東方博麗伝説   作:最後の春巻き(チーズ入り)

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巫女、メイド【下弦】

「さて、パチュリーお嬢様方のお世話(意味深)も済みましたし、後は「霊夢、見ーっけ!」……フランお嬢様、いきなり飛び掛かると危ないですよ?」

「えへへ〜、霊夢はちゃんと受け止めてくれるでしょ?」

「全く、仕方のないお嬢様ですね」

 

 私に思いっ切り抱き着きながら、フランお嬢様は屈託ない満面の笑顔を浮かべていらっしゃいます。……控えめに申しましても、ドチャクソ可愛らしいとしか言いようがありません。

 あんまりにもフランお嬢様が可愛らしいので、思わず頭をナデナデしてしまいます。……はぁはぁ、フランお嬢様可愛過ぎてるぅ、これは危ない、我慢出来ません、フランお嬢様様素敵ぃ!

 

「残念ね、フランだけじゃないわよ! とぉぉぉぉぉ!──って、あれ?」

「残像でございます」

「う、うー! 私は猫じゃないわよ!」

「似たようなものでしょうに」

 

 主に愛玩動物的な意味で大差はないでしょう。

 背後から飛び掛かってきたレミリアお嬢様の突撃を難なく躱し、逆に背後をとって後ろから襟を掴んで猫のように吊るし上げます。……生意気そうな態度がなんとも愛らしいですね、流石レミリアお嬢様、あざとさの極みでございます。

 

「うー! う―! ご主人様に向かって失礼よ!」

「主が道を誤るならば、それを正すのもメイドの仕事です。……お二人とも、何かご用事でしょうか?」

「フラン達と遊ぼ!」

「どうせ仕事ももう終わりでしょう?」

「そうですね、特にこれといった業務はございません。……畏まりました、このメイド博麗霊夢、お嬢様方のお相手を務めさせて頂きます」

「「やったぁー!」」

 

 お二人で仲良く万歳をしていらっしゃるお嬢様方の溢れんばかりの愛らしさに、私の忠誠心がスピア・ザ・グングニルからのレーヴァテインで、紅霧異変を引き起こしてしまいそうです。

 

「ではナニを……もとい何を致しましょうか?」

「ふっふっふっ! 私とフランで考えたとっておきの遊びがあるのよ!」

「この遊びで霊夢をけっちょんけちょんにしちゃうんだから!」

「けちょんけちょんとは穏やかではありませんね?……その遊びとは一体何でしょうか?」

 

 何とも可愛らしいキメ顔をなさりながら、自信満々に告げるお嬢様方。……しかし、私をけちょんけちょんにするとは大きく出ましたね。

 この博麗霊夢、如何に相手がお仕えする主であろうと、勝負事で手を抜くつもりは微塵もございません。……完膚なきまでに返り討ちにして、世間知らずの愛らしい蝙蝠姉妹に大空の広がりというものを教えて差し上げましょう。

 

「ルールは簡単、私達が全力で貴女を驚かせちゃうから……」

「霊夢は驚かないように頑張ってね♪」

「畏まりました。……いつでもどうぞ」

 

 フフッ、この究極の巫女メイドである私を驚かせる自信がお有りでしたら、どうぞご自由に、何処からでもどうぞ(圧倒的な強者のオーラ)。

 

「先ずは私からね、こほんっ!……うー! うー! わたしれみりあ! ごひゃくねんをいきたきゅうけつきなのぉー! がおーたーべちゃーうぞぉー!」

「ゴフッ!?」

 

 ぐわああああ────ッ!!(れ、レイムダイ―ン!)

 

「が、ふっ」

「れ、霊夢? どうしたの?」

「ふ、フランお嬢様。……だ、大丈夫です。ええ、大丈夫でございます。……少々、致命傷を喰らっただけですので」

「それ全然大丈夫じゃないよね!?」

 

 大丈夫、です。メイドは、メイドは大丈夫なんです。危険が無事で、危ないが安心に繋がるのです。……ええ、大丈夫です、大丈夫に決まっているではありませんか。

 お嬢様がッ! あの普段からカリスマカリスマと嘆いていたレミリアお嬢様がッ! プライドを投げ捨て、可愛らしさ全開でっ! あのようなッ! あのようなッ!……お嬢様のあのような素敵なお姿を魅せつけられて、一介のメイドごときが耐えられるわけがないじゃないですかッ! いい加減にしてくださいませッ!

