東方博麗伝説   作:最後の春巻き(チーズ入り)

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紳士淑女諸君、待 た せ た な !

百合を愛し、百合にボコられた伝説の変人、春巻きさんが帰ってきたぞぉぉぉ!

漸く漸く更新なんやでっ!
リハビリも色々やってたけど、拙い文章とかになってる可能性あるけど……誤字報告とか宜しくお願いします(土下座ッ! 敗北のベスト・オブ・ベストッッッ!)

待たせた代わりに結構、話は長めである。読みにくかったら済まん。でも面白く書けたと思うから、ゆっくり楽しんでいってネ! 春巻きさんとの約束だよぉ!


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【地霊殿】巫女、地底

 やぁやぁこれなるは、幻想郷を守護する巫女、博麗霊夢と申します。私は頭の中までラブたっぷりの淑女にございます!……よ ろ し く ね。

 色んな偶然が重なり合った結果、悲劇的に引き起こされてしまった異変を解決するため、私はわざわざッ、わざわざッ ! 遠路遥々とッ、遠路遥々とッ! この深い大地の底までやってきたのである。

 そんな大胆不敵に可憐で見目麗しくも豪華絢爛な私ではございますが、今日も元気おっp……失礼、間違えました。元気いっぱいっ! 百合の花が咲き誇る、尊き日々を過ごしております(マリア様が見ている)。

 

 お供のさとりちゃんは天使をぶっ通り越して女神でバブ味を感じるし、その妹であるこいしちゃんは小生意気で小悪魔犯してぇだし(犯罪者的表現)……。

 二人ともとっても個性的で非常に愛らしい美少女である。古明地姉妹という地底でも屈指の美少女姉妹を両脇に侍らせている、という贅沢な状況。この不肖博麗霊夢、幸福感が天元突破して、そのまま天に昇って逝ってしまっても良い、とすら考えてしまう始末であります(既に道中で三回ほど昇天しそうになった情けない巫女)。

 

「此処が地底か……随分と酷い有様だな」

「本当はもう少し賑やかで楽しい場所なんですけど。……その、異変の影響で」

 

 目に映る光景。……これを何と形容すれば良いのだろうか?

 地底とは、深い深い……それこそ陽の光など一切差し込む筈のない大地の底である。しかし――明るく照らされた地底の町並み。地底の暗闇を照らし出すのは、地底の空に煌々と燃え上がる巨大なる火の玉である。

 

――太陽。

 

 地底にある筈のないソレ。轟々と全てを灰燼に帰さんと光り輝くソレが、我が物顔で地底の空を占領していた。

 

 ただ、太陽があるだけならば問題はない。ただ地底を明るく照らしているだけならば問題はない。太陽とは生命の源だ。命に熱を灯し生かす。命を育む温かい光そのものだ。そう――それだけならばの話だが……。

 

 燃えていた。地底の全てが燃えていたのだ。美しい日本家屋が並んでいた筈の地底の町。……その全てが炎上し、辺り一面が尋常ではない熱気に覆われている。

 それを例えるならば、命を焦がし尽くす赤のみで染められた地獄絵図。……何もかもを焼き焦がし尽くし、一切合切全ての生命の存在を排する、この世の地獄の再現そのものだった。

 

「私のせいだ。……私がっ、勝手な事したからっ!」

 

 こいしちゃんが顔を俯かせる。

 押し殺した声は震え、地面へと幾つもの小さな雫が零れ落ちる。……幼女の涙ぺろぺろぺろぺろ。はいはい、頭までマーラたっぷり(トッ◯のCM風)でごめんなさいね。真面目にするから勘弁してくれぃ。

 

「そんなに自分を責めるなこいし。確かにお前は異変の切っ掛けを作ったかもしれない。だがそれは原因の一つというだけだ。……それに、あの神奈子の事だ。お前に無意識を弄られなくても、遅かれ早かれ今回の様な異変を引き起こしていただろうさ」

 

 あの守矢神ならやりかねない。……だってドMだもの。

 恐らくだが、遅かれ早かれ、今回の異変に限りなく近い異変は起こっていただろう。……だって神奈子ちゃんドマゾだもの。

 成功すれば守矢の信仰が爆上がり、失敗したとしても私からお仕置きを受けられる。神奈子ちゃんにとってはメリットしかない、ひと粒で二度おいしい展開なんだもの。……全く、救いようがない変態さんだよ(お前が言うな)

 言ってくれれば、お仕置きくらい適当に理由を付けて、幾らでもねっとりぐっちょりとヤッてあげるのにね。全くしょうがない神様だよ、あの娘は。……本当、一体誰のせいでああなったんだろうね!(←)

 

「だから泣き止め、こいし。……私は笑っているお前が好きだぞ」

 

 まぁそんなわけだから、あんまり自分を責めるのは止めときなされ、こいしちゃんは生意気に小悪魔チックな笑顔を浮かべているのが良く似合うんだからね!……泣き顔は泣き顔で、滅茶苦茶にイジメたくなるくらい可愛らしいけども(ゲス顔)。

 

 慰めるときのポイントは、ちゃんと腰を落として、目線を合わせながら頭をナデナデする事。大概のおんにゃのこはコレで調子を戻してくれる。……筈だ。

 少なくとも魔理沙たんや、吸血鬼姉妹を始めとする私のお友達(意味深)の幼女達には効果がある。……ふむ、冷静に考えると、知り合いの幼女達って犯罪臭が凄い言葉だな。此処は可愛らしく知り合いのロリータと言っておいた方が良いだろう(犯罪者予備軍)。

 

「ふ、ふんっ! きゅ、急に優しくされたからって勘違いなんかしてあげないんだからね!」

 

 私からそっぽを向きつつ、生意気にも反抗的な言葉を言い放つ。……しかし、耳は真っ赤である。

 あぁもうっちくしょー! 可愛いなぁコイツゥ! お姉さんの母性本能をこちょこちょしないでよ、もうっ! あんまり可愛くしちゃうとぉ――保護(拉致)しちゃうぞ?(にっこり)

 

「ところで、此処に住んでいた者達はどうした?」

 

 いくら灼熱地獄真っ青な有様とはいえ、この場に妖怪が一匹たりとも見当たらないのは不思議でならない。

 少なくとも中位から上位辺りの力を持った妖怪――特に熱に対して耐性を持っている種族なら、この熱気の中でも十分生存可能だと思うのだが……。

 地底の美少女レベルはかなり高そうだったから、滅茶苦茶期待していたのにね。美少女の影も形もありゃしない。

 桶入り幼女とか、エロい蜘蛛女さんとか、姐さんとか、嫉妬のお姫様とかの愛らしくも美しい姿を、脳内カメラで激写して、あわよくば彼女たちのあーんな姿やこーんな姿を堪能してやろうと考えていただけに、非常に残念である。

 

「それが――っ!? 霊夢さんっ!」

「分かっているッ! ハァッ!」

 

 突如として四方八方から放たれる殺気。……そして、殺気と共に差し迫る無数の巨石群。――だが、残念。私に死角はない。飛来してきた巨石群、その全てを霊力を纏った拳の連撃で叩いて壊す。

 

 勿論、古明地姉妹の二人を全力の結界で保護する事も忘れてはいけない。

 二人とも身体能力は、下手をすれば普通の人間よりも低い。粉砕した欠片が直撃しただけで致命傷を負いかねないからね。……My Sweet AngelとMy Sweet Little Devilは、この私が命を懸けて全力で守るんだよぉ!

