東方博麗伝説   作:最後の春巻き(チーズ入り)

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長らくおまたせしたね。春巻きさんだよ。
いや、長らくおまたせしたね。春巻きさんだよ。
いや、本当に長らくおまたせしたね。春巻きさんだよ。
いや、本当にマジで長らくおまたせしたね。春巻きさんだよ。
いや、本当にマジでヤバイくらい長らくおまたせしたね。春巻きさんだよ。
いや(ry

そんなわけで最新話です。
予告通り、色んな意味でネタをぶっ込んだカオスな状態になっちゃってます。
多分、いや楽しく書けたのは確定的に明らか(いつものハードル上げ)ですので、遠慮なく楽しんで、いっぱい感想を下さい。

↓【最新話】 投下ッ!



【地霊殿】少女、激闘

「アッハッハッハッハッハーッ!」

「そらそらそらそらぁぁぁ!」

 

 空気が悲鳴を上げるほどの暴風。大地が震撼し、砕かれた瓦礫が宙へと吹き飛んでいく。

 片や凶笑、何処までも純粋に、悪魔的に歪んだおぞましくも美しい微笑を浮かべながら、その暴力を振るい続ける大妖――風見幽香。

 片や豪快、刺すように真剣に、されど何処か楽しげに快活で勝ち気な笑みを浮かべながら、その豪腕で迎撃し続ける鬼――星熊勇儀。

 二人の妖怪が拳を振るい、力のままにぶつけ合わせる度に、地底が大きく揺らぐ。衝撃波が空を叩き、地面に亀裂を走らせる。

 

「良いわ、良いわね貴方。それなりには出来るじゃない」

「へっ、まだまだこんなもんじゃないさッ!」

 

 そう、こんなものではない。鬼の、私の力はまだまだこんなものではないっ!

 

「うっおりゃァァァアアア!!」

 

 地面に思いっ切り腕を差し込んで、そのまま一息に引っぺがして持ち上げる。自分の何百倍もの大きさの巨石を軽々と片手だけで支える。――何のために?

 

「そりゃあぁぁぁあああ!!」

 

 無論、投げるためだ。

 鬼の剛力をフルに活用しての投擲である。勇儀が投擲した巨岩は、音速の領域すらも軽々と突破し、空気の壁を何枚もぶち破りながら、幽香に向かって突き進む。

 並みの妖怪では――否ッ! それが例え上級の妖怪であろうとも、まともに喰らえばタダでは済まない。タダで済むわけがない強力極まりない鬼の豪速球。……相手が、そう――

 

「アハッ!」

 

――風見幽香でなければッ!

 

 迫る巨岩を凄絶な笑みで出迎える。……やるのは単純明快、真っ向からの迎撃だ。

 拳を思いっ切り握り込む。周囲の空間そのものが歪んで見えてしまいそうな程に、しっかりと、しっかりと力一杯握り込む。……そして、ゆっくりと、幽香は己の身体を捻る、捻る。固めた拳を後ろに引き、上半身を限界まで捻った独特の構え、刹那――

 

「ヒュ〜……やるねぇ」

 

――轟音。

 

 勇儀が投げた巨岩が爆発四散し、砂煙が辺りに立ち込め、砂利の雨が周囲に降り注ぐ。……幽香の凶拳が、真正面から巨岩を微塵に粉砕した。

 

 勇儀は素直に驚嘆する。

 妖怪の中でも極めて強力な存在である鬼、その中でも「怪力乱神」、「力の勇儀」とまで呼ばれ、畏れられている自分にすら匹敵、あるいは凌駕するほどの馬鹿げた腕っ節。

 身に纏う妖力に至っては上限が見えず、底が見えない。推し量ることすら出来ない天井知らずときた。

 

「ッ!?」

「うふふっ、次は私の番――」

 

 煙が晴れ、勇儀が目にしたのは、指先を此方に向ける幽香の姿。……収束するのは妖力、目に見えるほどの膨大な力が指先に収束していく。

 

「――虚閃」

「う、うおぉぉぉおおお!?」

 

 緑と黒の光線が、真っ直ぐと勇儀に向かって突き進む。……疾いッ! 回避は不可能ッ!

 勇儀は即座に防御を選択、地に足をどっしりと構え両手を前に突き出す――ッ!? 衝撃が手の平を伝って、全身を駆け巡る。身体は後ろに押し出され、構えた足は大地を削っていく。

 とんでもない力だ。強靭な鬼の皮膚を焼き、怪力無双の力が押されている。この鬼の肉体が無造作に放たれたただの光線に押されているッ!