 

「ごほっ! ごほっ!……さ、さぁ、レミリアお嬢様、貴女の全力はまだまだこんなものではないでしょう? もっと見せて下さい。……私を、私を驚かせるのでしょう?」

「霊夢。……えぇ! 分かったわ! 私の本気を見せてあげる!」

 

 大丈夫、大丈夫です。私がこんなところで死ぬ筈がないじゃないですか。……だって、お嬢様はあんなにも愛らしく、幻想郷には沢山のくぁいいお嬢様が溢れているのですから。

 

「いくわよぉ! こほんっこほんっ……れ、れみりあ、れいむのことだぁーいすきっ♪」(にぱー)

「あっ──……」

 

 あっ──……。

 

「あれ、霊夢?……霊夢!? どうしたの霊夢!?」

「……」

「……し、死んでる」

 

 

ーーーーー

 

 

 巫女メイドこと博麗霊夢は死んだ。

 レミリア・スカーレットによる可愛いを超えた可愛いの可愛いによる可愛い仕草にヤラれてしまい、一日の可愛い成分の摂取量を大きく超えてしまったためだ。

 具体的に言えば「おぜうがくぁいい過ぎてしんどい、もう無理、死ぬ」を発症し、そのまま昇天してしまったのだ。

 ところで話は変わるが、私はおぜう派ではあるが、同時に妹様派でもある、二人の可愛らしい姿を同時に味わえる姉妹百合を推したいので、このままこの変態にはあの世へと旅立って貰いたいものdごはぁぁぁぁぁん!?

 

 

ーーーーー

 

 

 大丈夫です、生きてます。生と死の狭間を彷徨いましたが、無事に戻ってくることが出来ました。……意味不明な発言をしていた神父は消しておきましたので、安心してくださいませ。

 

「霊夢、大丈夫!?」

「大丈夫でございます、心配をお掛けして申し訳ございません。……少々、張り切って仕事をしていたので、立ちくらみか何かで意識が一瞬飛びました」

「もうっ! 頑張り過ぎはメッなんだからっ!」

「……レミリアお嬢様は、私を殺すおつもりですか?」

「何がっ!?」

 

 お嬢様にメッされるとメイドは死にます、蒸発してこの世界から完全に消滅してしまいます、これ常識でございますよ?……出血多量でこの世から亡き王女のためのセプテットしてしまいます(意味不)。

 

──クイックイッ

 

「……フランお嬢様、如何なされましたか?」

「ずるいっ!」

「ずるい……とは?」

「お姉様ばっかりに構って、ずーるーいー!」

 

 プクゥーっと頬を膨らませながら不満そうにしていらっしゃる。

 

「ゴバァッ!?」

 

 ふっ、ふふふっ、この姉にしてこの妹ありでございますね。……本気で私を殺すおつもりですか、お二方?

 表面上では吐血で済んでおりますが、内部へのダメージが、特に内蔵系へのダメージがそろそろ無視できない所にまで迫ってきております。……此処で、こんなところで倒れるわけにはっ! ハァ、ハァ、いかないのですよっ!(満身創痍)

 私には、この愛くるしいスカーレッツお嬢様達の全てをこの記憶の奥深くまで根付かせるために、これから二十四時間、三百六十五日に及ぶ観察を行う義務がございます! あぁお嬢様お嬢様お嬢様お嬢様お嬢様ぁぁぁぁぁ! あぁレミリアお嬢様ぁ! あぁフランお嬢様ぁ! あぁスカーレッツ! あぁスカーレッツ! あっあっあぁぁぁぁぁん!……失礼、お嬢様方のあまりの素晴らしさに、少々取り乱してしまいました。

 

「くっ、まさかこの私が此処までのダメージを受けるとはっ!」

「うー! うー! ふらんだよぉー!」

「がおぉー! がおぉー! たーべーちゃーうぞー!」

「ングッ!?」

 

 愛でたくなるドヤ顔を見せつけながら、私の周りでくるくる、くるくると入れ替わり立ち替わりで、カリスマブレイクなポーズを取り続けるスカーレッツなお嬢様方、そのあんまりにも最高過ぎる愛くるしさに、私の寿命がエマージェンシーでございます。……お二人が尊過ぎて、生きるのがしんどい。

 そうだ! 冥土に逝こう、メイドだけに。……お後が宜しいようで。

 