 

「成る程。……これが私に助けを求めた理由の一つか」

「はい、地底の住人達は……」

 

 何処からともなく複数の人影が現れ、私達を取り囲んでいく。

 感じられるのは純粋な殺意のみ。無駄な感情の一切が排除された、純粋な殺戮本能。己の欲のためだけに殺すという、シンプルな意志。……よいよい、これじゃあ、幽香が何人もいるようなもんじゃないかよい(不死鳥のよいよい)。

 

「首、首……首首首首首首首首首首ッ!」

 

 開き切った瞳孔を危険な色に染めながら、首を求めて狂う桶に隠れた美少女――妖怪、釣瓶落としのキスメ。

 桶の中に入った人間の様な少女というあまりにも特徴的な容姿。今まで目にした美少女たちと比べても更に幼い外見で、若草のような緑髪を水色と白の玉がゴム留めでツインテールに纏めている。動く度にぴょこぴょこと揺れるのは大変可愛らしい。

 服装は、桶から見えている範囲でしか判別できないが、恐らく白い着流し一枚だけ、それもかなり薄いタイプの生地であるため、水に濡れると未成熟な肌色が透けて見えることだろう。……水の場所って何処だっけ? いや、待てよ。むしろ私の舌で舐め回せばええんやないか? 唾液とかでヌレヌレにも出来るだろうし、視覚的にも味覚的にも大満足できること間違いなしや、じゅるりじゅるり。

 

 前世知識からは、桶の中で生活する程度には内気であるとされている。またその反面で妖怪らしく凶暴な一面もあるそうだ。……些か凶暴すぎる気がしないでもない(白目)。

 薬でもキメてんの? って勢いで目は爛々と輝いているし、口の端から唾液を溢れさせながら、しきりに私の首元を狙って鎌を振るい続けている。……見て回避余裕ですけども。

 うん、美少女に求められる(首的な意味で)なんて、私ってば、かっ、勝ち組だねっ!(震え声)

 能力は『鬼火を落とす程度の能力』。釣瓶落とし固有の能力であり、読んで字の如く、目標の頭上から鬼火をドーンッと落とす力を持っている。……なお本人はその力を使う様子は一切なく、鎌をブンブン振り回し続けているだけなんだけどね! あ、コケた。

 

「病めろ病めろ病めろ病めろ病めろ病めろぉぉぉッッッ!!!」

 

 全身からドス黒い瘴気を発しながら、狂った様に同じ言葉を繰り返す、ありとあらゆる病を操る美少女――土蜘蛛、黒谷ヤマメ。

 金髪のポニーテールが愛らしく揺れ、瞳の色は落ち着いた茶色。漸く大人になり始めた、蕾が花開き始めたあどけなさの残る少女然とした容姿をしており、とても魅力的である。

 頭に茶色の大きなリボン。服装は、ふっくらとした黒い上着の上に、こげ茶色のジャンパースカートを着用している。

 胸元には黄色いボタンが規則正しく並び、スカートの広がり方や、そのスカートの上から黄色いベルトの様なもので何重にもクロスさせて巻いている様子から、見方によっては、蜘蛛を表現している様にも見える。……此処だけの話、ヤマメちゃんが巻いているベルトを一枚一枚解いていって、ヤマメちゃんの本体を顕にしたいところであるが、私は淑女なので自重します。

 

 前世知識からは、気さくで明るく、誰とでも仲良くなれそうな性格をしているとあり、地底の妖怪の間では彼女はアイドルの様に扱われているそうだ。……だけど、今のヤマメちゃんの様子を見ると、幻滅しました。ヤマメちゃんのファン止めます(ついでに、那珂ちゃんのファンも止めます)。

 狂ったように「病めろ」という言葉を連呼しており、蜘蛛らしく逆さ吊りになりながら、黒々とした瘴気を私に向かって放ってきている。……多分、病魔か何かを煙状にして放っているんだろうけど、私の肉体と霊力が余りにも強いため、ただの煙発生機と化してしまっている。何かゴメンね。

 いや、待てよ。この瘴気はヤマメちゃんが分泌した物質(意味深)で出来ているんだろ?……吸わねば(使命感)。

 能力は『病気を操る(主に感染症)程度の能力』。読んで字の如く、この世に存在するありとあらゆる病原体を操る事が出来る能力を持っている。インフルエンザや黒死病でも何でもござれ、集団生活を基礎としている人類種の天敵に近い。最も、妖怪などの人外は身体が強いため、基本的に病気に掛かることはない。そのため、妖怪などが相手だと、基本的に相性が悪い。……病気を操る能力を持っているんだから、私が患っているヤマメちゃんやその他の幻想美少女の面々に対する恋の病も、全部このヤマメちゃんのせいとも言える(言えない)。

 

「妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい」

 

 瞳からはハイライトが消え、憎しみに満ちた表情を浮かべた美少女――橋姫、嫉妬妖怪の水橋パルスィ。

 稲穂の様にきらびやかに輝く金髪のショートボブで、目の色は宝石のように煌めく緑色。そして、何よりも目を引くのがクリクリ触りたいエルフ耳である。この幻想郷でも希少なエルフ耳である。他のエルフ耳は文ちゃんしか知らない。……私、この戦いが終わったら、パルスィちゃんの耳を思う存分弄くり回すんだ(謎のフラグ立て)。

 服装は、ペルシアンドレスに近く、服の裾などやスカートの縁などは、橋姫伝説の舞台となった宇治橋を彷彿とさせる、模様や装飾が施されている。

 橋姫伝説とは、簡単に言ったら、浮気され男に裏切られた女が、憎悪と殺意のあまり川に身を投げ、身も心も鬼と化し恨みを晴らした、という伝説だ。……取り敢えずパルスィちゃんが妖怪になる原因を作ったであろうクソ野郎は感謝と怒りと殺意諸々を込めて、十割の力で思いっきり殴ってあげよう。

 それと、これは私の直感なんだが、パルスィちゃんは未経験だと思う。相当身持ちが固かったのか、ただ単にそこまで行く前に裏切られたのかは定かではないが、恐らくは未経験だ。……喜べ童貞紳士諸君、パルスィちゃんはクソ野郎に汚されていなかった。そんなわけで、これから私が食べます(←)。

 

 前世の知識からは、親切で優しい性格をしている。その一方で、極めて嫉妬深く自身を卑下している節があり、自分よりも他者が幸せだったり、優れていると思えば嫉妬し、それとは逆に相手に嫉妬する部分が無かったら、自分自身の不幸話を自慢気に話し出すらしい。それと、もしも自分よりも不幸な相手がいたら、それに対しても嫉妬をするという、ね。……やだ、面倒くさい娘ね、可愛いわ。

 見た感じ、嫉妬心などの感情が暴走しているご様子。嫉妬すればする程、その力を速度を上げて、私に襲い掛かってきている。……嫉妬妖怪の面目躍如といったところか、だが当たらんよ。私に当てたければ、今の嫉妬心の千倍は持ってきなさいな。

 考えてみたら、相手を妬んでいる、嫉妬しているという事は、パルスィちゃんはそれだけ相手の良いところを探し出すことが出来ているという事実に他ならないよね。……やだ、この娘、本当に良い娘だわ。お姉さん興奮しちゃう。

 能力は『嫉妬心を操る程度の能力』。嫉妬妖怪、橋姫の彼女であるからこそ使える力。相手の嫉妬心を煽る忌み嫌われた力である。

 彼女にとって、嫉妬心とは力の源、周囲の嫉妬心を集めたり、自分自身の嫉妬心が高まったりすることで、パルスィちゃん自身の力は上がっていく。周囲が、自分が嫉妬すればする程、その力を増していく……感情に左右される珍しい能力だ。

 まぁ私としては、そんなパルスィちゃんが妬ましいんだけどね。

 本当に何だよ、あの可愛らしい顔立ちに、程よく引き締められつつも乙女としての最低限の魅力を内包した完全に整った抜群のプロポーションとかよぉ。私が今の肉体を創り出すためにどんな修行に励んだと思ってんだ。私が今の美貌を手に入れるために、どれほど試行錯誤して色々と邪道な手段まで使って此処まで磨き上げる事が出来たと思ってんだよ。ああ、妬ましい妬ましい本当に妬ましくてパルパルしいよ、このエルフ耳美少女め。あんまりふざけた事抜かすんだったら、お前のその犯し甲斐のありそうな身体を全力で蹂躙して、私の内より溢れ出るありとあらゆる嫉妬という嫉妬を暴力的な獣欲に変換して、足腰どころか、暫く気が狂ってしまうくらいにグチャグチャのドロドロに犯し尽くした後に博麗神社の寝室に監禁するぞコラ(早速、能力の影響を受ける幻想郷の守護者)。……さて、冗談はともかく、パルスィが嫉妬かわいすぎて生きていくのがパルスィ。

 

「■■■■■■■ッッッ!!!」

 

 目を真っ赤に染め上げ、空気を引き裂く咆哮を放つ一本角の美女――山の四天王が一人、鬼の星熊勇儀。

 鮮烈に光り輝く金髪のロングヘアー、瞳の色は血を浴びたが如き赤色。特徴的なのが、その額から誇らしげに突き出されている一本の赤い角である。角には黄色い星のマークが入っており、大人っぽい本人の顔立ちとの間に素晴らしいギャップを生み出しており、色んな意味でハートを撃ち抜かれてしまう。……可愛いですよ。勇儀姐さん!