 

「はあぁぁぁああ!」

 

 勇儀は襲い掛かる熱、衝撃に耐えながら、両腕に力を込めて、光線の軌道を無理矢理上へと逸らしたッ!

 上へと軌道を変えた閃光は、頭上――地底の天井へと着弾。そして、そのまま直線状に存在している岩盤を全て破壊し、直進していく。

 

「はぁ、はぁ……たまげたねぇ」

 

 勇儀を照らす光。幽香の放った閃光は、頭上にあった岩盤を軒並み吹き飛ばし、地上へと続く巨大な風穴を開けていた。

 戦慄した。その強さに、何処までも突出した、暴力という形の一つの完成形とも言えるその女の姿に震えが止まらない。

 正しく規格外。その一撃一撃が地形を変え、天変地異にも匹敵する破壊を撒き散らす。……これが、これこそが風見幽香。幻想郷で最も凶悪――最凶の妖怪の二つ名を冠する、妖怪の超越者。

 

「へぇ、それなりに力を込めてみたつもりなんだけど。……霊夢が目を掛けてあげただけの事はあるじゃない」

 

 一方の幽香は、勇儀の力を僅かばかりではあるが高く評価していた。

 なるほどなるほど、確かにあの霊夢が気にしただけの事はある。己には遠く及ばないが、他の有象無象の雑魚共よりは遥かに上等な存在だ。

 霊夢以外で、あの人間(?)の規格外以外で、己と真っ向から拳を交わした者は、己の放った虚閃を耐えきった者は誰一人としていなかった。

 全力でもないし、大して本気も出してはないとはいえ、これは快挙である。己と遊ぶ資格がありそうな妖怪を見たのは、随分と久しぶりだった。

 

「霊夢って、あの巫女さんの名前か?」

「あら、知らなかったの? なら特別に教えてあげるわ。お前達が見た巫女の名前は霊夢、博麗霊夢。私の唯一無二の好敵手にして、私の大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな……ふふっ、殺してしまいたいほど大好きな人間よ」

「色々と突っ込みたいけど、あんたが霊夢の事を大好きだというのはよーく分かったよ。……だったら、なおさら此処から先に行かせるわけにはいかなくなったね」

「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて地獄に落ちるって言葉を知らないのかしらねぇ?」

「生憎、あんたは人じゃないし、この地底に馬は一匹もいないよ」

 

 ましてや、絶望的なまでに開き切った実力差を悟った上で、真っ向から戦いを挑もうとする大馬鹿者など、この長い長い妖怪としての生の中で見たことなど一度としてなかった。

 

――面白い。

 

 単純にこの大馬鹿者が、どれだけ抵抗してくるのか興味が湧いた。……無論、手は抜こう。壊れない程度には闘ってやろう。だから――

 

「その減らず口、何時まで持つのかしら?」

「聞きたきゃいくらでも言ってやるさッ!」

 

――精々、私を楽しませてみなさい。

 

 せめて霊夢とヤる前の肩慣らし程度にはね。

 山の四天王が一角と最凶の妖怪。二体の怪物が、その強大な力をぶつけ合う。大地を砕きながら、空を切り裂きながら、再度、互いの拳をぶつけ合った。

 

 

ーーー

 

 

「あーうー! イヤになるなーっ! もうっ! うわっ!?」

 

 守矢神社の土着神――洩矢諏訪子は自分に襲い掛かる青白い炎――鬼火とドス黒い瘴気の塊を回避しながら叫ぶ。

 

「外しちゃった」

「あーあ、惜しかったねキスメ。……それにしても流石は神様だよ。私の力も効き目が薄いみたいだし」

 

 小さな身体を桶に入れ、残念そうに眉を顰めている少女、キスメ。黒い瘴気を纏いながらケラケラと笑う少女、黒谷ヤマメ。

 首を刈り取る妖怪、釣瓶落としと、ありとあらゆる病魔を操る妖怪、土蜘蛛。……正直、種族として見るならば、彼女たちはそこまで強い妖怪というわけではない。人間にとっては危険極まりない妖怪ではあるが、同じ妖怪、ましてや神からしてみれば、歯牙にも掛けない矮小な妖怪だ。

 

「ふぁっくっ! 全く、本当にッ、厄介なこんびねーしょんだねッ!」

 

 覚えたての英語で悪態を言い放ちながら、二人の攻撃を捌き続ける。

 矮小な妖怪、その筈だ。その筈なのだ……だが、実際はどうだ。二人がかりとはいえ、「土着神の頂点」とすら呼ばれ、畏れられているこの洩矢諏訪子と互角――否、上回ってすらいる。

