東方博麗伝説   作:最後の春巻き(チーズ入り)

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お待たせした、紳士淑女諸君。

約一ヶ月ぶりに春巻きさんが投稿するよ。
長らく待たせて申し訳ない。取り敢えず、詰まらない話は後回しにぽいぽいしておこう。
楽しんでくれたまえ。

↓【最新話】↓ 投下ッッッ!!



【地霊殿】少女、覚醒【前】

 星熊勇儀は鬼である。

 かつて妖怪の山にて、鬼の四天王と呼ばれ畏れられた鬼。……その中でも特に腕力に秀でていた彼女は『力の勇儀』と称され、その剛力で以て、ありとあらゆる困難を薙ぎ払ってきた。不可能を可能にしてきたのだ。

 

「オラオラオラオラオラァ――ッ! オラァッ!」

「無駄無駄無駄無駄無駄ァ――ッ! 無駄ァッ!」

 

 その鬼の剛力が通用しない。山河を砕き、震撼させるこの鬼の力が、この女には微塵たりとも通用しない。

 いくら力強く拳を固めて、思いっ切り振り下ろそうが、薙ぎ払おうが、関係ない。それ以上の力で以て、無理矢理に弾き返され、無効化される。

 

――勇儀は押されていた。

 

 幾度と無くこの拳を叩き込んだ。幾度と無く己の打撃を、その身体へと打ち込んだ。その筈だ。その筈なのだ。

 

「うふふっ」

 

 しかし、風見幽香は揺らがない。今この瞬間も、勇儀の拳をその顔面に食らったというのに笑みを浮かべる余裕すらある。

 事実、幽香にダメージは無かった。……あの人間の規格外筆頭、博麗霊夢の攻撃を受けてもダメージを負わない程に馬鹿げた耐久力を有した肉体だ。

 霊夢以下の実力しかない勇儀ではいくら力を込めて、思いを込めて殴ったとしてもダメージを与える事は不可能に等しい。

 

 たった一つのシンプルな答えだ。……勇儀の予想を遥かに超えて風見幽香は怪物だった。鬼の剛力でさえも歯が立たない。規格外の怪物だっただけの話なのである。

 

「ぐっ!?」

 

 連打を全て叩き落され、無防備となった勇儀の土手っ腹に幽香の掌底が炸裂する。……衝撃と痛みで声も出せず、苦しげに顔を歪める勇儀。そして――

 

「まだ終わりじゃないわぁ……喰らいなさいッ――」

 

――虚弾(バラ)

 

 追撃である。

 勇儀の腹に添えられたままだった掌から赤黒い衝撃波が放たれる。

 虚弾の威力は強力だった。周囲の建造物を軒並み吹き飛ばしながら、そのまま勇儀の身体を軽々と吹き飛ばし、背後にあった岩盤へと叩きつける。

 

「うふふっ、中々良い技じゃないの。……虚閃と同じく気に入ったわ」

 

 いつぞやに霊夢との心が踊る夢のような一時(殺し愛)を堪能したあの時、一度だけ見たあの技。

 恐らく虚閃の派生技であると思われるソレを、たった一度の戦いの中でしか目にしたことが無かったソレを幽香は寸分の狂いもなく再現して見せた。

 

――風見幽香が恐ろしいのは何故か?

 

 他者を虐げることに快感を覚えている加虐的で凶悪極まりない性格であるから? 生まれ持った身体能力に身を任せた圧倒的な暴力があるから? 存在しているだけで世界を揺るがす規格外な妖力があるから?

 

 否、否ッ! 否ッ! 否ッ! 否ッ! 風見幽香の恐ろしさはそんなありきたりな物ではない。

 

――学習能力。

 

 彼女の最も恐ろしい点はソレに尽きる。

 ひと目見ただけで、相手の技を全て盗み取るラーニングスキルこそが、彼女の恐ろしさ。

 鍛錬? 才能? 種族特有の力? そんなものが何だとばかりに、瞬時に体得し、それ以上の完成度で以て相手に返す理不尽な技能である。

 別の世界線では『見稽古』と呼ばれ、恐れられたソレが、風見幽香にはあったのだ。……この技能に抵抗できるのは、彼女と同格以上の実力を持った者か、彼女以上に優れた学習能力を有している存在しかいない。

 この幻想郷でいうなれば、奇跡の力で強引に全てを捻じ曲げる早苗か、純粋に戦闘能力で幽香を上回り、馬鹿げた成長力と学習能力を併せ持つ巫女、霊夢の二人が該当する。

 

「どうしたの? まだ私は全然力なんか出してないわよ?……まさか鬼の力がこの程度だなんて詰まらない事は言わないわよねぇ?」

「がふっ……へ、へへっ、まだ、まだ、こんなもんじゃ、はぁはぁ、ないさッ」

 

 片足を引きずりながら、幽香の対面まで戻る。

 歩く度に走る激痛。……あー感覚からして折れてはなさそうだが、思いっ切り捻ったかね、こりゃあ。

 

 苦笑する、その絶望的なまでの差に。失笑する、己の力の無さに。

 自分が一番強いだなんて自惚れているつもりは全く無かった。むしろ、この広い世界、己よりも強い存在はごまんといるだろうとすら考えていた。

 だが、いくらなんでもこれはないだろう。手も足も出ないどころではない。大人と子供どころでもない。月とスッポン? いや、それ以上の格の差が、余りにも隔絶した力の差が二人の間には存在している。

 

――諦める?

 

 力の差は歴然、万に一つも勝ち目はない。いくら抵抗しても無駄だ。

 

――諦める?

 

 今、自分が立っていられるのだって、幽香が手加減して遊んでいるからだ。彼女が本気だったら、ほんの数秒で肉塊に変えられている。

 

――諦める?

 

 あの霊夢とかいう巫女からのお願いだって、言ってしまえばただの口約束だ。守ってやる義理もないし、守らなかったとしてもきっとあの心優しい巫女は怒らないだろう。だから――

 

――ア キ ラ メ ル ?

 

「ふざけんな」

 

 そんなみっともない真似なんて出来るわけないだろうが。

 鬼として、一度吐いた言葉を違えることは出来ない。鬼は嘘が大嫌いだ。嘘を吐くのも、吐かれるのも大嫌いだ。

 そんな鬼である自分が、霊夢との約束を違えるということは、鬼の矜持に反する。そんな誇りもないクズになるくらいなら、今この場で死んでしまった方が遥かにマシだ。それに――

 

「舐められたままじゃあ、はぁはぁ、終われない」

 

――自分らしくない。

 

 このまま何もしないのはっ!

