まさに振り下ろさんとしていた。

 

「っ!? 後ろですっ! 神奈子様っ!」

「何ぃっ!? はあぁぁぁ!」

 

 早苗の声に咄嗟に反応した神奈子は、自身の背後に向かって、御柱を撃ち放つ。嵐を呼び、雷をも操る風神の力を纏った柱による一撃は、まさに稲妻の如し、雷速に匹敵する速度で、霊夢に向かいーー

 

「う、ぐぅ!?……そん、な」

 

ーーただの手刀一閃で、神奈子の衣服諸共、両断された。

 

 霊夢はただ、手を振り下ろしただけ、能力も霊力も、ましてや技などというものも一切使用していない、ただの腕のひと振り。ただそれだけで、雷速で迫る御柱を、真正面から切って落としたのである。

 その上、神奈子の身に纏っていた衣服を、真っ二つに両断するというおまけつきである。

 衝撃で吹き飛ばされた神奈子は、そのまま吹き飛んでいき、湖の水面を何度かバウンドし、慧音が待機している岸辺に叩きつけられた。気絶したのか、起き上がってこない。

 この一部始終の間も、霊夢は思考を加速させ、神奈子の身体をじっくりと堪能していた。衝撃で神奈子が吹き飛ばされる直前、思考を加速した霊夢は、その一瞬の時間の間に神奈子にぴったりと接近し、神奈子が認識するよりも早くその匂いを胸いっぱいまで吸い込み、両断された服から垣間見える神奈子の神奈パイを観察していたのである。まさに能力の無駄遣い。

 

 兎にも角にも、早くも一人目が脱落してしまった。しかもその一人目は、強大な力を操る神の一柱である。その場で霊夢と相対している者たちの背筋を冷たいものが走り抜ける。

 先程までの、遊んでいた時とは明らかに違う。ほんの少し真面目に相手されただけで、この様だ。実力が、否、生物としての格が違いすぎる。コレが本当に人間なのだろうか?

 

「さて、次だ」

 

 戦慄を露わにする少女たちを気にすることもなく、再び悠々とした歩みを再開する霊夢。その向かう先には、神奈子と同じ神の一柱、幼い少女の姿をした土着神の最高峰がいた。

 

ーー次の獲物はお前だ。

 

「あ、あぁぁぁぁぁっ!」

 

 薄い笑みを浮かべる霊夢、その瞳を正面から目の当たりにしてしまった諏訪子は発狂したように、形振り構わず霊夢に攻撃を仕掛ける。

 自身の権能を全力で使い、目の前にいる脅威を排除しようと必死に力を振り絞る。

 諏訪子の周囲に石で出来た無数の大蛇が現れ、霊夢を囲う。大蛇には諏訪子の神力がたっぷりと練り込まれており、一匹一匹が上級の妖怪すらも容易く食い殺せる程の恐ろしい力を宿していた。

 

「ほう? やれば出来るじゃないか」

 

 そんな恐ろしい大蛇に囲まれているというのに、霊夢は一切変わらず余裕を崩さない。むしろ、感心したように息を漏らし。諏訪子を賞賛する始末だ。

 

「く、ら、えぇぇぇぇぇ!」

 

 諏訪子の叫びと共に、無数の大蛇が霊夢に向かって殺到する。神によって生み出された、言わば神獣とでも呼称すべき化物だ。たとえ妖怪でも、神であっても、噛まれればひとたまりもない。

 そんな大蛇の牙を前にしても、霊夢は変わらない、変わる筈がなかった。

 

ーー当たらない。

 

 無数の大蛇の攻撃が、牙が、当たりも掠りもしない。前後左右、上からも下からも隙間なく大蛇が襲いかかっている。しかし、一度も当たらない。

 霊夢にとってみれば、この程度の攻撃を避け続けることなど朝飯前もいいところだった。大蛇は確かに恐ろしい。その牙に食いつかれれば多少の手傷は負うだろう。だが、その攻撃は単純な噛み付きのみだ。

 それ故に読みやすい。この程度であれば、避けるのに最早目視する必要すら無い。

 

「いい加減飽きたな、そろそろご退場願うとしよう。これは楽しませてもらった礼だ。破道の九十ーー」

 

ーー黒棺(くろひつぎ)

 

 静かに紡がれたその一言と共に、霊夢を中心として辺り一面を黒い箱が覆っていく。

 比較的霊夢から離れていた早苗、チルノ達妖精組、そして萃香とルーミアの妖怪タッグは、その箱の範囲から逃れられたが、攻撃に集中し過ぎて警戒が疎かになっていた諏訪子は、逃れることが出来ず、箱の中に取り込まれてしまった。

 完全に箱が閉じたと思ったその次の瞬間。キィィィィィンッ! と、黒板を爪で引っ掻いたような不快な音が響き渡る。

 空気全体を震わせ、周囲を蹂躙するその音、箱から発せられる規格外の霊力の奔流に、その場にいた者たち全員の身体が凍り付いた。そしてーー

 

「あ、うぅ」

 

ーー箱が消え去る。

 

 僅か数秒という短い時間、その短い時間だけで大きな爪痕を残した黒い箱ーー黒棺。

 箱が消え失せ、中から姿を現したのは、原型を止めないほどに、服をズタズタに引き裂かれた諏訪子と、その諏訪子の首根っこを掴み上げ、平時と変わらぬ笑みを浮かべる霊夢の姿だった。

 あれほど無数にいた大蛇の姿など何処にもなく、代わりに粉々に砕かれた石の欠片が宙を舞っていた。

 

「失敗したな。本来の破壊力の三分の一程度の威力もない。やはり九十番台は扱いが難しい。素直に詠唱しておくべきだった、なっ!」

 

 恐ろしい事を言いつつ、諏訪子を慧音が待機している地上の方へと投げる。誰も視認できないほどの速度で地上まで投げられた諏訪子であったが、着弾する直前、どういうわけか勢いがゼロになり、傷一つ追うこと無く地面に降ろされた。

 霊夢としても美少女を必要以上に傷つける事はしない。服のみしか攻撃していないし、その身体へのダメージも気絶する程度にまで抑えているのだ。

 そして、霊夢はこんな状況でもしっかりと諏訪子の肢体を脳内カメラで激写していた。服がズタズタに引き裂かれ、その隙間から彼女の幼い少女としての瑞々しい果実が垣間見えるのである。下着もズタズタにしているため、生の感動が視界を楽しませてくれる。諏訪子の小さな諏訪パイが、そして足と足の間、その付け根部分にある、諏訪子の諏訪子が、ズタズタの下着からこんにちはしているのであった。霊夢、大興奮である。

 

「……ん?」

 

 しかし、その興奮が、霊夢に隙を晒させてしまった。

 

「っ!? これはっ」

 