 

 何より厄介なのが――

 

「逃さないッ!」

「ふわあぁぁぁ!?」

 

――桶。

 

「おらおらおらおらぁぁぁ!」

【ハーッハッハッハッハッハッ!】

「うばばばばば!?」

 

――謎の人型。

 

 キスメが搭乗している桶。どういう原理なのか、底の部分から緑色の粒子の様な物を吐き出しながら自由自在に立体機動を繰り返している。防御力も生半可ではなく、仮に此方の攻撃を当てることが出来たとしても、傷一つすら付けることが出来ない。

 ヤマメの背後に浮かび上げっている半透明の巨人のような存在。獅子のように広がる赤毛を靡かせ、般若のような恐ろしげな面をした六本腕の筋骨隆々の怪人。その見た目通りのとんでもない馬鹿力で周囲の景色を薙ぎ払いながら、強力な瘴気を周囲に撒き散らしまくっている。

 

 何だアレ、何がどうしたらこんな意味不明な状況になるんだッ!?

 あの桶は何だ!? 最近の桶はあんなに無駄に高性能なのか!? 何でビーム出せるんだよ! そもそも、桶なのかアレは!?

 あの人型は何だよ!? 絶対アレだけ世界観可笑しいだろ!? どっかの奇妙な世界に登場する妙にスタイリッシュなヴィジョンかナニかかよ!?

 

 諏訪子大混乱である。変な怪電波を受信するくらいには大混乱である。いや、むしろこんな訳のわからない状況に立たされて発狂していないだけ、彼女は偉い。流石は土着神の最高峰である。(関係ない)

 

「GNサイスを使う!」

「だからっなんじゃそりゃぁぁぁ!?」

 

 桶から射出されたやたらメタリックな近未来兵器を振り下ろすキスメ。それを諏訪子は驚愕のままにイナバウアーで回避する。本人の必死さとは裏腹に、上体を後ろに反らした彼女のその姿は余りにも美しいフォームを描いていた。(百点満点)

 

「おらぁ! 行きなッ!」

【セイメェェェッッッ!!!】

「人違いですぅぅぅ!?」

 

 ヤマメの掛け声と共に、六本腕の巨人が諏訪子に向かって乱打を繰り出していく。その一撃一撃が強力な打撃、空を穿ち、大地を砕く鉄拳だ。

 しかし、諏訪子は避ける、避ける、避ける。諏訪子がこの怪物の攻撃を避けられるのは、この怪物の攻撃が単調であるのと、何よりも長い年月を生きている膨大な経験値があるからである。

 というか、一発でも当たったらその瞬間に諏訪子致命傷である。打撃ダメージと、状態異常を同時に付与されて大変なことになっちゃうのである。……避けないと。(諏訪子涙目である)

 

 これが進化で手にした真の力である。

 キスメ――手にした力は、世界を変革する力を有するOKE。平行世界、純粋種と称された青年が駆る人型兵器の力を宿した最強のOKEである。

 ヤマメ――手にした力は、遭遇してはならない妖と称された怪物の力を、恥知らずと称された猛毒の人型の力を宿したヴィジョンである。

 

 暴走した状態では気付かなかった力。正気に戻った時に初めて自覚した力である。

 

「いい加減にしろぉぉぉ!」

 

 少女たちの執拗な攻めに遂に土着神がブチ切れる。

 足裏で地面を叩いて、地底の奥底で渦巻いている祟り神たちを呼び起こす。諏訪子の呼びかけに応じた祟りの力は石で出来た無数の蛇の怪物へと変じ、敵対者に牙を剥く。

 生命創造。幻想郷広しといえど、これほどいとも容易くこの奇跡を行えるのは、諏訪子以外には誰もいない。あの博麗霊夢を始めとする規格外の怪物たちでも、不可能な御技だ。

 諏訪子が創造した蛇は神獣。神の力を与えられ、神の敵対者を排除せんと、その牙を振るう怪物だ。

 その牙に噛まれれば、たちまち身体中を祟りの力が駆け巡り、苦しみ悶えて死に絶える。ましてや相手は妖怪としての格ならば上級にも届いていない。……筈である。

 

「あっちゃー、やっぱり祟り神かぁ。私と一番相性最悪な相手じゃん」

「同意」

 

 そう言いつつ、本人たちは笑顔である。

 キスメの桶が妙な起動音を奏で出し、ヤマメの背後の巨人がその般若面をぐにゃりと笑顔へと変化する。

 

