東方博麗伝説   作:最後の春巻き(チーズ入り)

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とりま、お読みくだされ読者様(畏み)


巫女、道場

――鍛えるのは良い事だ。

 

 肉体、精神、知力。それがどのようなものにしても、鍛えるという事は良いことだ。

 

 肉体を鍛えるのは良い事だ。

 腹筋や腕立て伏せ、スクワットなど、自重のみで、筋肉に負荷を掛ける鍛え方、ダンベルやバーベルなどの道具を用いて、筋肉に負荷を掛ける鍛え方、様々な鍛え方がある。

 食事や回数などにも気を使った計算的な鍛え方、倒れるまでやり続けるという根性論丸出しの鍛え方。人それぞれにそれぞれの鍛え方というものが、この世には存在している。

 

 そして、その鍛える理由も、また人それぞれである。

 女であれば、モデルの様に理想的な美しい肉体になりたい――今よりも優れた美貌を求めて、己の身体を鍛え上げる。

 男であれば、筋肉モリモリマッチョマンの変態になりたい――今よりも圧倒的に強い力を求めて、己の身体を鍛え上げる。

 今の自分に変化を、つまり――

 

――今の自分よりも先へ、先へと進みたい。

 

 だからこそ鍛える。自分自身を変えるために鍛えるのだ。

 

 鍛えていると様々な変化が訪れる。

 ある日、自分の身体が軽くなっていることに気付いたり……。

 メジャーを巻き、ウエストが細くなっている事を、理想の体型に近づいていることを知る。

 以前は持ち上げるどころか、動かすことすら出来なかった物を簡単に持てるようになったりする。

 それは前の自分より変化した、先へ進んだと言っても良いだろう。それはとても素晴らしい変化であり、各々が鍛え続けた末に手にした価値ある結晶だ。

 

 故に私は思う、肉体を鍛えるのは良い事だ、と。……うぃーあーまっそぉ。

 

 精神を鍛えるのは良い事だ。

 静かな場所で胡座をかいて、静かに目を閉じてみて欲しい。

 聞こえてくる草木の揺れる音。肌を優しく撫でる風。自分の胸より感じる生命の鼓動。

 僅かな邪念さえ一切持たず、心を無にして、それら自然のものをありのままに感じ取る。

 そして、自分を客観視し、痛みも苦しみも、あらゆる全てを受け入れる。ただそれだけで精神というものは、鍛えられていく。

 昔ながらの精神修行、これにより得られるのは平常なる精神。何事にも冷静に考え、対処できる精神へと鍛え上げることが出来る。

 

 無論、これだけが精神を鍛える事ではない。

 自分を常に追い詰め続ける事で精神を鍛える者もいる。敢えて過酷な環境に身を置くことで、自身に苦しみを強いて、打たれ強い精神を作り上げるのである。

 山籠りや無人島生活など、一切の道具を持たず、己の身一つで大自然に挑む。

 これによって鍛えられるのは、本能に則った生きるために必要な精神だ。自身の生存を賭けて大自然へと挑む事で、命を奪うという事、耐え忍ぶ事、その全てを養える。

 文明を得たが故に、疎かになりつつある生物としての原初の精神を鍛え上げることが出来るのだ。

 精神。……それ即ち心。心を鍛える事で己と向き合い。これからの生を、より純度の高いものへと変えていくのである。

 

 故に私は思う、精神を鍛え上げるのは良い事だ、と。……ぎぶみーすちーるめんとぉ。

 

 知力を鍛えるのは良い事だ。

 一概に知力と言っても、発想力、理解力、記憶力などがある。

 それらの知力は勉強なり何なりをして、知識を増やしたり。脳力トレーニングなど、頭を使った遊びをすることでどんどん鍛えられていく。

 要は考える習慣を身につける事が大事なのだ。

 例えば、掃除をするならば、何処から手をつければ良いだろうか? アレを使えばすぐに終わるんじゃないか? あの場所から順番にしたらすぐに終わるかな? 一人だと時間が掛かるから、前に紹介された業者を呼ぼうかな?……などと考えることが出来る。