「ゴフッ……レミリアお嬢様、フランお嬢様」

「何かしら霊夢? ひょっとして降参かしら?」

「……降参ではありませんが、一つだけ提案がございます」

「提案?」

「私だけがずっと我慢し続けるのは少々不公平というもの、此処は公平に、かわりばんこにしてはみては如何でしょう? お嬢様方が私を驚かせるとおっしゃるならば、逆に私はお嬢様方をヨロコバセマショウ。……勿論、レミリアお嬢様とフランお嬢様のどちらかが成功したなら、潔く負けを認めましょう」

「それ面白そう! いいよぉ!」

 

 えぇ、しっかりと悦ばせて差し上げます。……吸血鬼であるお嬢様方が足腰立たなくなる程に、ご満足頂けるように、このメイド博麗霊夢、全身全霊を以て事に及ばせてもらいます。

 

「っ!? 霊夢!?」

「いきなり何をしているのっ!」

「ふふふっ……当然、お嬢様方にお喜び頂けるように、準備をしているのでございます」

 

 ええ、それ以外の理由などございません。

 

「だ、だからって、い、いきなり」

「必要なことでしたので……」

 

 お嬢様方は動揺していらっしゃいます。……無理もないことでしょう、いきなり目の前で自分自身の手首を切る光景を見せられたら、流石の吸血鬼姉妹でも多少の動揺は免れない。

 私の手首から大量の血液が吹き出し、床を真っ赤に染め上げる。……普通の人間でしたら数分と持たず絶命するのでしょうが、生憎と私は普通ではございません。

 普通の人間では命に関わる出血ではございますが、出血量を上回る勢いで血液を生産してしまえば、問題はございません。……簡単に申しますと、霊力のちょっとした応用で体内で生成されている血液の量を増加させているのでございます。

 私の霊力が尽きぬ限りは、ほぼほぼ無制限に血を生産できるでしょう。……最も、血を生み出す程度の霊力ならば呼吸よりも簡単に回復するので無限と言っても過言ではないのですが。

 

「さぁ、レミリアお嬢様、フランお嬢様。……悦ばせて差し上げます」

「にょわあぁぁぁぁぁ!? な、ナニするダァー!」

「うぅぅぅぅぅ!?」

 

 動揺し、硬直していらっしゃったお嬢様方を拘束する。……ええ、逃しません。逃してなるものですか。

 

「吸血鬼であるお嬢様方を悦ばせるにはどうすれば良いか。……簡単な事です、吸血鬼が大好きなモノを差し上げれば良いのです──ささ、先ずはレミリアお嬢様からっ! ですっ!」

「もががっ!? んっ!? んちゅ、くちゅ」

 

 レミリアお嬢様の口を塞ぐように、血が溢れ出している手首を押し付ける。……くふっくふふふっ! あぁ、感じます、お嬢様の中に私が入っていくのを感じますっ!

 

「ん、んくっ、んっ」

「混じり気のない処女の血でございます。……文字通り浴びるほどにご堪能下さいませ」

 

 とろんとした目で私の血を啜り始めたレミリアお嬢様のお姿に、私の背筋をゾクゾクとした忠誠心が駆け抜け、脳天すらも貫いたかのような衝撃を感じてしまいました。

 あのレミリアお嬢様が私の、私の血を美味しそうにお飲みになっていらっしゃる。頬を真っ赤に染め上げ、恍惚とした表情で、美酒に酔いしれるかの如き艶がかったご様子でっ!

 

「んっ、ぷはっ!……はぁ、はぁ」

「うふふっ……私のお味は如何でしたか? レミリアお嬢様?」

「もぉ、ダメぇ……こんな、こんなの知ったら、もぅこれしか飲めなくなっちゃうぅ、霊夢がいないとダメになっちゃうぅ」

 

 ちなみに私の血には催淫効果があるそうです。……そんなものを大量に摂取してしまったら一体どうなってしまうのでしょう? メイド、気になります!