「でも、さっきのお姉さんと本気で戦うよりは大分マシ」

「だよねー!」

 

 少し前、四体一で遊ばれていた時の光景を思い出す。鎌は微塵たりとも当たらず、挙げ句、瘴気の中で深呼吸される始末。

 最終的に自分達を一瞬で屈服させた、あのとんでもなく規格外な威圧感。……あの時と比べたら、目の前の神は、蛇は、なんとも小さく頼りない。

 

「来いよ! 地底の小娘共!……出来れば桶とかその人型とか捨てて掛かってこい!」

「やだ」

「お断りするよ!」

「だと思ったよ、こんちくしょう!」

 

 諏訪子が放った大量の蛇がキスメとヤマメの両名に殺到する。

 

「うん、分かった。行こう」

 

 桶の内側部分に文字が浮かび上がる。

 

――【OKENS-AM】

 

「気合い入れて行くよぉッ!」

【千年ぶり(生後数時間)の本気だァァァ!】

 

――発気よぉい!

 

「神様舐めんじゃないよ!」

 

――あの、帰って良いですか?(by祟り神)

 

 桶が人型が、蛇が、それぞれの主の命を受けその力を存分に振るい出したッッッ!

 

 

ーーー

 

 

「妬ましい」

 

 その人間にあるまじき容姿も、強さも、自信に満ち溢れた傲慢過ぎる表情も、何もかも全てが妬ましい。

 橋姫、嫉妬妖怪である水橋パルスィは妬み、憎悪する。目の前の存在を、これ以上ない負の感情で以て妬み、憎悪する。

 

「妬ましい」

 

 何より妬ましいのが、あの巫女と親しい間柄であろうという事実。

 己に抗いがたい感情を植え付け、颯爽と去っていたあの見目麗しくも恐ろしい、あの巫女と親しいであろう存在。

 自分より早くあの巫女と出会い、あの巫女と言葉を交わし、あの巫女と触れ合い、あの巫女と笑い合い、親交を深めたであろう存在。

 

「妬まッしいッ!」

 

 この女だけではない。あの凶悪顔の妖怪も、ガキみたいな神も、無駄に個性的な魔法使い共も、あの巫女と一緒にいた地霊殿の覚妖怪もッ! 自分を差し置いて、あの巫女と仲良くしようとしている全ての存在が妬ましい(憎たらしい)ッ!

 自分が理不尽な考えをしているのは分かっている。自分とあの巫女が出会ってからまだ数時間も経っていないのも分かっている。言葉を交わしたのも、触れ合った時間も、他の面々に比べると遥かに短く、薄い繋がりでしかない事も分かっている。

 

 しかし、しかしだ。それでもパルスィは己の内より湧き出る感情を抑えるつもりは一切無かった。確かに僅かな時間だ、ほんの少しの間の戯れにも等しい一時しか過ごしていない関係だ。

 だが、それがどうしたというのだ。自分があの巫女に惹かれたという事実は変わらない。あの巫女の存在を深く刻み込まれた己には関係ない。

 

――恋は、愛とは時間ではないのだ。

 

 たとえ一目惚れだとしても、身を焦がさんばかりに燃え上がるこの想いを否定される謂れは何処にもありはしない。

 

「邪魔よ」

 

 目の前にいるこの女も、他の有象無象共も皆、皆。

 そう、だからこそ、目の前にいるこの女に嫉妬するのだ。深く深く、憎悪すらも込めて、己の内にある全ての負の感情を剥き出しにして、嫉妬に狂う。

 

「ふぅ、全てにおいて頂点に立つ私に嫉妬するのは当然のこと、と言いたいところですが、貴女の場合は些か度が過ぎていますね」

 

 まるで深く底の見えない奈落の様だ。

 常人であるならば恐怖し、狂ってしまっても可笑しくはない、黒い黒い、とてもドス黒い負の感情。それを向けられている当の本人である人間――傲慢なる奇跡の体現者、東風谷早苗はしかし、微塵も動じない。……何故か?

 

「まぁ、それでも貴女程度の睨みでは、何も感じないのですがね」

 

 それはひとえに傲慢故に……。

 驕り高ぶった思考。獅子の如き圧倒的自負心に裏付けされた、異常極まりない強靭なる精神力。

 確かに恐ろしいのでしょう。憎悪と呪詛が込められた視線は、対象の魂を染め上げ、侵し、狂い殺すほどまでに凶悪な代物なのでしょう。

 ですが、それが何なのでしょうか? 如何におぞましかろうとたかが視線、たった一匹の妖怪の睨み。そんなものでこの早苗を、この世全ての奇跡を体現するこの東風谷早苗を、どうにか出来ると本当に思っているのか?