 服装は、外の世界で言うところの……青春を生きている少年たちの心に同年代の少女たちが女であると認識させ、性の目覚めと共に新たな青春への道を指し示した禁断の衣服――体操服に酷似しており魅力的である。

 体操服は少女が着るという先入観があるが、勇儀姐さんが着ているとその魅力が別方向で増してくるのだ。本来体操服とは、少女の未成熟な身体を覆い隠す神秘のベールとしての側面を持つ故に、その先にあるであろう禁断の領域を想像させ、我々の心に熱い情熱を灯してくれる素晴らしい衣服なのである。しかし、これを勇儀姐さんが着ているとなると話が変わってくる。

 

――エロい。

 

 シンプルにエロいのである。勇儀姐さんは完全に美女だ。大人の女性としての、カッコイイ年上としての魅力を持った見目麗しき美女である。その美女である勇儀姐さんが、体操服を身に纏う。あの鍛え上げられた爆発ボディを体操服が覆い隠さんとするが、しかし、隠しきれず、その慎ましやかとは無縁の豊満極まりない、けしからん乳が「私は、私は此処にいるッッッ!!」と言わんばかりに自己主張するのだ。

 それが、どれほど私の心に耐え難き劣情を生み出したのか、体操服を押し上げ、動く度に窮屈そうに揺れるその二つの果実に魅了されたことかッ! 貴女は知らないだろうッ! どれだけ罪深い事をしているのかッ! このドスケベめッ!

 上はそんな状態であるにも関わらず、下は赤い線が入った青いロングスカートで、妙に清楚なところもポイントが高い。何だよ勇儀姐さん、アンタはエロスの暴力か? 私の精神力を試しているつもりなのか?……その日、博麗は思い出した。エロスに支配されていた興奮を、欲望のままに貪り尽くした快楽を(進撃のエロス)。

 

 ふぅ(聖女タイム)……前世の記憶からは、鬼らしく豪快で男気溢れる性格で、曲がったことや、嘘を吐くのも、吐かれるのも大嫌い。まっすぐ一直線にぶつかり合うその姿から、同性でも勇儀姐さんに惚れてしまう者も少なくない。……私も惚れてるぜ、あの男顔負けにカッコイイ勇儀姐さんが、私の手でヨガり狂って、可愛らしく鳴く姿を想像するだけで、私の心に秘められし剛直はそそり立ち、今すぐに勇儀姐さんのハートにある乙女の部分にドッキングしたいとだらしなく涎を垂らしているところだ(聖女タイム終了)。

 勇儀姐さんは鬼の本能に、人間を食らいたいという本能に飲まれているのか、私の事を熱心に見つめて、食べようとしている(食事的な意味で)。食べるためには、先ず殺さないと、とでも考えているのか、やたらめったらに殴り掛かってきている。……正気がぶっ飛んでて動きが単調すぎるから、見ないでも回避余裕なんだけどもね。

 別にひと齧りくらいならば、食べられてやっても構わないんだけどね(数秒で治る)。それに、勇儀姐さんの身体に私の一部が入って、そのままどうかしていくなんて……ああ、考えただけではしたなく濡れてしまいますわ。

 でも、ごめんね。今日は異変解決のために地底を訪れているから、勇儀姐さんに私を食べさせることは出来ないんだ。……次の機会にでも、ゆっくりゆっくり食べさせてあげるから、ね(恍惚のヤンデレポーズ)。

 能力は『怪力乱神(かいりょくらんしん)を持つ程度の能力』。怪力乱神とは、人知を超えた、不思議な現象や存在のことを指す言葉である。その名の通り、勇儀姐さんの身体能力などは、人知の想像を遥かに超える。咆哮しただけで木々をふっ飛ばしたり、地面を踏みならしただけで周辺の建築物を倒壊させるほど。

 恐らく、こと身体能力に関して言えば、鬼という種族の中でもトップクラスであり、幻想郷でも一部の例外を除けば、最高峰であるんじゃないか、と思う。

 私は、自分の力に自信を持っているであろう勇儀姐さんを真っ向から捻じ伏せて、無理矢理女であることを自覚させ、快楽という快楽を身体に刻み込んであげたい、とか考えているけどね。……ぶっちゃけ、あの引き締まった腹筋とか二の腕をペロペロしたい。したいッ(食い気味)

 

「首だ、首だ、首だ。……え、首ぃ? 首だぁ!」

「病んだッ!? 病んだのッ!? アハッ、アハハハッッッ!!!」

「■■■■ッ!? ■■■■■ッッッ!!!」

「妬ましい、妬ましくない、妬ましい、妬ましくない。……ねた、ましい? 妬ましいッッッ!!!」

 

 東方地霊殿。――その登場人物である美少女妖怪たちが、私達の前に立ち塞がった。

 

 知識としては知っているけど、実際に目にしてみると……うむ、大変ふつくしいね!

 一人一人、魅力的な個性に満ち溢れていて、見ているだけで得した気分になっちゃうよ! ちょっと個性強すぎやしないかって巫女思うんだけどね!(光速ブーメラン)。

 

 見たところ、四人共完全に暴走しているご様子。

 ふむふむ……ナルホドォ、それぞれの妖怪としての側面が、強制的に表に引き出され、自分自身を一切制御出来ないようになっているみたいだね。

 

 キスメちゃんは、釣瓶落としらしく、人間の首を求めて狂い。

 ヤマメちゃんは、土蜘蛛らしく、周囲に病魔を撒き散らす。

 パルスィちゃんは、橋姫らしく、強烈に他者を妬み、その力をどんどん高めていく。

 勇儀姐さんは、鬼らしく、人間を拐い食らおうと、その暴力を本能のままに撒き散らす。

 

 そんな姿を見ても、可愛い結婚したいとすら思えてしまっている私は、そろそろ頭がパッパラパーになっちゃっているのかもしれない(元から定期)。

 

 そして、あの娘達の力、思ったよりも強い。……私の目測になるが、最低でも私の本気の三割弱程度の力は確実に持っている。

 私の三割弱程度と言えば、単騎で(一部の例外を除いた)幻想郷を滅茶苦茶に蹂躙し、滅ぼす事ができる程度のポテンシャルを持っていると考えて貰って良い。……やだァ、地底組強すぎィ。

 

 何がどうしてこうなった。パワーインフレも甚だしいぞ(←インフレの象徴)。

 

 まぁ、私の手に掛かればこの程度は脅威の内にも入らなんだけどね。幻想郷を滅ぼせるとは言っても、所詮は三割程度の力、どれだけ数を揃えたところで、幻想郷最強の人間()と呼ばれている、この博麗霊夢様に勝てる道理などないのである。

 

 現に、手を抜いている今も、誰一人として私に一撃を与えることが出来ていないからね。……決して、決して、今のシリアスな状況を利用して彼女たちを視姦しているとかそんな事実は何処にも存在していない、ないったらない。

 そもそも幻想郷の守護者である、この私がそんな邪で救い難い事をするわけがないだろうが、いい加減にしろッ!(脳内で連続シャッター音)

 

「綺麗なうなじ、お姉さん綺麗、首、首頂戴?……ねぇ、首、首を、首を寄越せぇぇぇ!」

 

 お、妖怪首おいてけかな? あげないけども。

 いや、流石の私でも首チョンパは潔く死ぬしかないんで、止めてくだされ。

 まぁ、私のうなじをガン見してくるのは興奮するので、正直アリだと思う。……首チョンパ的な意味じゃなければね!