 勝てぬまでも、せめて一泡くらいは吹かせてやりたい。

 勇儀は喧嘩が大好きだ。相手と全力で力を比べ合い、全力で殴り合い、全力で押し合い、全力全開でぶつかり合うのが、全力全開で競い合うのが大好きだ。

 別に勝ちに拘っているわけではない。負けたら負けたで悔しいが、それはそれで酒の肴になる。自分の全力を出して負けたとなったら仕方ないと諦めもつく。

 だが、こんな圧倒的に負けるのは流石に悔しすぎる。相手の全力も引き出せないで負けるのが悔しくて悔しくて堪らない。

 

――思い出せ、あの力を。

 

 理性がぶっ飛んで、暴れまわっていた時のあの力をッ!

 

――引き出せ、あの力を。

 

 今もなお、己の内側に眠っているだろう。常識をぶち破る怪力乱神の力をッ!

 

――あの力をッッッ!!

 

「鬼をッ! 四天王をッ! 星熊勇儀を舐めんじゃねぇぇぇッッッ!!」

「――ッ!?」

 

 勇儀の雄叫びとともに、衝撃波が周囲を駆け抜ける。

 震撼せよ、地底よ。震撼せよ、幻想郷よ。震撼せよ、世界よ。これが鬼のッ! これこそがッ! 怪力乱神と謳われし我が力也ッ!

 

「此処からが本番だァッ!」

 

 勇儀の目が反転する。黒き眼に紅玉を光らせ、その全身が赤く放電する。

 ソレは、まさしく神話の再現。古くより語られし力の象徴、妖怪共の中でも殊更に強力と恐れられた最強の姿そのものッ!

 星熊勇儀は限界を超越した。約束を違えぬために、鬼の矜持を、己の誇りを守るがために、星熊勇儀は己の限界を無理矢理ぶち破ったのだッ!

 

――鬼神覚醒。

 

 奇跡か偶然か? 否、それはまさに必然也。

 

「……うふっ、うふふっ、アハッ! アハハハッ! アハハハハハッアーッハッハッハッハッハッ! ヤれば、出来るじゃないの!」

 

 幽香大歓喜。

 オードブルにすらならない食前水が、ポアソン程度には進化してくれたのだ。これに喜ぶなというのは無理がある。

 やっぱり霊夢が認めただけのことはある。その愚直なまでに真っ直ぐな精神も、感じられる力の波動も。……これならば、己が全力を以て叩き潰してあげるだけの価値はあるだろう。

 

「良いわ、良いわよ。此処からは手加減はなし……本気でぶち壊してあげるッ!――」

 

 幽香が殴り掛かる。……手加減なしの、今の状態で出せる本気の一撃だ。

 腕の振りによって発生した風圧だけで、地底の岩盤に亀裂を発生させるほどの強力な一撃。それを――

 

「ハハッ! 痛ぇな、この野郎ッ!」

 

――耐えた。

 

 まともに受けたら吹っ飛んでいたであろう一撃。それを顔面に喰らいながら、その場で踏み留まって耐え切ったのだ。

 

「あら? 手を抜いたつもりも無かったんだけど。……一体どういう事なのかしらね?」

 

 手応えはあった。……だが、その感触は肉を打ったソレではなく。大質量の金属を思いっ切りぶん殴った時のような鈍い手応えだ。

 幽香の圧倒的な身体能力から繰り出された、凶悪極まりない一撃を顔面に食らった勇儀は、殴られた箇所を黒く変質させながら、笑う。

 

「私は喧嘩屋だっ! そんじゃそこらの奴とは経験が違うッ! オリャッ!」

「ッッッ!?」

 

 豪快に笑いながら殴るつける。

 幽香の顔面に突き刺さった鬼の一撃は、そのまま幽香の身体を後ろへと押し出し、後退させる。

 まともに喰らいはしたが、幽香の身に傷はなかった。常識外れの肉体を持った幽香に傷を与えるには、まだまだ足りなかったからだ。だが――

 

「……アハッ」

 

――後退した。

 

 この戦いの中で風見幽香は初めて後退させられた。

 あの風見幽香が、幻想郷最凶の妖怪である、あの風見幽香が、鬼の一撃を受けて、僅かにであるが後退したのだ。

 

「お前、本当に面白いわ」

 

 己を後退させたものなど、霊夢を除いて誰もいない。それをこの鬼はやってのけたのである。

 幽香の表情が更に喜色に歪んでいく。闘争を是とし、命の奪い合いを是とする幽香にとって、己と殴り合える存在はあまりにも希少だ。

 その強力な力の前には、どんな存在も原型を留めることは出来ず、相手がどんな手段で攻撃しようとも、並外れた肉体強度があるがために、傷一つとして負うことはない。

 そんな幽香であるからこそ、己と対等に殴り合い、殺し合える相手を好意的に思う(霊夢に対しては恋愛感情が限界突破して殿堂入りしているため除外するが)。……つまり幽香は目の前にいる鬼に対して、友愛にも似た強い好意を抱いてしまったのである。

 

「ちっ、やっぱりまだまだ足りてねぇか」

 

 この馬鹿げた耐久力を持った女には今のままでは足りない。今のままの妖力では、腕力ではまだまだ足りない。

 己個人の力だけではこの女にダメージを与えることは出来ない。……ならばどうするか?

 

「足りねぇならッ――」

 

 その場で大きく片足を上げ、思いっ切り地面に叩きつけて四股を踏む。

 勇儀の踏み込みは地底を大きく揺らし、大地を砕きながら衝撃波を発生させる。……何のために? 威嚇? それとも単純に気合の入れ直し?――否、勝つためだッッッ!

 衝撃波に呼応するように、地底のありとあらゆる場所から妖気が幾つもの塊となって勇儀へと押し寄せるッ!

 

「――他所から持ってこれば良いってねぇッ!」

 

 そして勇儀は、押し寄せてきた妖気の塊をまとめて己の身に取り込んでいく。一欠片も残さず吸収し、己の血肉へ、力へと、妖力へと変えていく。

 全ては霊夢との約束を守るためにッ! 己の誇りを守るためにッ! 風見幽香に打ち勝つためにッ!

 既に限界以上まで力を引き出している自分の身体は悲鳴を上げている。妖気を取り込んで行く度に、身体の内側で力の塊が暴れ回り、耐え難い激痛が走るッ!