 

「折角なので教えてあげましょう――」

 

――常識外の奇跡(アンリミテッド・ミラクル)

 

 恐るべき奇跡が解放される。

 

「――埋めようのない圧倒的な格の差というものを」

 

 ですので、私の所有物である霊夢さんの事は綺麗サッパリ、すっぱりと忘れて下さい。

 そんな副音声が聞こえて来そうなドヤ顔で、何処までも何処まで上から目線で、嫉妬に狂っている妖怪を見下ろす。

 

「……」

「おや? 返事が聞こえませんね。……では、もう一度だけ言いましょう。あの霊夢さんはこの私の所有物ですので、綺麗サッパリと忘れて、嫉妬しか出来ない哀れな貴女は、一人寂しくこの地底の奥深くで自分を慰めていなさい」

 

 副音声の部分どころか、余計な部分まで継ぎ足して言い放った。無駄に綺麗で無駄に腹の立つ無駄に完成されたドヤ顔である。……こやつ煽りおる。

 

「……やる」

「はい? 聞こえませんよ? もう少し大きな声でお願いします。Repeat after me」

「コロシテヤル」

 

 火に油どころか核燃料をぶっこんだ早苗である。

 パルスィの纏っている負の感情が尋常ではない事になってしまっている。黒い感情はパルスィ自身の妖力と混ざり合い、周囲の空間を叩いて砕いて押し潰して引き裂いて引きちぎって切り刻んで噛み砕いて磨り潰して飲み干していく。

 

「妬ましい、お前が、私の想いを馬鹿にしたお前が妬ましい。強いお前が妬ましい、あの人と親しいお前が妬ましい、あの人を自分の物だと断言するお前の傲慢さも全てが、全てが全てが全てが全てが全てが全てが全てが全てが全てが全てがッ!――」

 

――妬ましい(コロシタイ)

 

 塞き止められていた何かが壊れる音が聞こえた。

 

「あ、ああっ、あはっアハハハハハッ!」

 

 極限まで高まりに高まった嫉妬(憎悪)の念が、パルスィの身体を包み込みドス黒い繭のような形状となる。

 繭は胎動し、肥大化し、瞬時にその大きさを増していく。ナニかが、ナニかが生まれようとしている。恐ろしいナニかが、おぞましいナニかが、この地底で生まれようとしている。

 

「おぎゃあああああ!!】

 

 生まれた、最悪が。生まれ出た、恐怖が。

 九つの尾を持った金色の化生。憎悪に歪み切った怪しげに輝く緑の瞳。見るものの精神を絶望で満たすその悪魔的で毒々しい表情。

 

【我、緑眼也。我とあの女以外の全て滅ぶ可しッ!】

「ほぅ、面白い。出来るものならやってみなさい」

 

 青白い炎を吐きながら、破壊を撒き散らす災厄の化身――緑眼の者(パルスィ)。

 払い棒で軽く素振りをしながら、変わらない傲慢さで息を漏らす奇跡の体現者――早苗。

 

 光と闇、両極端な属性を持った二人の戦いの幕が遂に切って落とされた。

 

 

ーーー

 

 

「霊夢のやつぅぅぅ! 余計なことしやがってぇぇぇ!」

「ゴ、ゴリアテェェェ!?」

「……お家帰りたい」

 

 魔法使い組、阿鼻叫喚である。

 箒を巧みに操りながら、背後から襲い掛かってくる存在から必死に逃げ回る魔理沙。迎撃するために召喚した巨大人形が一瞬で大破した事実に悲鳴を上げるアリス。頭を抱えてしゃがみ込みながら現実逃避するパチュリー。

 もう一度だけ、敢えて言おう。魔法使い組、阿鼻叫喚である。

 

「うーん、一時はどうなるかと思ったけど、ちょっとはこの力の使い方も分かってきたかな?」

 

 その原因は、このゴスロリ猫耳美女と化した彼女――火焔猫燐である。

 火焔猫燐、お燐は強かった。否、強すぎた。巫女の手によって、強制的に潜在能力を引き出され、極限まで強化された彼女の実力は幻想郷でもトップから数えた方が早い程に高まっていた。