 霊夢の身体を縛り付けているのは、氷で出来た鎖。

 霊力で吹き飛ばそうとするも、どういうわけか霊力を上手く操ることが出来なかった。まるで何かに阻害されているかのように、上手く操れない。それどころかーー

 

「ーーぐっ!?」

 

 腹部に衝撃を感じ、息を漏らす霊夢。小さな拳が霊夢の腹に向かって突き出されていた。その拳を放ったのは……

 

「やっと一撃ぃ! 油断大敵ってね!」

 

 鬼の四天王が一人、伊吹萃香である。

 鬼の剛力をまともに食らった霊夢、流石にダメージは大きいのか、身体を前のめりにしたまま動かない。

 

「上手く霊力が練れないだろ? チルノの氷に霧散させた私自身を混ぜ込んだ特注品さ! 例えお前であっても簡単には壊せない! そぉら、もう一発っ!」

 

 振り被った拳が、霊夢の顔面を捉えーー

 

「……成る程、面白いことをする」

 

ーー掴み取られた。

 

「だが、私の霊力を封じた程度で勝った気になられるのは心外だな」

「いぃっ!? いたたたたたっ!」

 

 ギチギチと掴み取られた萃香の手が悲鳴を上げている。

 この鬼の身体が、人知を超えた強靭な肉体が、人間の握力に屈している。限界まで力を込めているのに、ガッチリと掴まれていて振り解く事が出来ない。

 鬼が、人間に力で負けている。その事実に萃香は戦慄する。霊力さえ封じてしまえば、鬼である自分なら身体能力の差で圧倒できると踏んでいた。流石に簡単には倒せないだろうが、それでも心の何処かで、いくら強くても、所詮は人間、鬼である自分に力で勝てるわけがない、と高を括っていた。

 しかし、現実はどうだ。こうして簡単に力で負けてしまっている。それも大人と子供、否、それ以上の差が自分と霊夢の間にはあった。

 

「お返しだ」

 

 霊夢が腰の方まで拳を引き絞る。

 拳に収束しているのは力だ。霊力などは用いられておらず、ただただゆっくりと握り込まれた拳。しかし、ただそれだけの拳に、萃香は例えようのない尋常ではない圧力を感じ取った。

 あれは拙い、まともに喰らえば如何に頑丈な肉体を持つ鬼であっても、軽く気を失ってしまうであろうとんでもない力が秘められている。

 

(こんな、こんなところで終わるのかっ! ここまで頑張ったのにっ!)

 

 じわりと、萃香の両の瞳に涙が滲む。

 悔しかった。霊夢に勝つためだけに、萃香は沢山修行した。自分の能力を磨き上げ、鬼としての地力を引き上げるために、人間がやっているという筋力トレーニングなるものにも手を出し、妖力も以前とは比べ物にならないくらいに高めてきた。

 大好きなお酒を断ち、修行に入り浸る日々。苦しくて苦しくて、途中で投げ出したくなった事もある。だけど、それでもどれだけ苦しくても、霊夢に、霊夢に一泡吹かせたかった。

 霊夢に分からせてやりたかった。自分達がただ守られる存在なんかじゃないんだって、いつでも隣で一緒になって戦えるくらいに強いんだと、証明したかった。

 

(ちくしょうっ!)

 

 霊夢の拳が迫る。

 

「あたい、サイキョォォォ! うおぉぉぉっしゃぁぁぁ!」

「奇襲する時は、声を上げるな。そう、教えた筈だが?」

「ぐっはぁぁぁ!」

 

 突然、勇ましく雄叫びを上げながら突っ込んできたチルノ。奇襲のつもりだろうが、声を上げては意味などない。容易く霊夢に対処され、デコピンで吹き飛ばされる。

 

(ーー今だっ!)

 

 その隙に萃香は、自分の身体を霧に霧散させて霊夢の手から逃れて一気に距離を離す。

 

「すまない! 助かったぞ、チルノ!」

「あ、アタイは何処? こっちは誰? サイキョーが何処で、アタイが誰?」

「チルノちゃんが、チルノちゃんがっ、余計おバカになっちゃったぁぁぁ!?」

 

 恐るべきは巫女のデコピンだろう。ただでさえ(バカ)と呼ばれている愛すべきチルノが、余計に大変な事になってしまっていた。

 若干保護者的な立場にいる大妖精も、これにはあたふたと涙目で慌ててしまっている。チルノを正気に戻そうと、肩を掴んでゆさゆさと前後に揺らしまくっている。……勢いが強すぎて、チルノの頭が荒ぶっている。余計バカになるとか言ってはいけない。

 

「おー萃香ー大丈夫だったかー?」

「正直、危なかった。やっぱり一人だと勝ち目がないな。皆で一気に掛からないとダメだ」

 

 真正面からぶつかっても、先程の守矢の神様二人のように、叩き潰されて終わる。単純に全員で掛かっていったとしても、同じ結末を迎えることになるだろう。

 ならば策を、霊夢の意表を突き、確実にダメージを、倒しきれるだけの策を用意すればいい。

 

「もしもし、鬼のお姉さん。私達に一つ案が有るんだけど? 聞いてみない?」

「今ならお得だよー。妖精印のアンティーク用品(盗品)が付いてくるよー」

「更にオマケで、博麗神社から盗み出した霊夢の愛用しているリボンも付いてきます!」

 

 策を考える萃香とルーミア。そんな二人に話しかけるものがいた。……三月精である。

 サニーミルクは、ちょっとここだけの話なんだけど、などと今時のJK風に。ルナチャイルドは、若干罅割れているアンティーク用品(盗品)を片手に無表情に。スターサファイアは、何とあの霊夢から盗み出したという赤いリボンを片手に萃香達に近付いてきた。

 

「取り敢えず先にリボンをくれ。……うん、ありがとな、すーはぁー。……良い匂いがする」

「萃香萃香、私にもリボン貸してー」

「ほれ」

「ありがとー、すーすー。……ほわぁ、霊夢の匂いがするー」

 

 スターサファイアからリボンを受取り、そのまま流れるように匂いを嗅ぎだした妖怪二人。何ともまぁ、幸せそうな顔である。

 後に二人は語った。霊夢の匂いは安心する。心がぽかぽかしてしあわせな気持ちになるんだと、今日も一日頑張ろう! という気持ちになるんだと。

 

「ーーっ!?(あ、アレは私のリボンジャマイカ! 一本だけ無くなっていたと思っていたら、あんなところにあるとは! あ、あぁぁぁぁぁ!? す、萃香ちゃぁぁぁん!? なして!? なして匂いをお嗅ぎになっておられるのでぇぇぇ!? その上ルーミアちゃんもぉぉぉぉぉ!? ふぉぉぉぉぉ!?)」

 