 だが、ソレがどうしたッ! 限界なんて誰が決めたッ! 痛みなんて気合でねじ伏せろッ! 目の前の怪物に勝つためだったら、こんなの屁でもないッッッ!!

 

「準備万端だッ! さぁ、力比べと行こうじゃないかッ!」

 

 遂に勇儀は乗り越える。

 己の肉体が許容できる限界ギリギリまで取り込んだ妖気。……取り込めきれなかった妖気を、赤い蒸気として放出しながら豪快に笑う。

 そう、準備は万端だ。限界まで高まったこの力があれば、例え相手が風見幽香であろうとぶっ飛ばせるっ!

 

「あはっ!」

 

 あらゆる限界をぶち破り、遂には己の立っている領域にまで足を踏み入れた鬼を見て、幽香は笑う。歓喜の余りに哄笑し、狂気の余りに凶笑する。

 久方ぶりに血が滾る。肌をピリピリとした妖気が撫で上げ、鋭い殺気が胸を貫いていく。気分が高揚し、全身を心地の良い震えが襲う。

 幽香は確信していた。この鬼は、今のこの勇儀とかいう鬼は、自分を傷つける事が出来る力を持っている。己の命を奪えるだけの力を有している壊れにくい最高の玩具へと急成長を遂げたのだと、強く確信していたッ!

 

「ウオォォォォォッッッ!!!」

「アッハッハッハッハッハッ!!!」

 

 勇儀と幽香は、真っ向から互いの両手を掴み合い。全てを掛けて力を込める。ギチギチッ、ギリギリッと、互いの骨と骨が軋み合い、耳障りな不協和音を奏でる。

 強大極まりない二人の妖力がせめぎ合い、まるで二つの壁がぶつかり合っているかのように歪な境界線を作り出している。

 

「ぶっ飛びやがれッ!」

「うふふっ! お断りよッ!」

 

 スキを突いて繰り出した勇儀の蹴りを、同じく蹴りで相殺する。

 殴り、殴られ、蹴り、蹴られ、ぶん殴っては、ぶん殴られ、叩きつけては、叩きつけられ……拳には拳が、蹴りには蹴りが、手刀には手刀が返される。

 防御なんてクソ食らえと言わんばかりに、真正面からノーガードでぶつかり合う。血を噴き出そうが、痣が出来ようが、骨が折れようが、そんなの関係ないッ!

 相手よりも速く、相手よりも一発多くッ! 目の前のこの女をぶっ飛ばすためにッ! 己の全力を掛けてぶつかり合うッッッ!!

 

「ぶほっ!? ハハッ! オラッ!!」

「がはっ!? ふふっ! アハハッ!」

 

 だが、どうしてだろうか……。

 

「やりやがったなっ!」

「それはこっちの台詞よっ!」

 

 互いに傷つけ合っている筈なのに……。

 

「チョッ!? 遠距離攻撃は卑怯だろうがッ!」

「悔しかったらお前もやってみたら?……あぁ、どうせ岩投げしか出来ないわよねぇ?――げふっ!?」

「残念だったなっ! 石もあるぜっ!」

「痛っ!? いたたたたたっ!?」

 

 悪友同士で悪ふざけしているかのような……。

 

「いい加減にしなさいっぶっ殺すわよ?」

「あ? 出来るのならやってみろよ」

 

 血みどろの殴り合いをしているというのに、何て綺麗な笑顔をしているのだろうか。

 

 鬼と最凶の戯れは続く。

 地底を互いの血で真っ赤に染め上げながら、暴れ暴れて、舞って舞って舞い狂い、笑い笑って笑うのだ。

 

 

 

ーーー

 

 

 

O()O()! 目標を駆逐するッ!」

 

 紅の閃光が地底の戦場を駆け抜ける。

 閃光の正体は、緑色の粒子を身に纏いながら縦横無尽に飛翔するわけの分からない(OKE)。そして、その桶に乗っている駆逐系少女――キスメ(私がOKEだッ!)である。

 何故かピンク色のビームを放ちながら、何故かビームで出来た鎌を振り回しながら、何故か時折粒子そのものへと姿かたちを変えながら、戦闘を続けている。……一人だけ世界観が違うとは口が裂けても言ってはいけないのである。

 

「うわあぁぁぁ!? 簡単に駆逐されてたまるかァァァ!」

 

 対するのは土着神の頂に立つ少女。

 ありとあらゆる祟り神達を支配し、彼女自身も強力な神の力を宿している土着神の中の土着神(ゴッド・オブ・ゴッズ)――洩矢諏訪子。

 迫りくる未来兵器の数々を鉄輪で弾き、神の力で創造した石蛇で反撃を繰り返す。……性能差がありすぎて蛇がただの的にしかなっていない。そんな事実は何処にもないのである。

 

「私を忘れてもらっちゃ困るなぁ! そぉらっ! やっちまいなっ!」

【回転ッ! 阿修羅腕ァァァァァ!】

 

 土蜘蛛の少女の掛け声と共に、彼女の背後に浮かび上がった半透明の怪物がその豪腕を振り回す。

 病魔を操りながら、自由自在に半透明の怪物を操っている少女――黒谷ヤマメ。

 異形なる怪物が拳を振り下ろす度にナニかが割れる音が響き、周囲に紫色のガスのようなものが撒き散らされる。

 ガスにはウィルスが――神にすら通じる極悪なウィルスが含まれている。無防備に喰らえば、如何に祟り神の頂点たる諏訪子であってもタダでは済まない。……時間が経つ毎にヤマメの奇妙な決めポーズのキレが上がっていっているのは気のせいではない。

 

「くっ、何だかんだアンタのソレが一番厄介だねっ!」

 

 一撃でも喰らえば終わる怪物の連撃。それを諏訪子は紙一重で躱し続ける。小柄の体型を活かして、石蛇へと変じた祟り神達をけし掛けて、躱し続ける。

 確かに強力極まりない力だ。だが、当たらなければどうということはない。……何処ぞの赤い彗星のような事を考えながら、妙にアクロバティックな動きで攻撃を回避し続ける。

 

 戦況は拮抗している……様に見える。

 キスメとヤマメの両名の異常な攻撃の数々を、諏訪子が捌き続けている。逆もまた然り。お互いに攻撃し、防ぎのやり取りを延々と繰り返している千日手にしか見えない。だが――

 

「はぁ、はぁ」

 

――疲労。

 