 身体能力――語るに及ばず、爪を立てて振り下ろすだけで直線状にある景色を引き裂くことすら可能になり、少し足に力を込めて飛ぶだけで、音速の壁を何個も突破した殺人的な加速で移動出来る。相手の攻撃を受けても、本人の妖力と純粋な肉体強度に阻まれてダメージを与えることすら出来ない。

 更には――

 

「そぉらぁ! 出番だよアンタ達!」

【ゔぁあああああぁぁぁぁ!】

 

 彼女の言葉に反応して、地面から這い出てくる無数の人型。

 生気を感じさせない死んだ目、腐敗し、ボロボロになっている肉体。……所謂ゾンビという奴らが、お燐に付き従って、魔理沙達魔法使い組に襲い掛かっていた。

 人間の、妖怪の、妖精の、神の、屍となった彼らが、生前に違わぬ力を持って、押し寄せていく。落ち窪んだ目で見ながら、腐敗しすぎて骨が見える手を伸ばしながら……。

 

「うわぁぁぁぁぁ!? こっち来んなァァァァァッ!」

「嫌ァァァァァ!?」

「お家帰りゅぅぅぅぅぅ!」

 

 普通にコワい。助けて霊夢。

 魔法使い組、ガン泣きである。攻撃の意思すらかなぐり捨てて、少しでも距離を取ろうと無我夢中で逃げ惑う。……だって涙が出ちゃう。女の子だもの。

 ホラーは駄目、駄目なのだ。如何に普通の魔法使いといえども、如何に七色の人形遣いといえども、如何に七曜の魔法使いといえども、コワいものはコワい。

 以前、霊夢がイタズラで仕掛けた怖い話(作り話)でも本気で恐がって、暫く一人でトイレに行けなくなる程に恐がりなのだ。(無論、霊夢が責任を持って連れていきました)……何で君たち魔法使いしてるの?

 

「これで、一応は足止め成功しているって考えてもいいかなぁ?」

 

 いや、普通にゾンビ出しただけなんだけど。

 死体を一時的に操ってけし掛けただけで、早くも足止めが成功した。この事実に喜べば良いのやら、歯ごたえの無さに悲しめば良いのやら。

 ちなみに、死体を操るのは霊夢によって強化される前も出来た。流石に、一人バイオハザード……もとい辺り一面を覆い尽くす程の死体の山を操ることは出来なかったが、それでも数十程度の死体の群れを作り出すことは造作も無かった。

 

 魔法使い組の様子を見るに、強化前の自分でも足止め出来たんじゃないかと思ってしまう。……いくら何でも恐がりが過ぎる気がする。よく今までやってこれたなこの三人。

 

「取り敢えず、念のためもう少し追加しとこ」

 

 あれ? こんな妖怪いたっけな? シルクハットにコートを身に纏った意味不明な大男が何体か地面から這い出てくる。……うん、見るからに強そうだ。

 なるほど、これが霊夢の強化か、とうんうん、と頷き、大男もけし掛ける。(鬼畜)

 

「なんだコイツぅぅぅ!?」

「ゴリアテが投げられたッ!?」

「お……家」

 

 大男は無表情で魔理沙たちを追跡する。無言で歩き、静かに歩を進める。途中で倒れているゴリアテ人形を片手で掴んで投げ飛ばしながら、無言で歩み寄っていく。

 SAN値(正気度)がステータスとしてあるならば、間違いなく直葬されてもオカシクない絶望的でホラーな光景。

 そろそろ発狂しそうな、三人の明日はどっちだ!?

 

――「BIOHAZARD -UNDERGROUND-」

 

 ゲームを始めますか?

 

→ はい 

  はい

 

 どう足掻いても絶望。

 

 

ーーー

 

 

 何か私が真面目に、真面目にッ!(大事なことなので二回叫びました) 異変解決に尽力している間に、面白い事が起こっている気がするッ!

 主に地底組と地上組のキャットファイト的な意味で、キャットファイトがちょっとネタにしか思えない状況に陥っている的な意味でねッ!

 

 もっと具体的に言うならば……。

 ちょっと殴り合えそうな相手を見つけてキャッキャウフフしているゆうかりんとかッ! そのゆうかりんに決死の覚悟で挑むカッコイイ勇儀姐さんとかッ!

 神様ムーブしてたのに、相手の予想外の実力にキャラ崩壊待ったなしで押されまくっている諏訪子ちゃんとかッ! 武力介入しちゃいそうなキスメちゃんとかッ! スタンドに目覚めたヤマメちゃんとかッ!