 

「はぁ、はぁ、もっとぉもっとぉ欲しいよぉ」

 

 切なげに眉を顰めながら、涙目で上目遣いに見上げてくるレミリアお嬢様のお姿は非常にマーベラスでございます。……更にはその身に襲い掛かっているであろう、強力な性的興奮を押さえきれないのか、ご自分の股を磨り合わせながら、秘部に利き手を這わせてビクビクとしていらっしゃるお姿には、流石のメイドも夢想封印を仕掛けたくなるほどでございます。

 

「お次はフランお嬢様の番でございますので、レミリアお嬢様には少し我慢をしてもらいます」

「そ、そんなぁ……いや、いやよ、霊夢、これは命令、命令よ。今すぐ私に血をっ! 血を寄越しなさいっ!」

「──レミリア」

 

 ふっくらとした頬に手を添え、ルビーの様な紅い瞳を見つめる。

 

「ふぁ!?」

「我儘はいけないな……ふふっ、安心しろ、ちゃんと我慢できたら一杯ご褒美をあげよう」

「ふぁ、ふぁい」

 

 レミリアお嬢様の躾のため、一瞬だけメイド業を離れましたが些細な事でございます。……レミリアお嬢様が顔を真っ赤にしたまま固まってしまいましたが、本当に些細な事なのでございます。

 

「さて、フランお嬢様も」

「ふ、ふんだっ! 私は霊夢の血なんて全然欲しくないんだからねっ! 本当に欲しくないんだからねっ! お姉様があんなになるくらい凄い血だったとしても全然! 全然っ! 興味ないんだからねっ! どんな味がするんだろうとか、霊夢の血なら毎日飲んでも飽きなさそうとか全然考えて何かいないんだからねっ! フランは全くそんなこと考えていないんだkもがもがっ!?」

「欲しいなら欲しいとおっしゃってくださいませ」

 

 何やら言い訳の様な御託を並べていらっしゃいましたが、血を飲みたいのは一目瞭然でしたので、レミリアお嬢様と同じように押さえ込み、口元に無理矢理手首をセッティング致しました。

 

「ごくごくごくごくごく!」

 

 いや、めっちゃ飲むやん。……失礼しました、フランお嬢様のあまりのいきおいに少々取り乱してしまいました。

 これ以上ないほどに目が輝いておりますね、私の血を全て吸い尽くさん勢いでお飲みになっております。……此処まで気に入ってもらえると、下僕冥利に尽きますね。

 

「ぷはっ! もう一杯!」

「一気飲みは身体に毒でございますよ?」

「えぇ〜? フラン〜子供だからわかんにゃあ〜い」

「はぁ……四百九十五年歳が何をおっしゃっているんですか」

「もうっ! れでぃーに歳を聞くのはまにゃー違反よ!」

 

 はて、私が知っているレディーは、酒に呑まれたおっさんのような駄々はこねないのですが……まぁ、フランお嬢様は大変可愛らしいので、多少の醜態を晒したとしても変わりなくお慕いし、この手で滅茶苦茶にして差し上げたいのですがね。

 

「フラン! 今度は私の番なんだからぁ!」

「やだやだやだやだやだぁー! もっと一杯飲むのぉー!」

「うー! フランのわからず屋! 良いからさっさとかーわーりーなーさーいー!」

「いーやー!」

 

 私にしがみつくフランお嬢様をレミリアお嬢様が引き剥がそうとする。しかし、当然のながら、フランお嬢様も抵抗致します。……吸血鬼パワー全開で、私を抱き締めておられます。

 ええ、平然としていますが、普通の人間だったら死んでます。……具体的にはお腹から真っ二つになります、本当に命がいくら有っても足りませんねぇ(←無傷)。

 

「はーなーれーろー!」

「やーだー!」

 

 私(の血)を取り合うこの光景だけで、駆けつけ三杯は余裕でございますね。

 それにしても、当人である私を放っておいて、楽しく姉妹喧嘩ですか。……横合いから全てかっさらってしまったらどれ程楽しいのでしょう(愉悦)。

 

「ひゃん!?」

「りぇいむっ!?」

「お二人だけで楽しそうになさるのは──寂しいです」

「どどどどど何処を触ってりゅのよ!?」

「しょこはりゃめなのぉぉぉ」

 

 お嬢様方を力いっぱい抱き締めながら、その愛らしい翼の付け根を鷲掴みして、揉み解しているだけですが、何か?