 しかし、ペロペロ的な意味だったらいくらでも許す。むしろ私がペロペロしたい。キスメちゃんのツインテールに隠された愛らしい首筋をペロリと一舐めしてあげたいのだよ。

 

「病めっ! 病めぇ、ひっぐ、病めぇ、ぐすん」

 

 お前が病んでるんだよぉ!

 いくら病魔マシマシの瘴気をぶつけてきたところで無駄である。私が病気に掛かることなどないからなっ!(馬鹿は病気にならない)

 全然、病を発症しないからか知らんけど、ちょっと涙目になっている気がしないでもない。……あ、ごめん。普通に泣いてたわ。本能全開で狂ってる筈なのに、ガチ泣きしちゃってるわ、この娘。

 それでも健気に瘴気を飛ばし続けるヤマメちゃんの姿に、私の心が刺激されちゃって、愉悦的な笑みが出そうになっているのは此処だけの話だ。……これが、恋か。

 

「私、妬ましいの。貴女綺麗だから、分かるでしょ? 妬ましいの、ね? 分かってるでしょ? 聞いてるの? 無視?……そう、妬ましいわ」

 

 うん、妬ましいね!(挨拶)

 他の面々と比べて、積極的に攻撃してくるわけではないけど、「妬ましい、妬ましい」とパルパルしながら、私を睨みつけ、親指の爪を噛んでいる。……うーん、後であの親指をしゃぶらせてくれないだろうか?

 ある意味では一番正気なのかもしれない。感覚的には、気持ち的にパル度が五割マシされているだけだしね。

 そもそもの話、一般的に見たら、完全におまいう状態だからね。普通の人からしてみたら、エルフ耳で超絶美少女である上に実力派スレンダーなパルスィちゃんは、嫉妬通り越して憎悪で人が殺せればレベルの存在だからね?

 かく言う私も色々と嫉妬しすぎて、君に対して博麗式の妬ましいドッキングを試みたいなんて考えているんだからね?

 

「■■■■■ッ! ■■■■■■■ッ!?」

 

 フゥハハーッ! 残念だったなァ! 本体だよォ!

 眼前に迫った勇儀姐さんの拳を、手の平で受け止める。……壊れやすいガラス細工を扱うように、柔らかく丁寧に受け止める。

 一番原型を留めていないのが勇儀姐さんである。言語中枢がぶっ飛んでいるのか、咆哮すらも意味不明。理性なんてものは欠片も感じられず、ただ本能のままに動き回っている。……その荒々しい姿、まさにバーサーカー。地底のバーサーカー、ほし☆ぐま〜勇ちゃん爆誕である。

 受け止められた拳を振り解こうと必死になっているが、そんなか弱い腕力じゃあ、他の有象無象はどうにか出来ても、この博麗霊夢様が相手じゃあ、どうにもならんぜぇ。

 更に、拳を解かせて、勇儀姐さんの指の間に、無理矢理私の指を絡ませ、強制的に恋人つなぎにする。マッサージする様に指をグニグニすると、姐さんの柔らかい手の平の感触などがダイレクトに楽しめちゃう。……ああ、身体が火照ってしまいます。

 

 うん、地底たのしいぁ(お目々グルグル)。

 じゃあ、そろそろ脳内フォルダも満tげふんげふんっ……様子見も終わったし、無力化しますかねぇ。

 

「く、びゃいッ!?」

「やめぇッ!?」

「妬ましぇいッ!?」

「■■ッ!?」

 

 四人の動きが止まったやろ? これな、ただ威圧しただけや。

 強い意思と霊力を込めて相手を睨みつける。ただそれだけの攻撃とも呼べないもの。だが、それも私の域まで昇華させれば……。

 

「ひぅ(腰が抜け、内股で倒れている)」

「や、めぇ(首をイヤイヤ振りながら後退る)」

「……(呆然としている)」

「ふぅーッ! ふぅーッ!(警戒する猫となった、やまのしてんの)」

 

 こうして、威圧だけで相手を無力化することも可能である。

 名付けて、博麗さんの覇気(ネーミングセンスの鎌足)。某海賊漫画で言うところの覇◯色の覇気に相当する、私だけの技である。

 別に数百万人に一人の王の資質なんて持ってないし、海賊王なんぞになる気など微塵たりともないけども、まぁ、この幻想郷全て(の美少女)を手中に収めたいとは考えているので……ガチレズ王に私はなるッ!(性欲の鎌足)

 

「さて、どう料理してくれようか」

 

 目には目を、歯には歯を、攻撃には攻撃(性的な)をが私のモットーですからぁ。

 妖怪としての本能すらも捻じ伏せられ、ただの少女のように震え、怯えている少女たち。私が少し近付けば、更に恐怖で一段と震えを大きくしてしまう。……そう怯えることもなかろうに、全く愛らしい娘らじゃのう。

 

「こらこら、逃げるな」

「「ッ!?」」

 

 逃げられちゃうとちょっとだけ面倒くさいので、逃げられないように結界で逃げ道を塞ぐ。

 はっはっはっ、何処へ行こうと言うのだね? 気分はラピュタ王。今なら「見ろ、人がゴミのようだ!」と言ったムスカの気持ちが理解できる気ガスる。私の場合は「見ろ、美少女がダッチのようだぁ!」だけども(最低発言)。バルスはヤメロォー!

 

 震える彼女たちに近づき、私は――

 

「安心しろ、怖がらせてすまなかったな」

 

――ただ優しく抱き締めた。

 

 勇儀姐さんはともかく、他の三人は比較的小柄だったから何とか全員一緒に抱きしめることが出来たぜぃ。

 

「「……?」」

 

 何が起こっているのか? 何をされているのか? 理解できていないような表情でキョトンとしている四人の姿に珍しく、普通にほっこりしている私がいる。

 私としては暴走しているとはいえ、美少女を、それも大好きな幻想郷の少女たちを傷つける事はしたくないからね。……私が持つ手の中でも一番穏便な手段を使わせて貰った。

 それに、今の彼女たちは半ば妖怪としての本能……つまり、理性が薄くなり獣に近い思考となっているために、私が圧倒的捕食者(意味深)だと理解すれば、無力化出来るだろうとも考えていた。

 結果は目論見通り、無力化に成功。ちょっと効き目が強すぎて怖がらせてしまったのだけが、失敗だったかな。私って威圧の加減が分からんからね。ごめんね。

 

 おーよしよし、怖かったね―。ごめんねー、お姉さんちょぉっと大人気なかったね―、ほーらよーしよしよしよし!

 某動物博士も真っ青な勢いで、四人の頭をナデナデしつつ、警戒心を無くしてもらうために、頬を寄せて親愛の証のほっぺたスリスリである。この時のポイントとしては、あんまり力を込めないで、抱擁することである。抜け出そうと思えば抜け出せる、それくらいの力加減で、優しく、信頼してもらえるように、温かく接することが大事である。……私はそれを幻想郷の少女たちから学んだ。

 

「綺麗な首のお姉さん、怒ってない?」

「フフッ、怒ってないよ」

「そっかー……えへへ」

 

 私のスカートにしがみついて、上目遣いに様子を伺うキスメちゃん。……うん、可愛いね。こんな可愛い娘を怒るわけないじゃない。

 安心させるために、しっかりと目を合わせ優しく微笑む。

 どうにか安心してくれたのか、キスメちゃんは、にへらっとあどけなく笑ってくれた。……これが和睦ッ! 圧倒的ッ! 和睦ッ!

 

「病む?」

「そうだな、実は病んでいるんだ」

「本当?」

「ああ、ちゃんと病んでいるさ」

「……何の病?」

「フフッ、内緒だ」

 

 オイラは掛かっちまったんだよ。……恋煩いと言う名の病になぁ! お前に、お前に恋してんだよぉ! ヤマメェェェ!