 傲慢が過ぎて相手を挑発しまくって煽りまくる早苗ちゃんとかッ! その早苗ちゃんの煽りによってヤバイ方向に覚醒してしまったパルスィちゃんとか!

 何かとっても面白そうな事が起こっている気がするのだよ! 私、気になりますっ!

 

 こりゃあ、さっさと異変解決して、合流するしかあるめぇ! 祭りじゃ祭りじゃぁぁぁ!

 

「と、止まってくだしゃいぃぃぃぃぃ!?」

「吐くッ! 吐いちゃうぅぅぅ!? うっぷ」

「ッ!?……すまない」

 

 私の高速移動のせいで、抱っこしている二人がグロッキーになってしまった。いや、本当に申し訳ない。巫女ったらうっかりしちゃってたわ、てへぺろっ。(可愛いけど、可愛くない)

 二人を降ろして、その背中をサスサスしてあげる。……邪な気持ちは一切ないよ。二人の小五ロリの背中がすべすべしてて気持ちが良いとか、背中を撫でているせいで、微妙にくすぐったそうに身を捩っている姿にくるものがあるとか、そんな事実は何処にもないんだよ?

 そもそも、私がさとりちゃんママァにそんないかがわしい邪な感情をぶつけるわけないじゃないか、私の天使で女神である彼女に、そんな感情をぶつけるわけがないじゃないか。ぶつけるわけがないじゃないかっ!(大事なry)

 ただし、こいしちゃんテメェは駄目だ。お前にはさとりちゃんの分の劣情も込めていやらしくサスサスしてやる。私のハートに詰まったこの真っ白でドロドロになった感情を、君の奥深くで解き放つために、ありとあらゆる手を使って、君の全てに刻み込んであげよう。フハハハッ!(と言いつつ優しくサスサスしてあげる霊夢ちゃんなのでした)

 

「此処が最深部か」

 

 うん、シンプルだね。普通に地底の奥深くって感じの場所だよ。

 イメージ的には、溶岩の火口? みたいな感じかな。……火口とか見たことないけど。

 その中心部分で円球状に丸まっている膨大なエネルギーの塊がある。……神の、八咫烏の膨大な力の波動を撒き散らし、成長を、進化を続けている。

 

「「お空ッ!」」

 

――霊烏路空。

 

 異変の元凶となってしまった少女の姿がそこには合った。

 此処で霊烏路空――お空ちゃんについておさらいしてみよう。恒例の原作知識的な意味合いで。(メ、メタァ)

 

 しっとりとした濡鴉のような長い黒髪に、赤い瞳を持った可愛らしい顔立ちの少女であり、その背中からは鴉らしい漆黒の翼が生えている。身体つきも幻想郷の美女連中には及ばないまでも、それに匹敵する程度には抜群のプロポーションを誇っており、うにゅほの八咫烏っぱいとかに魅了された哀れな亡者は数知れないだろう。(その内の一人である巫女が何か言ってる)

 服装は白いブラウスに緑のスカート。頭には緑色の大きなリボンを身につけ、背中の翼には上から白いマントをかけており、マントの内側は宇宙空間が映し出されているという謎仕様。

 右足には「融合の足」と呼ばれている溶岩上の固形物が具足のように装着され、左足には「分解の足」と呼ばれている、黄色に輝くリングが装着され、右腕には「第三の足」と呼ばれている、多角形の制御棒が装着されている。

 更に、胸元からは「赤の目」と呼ばれる、大きな真紅の目が飛び出しており、大変羨ましい(お空ちゃんの赤の目になりたいついこの頃)。

 それぞれ「融合の足」は核融合を、「分解の足」は原子の分解を、「第三の足」は制御を、「赤の目」は……は? 知らない。

 

 お燐ちゃんと同じく、地霊殿の主であるさとりちゃんのペットの一人で、主に灼熱地獄跡の温度調整を仕事としている。

 種族は地獄の闇から生まれた妖怪、地獄鴉であり、灼熱地獄の温度に耐えられるほどの圧倒的な熱耐性を持っている。実は炎を吐いたり出来る、といったシンプルな能力しか持たない妖怪である。……勿論、八咫烏と融合する前の話だけどね。

 八咫烏(分霊)と何やかんやあって憑依装着しちゃったお空ちゃんは、最早ただの妖怪ではなくなってしまったのである。

 太陽神の能力、大いなる太陽の神、天照大神の使神であり、自身も太陽の使い、太陽の化身と呼び讃えられていた八咫烏。そんな怪物の分霊を受け入れてしまった結果、お空ちゃんが手にしたのが――

 