 蓄積していく疲労。時を重ねる度に諏訪子の精神を身体を蝕んでいく。

 そう、拮抗していると思われているが、実際のところは諏訪子の劣勢である。

 猿でも分かる、簡単な事だ。如何に諏訪子が優れた技量を持っていたとしても、相手がその技量をものともしない存在であるならば、その技量に意味はない。

 例えるならば、武術の達人である人間が、大型の肉食獣相手に肉弾戦を仕掛けている様なものである。……元々の身体能力、肉体強度などに大きな差が存在している以上、勝率は限りなく低いだろう。

 諏訪子と対している二人は、最早ただの妖怪の枠組みに入れていい存在ではない。進化を経て、種族の限界を大きく逸脱した純然たる強者なのだ。

 諏訪子がどれほど攻撃を当てようが、キスメの桶には傷一つ付かないし、ヤマメの怪物は怯みはしない。

 逆にヤマメとキスメの攻撃は、一撃でも喰らえば致命傷は確実と来た。……故に、諏訪子は一撃一撃を神経を擦り減らしながら躱し続けているのである。

 

「はぁ、はぁ」

 

 諏訪子の体力も限界が近付いて来ていた。長引けば長引くほど、諏訪子はどんどん疲弊し、追い詰められていく。

 

「いけ、ファングっ!」

「っ!?」

 

 諏訪子が疲労し、徐々に動きが鈍くなっていこうとも、対している二人は関係ないと言わんばかりに、容赦なく追撃を加えていく。

 キスメが駆る桶から射出されたのは、その名の通り牙の様な形をした遠隔兵器――先端部分から、剣状のビームを発生させ、高速で諏訪子に襲い掛かる。

 さしもの諏訪子もこのオールレンジ攻撃を完全に防ぐことは出来ず、徐々に全身に切り傷が作られていく。辛うじて致命傷は避けられているが、それも何時まで持つか……。

 

「爆発するかのように襲い、消える時は嵐のごとく立ち去る。……それがこのモンスペイラー(死の怪物)ディストピア(地獄領域)

【え、俺、そんなダサい名前なのかァ?】

「シャラップ! ス◯ンドが喋るんじゃないよ!……ん? ス◯ンドって、何?」

【ス◯ンドとは、超能力を擬人化したものである。外見は召喚獣や背後霊に似ており――】

「待って、何言ってんのか分かんない」

 

 諏訪子を追い詰めているキスメとは対象的に、自身が従える怪物――ヤマメ曰く、ス◯ンドのモンスペイラーという謎の生命体? と無駄な会話を楽しんでいた。……怪電波受信中とかそんな酷いことは言ってはいけないのである。

 

「というか、もっとちゃんと狙ってよ! どうして誰もいないところ攻撃してるの!?」

【俺の精密操作性は-Eだからなァ、細けぇ動きは苦手なんだよォ】

 

 一応、その間にもモンスペイラーというス◯ンドはその六本ある豪腕による拳の弾幕を放っているが、本人が申告している通り精密性が最低値なので当たらない。……-Eは伊達ではないのである。

 

「げほっ、げほっ……ぅ」

 

 拳は当たっていないが、諏訪子にダメージが入っていないわけではなかった。

 ヤマメのス◯ンド、モンスペイラーの能力は、何処ぞの世界の恥知らずさんと似ている。六本の拳にはカプセルがあり、その中には神の肉体すらも侵し尽くす強力な病原体が山ほど詰まっているのだ。

 あの巫女の知り合いらしいので、致死力の高い病原体は撒き散らしていないが、それでも一度でも発症してしまえが、極度の倦怠感、手足の痺れ、心肺機能への負荷、目眩、頭痛。……様々な症状が一気に襲い掛かる。

 

「そらそらぁ! 当たらぬ弾も何とやらさぁ!」

【回転阿修羅腕ァァァ乱れッ撃ちィィィ!】

 

 そう、当たらなくても良いのだ。当たらなかった拳は地面や壁に激突し、その衝撃で拳のカプセルが割れる。つまり、病原菌が周囲に撒き散らされるのだ。

 後はじっくりじわじわと、相手が動けなくなるまで攻撃を続ければ、いずれ病に侵され、動けなくなるのだ。……そうなってしまえば、簡単に致命の一撃をぶつける事が出来る。

 

 もう一度だけ敢えて言おう。

 

「うぅ……ちく、しょうっ」

 

――諏訪子は追い詰められていた。

 

 地底の妖怪は予想外に強すぎたのだ。……(別の場所で戦っている面々よりは遥かにマシではあるが)神である諏訪子ですら歯が立たないほどに強かったのだ。

 技量では経験値では負けていない。遥か太古の日本で猛威を奮った土着神の最高峰、ありとあらゆる祟り神達を操り、自然を操り、生命創造すら成し遂げる諏訪子が、目の前にいる数百年程度しか生きていない妖怪よりも、技量や経験で劣るという事はない。

 何度も言っているが、これは技能などではなく純粋な性能差の問題だ。……身体能力であったり妖力などの差であったり、訳の分からない桶の存在だったり、意味不明なス◯ンド的な怪物な存在だったり、ありとあらゆる要素で、諏訪子が二人に劣っていたが故。……それ故に諏訪子は追い詰められているのだ。

 

「ちくしょうっ」

 

――……えるか?

 

「は?」

 

 声が聞こえた。この場にいない筈の声が。……具体的には守矢神社に置いてきた(封印した)、抜け駆け大馬鹿女の声が。

 

――……聞こえ……てる……か……諏訪……子?

 

「……神奈子?」

 

 守矢の神の片割れたる八坂神奈子の声が、諏訪子に呼びかけてくる。それは最初はノイズがかった不鮮明なものだったが、徐々に徐々に鮮明にハッキリとした声になっていく。

 

――……今、お前の脳内に直接語りかけている。

 

 何それコワい。

 

――諏訪子、どうやら苦戦しているみたいだな。

 

 何でテレパシー的な事してんの? なんてツッコミは、この際置いておこう。……本当はかなりツッコんでやりたい気持ちをグッと堪えて、神奈子の言葉に耳を傾けることにした諏訪子である。

 

「はぁ、何で苦戦してるって分かったんだよ」

 

――オメェの神気が小さくなってっかんな!

 

 黙れ悟◯。

 

「無駄話している余裕はないんだけどねぇ」

 

 こうして神奈子と話している間も、キスメとヤマメの攻撃の嵐は絶えず続いている。集中力が削がれるようなことは極力避けたいのだ。

 

――まぁ、聞け。……諏訪子、このままだとお前は負ける。それは理解っているな?