 霊夢は霊夢で自分のリボンに顔を押し当てながら、ほんわかしている二人の姿を見て、荒ぶりが止められない、止まらない、止めるつもりもない。

 表面上に出てはいないが、大興奮を超えての大興奮、絶頂の中の絶頂を迎えている。足元はよく見なければわからないが、かなりガタガタと震えており、耳も若干赤く染まっている。

 違う意味になるが、まさに上は大火事、下は大洪水という状態である。微妙に瞳を揺らし、瞳孔が定まっていない。どんだけ動揺しているのだろうか、この巫女(へんたい)は。

 霊夢は攻められるのに弱い、ハッキリ分かんだね。いや、攻めにもなっていない。萃香達の行動にすら動揺してしまう有様である。ただ、自分の私物を盗られて、その匂いを嗅がれた程度で、大変な状態だ。……文面にすると十分ヤバイとか言ってはいけない。そもそも、この巫女はもっとヤバイ。

 

「それで、サニーミルクだったか?」

「長いからサニーでいいよ」

「分かったサニー、お前たちの案ってのは何なんだ?」

「案って言うのはねーー」

 

 こっそりと、残った全員に自分たちの考えを説明するサニーミルク。

 内容を聞いている内に、徐々に萃香達の顔にも笑みが浮かんでいく。成る程、それならば、あの霊夢にも通用するかもしれない。

 

「良いなそれ、面白そうだ。乗ったよその案。協力してやる」

「私も賛成するよー」

「何だか、わけ分かんないけど、分かったわ! このサイキョーのあたいに任せて、泥舟に乗った気持ちでいなさい!」

「チルノちゃん、泥舟じゃ沈んじゃうよ」

 

 いつの間にか復活したチルノを含めて、全員が了承する。今ここに妖怪、妖精連合軍が結成されたのである。

 

「いつでも仕掛けられたくせに、随分と優しいんだな」

「何、お前たちがどんな策で私を打倒せんとするのか、それが気になってな。安心しろ、お前たちの策の内容は一切聞いていない。存分に力の限り、私にぶつけて来ると良い」

「そうかよ、その判断を後悔しないようになっ!」

 

 言うなり、萃香が突っ込む。単純な特攻だった。鬼の強靭な身体能力をフルに活かした全力の突撃だ。ただの人間であれば、木っ端微塵、肉片すら残らず砕け散るだろう。

 しかし、眼前に立つのは博麗の巫女。幻想郷で最強と呼び称されているただ一人の人間だ。当然その一撃は止められるだろう。

 霊夢は迎撃する、突撃が当たる瞬間に、自身の掌底で以て萃香を吹き飛ばしてやろうと、その衝撃でついでに残った衣服も剥ぎ切ってやろうと、手を突き出しーー

 

「何っ!? がっ!?」

 

ーーすり抜けた。

 

 霊夢の一撃は空振りに終わる。そして、突っ込んできた萃香の姿が薄まり、空に溶けるように消えていく。

 その次の瞬間、背後から衝撃が襲い。霊夢を吹き飛ばした。霊夢が背後に視線を向ければ、そこにいたのは萃香の姿である。

 それも一人だけではない。ざっと数えただけで、数十人もの萃香が、背後に立っていた。全員が同じ笑みを浮かべ、同じ挙動をする。

 

「これは分身、いや、幻影か。……お前の仕業だな、サニー?」

「せいっかーい!」

 

 サニーミルクの光を屈折させる程度の能力で、生み出した萃香の幻影。それにより、霊夢の掌底を不発させたのである。

 無数の萃香軍団も、サニーミルクの能力によるものだ。光の屈折を利用した幻影。しかもその幻影には霧散した萃香の気配が紛れ込んでおり、どれが本物であるかなど判別することは不可能に近い。更にはーー

 

「音が聞こえない?……そうかルナ、お前だな?」

「ーー(ニコリ」

 

 霊夢は音を欠片も認識することが出来なかった。視線をある方向に向ける。その視線の先にいたのは、無表情に僅かな笑みを浮かべたルナチャイルド。

 彼女の能力は、音を消す程度の能力。それにより、霊夢の周囲から音を奪い取ったのである。これにより、霊夢は音での感知が出来なくなった。そして、自分たちが堂々と声を出しながら、策を実行する事できる。

 

「何故、此処まで動きを読まれ……成る程、お前かスター」

「ーー(ぺこり」

 

 霊夢の呟きにスターサファイアは反応し、お辞儀を返す。

 スターサファイアの能力は、動く物の気配を探る程度の能力。それを霊夢ただ一人にだけ使用することで、霊夢の動きをある程度まで、事前に察知することが出来る様になっていた。スターサファイアが霊夢の動きを周囲に知らせる続けることにより、霊夢を翻弄することが出来ているのだ。

 

「あはッ!」

 

 更に、霊夢の周囲をドロリとした闇の塊が囲んでいく。そう、ルーミアの闇だ。物理的攻撃すら可能にする闇の塊で、霊夢の動きを少しでも阻害する。

 

「準備は整った! そんじゃもう一回だ! とっておきをくれてやる!」

 

 再び、萃香が突撃する。

 今度は無数の分身を従えて、霊夢に向かって真正面からの突撃だ。萃香は腕を限界まで引き絞り、そこに自身の能力を使用する、自身の身体の密度を操作して、限界まで肉体を強化し、逆に拳の表面には接触した対象の力を霧散させる力を付与した。

 

「分身程度で、私を打ち取れると本気で思っていたのか?」

 

 詰みにも近いこの状況、されど霊夢は余裕を崩さない。この程度では何の問題もない。まだ何か手は無いのか? 私を打倒するための策は? 手段はないのか?

 霊夢は萃香に指先を向ける。指先に霊夢の霊力が収束している。赤黒い禍々しい霊力の奔流が、指先に収束していく。霊夢は虚閃を放とうとしていた。

 僅かであるが、霊夢の収束のほうが速い。このまま行けば萃香は拳を当てる前に虚閃の餌食になるだろう。ーーその筈だった。

 

「氷だとっ!?」

 

 瞬間的に、霊夢の腕を氷が覆い尽くす。そしてそのままーー

 

「そぉらぁ!」

「ぐっ!?」

 

 萃香の拳が、霊夢の土手っ腹に吸い込まれるようにしてぶち当たった。これ以上無いほどのクリティカルヒットだ。

 極限まで強化した拳に加え、相手は霊力の装甲を剥がされた生身の肉体。霊夢と言えど無傷とは言えないだろう。現に霊夢の腹部分の服は衝撃で吹き飛んでおり、そこには薄っすらとアザになっている。

 萃香は勝ちを確信していた。自分のベスト中のベストで放った力任せの一撃だ。それ故に絶対の自身が萃香にはあった。しかしーー

 

「……久しぶりに痛みというものを感じた」

 