――『核融合を操る程度の能力』

 

 ゴ◯ラかよ(疑問)、ゴジ◯だよ。(確信)

 簡単に言ってしまえば、原子とかそんなものを自由自在に操作して融合させ、膨大なエネルギーを得るのである。

 その火力は比喩でも何でも無く太陽のエネルギーに匹敵する。何も考えずに力を振るうだけで世界を滅ぼしうる圧倒的な破壊を撒き散らすことが出来る存在なのだ。

 

 しかし、本人にはそんな野心なんてものは微塵もなく、純粋で全体的に子供っぽく、脳天気に日々を生きている鳥頭のアホの娘なんだけども……。色んなことを手取り足取り教え込んだりしたいものだねッ!

 

 ま、それはあくまでも私の頭にある原作知識での話。

 今この瞬間、私の目の前でうつむき、無言でエネルギーを蓄え、進化を続けている彼女は違う。

 先ず、彼女の身に憑依装着し、完全に融合をしようとしている八咫烏は分霊ではない。……感じる神威は分霊などでは収まらない、圧迫感すらともなう太陽の如き灼熱の威――本霊、八咫烏の本霊が、霊烏路空という一人の少女の身に降ろされていた。

 故に彼女の得た力も原作の比ではないだろう。私の知識は微塵も役に立たないに違いない。(今までもゆうかりんとかその他大勢で役に立っていないとかそんな事を言ってはいけない)

 

 そして、彼女の姿は私が知る、原作知識の彼女の姿とは大きく変貌していた。

 先ず、普通の少女だった(胸は水爆級)筈の彼女の身長。それは私、原作の博麗霊夢よりも遥かに高くなった身長である私よりも頭一つ分程度にデカイ。……恐らく二メートルちょいは軽く超えているだろう。

 ソレに伴い、胸の大きさも水爆どころではなく、かのツァーリ・ボンバに匹敵するまでの圧倒的爆発力を持った乳へと育ってしまっていた。……うん、アレに顔埋めることが出来たら、他では満足できなくなるな、絶対。

 私の胸もそれなりにデカく、グラマラスだという自信があるが、彼女のソレと比べると余りにも貧相、まさに月とスッポン、これじゃあ私のお胸様もぺったんこと変わらない。(全国のぺったんこに土下座して謝れ)

 

 進化の力がまさかこれほどとは思わなかった。私の博麗さん式覚醒術も大概だが、これも半端ではない。……まさかあそこまでの爆乳を手にするとは、この霊夢ちゃんの目を以てしても見抜けなんだ。

 

「……さとり、様? こいし、様?」

「お空! 私よ! 私は此処にいるわ!」

「今から助けるから! もう少しだけ頑張って!」

 

 私の腕から飛び出して、お空の元に向かう二人。

 おーい、気持ちは分かるけど、私から離れないでー。此処危険地帯だから、まだ異変解決していないからー。……こいしちゃんはともかくとして、さとりちゃんもあんな風になるなんてね。よっぽどお空ちゃんの事が心配だったんだろう。やれやれだじぇい。

 さーて、さっさと八咫烏を駆逐して、お空ちゃんを救ってあげるとしましょうかねぇ。むふふぅー、お空ちゃんとも仲良くなっちゃうもんねぇー!

 

「みん、な……にげ、て」

 

 何かを抑えようとしているお空の悲痛に満ちた表情。その瞳から流れ出る滂沱の如き涙を見たその瞬間――

 

【死ね】

 

――閃光、爆発、轟音、熱、衝撃。

 

 この異変が簡単には解決出来ないものだと、嫌でも思い知らされた。

 





かくたのぉ(いつものぉ)

皆、リアルじゃなくて二次元に生きればいいと思うの。春巻き二次元に逝きたい。

さて、いきなりの闇深い発言は北極にでも投げ捨てておいて(大迷惑)。
皆様どうでしたでしょうか? 博麗伝説、地霊殿も遂に異変の元凶と相対する事になってしまいました。途中までふざけたのに、最後の最後で気になる引きやったやろ? 続き気にやるやろ? やろ?(←煽りクソ春巻き)

多分、次話はそれなりにシリアス風味に書くかもしれない、と予め宣言しておこう。(シリアルを混ぜないとは言ってない)

それと、本文内で分からない単語やネタが出てきた場合、後書きに説明でもぶっこもうかと考えている。……地霊殿書き終わったら、入れてみよっかな?

さてさて、そんなわけでして、次回の更新までお楽しみにそれじゃ……

またのぉ!

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