 

「うぐっ、い、いきなり、痛いところを突くね。……理解っているよ。このままだと、遅かれ早かれ私は負ける。それも完膚なきまでに叩きのめされて、ね」

 

 諏訪子だってここから逆転できるなどとは考えていない。今の自分と相手の戦力差がどれだけ開いているのか、しっかりと理解しているつもりだ。

 現状はただの時間稼ぎ、自分の敗北するまでの時間を引き延ばしているだけだ。

 

――そう、だから助言してやろうとな。

 

「助言?」

 

――お前も成れる筈なんだ。私が至った境地に……超守矢神の領域にな。

 

「いや、無理だよ。何言ってんだお前」

 

 超守矢神。

 数刻前、守矢の神の一人である。八坂神奈子が至った究極の形態。

 溢れんばかりの神気を漲らせ、黄金に輝く威光で、全てを照らし出す。まさしく超という名に相応しき圧倒的な力を秘めた、神が至りし最強の形態である。

 高まり切った、純粋な想いの爆発……あるいは暴走により、神の肉体が突然変異の如く急激な変化を引き起こし生まれる何処ぞの野菜人ばりに理不尽な存在。

 

――超守矢神は混じりっ気のない純粋な想いを抱いた神が、感情を爆発させることにより変化するものだ。

 

「話聞けよ」

 

 色んな意味で尊厳とか何もかも捨て去っている神奈子ならともかく、普通の神様である自分がなれるわけがないだろうが、いい加減にしろ。

 

――霊夢様へのこの燃え滾る熱い想いによって、私は私という神の限界を超えた力を手に入れたんだ。

 

「やめろ、変な思念を送りつけるな」

 

 神奈子の言葉と共に、霊夢にされたあんなことやこんなこと(お仕置き)、そしてその時、神奈子が感じていた快感やら、霊夢に対する情念やら何やらがまるでハッピーセットの如く、諏訪子の脳内にダイレクトアタックを仕掛けてくる。

 

――つまり、私と同じように霊夢を想っているであろうお前にも可能性は十分にあるというわけだ。

 

「取り敢えず、戻ったらお前、絶対にボコボコにしてやる」

 

 グーパンで顔面整形してやると強く決心する諏訪子である。……何で必死こいて戦っている最中に、仲間の情事(神奈子のフィルター付き)を見せられないといけないんだ。羨ましいわ、しばくぞボケ。

 

――諏訪子、思い出せ。霊夢様への想いを、恋慕を、劣情を、あの方とまぐわいたいと考えている私達の強いラブをッ! 思い出せぇぇぇ!! 以上だ、健闘を祈る。……ガチャンッ! プゥ―プゥ―プゥ―

 

「これ電話だったのッ!?」

 

 神奈子のド変態発言にツッコむ間もなく。テレパシー的なものが電話仕様だったという、更にツッコミどころな事実が出てきてツッコミが追い付かない可哀想な土着神が一人。……そろそろ諏訪子は本気で神奈子をボコボコにしても許されるだろう。

 

「さっきからごちゃごちゃと何言ってるのさ!」

「余裕、ダメ、絶対」

「こっちにも色々あるんだよ!」

 

 忘れてはいけないのが、諏訪子と神奈子のやり取りの間も、戦いは続いているという事実である。

 会話に集中して少しだけボーッとしていた諏訪子の態度に、キスメとヤマメの二人は憤慨としていた。自分達と戦っているというのに、余裕そうに(見えるだけ)余所見するとは生意気だと言わんばかりに、攻撃の手が更に激しくなっていく。……理不尽だ。

 

「あのっバ神奈子めぇぇぇ! お前のせいで、余計に状況が悪化してんじゃないかぁぁぁ!」

 

 ヤバイ、死ぬ。普通に死ぬ。

 ただでさえ体力がマッハで付きかけている上に、限界ギリギリまで力を振り絞って耐え忍んでいるというのに、相手の勢いが倍速で増し始めたのだ。……シンプルにヤバイし、シンプルに死ぬに決まっているだろうが、馬鹿野郎、この野郎。

 

「破壊するッ! ただ破壊するッ! こんな行いをする貴女をッ!」

 

 怒りでテンションが上がったのか、ただ単に最高にハイにでもなったのか、妙に饒舌になったキスメ嬢である。

 遠隔兵器の勢いが更に増し、その上、キスメ本人も何処からとも無くドデカイ砲身の兵器を取り出して、滅茶苦茶にぶっとい粒子砲を打ちまくっている。……アレが直撃してしまったら如何に諏訪子といえども、消し炭になるだろう。桶ロリコワいという奴である。

 

「うばぁしゃあああああ!」

【え、何この宿主、コワァ】

 

 お前が言うんかい。

 怒りの余り、ただただ可愛いだけの謎の叫び声を上げながら、無駄に忙しない動きで飛び掛かる地底のアイドルヤマメちゃんである。

 背後に従えているモンスペイラーさんが微妙に引いた表情をしているのはきっと気のせいではない。自分の宿主が意味不明なテンションで暴れている光景を見せられて平静でいられるほど、強靭なメンタルは持っていないのだ。

 

「やばっ!?」

 

 ともかくとして、諏訪子大ピンチである。このままではこの頭のオカシイ二人組に蹂躙されて敗北する。

 

「神奈子のバカの言葉に従うのは癪だけど。仕方ない、か。……あーうー、感情の爆発だっけ?」

 

 神奈子は言っていた。……霊夢へとの燃え滾るような熱い想いを爆発させて、神として更に上の領域に到達したのだと。

 想い――そう、想いだ。想いなら自分も負けてなどいない。神奈子の馬鹿には変態加減で負けちゃうけど、純粋な想いの強さでは自分も負けてはいないッ!

 簡単じゃないか、別に恥ずかしいことでも何でもない。ただ自分の中にある霊夢の奴に対する感情を思いっ切り爆発させてやれば良いんだ。

 自分は霊夢とどうなりたい? 霊夢と何をしたい? 霊夢の事をどうしたい? 霊夢に何をされたい?

 

「そうだよ。こんなところで足止めされているわけにはいかないんだ。……だって、霊夢を迎えに行ってあげなきゃいけないからねぇ」

 

 霊夢と同じ屋根の下で生活するようなもっと親しい関係になりたい。

 霊夢とイチャイチャしながら、一緒に遊んだり、一緒にご飯を食べたり、一緒にお風呂に入ったり、一緒にお休みしたり、色々したい。

 霊夢の事を自分の手で可愛がってあげたい、あの触り心地の良い身体も、あの綺麗でカッコイイ表情も全て思い通りにしてみたい。

 霊夢に滅茶苦茶にされてみたい。いや、ほんの少しの触れ合いでも良い、抱き締めて、頭を撫で付けて欲しい。

 ぶっちゃけてしまうなら、霊夢を守矢神社に監禁して、自分だけの物にしてしまいたい。

 

――なら、ね?