 付け根部分は吸血鬼の性感帯ですから、こうして手の平に霊力を込めて感度を引き上げながら揉み解せば、イイ声で鳴いてくださるのです。……ええ、とても良いお声で啼いてくださるのです。

 

「はにゃあああああぁぁぁぁぁ!?」

「にょおおおおおおぉぉぉぉぉ!?」

 

 どうか愉しんでイキ狂いなさいませ(完全で瀟洒な微笑)。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 ふぅ、堪能致しました。

 はい? スカーレット姉妹──お嬢様方はどうしたのかですか?……貴方方のような感の良い、人間は大嫌いですよ。

 冗談でございます、ちゃんとお部屋へとお運び致しましたよ? 別にお嬢様方から分泌された吸血鬼エキス(意味深)を綺麗に舐め取っていたなどという畜生にも劣る事実は何処にも存在致しません。

 この博麗霊夢は、スカーレット家のお嬢様方に仕える忠実なるメイドなれば、お嬢様方をこの手で汚すなどという大罪を犯す筈もございません。……ええ、そんな大罪を犯すほど私は愚かではございませんとも。

 

「んはぁぁぁぁぁあああああ!?」

「もうだめなにょぉぉぉぉぉおおおおお!」

 

 何やら、お嬢様方を寝かしつけた筈のお部屋から少々艶めかしいお声が聞こえますが、気のせいです……気のせいですとも、私が気のせいと言ったら気のせいなのです。

 何故か私の指が湿っているのも、口元が湿っているのも気のせいでございます。……私の血を啜り興奮のあまり発情するお嬢様方の姿に辛抱堪らず手を出した、などという確定的に明らかな事実は何処にも存在致しません。

 

「……ごちそうさまでした」

 

 お嬢様方がお休みになっているお部屋に合掌しておりますが、別にナニもしておりませんよ?……私の着衣が若干乱れているのも、首元に小さな傷跡があるのも、勿論気のせいでございますよ?

 お嬢様方を更に興奮の渦に叩き込むために、首筋に噛み付かせたなどという証拠付きの事実など、何処にもありませんよ?……お嬢様方の噛み跡が愛おしすぎて態と残しているだとか、そんな事実も何処にもございませんよ?

 

「全く、まだまだ子供でございますね。……あんなに強く噛み付かれては、こちらも加減が出来ないではございませんか」

 

 何度も言いますが、私は従者でございます。……この紅魔館に住まう見目麗しきも恐ろしき吸血鬼姉妹と、それに付き従うお嬢様方に仕える、ただのメイドでございます。

 その私が、主であるお嬢様方を好き勝手に蹂躙するなどという愚かな行為をするわけがありません。……いえ、訂正しましょう、求められたら吝かでもありません。

 主のご要望にお応えするのもメイドとしての務めでございますれば……お嬢様方を悦ばせるためならば、この霊夢、この身をケダモノとするのも厭いません。

 愛を以て接することこそが、この博麗霊夢のメイド道の真髄でございますれば……お嬢様方を愛するあまり、少々過激な手段を取ってしまうのも仕方がないでしょう?(開き直り)

 

「お加減は如何でございましょう、咲夜お嬢様」

「あ、霊夢。……ありがとう、貴女のお陰で、大分楽になったわ」

「恐縮でございます」

 

 場所は変わって、再び咲夜お嬢様がお休みになっているお部屋に参上致しました。

 おや、ゆっくりとお休みすることが出来たようですね。……目測でございますが、咲夜お嬢様の体温、呼吸、瞳孔などが平常値に戻っていることが確認できます。

 無事に回復なされたようで何よりでございます。……これでじっくりとお世話(意味深)させていただけますね。

 

「お身体をお拭き致します……ささ、咲夜お嬢様」

「う、それぐらいは自分で出来るわ」

「いえ、いくら回復したと言ってもまだ病み上がりでございます。……今日ぐらいは、私にお世話させてくださいませ」

「……背中だけお願いするわ」

「ふふっ、畏まりました」

 

 服をはだけさせ、背中を此方に向ける咲夜お嬢様。

 滑らかな陶磁器を思わせる白い素肌は、羞恥からか鮮やかな桃色に染まり、蒸れた汗の香りが匂い立つ。……純粋な少女の匂いでございます。香水などという無粋なものを一切使っていない、十六夜咲夜という一人の少女の芳しい香りが、私の脳髄を犯し尽くしていく。

 

「……」

「れ、霊夢?」

 

 見惚れていた。……咲夜お嬢様の素肌の美しさに見惚れてしまっていた。

 落ち着け、落ち着きなさい、落ち着くのよ博麗霊夢。……生唾を飲み込み、指が震えてしまう。

 目の前に存在する至高の芸術に触れてしまっても良いのだろうか? たかが従者であるこの身の上で、この麗しき乙女に触れても良いのでしょうか?