ーー博麗の巫女健在。

 

 変わらない笑みを浮かべた霊夢。

 普通であれば、骨は愚か、腹に穴の一つは開いていそうな一撃を食らっておきながら、まるで効いていない。

 

「高々霊力を剥がした程度で打ち倒せるほど、私は軟な鍛え方はしていないよ」

 

 腕を封じていた氷を割り、萃香の小さな身体を抱き寄せる。

 藻掻く萃香であるが、霊夢の腕からは抜け出せない。万力か何かで締め付けられているように徐々に力が加わっていく。

 身体を霧散させようにも、能力が使用できない。何故、何故? と混乱する萃香に、霊夢は感情の読めない柔らかく、冷たい微笑を浮かべる。

 

「霧散して逃げようとしても無駄だ。私の霊力によってお前の力の流れを乱している。……さぁ、大人しくご褒美の抱擁を受けるが良い」

「むぅ〜ッ!? むぅ〜ッ!?」

 

 ぎゅぅぅぅっと萃香を抱き締めていく。

 萃香の顔は、霊夢の豊満な胸に埋まり、呼吸をする事が出来ない。そもそもの問題として、萃香は呼吸も忘れてしまうほどの幸福の真っ只中にいた。

 ほっとしてしまう温もり、優しく包み込んでくれる柔らかな感触。脳を甘いしびれが支配し、まともに思考することすら困難になり始める。

 霊夢曰くの魔乳。何人もの幼気な少女たちを堕としてきた。魔性の乳が萃香をも堕とそうとしているのである。精神的にも、物理的にも。

 

「むぅ、んぅ」

 

 萃香の動きが徐々にぎこちなくなっていく。意識が落ちようとしているのだ。霊夢の乳によって呼吸を止められ、その上に精神をも魅了された。幸福な夢の中に萃香の意識が沈む刹那ーー

 

「此処までだよー!」

 

 闇が溢れ出し、霊夢の抱擁を解除して、萃香を救出した。

 そして、そのまま霊夢の四肢を縛り、動きを封じ込める。霊夢の力を考えるならば、この程度の拘束に意味はない。数秒足らずで引き千切られて終わるだろう。だが今はその数秒だけで良い。

 

「終わりよ、霊夢!」

 

 真打ち登場! そう言わんばかりに威風堂々とチルノが飛び出していく。氷の羽を巨大化させながら霊夢に向かって突進する。

 結構な力の収束がなされたその突進は、妖精にしては余りにも強大な力を秘めていた。チルノの動きに合わせて、真下にある湖の水面が氷結していく、それ程の強力な冷気を纏った一撃だ。

 

(やはり⑨、勝機と見るや、図り無く飛び込んでくる。それがお前の最大の欠点だよ。チルノ)

 

 だが、それでも霊夢を驚かせるには足りない。

 冷静にチルノの突進を見極め、対処するために向き合う。この程度であるならば、拘束されていようと問題はない。真正面から切って捨ててやろう。……そこまで考えて、ふと視界に入った。

 

「「ーー(にっこり」」

 

 してやったりと、笑みを浮かべている三月精の姿が。

 

(しまったっ!ーー)

「喰らえぇぇぇ! アタイのちょーサイキョー必殺技ぁぁぁ!」

 

ーー幻影だ。

 

 向いた方向とは逆からの突撃。

 霊夢の身体に飛び込んだチルノ、チルノの身体が触れた部分から、霊夢の身体が氷結していく。霊力で吹き飛ばそうとしても、その霊力自体が霧散してしまう。

 そうか、と霊夢は思い至る。チルノの冷気に萃香の力が付与されている。霊力などによる干渉を霧散させ、相手を確実に凍らせる、二人の合わせ技。

 

「……見事だ」

 

 その言葉を最後に、霊夢は氷の牢獄の中に閉じ込められた。

 

「や、やった! 勝った! 勝ったわ! 霊夢に勝った!」

「よっしゃぁぁぁ!」

 

 歓声が辺りに響く。あの霊夢に、博麗の巫女に、最強の人間に勝ったのだ。この喜びは、この達成感は例えようもないほどに甘美なものだった。

 特にトドメを決めたチルノの喜びような尋常ではない。いつもの二割増しくらいはバカになって、騒ぎまくっている。

 

「はぁはぁ、もうダメかと思った」

「お疲れ様、萃香ー……で、霊夢に抱き締められた感想はー?」

「最高だったっ! 何だよアレ!? 何だよアレ!? 後、一歩遅かったら、変な扉が開くところだったぞ!」

「私もやられたことあるから分かるよー」

 

 ギリギリで生存した萃香は、霊夢の感触を思い出し赤面しながら腕をブンブン振り回す。……実際は開き切っている、なんて空気の読めない発言はしてはいけない。

 なおルーミアも霊夢の魔乳の被害者であった。以前お腹が空いて、霊夢に食べ物を強請りに行った時、交換条件で一晩だけ抱き枕にされたのである。萃香ほど力強く抱き締められはしなかったが、それでも良い匂いがするやら、温いやら、柔らかいやら大変だった。あの時の事を思い出すと、ルーミアは時折下腹部が熱くなって、もじもじしてしまうそうな。……もう手遅れである。

 

 何だかんだ模擬戦は萃香達の勝利に終わった。後は霊夢の氷を解除してしまえば終了だ。

 そうーー本当に終わったのであればの話ではあるが……

 

「皆っ、皆一体何をしているんだっ!?」

 

 その異変に最初に気がついたのは、慧音であった。

 慧音の叫びを聞いて、弾かれたように氷漬けにされているはずの、霊夢の方を見やる。見て、衝撃ーー

 

「っ!?」

「だっ」

「だ、大ちゃん?」

 

ーー大妖精。

 

 氷漬けにされていたのは霊夢ではなかった。霊夢ではなく、他の人物、自分たちの味方である大妖精。彼女が霊夢の代わりに氷漬けにされていた。

 

「ちっちくしょぉぉぉがぁぁぁ!」

 

 大妖精は確か、三月精の背後に待機していた筈だ。

 萃香が視線をそこに向けると、そこには 無 傷 の霊夢の姿があった。萃香が付けたはずのアザなども一切無い。

 

「う、そ」

「ばか、な」

「ひで、ぶぅ」

 

 ゆっくりと、落ちていく三月精達の姿。ご丁寧に、落下していく場所は、慧音がいる場所だった。

 

「何時からだ」

「何時? 面白い事を聞くじゃないか、私は君たちにされていた事をそのまま返してあげただけだというのに」

「だから何時、アイツと入れ替わったんだと聞いているんだ!」

「最初からだよ」

「さっ最初からっ!?」

「お前たちが、私を策に嵌めることが出来た、と考えているその瞬間から、お前たちが私だと認識していたのは大妖精だったという事だ」

 