 

「邪魔」

「ッ!? 緊急回避ッ!」

 

 咄嗟に粒子と化して、その場から離脱する。瞬間、先程までキスメがいた場所を紫色の極光が通過する。極光は地底の大地を消滅させ、破壊を撒き散らす。

 

「邪魔」

【うおおおおお!?】

「モンスペイラーッ!?」

 

 モンスペイラーの巨体が宙を舞う。見れば、彼の腹部には巨大化した鉄輪。……放たれた鉄輪は衝撃波を巻き散らしながら、モンスペイラーに直撃したのだ。

 

「私と霊夢の間にある奴。……全部、全部、全部邪魔だ」

 

 諏訪子の目の色が変わる。ハイライトが消え失せ桃色に輝き出す。

 

「あぁ、何か良い気分だなぁ……なるほど、神奈子の奴が調子に乗る筈だよ」

 

 力が溢れ出す。諏訪子の身体から、力が溢れ出していく。

 神の気、本来白い輝きのソレが、徐々に変化していく。黒みがかった桃色へと変化していく。

 

「散々やってくれたね。……借りはきっちり返させてもらうよ?」

 

 最後に、諏訪子の太陽の光を浴びた稲穂の様に黄金色に輝いていた淡い金の髪が変化する。まるで、諏訪子の心の内を表しているかのような、黒が入り交じる桃色の髪へと変化する。

 

「OOが震えている?」

【CAUTION! CAUTION!】

 

 キスメの桶が危険信号を鳴らす。

 

「だ、大丈夫?」

【ぺっ……問題ねェ、脇腹をちょっと持ってかれただけだァ】

「致命傷じゃん!?」

 

 ヤマメのス◯ンドに無視できない損傷が出来る。

 

「そうだなぁ、敢えて神奈子の奴に合わせるんだったら。……タタリ――」

 

――超守矢神タタリ。

 

 諏訪子が至りし神の境地。

 正の方向性?に進化した神奈子の超守矢神とは真逆……まさに負の方向性に特化したとでも言うべき超守矢神の姿である。

 諏訪子の内に育まれていた霊夢に対する余りにも重すぎる想い。自分の物になって欲しい、誰の目にも触れられないように、自分達の神社の中に監禁してしまいたいという余りにも歪んでしまった想い。……その強すぎる想いを解き放ったために発現した、諏訪子だけの超守矢神である。

 

「早く、邪魔な物を片付けて、霊夢を連れて行かないと、ね。あはっ」

 

――ヤンデレ。

 

 いっぱいちゅきぃという感情が行き過ぎて、暴走し、諏訪子を染め上げる。

 

――閉じ込めたいくらい愛してる。

 

 それが諏訪子の、霊夢に対する感情だった。

 神という生き物は恐ろしい生き物だ。自分の気に入った存在を大事に大事に仕舞い込んで、自分以外、誰にも手の届かない場所へと閉じ込めていたくなる。

 諏訪子もまた神だ。霊夢という人間を気にってしまった一人の神なのだ。……故に、諏訪子は気に入ってしまった人間を、己の領域である守矢神社の中に閉じ込めたいという想いがあった。

 それは、愛であり、独占欲。他の誰にも……それこそ仲間である神奈子や早苗であったとしても、触れさせたくないほどに、深くて強い独占欲。

 

「酷い奴だよ。私はこんなに想っているのに、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ……他に目移りしちゃう悪い娘はしまっちゃわないとねぇ?」

 

――神隠し。

 

 発言がしまっちゃうおじさんのそれと同じだとか、そんな事実は何処にもありはしないのである。

 

「これが、世界の歪みッ!」

 

 キスメは超守矢神の領域へと覚醒した諏訪子の危険性を瞬時に理解した。

 あれが、あの神が世界の歪みの一つであると、祟りという恐ろしい災厄の根源であると理解した。

 世界の歪みは破壊しなければならない。それが、桶マイスターである、自分の宿命なのだから。……場の雰囲気と、高性能過ぎる桶の影響で、若干暴走気味な釣瓶落としは、そろそろ冷静になった方が良いかもしれない。

 

「ぎゃ、逆に考えるんだ。あ、あああげちゃってもいいさと、か、かか考えるんだだだ」

【宿主、落ち着けェ】

 

 ヤマメの恐怖は臨界点を突破していた。

 あの危険で危ない気迫を感じさせる、諏訪子の凄みに当てられて、呂律が回っていないのだっ! 同じ系統の力を扱うヤマメだからこそ、気付いた! 気付いてしまったッ!

 

 ヤベェどころの騒ぎじゃねぇ、私は今奴の力の波動を真正面から直にほんの少しだけ体験した。い、いや……体験したというよりは、まったく理解を超えていたのだが……。

 あ、ありのまま、今、起こったことを話すよ!

 『キスメと一緒にアイツを追い詰めていたと想ったら、次の瞬間には桃色になったアイツがいて、私達が吹き飛ばされていた』

 な……何を言っているのか、わからないと思う。私も何をされたのか分からなかった。頭がどうにかなりそうだった。

 の、能力だとか、カミサマパワーだとか、そんなちゃちなものじゃ、断じてない。も、もっと恐ろしい物の片鱗を味わったかもしれないよ!