 まるで、地上の人間が天に舞う天女を仰ぎ見て、その寵愛を欲しているがごとく。……罪深い我が身には、過ぎたる僥倖である。

 

「で、では失礼致します」

「……ふっ、くぅ」

 

 布越しに、咲夜お嬢様の熱を感じる。……仄かに暖かく、こちらの心を侵食するかのように指先から染み込んでいく。柔らかな感触が手の平全体に広がり、何とも言えない幸福感が我が身を包み込む。

 あぁ、咲夜お嬢様。……素敵、素敵でございます。

 

「……うッ!?」

「ど、どうしたの霊夢?」

 

 心臓が大きく跳ね上がる。……これは、恋?(不整脈です)

 比喩ではなく心臓が止まりかけました。……これが十六夜咲夜、紅魔館が誇る完全で瀟洒なメイドの真骨頂と言えるでしょう。

 弱っていてこの可憐さでございます。予め血抜きしていなければ、今この場で全身の穴という穴から忠誠心が勢い良く噴き出していたでしょう。

 

「いえ、大丈夫。……大丈夫でございます」

「指先が震えているけど……」

「き、気のせいにございます! 気のせいです! 気のせいという事にしてくださいませ!」

「あ、はい」

 

 こ、こんな邪な気持ちを病み上がりの咲夜お嬢様にぶつけられるわけがないだろうがっ! いい加減にしろぉぉぉ!

 いえ、お嬢様が健康ならば大丈夫なのです。健康なお嬢様が相手ならば、私の熱い熱い、煮え滾る熱いパトスをその柔らかくてしなやかな、珠玉の宝石にすら勝るとも劣らないめいどぼでぃ(IQ低めの表現)で受け止めて貰いtげふんげふんっ!

 

「はぁ……はぁ……き、綺麗になりました」

「あ、ありがとう」

「ご、ご気分は如何でしょうか?」

「そ、そうね。……や、やっぱりちょっと恥ずかしい、わ」

「──ッ!?」

 

──ッ!?(声にならない悲鳴)

 

 ほぉぉぉらぁぁぁまたそんな事をおっしゃるぅぅぅ!(両手で顔を押さえて頭を左右にブンブン)

 あぁもう無理、しんどい、尊さの過剰摂取で召されてしまいます。具体的には全身の血液が尊みで沸騰して蒸発し、心臓が歓喜の叫びと共に超高速で振動して衝撃波を生み出し、そのままの勢いで周囲の建造物を軒並み破壊し、私自身の身体が、お嬢様だいしゅきぃぃぃ! を抑えきれずに自己崩壊して、破壊した建造物を取り込みながら肥大化して、収束された特殊な解を持つメイドブラックホールとなって、天地開闢のエネルギーを尊さの余りに生み出して、平行世界の存在たちにすら影響を与えるほどの局地的な特異点となって、そのままメイドのメイドによる、メイドな世界のために、全世界の麗しきお嬢様方のためだけに、最終で原初なメイドと化して全ての世界線に存在する究極の生命体メイドさんZEROに覚醒しちゃいましゅぅぅぅ!!(控えめに言って頭オカシイ)

 

「寝ましょう」

「ふぇ?」

「ご就寝いたしましょう、咲夜お嬢様。……大丈夫でございます、このメイド博麗、抱き枕としても優秀でありますれば」

「ちょっと何言ってるのか分からないんだkひゃんっ!?」

 

 細かいことはどうでもいいのです、このままですと私は大変な事を引き起こしてしまいます。

 私のよく分からない覚醒を防ぐためには、咲夜お嬢様と密着する必要があります。……尊さで壊れるなら、より尊い気持ちでいっぱいになりゃあ良いんですよ!

 そうですとも、これはお嬢様方の身を守るためにも必要な事なのです。……決して私の我慢が限界だったとか、そんな事実は何処にもナイト・オブ・ナイツなのでございます!