 簡単な事だと、霊夢は語る。

 光の屈折による幻影。音を消すことによって、自分たちの行動を悟らせない。相手の行動を事前に察知して行動することで、自分たちの策を完全なものにする。

 それを自分なりに真似してしまえばいい。予め大妖精の動きを術で縛り、霊力で姿形を、声を、強さすらも偽り、後は探査回廊で萃香達の動きをコントロールしてあげればいい。

 勿論、万が一にも大妖精が怪我を負わないように、ある程度の保険を掛けておいた。此処まで打ちのめされても、傷一つ負ってはいない。……見た目的には氷漬けにされているように見えるが、実際は霊力の膜でしっかりと覆い隠しているため、ダメージどころか、寒さも感じていない。

 むしろ大妖精は、霊夢の温かい霊力に覆われて微睡んでいた。大妖精だけ平和である。

 

「あ、ああ」

「あれ? ちるの、ちゃん?」

 

 氷を溶かし、大妖精を救出したチルノ。急いで、慧音が待機している岸辺の方に大妖精を運んで、横たえる。氷から救出されたが、ぐったりとしている様に見える大妖精の姿にチルノは動揺を隠せない。

 自分が霊夢だと思って攻撃していたのが、大妖精だったのだ。大親友を知らずとはいえ、全力で攻撃していた、その事実にチルノの感情は大きく揺らされていた。

 

「どう、して?」

 

 疑問を口にして、そのまま気を失った(様に見える)大妖精。実際には、襲い来る睡魔に抗えず眠っただけであるが、事情を知らないチルノからしてみれば、怪我か何かで気を失ったようにしか見えない。

 チルノは大妖精の疑問に答えられなかった。大妖精の瞳にある困惑と少しの恐怖を見てしまったから。自分が何をやっているのか理解したくなかった。

 目線をずらせば、悠然と佇む霊夢の姿があった。瞬間、チルノの頭に血が上る。自分が大妖精を攻撃してしまったのは、霊夢の作戦だった。そう思い至った。思い至りーー

 

「うわあぁぁぁぁぁ!」

 

ーー突貫。

 

 再び氷を形成して、霊夢に突撃を仕掛けるチルノ。錯乱しているように突っ込んでいる。

 

「待て! 待つんだっ! チルノォォォ!」

 

 萃香の制止も無視して、チルノは霊夢に向かって突っ込んでいく。チルノは理解したくなかった。

 大妖精を氷漬けにしたのが、自分だという事実を。何より優しい霊夢がこんな酷いことをした事が信じられなかった。

 あんなに大事そうに頭を撫でてくれていた霊夢が、大妖精を利用した。その事実を信じたくなかった。

 信じるも何も、元から霊夢は大妖精が傷つかないように、無駄に手間を掛けて守りを万全にしていた、という事実は霊夢と、ぐっすりと眠っている大妖精以外には分からない。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

「隙だらけだよ。何もかもが」

 

 霊夢の姿が一瞬だけ消え、すぐにチルノの背後に現れる。

 

「あ、くっ」

 

 チルノの纏っていた冷気が、その身に纏う衣服ごと全て切り裂かれ、衝撃はチルノの意識をも刈り取った。

 マッパである。全裸である。ロリコン大歓喜である。気絶したチルノが落ちる前に、霊夢がお姫様抱っこで救出する。素肌の感触が大変よろしい。小ぶりだがやわっこい小桃の感触も大変素晴らしい。

 霊夢は無意識にチルノの尻を撫で回していた。……事案である。だがしかし、周りに感づかれないように、こっそりと死角で触っているため、誰も気づくことが出来ない。

 

「このぉー!」

「ぬるいな」

 

 ルーミアの闇が迫るが、霊夢は気にせず一歩進み。気付けばルーミアの懐に立っていた。

 

「あうっ!?」

 

 そして、手刀のひと振りで、ルーミアの残ったワイシャツのボタン全てと共に、意識を刈り取った。

 ボタンが全て引き千切れたことで、ルーミアのワイシャツの前部分が全開になる。そこから霊夢の視界に入ってきたのは、沢山の肌色と、若干の桃色でデザインされた芸術であった。

 具体的に言うなれば、ルーミアのちっぱいと、ルーミアのるーみあがこんばんわしている状態だったのである。霊夢の心にいるマーラ様も、これにはにっこりである。

 無論、ルーミアも空いている方の腕でしっかりと保護。両手に幼女を装備した犯罪者の誕生である。……霊夢自身が超絶美少女であるために、本来であれば犯罪的な光景であるはずなのに、妙に絵になっている。これが美醜の格差というものなのだろうか。

 

「さぁ、最後はお前だけだ萃香」

「くっそぉぉぉ!」

「ゆっくりと休むといい」

 

 抵抗しようと破れかぶれに突っ込んだ萃香を、無情にも構え無しで放たれた虚閃が覆い隠し。

 

「う、あ、ちく、しょ」

 

 萃香も撃墜された。虚閃によって、身に纏っていた服は綺麗に消し飛んでいる。

 勿論、萃香もちゃんと回収された。霊夢の腕の中には、チルノ、ルーミア、萃香の服を一切身に纏っていない生まれたままの姿の三人がしっかりと抱え込まれている。重性犯罪者にランクアップしてしまった。

 更には手の位置的に真ん中に抱えている萃香の小さい膨らみ、萃香っぱいをしっかりと掴み込んでいる。意識が朦朧としている萃香はそれに反応できていない。……つまり揉み放題である。

 霊夢はこの世の春を謳歌していた。自身の腕の中には可愛らしいロリが三人もいる。とっても良い香りがするし、柔らかいし、合法的に触れるし、揉めるからもう何も言うことはな。欲を言うなら、そのまま自宅にまでお持ち帰りして、そのまま美味しく頂きたいところであるが、慧音が下で待っているため、それも断念することになる。

 

「やれやれ、手間の掛かる」

 

 三人を運び、横たえる。若干名残り惜しそうにしているのは、気のせいではない。

 霊夢としては、後最低でも三日間くらいは抱え込んだまま、一緒にお風呂入ったり、お布団で仲良くお休みしたりしたかった。……霊夢の妄想の中では、全裸のチルノ、ルーミア、萃香と戯れている自身の姿が思い描かれていた。本当に度し難い変態である。

 

「もう模擬戦はこれで終わりみたいだな。……思いの外、強くなっていた。これから先が楽しみだ」

「霊夢に認められるために、ずっと頑張っていたからな」

「……」

「れ、霊夢? どうしたんだ?」

 

 無言で慧音の手を掴み、見る霊夢。

 いきなり手を掴まれた慧音は流石に動揺を隠せない。真剣に自分の手を観察している霊夢。それに気恥ずかしいやら何とやら、慧音は顔を真っ赤にしている。

 やがて、観察を終えた霊夢は、ふっと笑みを浮かべ、慧音と顔を合わせる。その目は、しょうがない奴め、と言いたげな、優しい色に満ちていた。

 