 

 ヤマメは混乱している。

 

「さぁて、お邪魔虫共。私はさっさと霊夢の奴を神社に連れ帰らないといけないだよ。……退かないと、末代まで祟るよ?」

「目覚めてOOッ! 未来を切り拓くために!」

「う、うわあぁぁぁぁぁ!」

【もう駄目だ、コイツ】

 

 邪悪で異質な神の気を身に纏う諏訪子が凄む。

 しかし、キスメはその気迫に屈すること無く睨み返し、OOを再始動させ、戦闘態勢を整える。

 ヤマメは、恐怖と混乱がピークに達して、叫び声を上げながら、やけになった烈◯王のごとく腕をグルグル回し続けている。……モンスペイラーはあんまりにもアレな宿主の様子に呆れ返り、額に手を当てるしかなかった。

 

 土着神と釣瓶落とし、土蜘蛛の戦い。……その幕引きは近い。

 

 

ーーー

 

 

「ふぅ……少し、焦ったぞ」

 

 手の平を襲う熱。眼前に迫っているのは、全てを滅却せんとばかりに燃え滾った業火である。……ふむ、私がごいすーですぺしゃるな結界師じゃなかったら、燃え燃えキュン()されていたな。

 あ、あぶねぇー! 後、もうちょっと遅かったら、マイスウィートサトリシスターズの珠の肌に、無視できない傷が出来てしまうところだった。……さとりちゃんやこいしちゃんの陶器の様に滑らかで、白雪の様に透き通った神秘的で国宝級な素肌に傷が付いてしまったら、世界の損失になるところだった。

 よくぞ間に合わせた。超偉いぞ私。……いや、本当に、本気と書いてマジでよく間に合ったな、私。鍛えといて良かったぁぁぁ!

 

「さとり、こいし、怪我はないな?」

「あ、お、空?」

「何、で?」

 

 アイヤー(額をポンッ)、茫然自失って感じだね、こりゃあ。

 そりゃそーだよねー。家族だと思っている娘から殺意マシマシで攻撃されちゃったんだからねー。そりゃー、そうなるよねー。

 私もゆかりんとか、魔理沙たんとか、幽香とか、藍ちゃんとか橙ちゃんとか、あーちゃんとかパチュリーちゃんとか、レミリアちゃんとか、フランちゃんとか、萃香ちゃんとか、えーりんとか(以下略

 大好きで大事で大切な少女たちに敵視されて、殺意持たれちゃったら涙が出ちゃうもの。……え、どうせすぐに鎮圧して(肉体言語での)お話をする? ちょっとナニを言ってるのかお姉さん分かんないなー。

 

「ほら、気をしっかりと持て」

 

 お、落ち着かせるためだから、抱き締めて頭ナデナデは普通普通。……あ、さとりちゃんの髪サラサラだ。こいしちゃんはくせ毛になってるけどふわふわしてる。

 

「……すいません、落ち着きました」

「ごめんね霊夢、ありがとう」

「礼には及ばんさ。……それよりも、此処から先は、お前たちには荷が重い。結界を張っておくから、此処から決して前に出るな」

 

 流石に守りながら戦うのは厳しいっぽいからね。お二人さんには、此処で見守っていて貰いたいのだよ。

 

「霊夢さんっ! お空をっ! お空をどうかお願いしますっ!」

「絶対に助けてよね!」

「無論だ」

 

 泥舟に乗った気分で待っていてネ!……今、絶対沈むだろって思った人、後でお姉さんのところに来なさい。お姉さんが作った泥舟が如何に沈まないか、二十四時間三百六十五日に及ぶ、懇切丁寧な説明をしてあげるから。

 

【ほう? あの距離で防ぐか】

 

 五月蝿いよ八咫烏、この野郎。

 いきなり、サトリシスターズを狙うとか、本当いい加減にしろよお前。お前がお空ちゃんに取り憑いていなかったら、全力全壊でこの世からサヨナラバイバイさせていたぞ、おい。

 

「いきなり不意打ちとは、随分なご挨拶だな、八咫烏」

【その不意打ちを完全に防いだ貴様に言われたくはないな、博麗の巫女】

 

 クツクツと、お空ちゃんの愛らしくも凛々しい顔で笑う八咫烏。……え、お空ちゃんの身体で勝手に笑わないでよ。好きになっちゃうから(即落ち)。

 お空ちゃんとは、快活でアホっぽく笑うのがポイント高くて愛らしくて大変可愛らしいのが特徴的な美少女なのに、そんな、意地悪そうに妖怪特有の残酷な面と、神特有の冷徹さが入り混じった表情で笑うだなんてそんなの好きになっちゃうしかないだろ、本当に八咫烏いい加減にしろ(完落ちダブルピース)!

 今のやり取りで理解っちゃった。理解ってしまった。……八咫烏はッ、八咫烏はッ! メスッ! 圧倒的ッメスッ! 其の上、美少女ッ! 美少女だッ! 私の美少女センサーがビンビンにッ! 猛烈にッ! 反応しているッ!

 

 そんなわけで討伐できねぇです。はいはい、無理無理、絶対ムリです。

 いや、ごめん。本当にごめん。最初はさ、こう簡単に解決できると思っていたのよ。

 私が暴走した覚醒お空ちゃんを完全に無力化して、今回の異変の元凶となっているお空ちゃんの中に居座っている八咫烏をボコボコのボコにして、引き剥がして消し去ってしまえば何の問題はないと、高を括っていたのよ。

 ほら、八咫烏ってまんま化物のイメージあるじゃん? で、ガチの八咫烏って、オスってイメージあるやん? だって、三本足ですしぃ? 二本足の真ん中にデッカイ足が一本ありますしぃ? おっきくて太くてガチガチな足が真ん中から生えていますしぃ? 普通にオスって思うやん?

 だが、現実はメスッ! 圧倒的なまでにッ! メスッ! それも大好物のッ! 大好物のッ!

 

「……お空を返してもらおうか(震え声)」

【断る。これ程までに相性の良い依代はない。……返してほしくば力づくで来るが良い】

「は? 嫌だ(美少女をきずちゅけたくない的な意味で)」

【は?】

「は?」

「「……」」

 

 ここは、しずかなちれいでんですね。

 

「話し合いではどうにもならんのか?……私は出来る限り、この幻想郷の者達は傷付けたくないんだ」

【くどいぞ博麗の巫女! こうして対峙した以上、戦わぬことなど出来ぬ! 我の意地と、貴様の意地! そのどちらか一方を通したくば! 戦い勝ち取るしかなかろう!】

 

 何でいきなり大声出してるの? 可愛いけども。

 はぁ、やっぱり戦うしかないのね、知ってたけども。……私、異変の度に美少女と殺し合い(相手からの一方的な)をしている気がするよ。

 しかも、強い娘ばっかりだから、面倒くさいことこの上ない。幻想郷に悪影響がない様に戦わないといけないし、幻想郷の美少女たちが巻き込まれてしまわないように気を使わないといけないし、相手を傷付けてしまわないように、細心の注意を払って、丁寧に丁寧に、慎重に慎重に、それこそ硝子細工を扱うように手加減に手加減を重ねて相手をしないといけない。……いくら私でも神経擦り切れちゃうよ、ふぇぇ。

 