 勿論、ヤマメちゃんだけでなく、此処にいる地底組や、地上にいるディアマイフレンド達も恋しく思っている。

 え、節操なし? このレズビッチ、だって? うるせぇ黙れぶっ殺すぞ。……別に節操なしなんかじゃないですー、ただ恋多き乙女なだけなんですー、むしろ前前前世から恋してるんですー。

 だから、私と幻想郷の乙女たちは純愛、イイネ?(恐いくらい笑顔)

 

「あの、私妬ましくて、それで、あの」

「フッ」

「あのっ、あのっ……あぅ」

「何も言わなくて良い、大丈夫だ。全部、分かっている。お前が何を思って人を妬むのかも、その嫉妬心の中で、どれだけの尊敬と憧れを抱いてくれているのかも全て、な」

「……ね、妬ましい」

 

 状況が変わりすぎて着いていけていない様子のパルスィちゃんの頭をイイ子イイ子しながらのイケメン発言である。……さっすが、私ぃ! 普通の野郎どもには出来ねぇ事を平然とやってのけるぅ! そこに痺れて憧れてぇ!(大体覇王モードぱいせんのお陰である)

 私のありがたい言葉を受けたパルスィちゃんは、ちょっとだけ頬を染めながら、照れている様子を誤魔化すように、ツンっとした態度を取り繕って、私から少しだけ顔を背けてしまった。……何だよこの娘、ただでさえ属性過多の癖に、今度はツンデレまでも開拓しようと言うのか、良いぞ、もっとやれぇ!

 

「にゃあ♪(背後から霊夢に抱きついている、やまのしてんの)」

「お前はどうしてそうなったんだろうな?」

「はにゃ?」

「かわいい……こほんっ、何でもないぞ」

 

 背中に幸せな感触が当たり、肩口からは首に顔を擦り付けている勇儀姐さん。私の胸元に手を回し、ひっしりとしがみついている。

 先程まであったバーサーカーな様子は微塵もなく、幼子の様に無防備で無邪気に笑っている。……まさか、私の覇気一発で狂気が残らず消し飛び、鬼の本能すら押し潰されるとは思わなかった。この博麗の目を持ってしても、こんな事は予想できなかったぞよ。

 その代わり、勇儀姐さんは、古今東西あらゆる場所に存在しているマスコットキャラクターすらも素足で逃げ出すほどの、圧倒的愛らしさを手に入れてしまった。

 大人の魅力に溢れた爆乳ダイナマイトボディと、飼い主に甘える子猫の様な態度、二つの間にある余りにも大きなギャップが、この煩悩に支配されていた筈の私の邪なる精神すらも蹂躙し、穏やかに温かく、勇儀姐さんの愛らしき姿を見守ることしか出来ない。……ば、馬鹿なッ、この私の百八を余裕で凌駕している筈の煩悩がッ、百合の王である、この私の性欲が負けるッ!? そんな事がッ、ある筈がッ!(茶番)

 

「流石は霊夢さんですね。この地底でも有数の実力者を、あんなに簡単に手玉に取るなんて」

「強い強いとは思っていたけど、此処まで来ると普通にドン引きものなんだけど……本当に人間なの? 霊夢」

 

 さとりちゃんは、素直に感心した様子で、こいしちゃんは、心底ドン引きした様子で、各々反応を示す。……さとりちゃんはともかく、こいしちゃんは些か失礼すぎるんじゃなかろうか? どっからどう見ても私は人間じゃないか(←笑顔で神や妖怪を殴り殺せる人類)。

 

 まぁ、それはともかく地霊組の四人が暴走していた理由が分かったぞい。

 

「……さとり、こいし、恐らくアレが彼女たちを狂わせていた元凶だ」

 

 恐らくと言いつつ、これはもう確信なのだが……これ、明らかにあの太陽が原因だよねー。

 私の目測と推測になってしまうが、あの太陽は『意思を持って動き回る知的生命体全てに干渉し、強制的に進化させている』のである。

 進化とは本来、長い時間を経てゆっくりと行われるもの。それを、短時間で強制的に引き起こす。するとどうなるのか?……地底組の様子を見て分かる通り、暴走する。進化と共に肥大化していく妖怪としての本能に理性を飲まれて、暴走してしまうのだ。

 力の代償は安くはない。力の代わりに理性が吹き飛び、自分自身を制御できなくなる。ただただ己の本能が求めるままに、襲い、殺し、食らうだけの生き物となってしまうのだ。

 地底組もかなり危なかったが、今は何とか沈静化させる事に成功している。今は、私の霊力で太陽からの影響を完全にシャットアウトしている状態だ。……暫くしたら、完全に正気に戻るだろう。それまではちょっと頭おかしいままだけども。

 

「じゃあ、アレを壊しちゃえば今回の異変って半分以上は解決したことになるね! 霊夢だったら壊せるでしょ? 人間やめちゃってるし!」

 

 こいしちゃんが言うように、太陽をどうにかした方がいい、そう思うかもしれないが、問題が一つあってな。……後、無意味に煽るの止めないと、お仕置きするよ?(菩薩の笑み)

 

「太陽なのに、声が……うそ」

「お、お姉ちゃん? どうしたの?」

「れ、霊夢さん。……あ、アレは、あの太陽は」

「さとり、心を読めるお前ならば理解できた筈だ。そう、あの太陽は――」

 

――霊烏路空そのものだ。

 

 正確には、霊烏路空――お空ちゃんという存在の意識が僅かに混ざり込んでいる、と言った方が正しいね。

 あの太陽に意識を集中させてみて、違和感を感じた。太陽特有の膨大な熱を孕んだエネルギーに混じって、ほんの僅かに匂う妖力。……それは、さとりちゃんからも感じた、お空ちゃんの妖力に他ならない。

 勿論、あの太陽自体にお空ちゃんがいるわけではない。……あの太陽とお空ちゃんの間に強い繋がりの様なものがあるのだ。

 あの太陽が傷つけば、お空ちゃんの精神にダメージが入り、逆にお空ちゃんの精神が壊れれば、太陽の力が弱まる。つまり、アレとお空ちゃんの間には相互関係にあるのだ。

 

 それ故に、あの太陽を消すことは出来ない。あの太陽を消してしまった場合、もしかしたらお空ちゃんの精神そのものが消えてしまうかもしれないからだ。

 さとりちゃんからの依頼は『お空を助けて欲しい』というもの、依頼人の願いを破るのは博麗の巫女の矜持に反する行為だし、何よりも私自身が幻想郷の美少女を傷つける行為を許容できない。そんな事をするくらいなら、死んだ方が遥かにマシだ。……ちっ、八咫烏、あの烏め、本当に厄介な事をしてくれる。

 

 意識を今いる場所よりも更に地下深くに集中させる。そして――感じ取れたのは、異常な熱量と膨大な神の力である。……そこに異変の元凶が、八咫烏に精神を乗っ取られた空ちゃんがいる。

 

「お空を、お空を助けないと。あの子の声が、声が聞こえたんです。「恐いよ、助けてさとり様」って、泣いてるあの子の声が、あの子の声がっ」

「霊夢、お空はっ、お空は大丈夫だよねっ!? 死んじゃってないよねっ!?」

「ああ、今のところは無事だと思う。……だが、さとりが聞いた声から悠長にしている時間はなさそうだ。これ以上、お空を怖がらせたままだと、私達が救出する前に、お空の精神が壊れてしまうだろう」

 

 自分の身体を得体の知れないナニか巨大なバケモノに操られているのだ。

 意識はハッキリしているのに、何一つ自分の意志で身体を動かすことが出来ず、自分の身体は周りを滅茶苦茶に壊していく。家も町も何もかも、大切な家族でさえも、一切合切全てを燃やそうとする。

 抵抗なんて出来ず、ただただ黙って成り行きを見ていることしか出来ない。……誰だって恐いし、私だって恐いと思うだろう。

 

「あ、あぁ」

「そん、な」

 

 直接お空の声を聞いたであろうさとりちゃんと、お空の現状を知ったこいしちゃんの二人は、呆然とした顔で立ち尽くしていた。

 見た感じ、さとりちゃんは自分の力の無さを嘆き、こいしちゃんは自己嫌悪に陥っていると見た。……幻想郷のありとあらゆる美少女を目にしてきた私にっては、表情から相手の心境を読み取ることなど容易いことだ。

 

「しっかりしろ! 古明地さとり! 古明地こいし!」

「「っ?!」」

「敵はただ一人、我々は三人。……何を嘆く必要がある、何を嫌悪する必要がある、恐怖は捨てろ、前を見ろ、進め、決して立ち止まるなっ!」

「れ、霊夢さん」

「霊夢」

「退けば老いるぞ、臆せば死ぬぞ……なんてな、安心しろ、お前たちには私という力がある。この私の命に懸けても絶対に救ってやるさ」

 

 ハッピーエンドをお届けってねぇ! この私に助けられない美少女なんていないんだよぉ! 徹底的にっ、完膚なきまでにっ、完全でスタイリッシュに全てをハッピィィィセットにしてやんよぉぉぉ! ヒィィィハァァァ!(無駄にハイテンション)

 さぁ、君たちも私と一緒に馬鹿みてぇなポジティブ精神でお空ちゃんを助けに行こうぜ!