「この手を見れば分かる。……お前も以前とは比べ物にならないほど、力を付けているな」

「傷は隠していたつもりだったんだがな。やはり霊夢には隠し事は出来ないか」

 

 慧音とて霊夢に認められたいと考えている者の一人だ。それなりに努力して、少しでも力をつけようと頑張り続けてきた。その実力はハクタクの力を使わなくても、上位の妖怪に匹敵する程度には高まっていた。

 今回は参加していなかったが、慧音が参加していたら、もう少しだけ模擬戦は長引いていただろう。

 

「お前だけではなく、この娘達全員にも言えることだが、無理だけはするなよ?」

「分かっているさ」

「さて、模擬戦は終わりだと思ったが、どうやら最後の一人の準備が漸く整ったらしい。……慧音、私から三歩離れろ、巻き込まれるぞ?」

「っ!?」

 

 霊夢に言われたとおりに慧音が下がった瞬間、二人を隔てるように、半透明のエメラルドグリーンの結界が出現する。

 かなりの霊力が練り込まれた特製の結界だ。霊夢ですらも本気で壊そうとしなければ破れないだろう。そう、思えるほどの強力な結界だった。

 

「……早苗、随分と遅い登場じゃないか? お前が遅かったせいで、お前以外の全員が脱落したぞ?」

「正義の味方は遅れてやってくるって、相場が決まっているんですよ。それに、私以外の全員が脱落したとしても、私一人が残ってさえいれば、事足ります。……我が力、奇跡(ミラクル)の前に這い蹲らせて上げましょう」

「面白い、やってみろ後輩」

 

 霊夢を結界に閉じ込めた人物は、早苗だった。

 全身からエメラルドグリーンの霊力を迸らせながら、不敵な笑みを浮かべている。平時の際の喧しく社交的な早苗の姿は、そこには無かった。あるのは不遜で、自信に満ち溢れた傲慢な顔。自分が一番強いと疑っていない紛れもない強者としての顔が、そこにはあった。

 

「ええ、そうさせて貰いましょう。」

 

ーー常識破りの奇跡(アンリミテッド・ミラクル)

 

 今、此処に奇跡が起こる。

 早苗の力、奇跡を起こす程度の能力とは、本来、風神である神奈子より神の力を借りて発動する力である。その能力は、本来雨を降らせたり、風を起こしたりする程度の規模でしか奇跡を起こせない。

 しかし、早苗は自身の力を極限まで高め、文字通り奇跡っぽいことならば任意で何でも起こすことが出来る力まで昇華させるに至った。

 奇跡を起こす程度の能力。改め、奇跡(ミラクル)。時間を掛けながら、自分自身が起こせる奇跡の規模を際限無く上昇させていく、恐るべき力である。

 最初は微々たる奇跡しか起こせないが、徐々に徐々に時間が経過する毎に出力が上がっていき、最終段階では無敵に等しい力を得ることが出来る、という早苗のみに許された力だ。

 

 発動してから既に相当な時間が掛かっており、早苗の奇跡の規模は最終段階に近付いて来ていた。

 

「ほう? 奇跡による身体強化か、限定的ではあるが、幽香に匹敵しないまでも、それなりに強いな」

「この私を前にしてその余裕。不遜ですね。許しがたいです」

 

 早苗の振り下ろした払い棒が、凄まじい衝撃波を発生させ、霧の湖を真っ二つに切り裂く。

 

「その程度は出来るようだな。だが、まだ甘い」

 

 衝撃波はそのまま霊夢に向かって飛んでいくが、片手で受け止められ、そのまま握り潰される。

 

「流石は霊夢さんですね。ここまで高まった奇跡の力でも、簡単に対処しますか」

「安心しろ早苗、お前は強いからな。全力の半分の力で叩きのめしてあげよう」

「ふんっ、傲慢ですね。気に入らない。……良いでしょう。貴方のその思い上がりごと、私の奇跡で以て粉々に粉砕して差し上げます」

 

 人差し指を天に掲げる早苗。

 

「我が力、奇跡の前に常識などというものは、存在しないも同然」

 

 指先に不可視の力の塊が収束していく。

 

「故に、本来では有り得ない超常現象をも生み出すことが出来ます」

 

 不可視の力の奔流は、周囲の光を引きつけ、黒より黒く染まっていく。緑色の霊力と共に収束していく。

 

「つまり重力を捻じ曲げ、束ねることで圧縮したマイクロブラックホールを生み出すことも出来るということです」

 

 早苗の指先に集まっていた力の塊の正体は、マイクロブラックホール。早苗の霊力によって無理矢理圧縮されたエネルギーの塊だった。

 

「さぁ、霊夢さん。時空そのものを蝕む、剥き出しの特異点。何者も逃れられない重力崩壊を味わわせて差し上げましょう」

 

 早苗はゆっくりと指先を霊夢に向ける。

 

「事象の地平へ、ご招待ーー」

 

ーーブラックホールクラスター。

 

 時空すらも捻じ曲げる規格外の一撃が、霊夢に向かって放たれる。

 如何に頑丈な肉体を持ち、霊力の鎧で身を守っている霊夢であっても、まともに喰らえば致命傷は免れない。

 

「幽香に続いてお前もか、早苗……フッフフフッ! フハハハハハッ!」

 

 自分を害することが出来る一撃を前に、霊夢は嗤っていた。心の底から、嗤っていた。そこにいつもの変態性は微塵も感じられない。

 これで二人目だ。自分を傷つけ、その命まで手を伸ばすことが出来る存在が現れるのは。その事実が堪らなく嬉しい。

 やはり幻想郷は素晴らしい。自分を楽しませてくれる猛者がどんどん現れてくれる。

 霊夢の変態性の中に隠れている、戦闘狂としての側面。そこを刺激され、霊夢はこれ以上無い程の喜びを感じていたのである。それは美少女を愛でているだけでは味わえない類の快楽。脳内麻薬が分泌され、自身の心の底にある戦闘本能が、歓喜の雄叫びを上げ続けている。

 楽しい、楽しい、楽しい、楽しい、楽しい。楽しい戦いが出来るっ!