「先ずは無力化しないと、話し合いも出来ない様だな……少々、面倒だが」

【そう簡単に上手く行くと思わない事だな。……進化した我らの力はお前の想像の遥か上を行くぞ】

 

 知ってるよ。だから面倒なんじゃないか。

 見た感じ、会話している今も力が増しているみたいだしね。……手加減が難しくなるなーコレ。

 

【そら、小手調べだ。……行くぞ、空】

「う、うぅ、うにゃあああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 八咫烏の気配が引っ込み、お空ちゃんの意識が表に出てくる。……が、様子が可笑しい。まるで、獣のように吠えたかと思うと、その次の瞬間――

 

「にゃあああああぁぁぁぁぁ!!」

「甘いっ!」

「うにゅっ!?」

 

 爆発的な速さで、距離を詰め、右手の制御棒を叩きつけてきた。ハハッ……速すぎワロタ(驚愕)。

 取り敢えず、私の顔面に向けられたお空ちゃんのご立派な棒(意味深)を、両手で優しく握って、ゆっくりと上下運動しつつ、達してしまわないように寸止めの要領で背負い投げる。……そして、優しく放り投げられたお空ちゃんは、そのままの勢いで地面にフォールされ、変な声を上げる。

 流石、私。百点満点の背負い投げだよ。お空ちゃんをきずちゅける事なく、優しくフォールしてあげる事に成功したじぇい! いえぇい!

 

「うにゅ! う、にゅうがあああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 悲報、うにゅほもとい暴走お空ちゃんブチ切れる。

 赤い眼を黄金へと変化させ、全身から尋常ではない熱風を発しながら、その身に宿る神の気を高めていく。……へぇ? 八咫烏の力をそのまま降ろしたのか、暴走している状態で器用な事をする。

 感じ取れる力の波動は、先程の比ではない。数十倍にまで高まったお空の力が、熱と共に周囲に撒き散らされている。……今、この場に白ワイシャツ一枚の美少女が居たら、暑さの余り発汗し、あられもない姿を晒していたことだろう。

 

【第二ラウンドだ】

「うにゃあああああぁぁぁぁぁ!」

 

 掴みかかってくるお空ちゃん。……お、力比べか? お?

 自慢じゃないけど、お姉さん腕力には自信があるんやで(←人間とは名ばかりの馬鹿げた怪力持ち)

 

「良いだろう――ふっ!」

「うにゅぬぬぬぬぬ!」

 

 お空ちゃんの手の感触が素晴らしすぎて、力抜けそう。……だが、手の感触は問題じゃない。いや、十分に幸せな状態なんだけど、それよりも更に重大な問題がある。

 

――むにゅん、むにゅむにゅ。

 

 今のお空ちゃんの身長は、私を遥かに上回っている。私よりも頭一つと半分くらいは上の高身長。そんな相手と組み合っている私は、お空ちゃんの胸に、たわわに実ったあの魅惑の果実に、顔面を埋めるような形になってしまっていた。

 谷間に、私の顔面が挟まっているような感じだ。ちょうど良い感じに私の顔とフィットするようにピッタリと埋まってしまっている。

 私の鼻孔をくすぐるのは、お空ちゃんの香り。僅かな蒸れた汗の香りと、彼女自身の甘く芳しい魅力的な香りである。そして、何よりも、何よりもッ! 感触だッ! どう表現すれば良いのか、柔らかくて弾力のあるマシュマロに顔全体を埋めている様な、そんな幸せで筆舌し難い感触が私の顔面を包み込んでいるのだッ!

 

――幸せしゅぎてらめになりゅぅぅぅぅぅ!

 

「うにゃぁっ!」

「ぐはぁ〜〜〜(恍惚)」

 

 どうやら、力比べは君の勝ちみたいだ。

 流石だなお空ちゃん! まさか、こんな方法で私を無力化してくるとは思わなかったよっ! 出来ればもう一回くらい、私と力比べしてほしいなッ! お願いッ!

 

【えらくあっさりと負けたような気がするが。……気のせいか?】

 

 気のせいや。気のせいなんやで……だからもっかい力比べはよ。

 

「随分と強くなったな。……正直、驚いたよ」

「うにゅうぅぅぅぅぅ!」

【抜かせ、その強くなった力相手でも手加減する余裕がある貴様に言われたくはないわ。……ふっ、やはり博麗の巫女を相手取るにはまだまだ進化が足りないようだな。空ッ!】

「うにゅあっ!」

 

 更に倍プッシュだと言わんばかりに、お空ちゃんの力の波動が増す。……えぇ、この下り何回するの? 流石の博麗お姉さんも飽きてきたんですけど?

 まぁ、今のお空ちゃんで漸く通常幽香の全力、常識破りの奇跡(アンリミテッド・ミラクル)状態の早苗に匹敵するね。この短時間によくもまぁ、こんなに強くなれるもんだよ。

 

【第三ラウンドだ。やれっ空ッ!】

「にゅやあああああぁぁぁぁぁ!」

 

 八咫烏の指示により、お空ちゃんは幽香や早苗を彷彿させる馬鹿げた力を放出しながら、再び突撃してくる。

 

「やれやれ、仕方がないな。……気の済むまで何度でも相手してやろう」

 

 どうやら長期戦になりそうだ。

 元気一杯に突っ込んでくるお空ちゃんの勢い(とブルンブルンっと揺れる二つの巨大な夢の塊)を見て、否が応でも理解するしかなかった。……出来れば、掴み合いとか取っ組み合いのくんずほgゲフンッゲフンッ! 血肉沸き立つ強者と強者のぶつかり合いをしたいところだね。

 




か・く・た・のぉぉぉぉぉ!(CV野◯さん風)

みんな、楽しんでくれた?
今回の話は、割と楽しく書けているんじゃないのか? って個人的には思っていますわ。

取り敢えず、副題を付けるとするならば【覚醒祭り】、まともだと思われていた勇儀姐さんがやっぱりまともじゃなかったり、諏訪子が超守矢神になっちゃったり、お空がブロってたり、もうわけが分からない状況になってるけど、最後まで見放さずにいてくれると、春巻きさんは嬉しいです。

久しぶりで、色々と言いたいこともあるけども、そんな気持ちをグッと抑えて、私は締めの言葉を言っちゃうのです!

と、その前に感想とか沢山下さると春巻きの栄養とか、その他諸々のガッツに繋がります。ですから感想をッ! 感想をくだしゃいぃぃぃ!(頭春巻き)

ではでは、そんな欲塗れの本性を曝け出しつつ……。

またのぉ!
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