 気持ちから負けてたら駄目だ駄目だ駄目だッ! どうしてそこで諦めんだよ! 君たちなら絶対立ち上がれる! 立てっ! 立って一緒に戦うんだっ! ネバーギブアップッ! 古明地ぃふぁいとぉーッ!

 

「そう、ですね。そうでした。あの子の事を思うなら、こんなところで嘆いている場合ではないですよね。……くすっ、ありがとうございます。霊夢さん」

「あぁぁぁもうっ! そうだよ私が切っ掛けになったんだから、何としてもお空を助けなきゃいけないんだよっ! クヨクヨするの終わりっ!……えーと、一応、ありがと、その激励してくれて」

「礼には及ばん。……さて、残りの問題は」

 

 私にしがみ付いてひっつき虫と化している、地底組をどうするか、だけども。

 

「……♪(にぱぁー!)」

「むぅ、何の病?(胸に顔を埋めている)」

「綺麗、妬ましい。カッコイイ、妬ましい……温かい、妬ましい(嫉妬妖怪赤面パルパル)」

「なー(背中から覆い被さったまま微睡んでいる)」

 

 うむ、幸せであるっ! って、違う違う違う違う違う、いちゃいちゃしている場合ではないってーの!

 

「お前たち、少し離れてくれ、話がしたい」

「やー!」

「やだ」

「嫌」

「ふしゃあーッ!」

 

 首を振るんじゃない、指に噛み付くな、胸に爪を立てるな、髪を引っ張るな、服が伸びるから強く引っ張るんじゃない、耳を舐めるな、首が痛い痛い痛い痛いっ、いでででっ!?……おい。

 

「いい加減にしろよ? 嫌いになるぞ?」

「「っ!? もっとやだ!」」

 

 驚きの速さで私から離れて、その場に正座する四人。……おや、どうして震えてるのかな? かな? 私ってばこれ以上無いくらいに笑顔なのにね? 自分でも分かるくらい口角上がってるし、目なんて優しく見守るように細めているつもりなんだけどねぇ?……失礼、ちょっと取り乱したね。

 

「こほんっ、別に怒っていないからそんなに怯えるな。……お前たちに頼みがある」

「頼み?」

「うにゃあ?」

「私達が行ったら、此処から先に誰も通さないで欲しい」

 

 明らかに地上からこっちに向かってきている面々がいるんだよね。……気配から、恐らく魔理沙たんを始めとする魔法使い三人娘。ヤバげな気配の幽香。神奈子ちゃん(何か少しの間だけ気が爆発的に膨れ上がっていたけど、何だったんだアレ)を除いた守矢神社の二人である。

 何でこいつら地底に向かってきてんだよってツッコミはこの際しないけど……正直なところ今回は来てほしくなかったなー。

 

 これからお空ちゃんを救う私としてはイレギュラーは避けたいところだ。

 上からやってきた面々はお空ちゃんの事情も知らないだろうし、幽香や早苗とぶつかればお空の命がマッハでヤバイ、あの娘達は私ほど手加減上手くないしね。

 それに、幽香や早苗以外の面々がぶつかった場合は実力不足でお空ちゃんに殺されかねない。いくら私でも死者蘇生は無理だからね。危険地帯に友人たちが来るのを見過ごすわけにはいかないのだよ。

 あの娘たちが異変に介入したら、幽香や早苗がやり過ぎないように注意しないといけないし、他の面々も死なないように、怪我をしないように守らないといけない。

 そして、そうなってしまうと、私はお空ちゃんに集中できず。救えるものも救えなくなってしまうだろう。……だから私が異変を解決するまでの数刻の間、地底組にこの場所を守っていて貰いたいのである。

 

「頼みを聞いてくれたら、ご褒美をやるぞ?」

「まかせてっ!」

「頑張る!」

「ご褒美、妬ましい。……欲しい」

「ニャァァァァァ!」

 

 おお、やる気満々だね、良い事だ。……何気に他の面々が正気に近付いていっているのに、勇儀姐さんだけ猫化している気がしないでもない。

 あんまりにも素直だからか分かんないけど、気のせいか、四人の頭にケモミミが、そして、お尻の方には尻尾が揺れている様にすら見える。……ふぅ、疲れてんのかな、私。

 

「此処は四人に任せて、私達は先を急ぐぞ」

「はいっ!」

「おっけー!」

 

 四人の愉快な地底組に見送られながら、私と古明地姉妹は、更に地底の奥深くへと進んでいく。その先で待ち受けるお空を救い出すために……私達の冒険はこれからだぁ!

 

――博麗霊夢の次回作にご期待下さいっ! さとりちゃん大好きぃぃぃ! こいしちゃんも大好きぃぃぃ! いえーい!

 

 シリアスな空気に耐えきれなかったんや、許して。

 あ、心を読んだらしいさとりちゃんに脇腹抓られた。地味に痛い。……「こんな時に恥ずかしいことを言わないで下さい」? ごめん、ごめんって。

 そして、何かを察したらしいこいしちゃんにも反対側の脇腹を抓られた。だから地味に痛いってば。……「何か、急に恥ずかしくなったから」? 許さんっ、許さんぞぉ! テメェの血は何色だァァァ!

 

 古明地姉妹とじゃれ合いながら、私はお空ちゃんを救うために進む。悲しいシリアスを破壊し、楽しく幸せなシリアルを、地底に広めるためにっ! そう――

 

――お空ちゃんにも私のシリアルを食わせるためになぁ!(意味不明)

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

――太陽。

 

 地上にあると言われている、煌々と燃え盛る巨大なる火の玉。空よりもずっと高い場所にあると言われている、全てを照らし出す恐るべき光の塊である。それが。どうしてなのか――

 

「ぎゃあぁぁぁああ!? あづぃあづぃよぉぉぉおお!」

「何だっ!? なんだぁっごりゃあぁぁぁああっ!?」

 

――燃えていた。

 

 この地上から遠く離れた地の底で、地底の暗闇を引き裂き、全てを照らし出して燃やしていた。町も、そこに住まう住人たちも、全て、何もかも全てを、その大いなる熱量で以て、燃やし尽くしていた。

 何故? と疑問に思う暇もない。力の弱い存在は、太陽の威光の前に為す術もなく、火達磨となり灰になって散るしか無い。

 

「これれれれれががががが?!」

「ヒッヒッヒャァァァアアアハッハッハッハッハッ!」

 

 否、灰になり燃え散った者達は、まだマシだったのかもしれない。

 熱に強かったが故に生き残った者、妖怪としての力が優れてたが故に生き残った者。目の前でいきなり起こった異常事態に呆然と佇んでいただけの彼ら、彼女らにも異変が襲い掛かる。

 お歯黒を塗りたくった口だけの女は、壊れたように叫び出し、その姿を徐々におぞましいものへと変質させていき。

 鬼の系譜に面なる妖怪だった男は、理性を無くしたように壊れた形相で笑い狂い、全身を肥大化させながら力の限りに暴れ回る。

 

――進化。

 

 あるいは成長。

 妖怪としての本能が活性化され、力が高まっていく。理性が蒸発し、まともな思考が出来なくなる。獣以下の存在へと成り下がり、ただ本能の赴くままに暴れ回る事しか出来ない。

 

 下位から中位の力持たない妖怪たちは、一瞬にして己の本能に飲み込まれケダモノと化してしまった。やがて遂には――

 