 

「認めよう、東風谷早苗。お前は私の前に立つ資格が、私と戦う資格がある」

 

 迫りくるマイクロブラックホールを鷲掴みにして、無理矢理止める。余りに絶大なエネルギーに、受け止めた手が裂け出血するが、そんな事など関係ない。力で無理矢理抑え込む。

 

「さぁ早苗、私と戦おう、語り合おう、伝え合おう、殴り殴られ、壊し壊されよう。私の想いを、お前の想いを、骨が砕け、肉と肉が引き裂かれ、血と血が混ざり合い、溶け合うほどに、思う存分戦り合おうっ!」

 

 霊夢の言葉と共に、マイクロブラックホールが握り潰される。ただの握力で超自然現象が握り潰される。

 

「さっきの言葉は撤回しよう、お前に失礼だ。……ここからは七割の力で戦ってやろうっ!」

「くぅっ!?」

 

 奇跡の力で極限まで身体能力を強化した早苗。彼女の目を以てしても、なお消えて見える程の速度で、霊夢が早苗に襲い掛かる。

 一瞬で懐に入り、早苗に向けて七割の状態で放つ、加減なしの正拳突き。咄嗟に、片手に持った払い棒で防ぐ早苗であるが、そのガードの上から、早苗の土手っ腹に拳がねじ込まれる。

 

「おこがま、しぃぃぃ!」

 

 奇跡の力で、受けたダメージを瞬時に回復させ、早苗は反撃に出る。

 霊夢の胸ぐらを掴み上げ、ヘッドバット。脳を揺らされ、ふらつく霊夢に向かって、更に払い棒による薙ぎ払いを、横腹に向けて叩き込む。

 

「ハッ!」

 

 しかし、それは霊夢の肘と膝による挟み込み、蹴り足ハサミ殺しで止められる。早苗が持っていた、払い棒は、その余りの威力に砕かれてしまう。

 

「何ですって!? ごふっ!?」

 

 自身の武器を砕かれた事で、僅かに動揺する早苗。その隙を突かれ霊夢の攻撃をモロに食らってしまう。

 中国拳法秘伝の奥義、寸勁である。別名をワン・インチ・パンチと呼称されるこの技は、ワンインチ……つまり三センチ程の距離からの打撃である。

 体捌きや、体重移動などにより、体の各部位で発生した運動量、自身の体重などを拳に伝え、破壊力とする打拳。

 それが、早苗に向かって放たれた。

 その威力、圧巻の一言。早苗の身体が宙を舞い、撃ち出された弾丸のように物凄い速さで吹き飛ばされる。

 

「がはっ!」

 

 そして、早苗の身体は、早苗自身が張った結界にぶち当たって、漸く止まる。

 何という、何という威力なのだろうか。予想だにしない衝撃、腹の中の内蔵を直接シェイクされた様な感覚、胃から喉まで上がってくる鉄臭い味、ふらつき思い通りに動かない足。

 奇跡による強化、それを用いてもなお、ここまでのダメージを身体に刻み込まれた。その事実に早苗に去来したのはーー

 

( 素 敵 ッ ッ ッ ! )

 

ーー愛だった。

 

 何と言う規格外ッ! 何という強さッ! 何という常識外れッ!

 これがッ! これこそがッ! 博麗のッ! 博麗の巫女の真骨頂ッ!

 奇跡を開放し、傲慢になった思考。自分が唯一絶対の強者だと叫び続ける思考。その中で、早苗は溢れ出てくる愛に満たされていた。

 

「……欲しい」

 

 あの女が、霊夢が欲しい。霊夢の全てが欲しい。笑顔も、身体も、心も全て、全て、全てが欲しい。否、全て自分の物だ。

 

「……霊夢さん、貴女の全てが欲しいっ!」

 

 此処に来て、早苗の力が更に上昇した。奇跡の位階が、最大になったのだ。

 早苗の容姿に変化が起こる。瞳の色が黄金に輝き、髪が更に伸びてボリューミーに。身体も僅かに成長し、霊夢に匹敵する身体つきになる。その全身からは膨大なエネルギーを発し、背中には神を彷彿とされる光輪を背負っている。

 これが早苗の、東風谷早苗の全身全霊の境地。その名をーー

 

「そのために貴女に勝利して、貴女の全てを貰い受けるっ!」

 

ーー『一騎当千天地無双(ザ・ネオ)

 

 僅か一分だけの短い時間ではあるが、想像を絶する無敵の権化となる早苗の奇跡の最終到達点である。

 霊夢を打ち倒すためには、この身にある全ての力を出し切らなければならない。さぁ、最後の技を霊夢に魅せつけよう。霊夢の心に己の存在をしっかりと刻みつけよう。

 

「私は奇跡を起こす者っ!」

 

 言葉を紡ぐ。

 

「奇跡、最大限」

 

 早苗の背負いし光輪から光が溢れ出す。

 

「霊力、増大」

 

 光に呼応し、霊夢の頭上に空間の歪みが出現する。その歪みは凄まじく、霧の湖一帯を覆い尽くし、嵐を巻き起こす。

 

「重力崩壊臨界点、突破」

 

 早苗は両手を自身の胸の前で、広げる。するとそこに、三つの緑色の光の玉が出現する。その光の玉の正体は、早苗自身の霊力だ。それも奇跡の力を帯びた特別性の強力な代物。

 

「霊夢さん、これが私の気持ちですっ!」

 

 三つの玉を両側から押して、一つの玉へと合成する。

 合成した結果、生まれたのは、途方もない力を放つエネルギーの塊である。存在するだけで、周囲の空間に影響を及ぼすほどの絶大なる力だ。

 光輪がより一層の輝きを放ち、空を大地を白く染め上げる。

 

「受け取ってくださいっ!ーー縮退砲、発射っ!」

 

 その一撃を例えるなら、天地開闢の一撃。

 恒星の何倍にもなるエネルギーが、ただ一人の人間に向かって放たれた。

 

「……(にっ」

 

 迫る縮退砲を目にした霊夢は、何を語るわけでもなく嗤った。

 最高の贈り物だ。本日最大の贈り物だった。早苗の想いが詰まった、この世で唯一つの、霊夢だけの、霊夢のためだけの贈り物。

 喰らえば怪我は免れぬ。喰らえば命に届きうる。それどころか幻想郷をも滅ぼして、世界を、宇宙にすら大きな爪跡を残すだろう一撃。

 幽香でも易々とは行えない。早苗にのみ許された彼女だけの至高の一撃だ。

 

「早苗、私の愛しい好敵手の一人よ。お前の強い想い、確かに受け取った。……だが、間違えるな。私がお前の物になるんじゃない、お前が私の物になるんだ」

 

 霊夢がこの日初めて構える。静かに、ただ静かに、ゆっくりと、ゆっくりと。

 迫りくる天地開闢の一撃を前にしていながら、緩慢な動作で、静かにゆっくりと構えを取った。

 それは構えと呼ぶには余りにも平凡で、些か普通過ぎる構えだった。否、それは構えと読んでも良いのだろうか? ただ普通にその場に立っているだけにしか見えないその構え、ただただ自然体に立っているだけの構えである。少なくとも、戦闘中にする構えではない。

 しかし、ただそれだけの構えであるのに、霊夢の存在感が何倍にも大きくなったように早苗は錯覚した。ただ立っているだけに見えているだけなのに、隙と呼べるものは一切見当たらない。それどころか、ただこちらを見ている視線だけで、全身が凍えたかの様に震える。

 

「奥義ーー」

 

ーー夢想天生。

 

 霊夢の言葉とほぼ同時に、縮退砲が霊夢に直撃した。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 いやー早苗さんは強敵でしたね! 博麗の巫女大満足ですよ! 大 満 足 !