 

「むぅ〜!? むぅ〜!?」

「ふぁ、くぅ……さ、咲夜お嬢様、そんなに嗅がれると流石に……あんっ♪」

「もがもが(あ、貴女が顔を押し付けるからっ)」

 

 咲夜お嬢様の頭を抱え込み、私の胸に顔を押し付けます。……以前も申しました通り、私博麗霊夢の胸は人をダメにする胸でございます。

 今の咲夜お嬢様は著しく体力を消耗し、疲弊しております。なればこそ、私の胸の出番というわけです。……疲れている方に言ってみたい言葉の一つ「大丈夫? おっぱい揉む?」ではなく、病気の方には魔法の言葉「疲れてる? おっぱい枕するね?」なのでございます。

 

「すぅー……すぅー」

「こうして見ると、咲夜お嬢様もまだまだ子供でございますね」

 

 たっぷり癒やされて下さいませ咲夜お嬢様。……お嬢様が癒やされている間、私は本能と理性の間で戦いながら、病み上がりの咲夜お嬢様の愛らしさにミスディレクションしておりますので。

 

「〜♪ 〜♪」

 

 

 

 メイドが歌う愛の唄。

 誰にも届かぬ愛の唄。

 されど彼女は高らかに。

 心を込めて叫ぶのだ。

 仕える者へのこの想い。

 情と欲の入り交じる。

 穢れに満ちた純粋な。

 お嬢様への愛情を。

 

 

 

 寝る前にカッコつけてみました。……カッコ悪いとか言った方は美的センスゼロでございます。生きてて恥ずかしいので、首を吊ってどうぞ(つ縄)

 どうせ明日にはいつもの私、ただの巫女の博麗霊夢に戻っているのです。つまり、メイドとして暫くのお暇を頂戴するのでございます。……次にお嬢様方にお仕えする機会が訪れるのは、随分と先になるでしょう。

 なればこそ、なればこそです。……この日の思い出を、大切に思い出せるように歌う事に何の不思議がございましょう。この身に溢れた想いを力の限り音にする事に何の不思議がございましょうか。

 

──メイド

 

 それは従者。……主のお世話を仕事とし、ありとあらゆる技能を有する者達である。

 

──メイド

 

 私、博麗霊夢は一日限りの巫女メイド。

 この日の楽しい思い出を私は生涯忘れないでしょう。……目を閉じれば思い出します。

 

──ケーキを美味しそうにお食べになるレミリアお嬢様のお姿。

 

──鼻の先に生クリームを付けながら笑うフランお嬢様のお姿。

 

──恥ずかしそうにお粥を召し上がる咲夜お嬢様のお姿。

 

──門番の仕事をサボり、あどけない寝顔を見せる美鈴お嬢様のお姿。

 

──素っ頓狂な声を上げながら、しがみついてきたパチュリーお嬢様のお姿。

 

──キャラ崩壊を起こしながら、背中を流されていたこあお嬢様のお姿。

 

 どれもが大切な思い出でございます。

 

──逃げ切れず私に捕まって嬌声を上げるこあお嬢様。

 

──最初の餌食になったパチュリーお嬢様。

 

──味見された美鈴お嬢様。

 

──血を大量に飲まされ、お持ち帰りされたフランお嬢様。

 

──妹よりもイくのが早かったレミリアお嬢様。

 

 そして……

 

「すぅーすぅー」

 

──腕の中で穏やかな寝息を立てる咲夜お嬢様。

 

 どれも、大切な思い出でございます(完全で瀟洒な笑顔)。

 途中で少し過激な思い出が入りましたが、メイドは普通にメイドとして働いていたので、きっと気のせいでございます。……桃色描写とか、ちょっとメイド分かんないです。

 さて、バカをヤッている内に、私の思い出フォルダーも潤いました。このまま騒いでおりますと、折角オネムなされた咲夜お嬢様が起きてしまいます。

 私も色々とあり過ぎて少々疲れましたので、本日は此処で業務終了とさせていただきます。明日の事は明日の私が頑張れば宜しいのです。

 メイドも人間ですので、休息したいのです。

 

──それでは皆様ごきげんよう。

 





かくたの!

久しぶりの投稿でめちゃくちゃ楽しかった春巻きさんです。
色んなことが重なって春巻きさんは、春巻きさんとして、ハーメルンで中華できなかったけど、戻ってきたから許してクレメンス(地味に古い)。

お仕事も一周回って楽しくなってきたので、このままの勢いで執筆も全盛期の勢いを取り戻せるように頑張るので、これからも博麗伝説をヨロシクネ。
尻切れトンボだけど

じゃあのノシ

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