「ぐっ!? あ、たまがっ割れちまうっ!」

 

――上位の妖怪さえも。

 

 此処にいる一人の鬼、山の四天王と呼ばれる星熊勇儀もまた、己の中で暴れ回る鬼としての衝動に抗っていた。

 直接脳みそを掴まれて全力で振り回されているかのような、とてつもない衝撃が断続的に、勇儀の理性を押し潰そうとしてくる。

 常人ならば、例え妖怪でも一度も耐えきれない恐るべき衝撃。それに耐えられているのは、勇儀の精神力が他を凌駕する程、呆れるほどに強靭だったからに他ならない。

 

「は、ははっ、なんのっこれしきっ!」

 

 勇儀は一人、ギリギリの瀬戸際で正気を維持しながら動く。自分の仲間を守るために、動き出す。

 

「ぎゃはははははっ! 死ねぇぇぇぎゃばぁっ!?」

「おやっさん、あんた、あんなに喧嘩嫌いだったじゃないのさ」

 

 行き付けの飲み屋の店主。喧嘩はするのも見るのも嫌いと言い切った。地底に似合わないヘタレた妖怪を気絶させる。

 

「女ぁ! 女だァァァ!」

「馬鹿野郎、お前この前婚姻を上げたって言ってただろうが」

 

 舎弟の一人。この前、仲睦まじそうに結婚の報告に来ていたそいつ。心底嫁さんを大事にしていたソイツも気絶させる。

 

 一人ずつ、一人ずつ、傷つけないように、傷つけないように、丁寧に気絶させていく。

 己の理性を必死に繋ぎ止めながら、暴走しそうになる己を律しながら、住人たちを気絶させ、地底の町から遠く離れた場所に移動させていく。

 

 此処は、この地底の町は勇儀のシマだ。此処にいる奴らは己のシマの者達だ。ならば、此処を取り仕切る者として、彼ら彼女らを守らないわけにはいかない。否、自分の誇りに懸けても守らないといけない。

 じゃないと、自分は嘘吐きだ。此処で一番強いのに、此処で一番頼りになるのに、誰も守れないなんて、あって良い筈がないのだ。

 

「ごふっ、でも、流石に全員、運ぶとキッツいねぇ」

 

 勇儀は満身創痍だった。今の万全とは程遠い体調で、この地底の町に住まう殆どの妖怪たちを相手にするのは、如何に勇儀と言えども無謀に等しい行為だ。その上、相手を殺さないように、あんまり傷つけないように加減しながら戦わないといけなかった。

 

「ごぼっ、駄目だ、ね。こりゃあ」

 

 その代償として、勇儀は最早指一本として身体を動かすことが出来ないほどに消耗してしまっていた。これでは――

 

「ぐぎ、がっ、やっぱり、な。万全でもっキツかったん、だ。耐えられ、ない、よなっ」

 

――理性が崩れていく。

 

 その強靭な精神力で抑え込んでいた鬼の本能、破壊衝動が表に出てこようとする。万全の状態ならばいざ知らず、今の勇儀にはそれを止める術はない。

 

「ぐうぅぅぅ! あぁっ!?」

 

――理性が本能に飲み込まれていく。

 

 勇儀の感情が、暴力的な鬼の衝動に支配されていく。理性が、破壊し、略奪し、食らい尽くす、怪物的な衝動に飲み干されていく。

 

「があぁぁぁああ■■■■■ッッッ!」

 

――意識が消失する。

 

「■■■■■■■■■■ッッッ!!!」

 

 咆哮だけで周囲の建物を軒並み吹き飛ばす破壊の権化、鬼の本能に支配されし狂戦士が誕生した。

 

 

――別の場所では……。

 

 

「何、アレ」

 

 土蜘蛛、黒谷ヤマメは、地上にある筈のない、ソレを見て、呆然と頭上を見上げることしか出来ない。

 かつて、遠い昔、まだ己の種族が地上に住んでいた頃に見ていたソレ。何よりも高い天から地上を照らし出す光の塊――太陽。

 

「いつっ!? 頭がっ」

 

 呆然と太陽を見つめていたヤマメの頭を衝撃が突き抜けた。

 進化を促す陽の光が、ヤマメの妖怪としての本能を強く、強く刺激する。

 自分の頭から止めどなく衝動が溢れ出てくる。妖怪としての土蜘蛛として、世界中を病魔で満たせ、という強い衝動。この世全ての存在を病ませ、土蜘蛛の威光を知らしめん、という衝動だ。

 意識していないのに、ヤマメの身体から徐々に病魔が溢れ出す。風邪などの定番なものや、人一人を簡単に壊してしまいそうな恐ろしい病原体まで、多種多様な病魔が、彼女の身から溢れ出していく。

 

「病ませ、ないと」

 

 土蜘蛛の本懐を果たせと声が聞こえる。本能が叫んでいる。生き物を病魔で侵せと。人間を病ませ、その負の念を食らいつくせと痛いほどに叫んでいる。

 

「あはっあははハハハッ!」

 

 抗いなど無意味。加速する進化は、ヤマメの意識を土蜘蛛の本能の奥深くへと沈め込んだ。

 

「病め、病め、病め、病め、病め」

 

 土蜘蛛。かつて地上の人間どもを震え上がらせた病魔の化身が、再びその力を奮わんと、歪んだ笑みを浮かべた。

 

 

――また別の場所では……。

 

 

「うぅ、何これ」

 

 桶に身を隠せるほどに小さな少女。妖怪、釣瓶落としであるキスメが、その身を震わせていた。

 キスメは恐怖していた。目が潰れてしまいそうな眩い光が、膨大な熱量を孕んだその火の玉が、恐ろしくて仕方なかった。

 キスメは地上を知らない。地底で生まれ、地底で育った妖怪だ。そのため、目の前にある火の玉――太陽などを見たことは一度もない。

 初めて目にする太陽は、その暴力的な光と熱で、キスメを恐怖させたのだ。

 

「う、あぁぁぁあああっ!?」

 

 そして、進化が始まる。

 キスメの頭の中で、妖怪釣瓶落としの本能が暴れ狂う。釣瓶落としの性――即ち、人間の首を落とし、食らいたいという食欲。

 

「首、首、首首首首首首首首首首ッ!」

 

 しかし、地底には人間はいない。故に衝動はそのまま破壊的なソレへと変化し、手当たり次第に、周囲に撒き散らされていく。

 偶々、近くを通り過ぎた妖怪へ、首に似た形の灯籠へ、人の首を思わせるものを目にした瞬間。キスメはそれを刈り取らんと、その手に持った鎌を振り下ろす。

 

「首を寄越せぇぇぇ!」

 

 釣瓶落とし。鬼火と共に現れ、旅人の首を切り落とす人食い妖怪は、その本能に導かれるままに、首を探して地底を彷徨い歩く。

 

 

――また別の場所では……。

 

 

「あんなに光り輝くなんて、妬ましいわね」

 

 嫉妬妖怪、水橋パルスィはいつも通りに嫉妬を顕にしながら、頭上に輝く光の塊を睨みつけていた。

 自然現象だろうが、何だろうが、あんなに光り輝いているなんて妬ましい。自分とは比べ物にならないくらいに誇らしげに地底を照らしているその在り方が妬ましくて妬ましくて仕方ない。

 

「ん……何、今の?」

 

 嫉妬妖怪であるが故に、太陽にすら嫉妬しているパルスィ。

 そんな彼女にも進化の光は容赦なく襲い掛かる。……しかし、暴走していた他の面々と比べると大人しい。頭を痛める素振りも、見た目に変化が起こったわけでもない。

 ただ――

 

「あぁ、妬ましいわ。本当に……全部全部妬ましい」

 

――明らかに何かが変わっていた。

 

 見た目に変化も、言動に大きな変化もない。だが、何かが、彼女の何かが大きく変化した。

 今まで以上の嫉妬が込められた視線は、憎悪すら感じさせ、この世全てを恨んでいると評しても何ら可笑しくはないおぞましさを孕んでいた。

 彼女は嫉妬妖怪、嫉妬心を糧に力を得る妖怪だ。そのため、彼女の本能は嫉妬する事に終始する。何よりも、誰よりも卑屈に、嫉妬深く他者を見やる。

 