 ん? 何で生きてるんだ? 死んだんじゃねぇのかよ、この変態! だって? うるせぇ、グーで殴るぞ。

 

 簡単に説明しよう。

 縮退砲が直撃する。

 しかし、私は奥義を発動していたために、無傷。それどころか、縮退砲を消し去る。

 早苗、約束の無敵状態の一分が解除されて元に戻ってヘタレになる。

 戦いという名の、私の私の手による、早苗大攻略祭りが始まる。

 あはんっあはんっいやんっいやんっぺろぺろちゅっちゅギガント。

 私、大勝利。

 大体、こんな感じなんやで。

 

 え? 説明が足りない? 説明してくれたら、(美少女の)パンツをくれる?……しょうがないなーしっかりと状況説明してあげよう。優しい私に感謝しろよ(無駄に煽り顔)?

 

 早苗の一騎当千天地無双状態から放たれた規格外の一撃、縮退砲。

 時空間を砕きながら迫るその一撃は、私に傷を負わせるどころか、その命を奪い取れるだろうと、そう思えるほどに強力な一撃だった。

 防御しようにも、限定解除しないと防御できそうに無かったから、仕方なく私はある技を繰り出すことにした。

 それこそが私の奥義の一つである、夢想天生である。

 効果は至って単純で、全ての事象から浮かび上がり、あらゆる干渉を弾いて、無敵になる技である。これを使って早苗の縮退砲から逃れたのである。

 しかもこの技の利点は、これだけではない。私という人間をあらゆる場所から浮かび上がらせて、存在しているのに存在していない、という矛盾を孕んだ状態にすることにより、幻想郷に影響を与えること無く、正真正銘の全力を、本気と書いてマジの力を出せるようになるのである。

 夢想天生を使って、その後に限定解除をして、本来の力で以て、縮退砲がその威力を発動する前に全力で握り潰したのである。……だって、あのまま爆発とかさせたら、早苗の結界ぶち破って、そのまま世界が滅びることになるしね。早苗、ちょっとアゴが外れるんじゃないかってくらい、口をガバーッてしてたしね。

 

 んで、その直後に早苗の一騎当千天地無双状態が解除されて、元のヘタレな早苗にキャラチェンジ。

 ガタガタ震えつつ、涙目で逃げようとする彼女を取り押さえて、そのまんま戦闘と言う名目で、色々と弄り倒したというわけだよ。

 

ーー羽交い締めで、早苗の早パイを全力で揉みしだいてあげたり。

 

 ずっと揉んでいたくなる柔らかさ。手の平に吸い付いてくるんじゃないのかって言いたくなるくらいの弾力性など。早苗の胸だけで、ご飯駆け付け三杯は余裕で食えるんじゃないのかっていうくらいの触り心地だった。早苗のマウンテンの頂上に存在するチェリーも抓んだり、引っ張ったり、爪を立ててみたりと、色々と堪能した。……ぶっちゃけ吸いたかったのは博麗の巫女だけの秘密である。

 

ーー関節技で、早苗の身動きを封じつつ、下半身を攻めまくったり

 

 電気アンマとか色々とやりました。楽しかったです(小学生の作文)。

 早苗が何度もビクビクとエビ反りして、えっちぃ声で泣き叫ぶ姿は、私の下半身に奇妙な刺激を与えてくれました。おかしいなぁ、こわいなぁ、と思いつつ。早苗の股の間を足で、エイッエイッとするわけですよ。すると早苗が「ひぅっ!?」だの「あんっ!」だの妙に苦しそうな、だけど艶掛かった声を上げるんですよね。

 私はこれでも淑女でありますから、彼女が何かを我慢しているな? 我慢は身体に悪いぞ! と思いましてね。もう足なんて使わないで、ひと思いに、こうズバーッと手を使うわけですよ。

 これ言ったら、怒られるかもしれないんで、ぼかすんですけどね。いやーね。高級食材のアワビってあるじゃないですか? あれを優しく撫でたりする。それに近いですね。

 それで、何度も擦ったり、時に直接かき回したりするんですよ。それで、苦しげに叫んでいる早苗の声がどんどん大きくなって大きくなって、遂にーー

 

「あ、あああああああっ!?」

 

ーー絶叫。

 

 恐かったですね。いや、本当に恐かったですよ。人の出せる声じゃあぁないです。まるで悪魔か色魔でも乗り移ったような。そんな声でしたね。

 私、巫女ですから。早苗の中に居座っている悪いモノを根こそぎ払おうと頑張るわけです。その度に早苗は血を吐くんじゃないのかってくらいの叫び声を上げるものだから、私自分の力のなさを嘆きましたね。

 で、気がついたんですよ。もしかしたら、いやそんな筈は。もしかしたら、私がやっている行為のせいで、早苗は苦しんでいるんじゃないのかって、止めれば、早苗は落ち着くんじゃないのかって、思ったんですよ。

 思い立ったが、吉日と言うじゃないですか? 試しにこうピタッと指を動かしたり、色々とペロペロするのを止めてみたんですよね。

 それでですね、はぁはぁと悩ましげな息を吐いている早苗は不思議そうに、辺りを見回し、私の方を見たら言ったんですよ。

 

「れ、霊夢さぁん、どうして意地悪するんですかぁ」

 

 私、もう意地悪するしか無いなって思いましたよね。

 

 で、何やかんや色々と私と早苗二人だけによる、霧の湖上空での模擬戦(意味深)がしばらく行われ、無事私は勝利した、というわけなのだよ。

 あの後辺りから、早苗が妙に距離を詰めてくるようになったと言うか、必要以上のボディタッチが多くなってきたというか。私の作った露出多めの服も、進んで着るようなって、「似合いますか?」なんてやり取りも増えた。

 後は何故か、魔理沙との仲が微妙に悪いというか、犬猿の中と言うか、そんな感じになっていたのだよ。謎。

 

 まぁ何はともあれ、今日も素晴らしい一日だったということだね。

 色々と美少女に触れ合えたし、早苗は私を驚かせるくらいに力を付けていたし、ね。

 これだから博麗の巫女は止められない。

 




かくたのぉ!

色々とギリギリのライン攻めてみた。
アウトだったら修正する。……ま、まぁ、私以上にヤバイ描写の作品あるから大丈夫やろ(震え声)。
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