「あの太陽も、この地底の町並みも、狂う者共も、私達を地底へ追いやった地上の奴らも、皆っ、皆っ、皆っ! 妬ましいッ!」

 

 妬めば妬むほど、嫉妬すれば、嫉妬するほどに、ドス黒い憎悪に染まった妖力がパルスィの身体から立ち上る。今、この瞬間にも、より強く、より深く、この世全てを己の嫉妬で染め上げんと、その勢いを増していく。

 

「あはっ、はははっ……最高よ、最高に妬ましいッ!」

 

 橋姫。かつて裏切られ、その復讐を果たした嫉妬の妖怪。この世全てを憎まんと、その嫉妬に塗れた瞳で何処までも卑屈に世界を睨みつける。

 

 

 地底の妖怪の中でも特に強力な力を持った存在へと進化を果たした。四人の少女たち。

 

「■■■■■ーッ!」

 

――暴力の化身となった鬼、星熊勇儀。

 

「病め、病めぇぇぇ!」

 

――病魔の化身となった土蜘蛛、黒谷ヤマメ。

 

「首、首、首だッ」

 

――首刈りの殺戮者となった釣瓶落とし、キスメ。

 

「皆、強いのね。……妬ましい、妬ましいわ」

 

――嫉妬に塗れ憎悪の塊となった橋姫、水橋パルスィ。

 

 各々、進化して手に入れた力を思い思いに奮い、地底で暴れ回っていた。

 このまま、このまま、己の本能に飲み込まれ、全てを破壊し尽くすまで止まることなない。……そう思われていた。そう――

 

「成る程。……これが私に助けを求めた理由の一つか」

 

――博麗の巫女がいなければの話であるが……。

 

 地底に訪れた、人間の巫女。

 見ただけで鬼の本能を刺激され、食らってしまいたいと衝動が暴走してしまう美味そうな人間。

 見ただけで病に侵してやりたいと思った、病ませ甲斐のありそうな人間。

 見ただけでその首を落として、食らってやりたいと思った綺麗な人間。

 見ただけで嫉妬に狂い、その全てを台無しにしてやりたいと思った完璧過ぎる人間。

 

 襲い掛かろうとした。本能に任せて、進化して強大になったその力で、その巫女の全てを蹂躙してやろう、と襲い掛かった。だが、軽くあしらわれた。

 殴りかかった拳は優しく掴み取られ、常人ならば、一瞬で死に至る病の瘴気すら一切効かない。

 首を落とそうと振り回される鎌はその服に掠らせることすら出来ず、嫉妬して睨みつけても、それ以上の嫉妬が籠もった視線で射竦められる。

 たかが人間だと侮ったわけでもない。そもそも侮るだけの理性はない。ただ本能が促すままに全力で、全力で奮った自身の力が全く以て通用しなかった。

 その挙句――

 

「く、びゃいッ!?」

「やめぇッ!?」

「妬ましぇいッ!?」

「■■ッ!?」

 

 ただの威圧で、全員が悟らされた。

 目の前の人間には逆立ちしたって、どれだけ進化したところで勝てない、と無理矢理理解させられた。

 

「さて、どう料理してくれようか」

 

 四人に共通する思い――恐怖。耐え難い恐怖が、剥き出しにされていた妖怪の本能を、暴走していた本能を徹底的に、完膚なきまでに叩き潰した。

 逃げたい、此処から逃げ出してしまいたい。みっともなくても構わない、どれだけ無様を晒しても構わない。ただ、この目の前の巫女から、この目の前の、薄く微笑んでいる人間から、一歩でも遠くへ離れてしまいたい。

 形振り構わず逃げようとするが――

 

「こらこら、逃げるな」

 

――結界が行く手を阻む。

 

 逃げられない、終わった、絶望。

 ゆっくりと近付いてくる巫女、四人は無意識に身を寄せ合い震えることしか出来ない。

 目の前に巫女が立つ、四人は目を強く瞑って、これから自分の身に起きるであろう痛みに耐えようと構える。構える、構えて――

 

「安心しろ、怖がらせてすまなかったな」

 

――温かい何かに包み込まれた。

 

 恐怖が一転して困惑へと変じる。

 半ば理性を失っていても、この行為が如何に不可思議なものかは理解できる。敵対している筈の相手を抱きしめるという行為。

 慈しむように、安心させるように、親愛を込めて優しく、優しく、どうしようもなく優しくて、柔らかく包み込んでくる。

 頬を寄せ、擦り付けてくる。親犬が、子犬に対して行うソレと同じ様に、大事なものを可愛がる様に、愛情が込められている。

 

 恐る恐る、怒っていないのか尋ねるキスメの頭を撫で付け、菩薩のように柔らかく、優しく微笑んでくれる。

 直訳して「お前病気か?」と問い掛けるヤマメにも、冗談交じりに直訳して「私は病気だ」と言って笑顔で対応してくれる。

 驚きが大きすぎて、嫉妬心すら湧いてこなくなってしまったパルスィにも、優しく言葉を交わし、その嫉妬の裏にある想いを理解してくれる。

 言語が絶賛大崩壊中の勇儀が、本能のままに甘え出しても、その全てを受け入れ、限りなく甘やかしてくれる。

 

 本能が剥き出しにされた思考の中。

 

 釣瓶落とし、キスメは――

 土蜘蛛、ヤマメは――

 橋姫、パルスィは――

 理性無き鬼、勇儀は――

 

「お前たち、少し離れてくれ、話がしたい」

 

――この巫女を己の飼い主にする事に決めた。

 

 決して離れてなるものか、この人間を己の主にするのだ。

 

「いい加減にしろよ? 嫌いになるぞ?」

 

 ちょっと恐いけど、それでもこの人間を己の主にする。

 

「こほんっ、別に怒っていないからそんなに怯えるな。……お前たちに頼みがある」

 

 ひと目見たその瞬間から、妖怪としての本能を擽られた。あの人間がどうしても欲しいと、本能が叫んだ。

 

「私達が行ったら、此処から先に誰も通さないで欲しい」

 

 その本能すらも叩き潰されたが、その上で、この人間が魅力的に映った。人とは思えない圧倒的な力も、その凛々しい表情も、頬を緩めて優しく目を細めながら見守ってくれる優しさも、全部。

 

「頼みを聞いてくれたら、ご褒美をやるぞ?」

 

 取り敢えず、ご褒美は絶対に欲しい。

 

「まかせてっ!」

「頑張る!」

「ご褒美、妬ましい。……欲しい」

「ニャァァァァァ!」

 

 四人の……否、四匹の妖怪が、博麗の命を受け、勢い良く散開する。

 この先へと決して進ませてなるものかっ! あの人、ご主人様の元へは絶対に行かせてなるものかっ!

 その在り方はまさしく忠犬。己が決めた主人の願いを叶えるために、その力を奮う、四匹の忠実なるペットの姿がそこにはあった。

 

 地の底を、四匹の走狗が往く。主の願いを叶えるために、芽生えたばかりの忠心を示すために……。

 

 

 

 これは完全に未来の話であるが、正気を取り戻しても、この時の記憶はしっかりと頭に残る。

 四人が、自分の記憶に身悶え、巫女と鉢合わせる度に、恥ずかしそうに顔を真っ赤に染め上げ、その上で未だに自身の内側から溢れ出すペット願望に心臓をドキドキとさせる日は、割と近い未来だ。




かくたのぉ!(いつものアレ)

長らく開けていたから、ちゃんと書けているか心配だけども、何度も見直ししたから、まぁ、エエやろ(いつもの春巻き)。

さて、そんなわけで本格的に地霊殿に入り始めました。
いつも通り、巫女が自分勝手に暴れ回り、その巫女に落ちていく少女たちの姿が描写されていく。ワンパターンですね、分かります。
でも春巻きさんは、基本的に書きたいものを書いていくスタイルなので、このパターンは鉄板ですね、はい。

うちの巫女(変態)は最強なんだよぉ!

ではでは、また次の更新まで、アディオス。
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