 どんな馬鹿げた事でもいい、考えて考えて考える事が重要なのだ。考えないと知力は成長していかない。それは逆に言えば、考えることさえ出来るなら、いつでもどこでも知力を鍛える事が出来るのだ。

 

 知力を鍛え上げていると、日常生活を生きる上でも多くの恩恵が得られる。

 発想力が鍛えられている者ならば、常人では全く考えつかない様な方法で問題を解決出来るだろう。

 理解力が鍛え上げられている者ならば、物事を誰よりも早く理解し、適切な対処が出来るだろう。

 記憶力が鍛え上げられている者ならば、その頭に入れてある膨大な知識量が、そのまま力となるだろう。

 何か問題が起きた時、鍛えられた知力があるならば、それにも対処できるようになる。

 

 故に私は思う、知力を鍛えるのは良い事だ、と。……あいあむじーにあそぉ。

 

 結論を言うならば、鍛えるのは素晴らしいぞぉ、という事だ。

 素晴らしい肉体を、強靭な精神を、明晰な知力が欲しいならば、今の自分を変えたいならば、鍛える以外に道はないのだ。

 どっかのマッスルも「鍛えよ、さすれば与えられん」とかいう謎の言葉を残していたりする。つまり何かを成し遂げるには鍛えるしかない、という事なのだ(脳筋思考)。

 

 もう一度言おう、鍛えるのは良い事だ。

 鍛えて得をすることはあれど、損をすることは決して無いのだ。鍛えることで、我々は先へ先へ、変化という名の成長へと足を進めることが出来るのだから。

 

「お前たちもそうは思わないか?」

「何のっ! 話っ! ですかっ!」

「どうしてっ!? 当たった筈なのにっ!」

 

 フゥ↑ハハァー、残念だったな美鈴、それはただの残像だぁ!(渾身のドヤ顔)

 

 現在、私は二人の少女と相対していた。

 私に向かって我武者羅に剣を振り続ける少女――魂魄妖夢(こんぱくようむ)。そして、そのサポートをするように、剣撃の隙間から私に向かって蹴りを放ち、距離を詰めて拳を叩きつけてくる少女――紅美鈴(ほんめいりん)

 

 魂魄妖夢。

 半分人間で半分幽霊の半人半霊という種族で、冥界の白玉楼に住んでいる剣術指南役兼庭師の少女である。

 髪は白色のボブカット、瞳の色は暗めの灰色で、肌は普通の人間よりは白く、ほんのりと桜色に色づいている。

 普段の服装は、白いシャツに青緑色のベストを好んで着用し、その胸元には黒い蝶ネクタイを付けている。短めの動きやすいスカートからはドロワーズが覗く。足には白い靴下に黒い靴を履いている。

 傍らには常に自身の半身――半霊という大きな白いモチの様な物体が漂っている。半霊は物体を透過したり、逆に硬化してぶつけたり、人型に変形できたりと自由性が高く、人間の半身と共に、高度な連携をとることも出来る優れものである。

 

 性格は真面目ではあるが、天然で未熟な面が目立つ。

 本人の一生懸命さとは裏腹に、空回りしてしまうこともしばしば……この未熟者めがぁ!(byマスター・アジア)

 妖夢は失敗が続いて涙目になっているところが一番可愛いんじゃないかと思う今日この頃である。……涙目で落ち込む妖夢に優しくして、そのまま私の家まで誘導してから、ゴートゥーフゥートンしたいですな。

 そして「れ、霊夢さん?」って戸惑っている妖夢に大人の世界というものをグッチョリ教えこんで、いずれは自分から私を求めてくる様に調教していくのだ。……うへへー、もぉー妖夢ってば欲しがりさん何だからー(妄想)。

 能力は『剣術を扱う程度の能力』。

 読んで字の如く剣術を扱う程度の能力? である。……いや、これを能力と言っても良いのか? などとちょっと疑問に思うかもしれないが、能力は能力だ。何か色々と凄い剣術を使いこなすだけの能力なのだ。うん、きっとそうに違いない。細かい事を考えてはいけない、考えるな、感じるんだ(戒め)。

 ぶっちゃけ私もどんな能力なのかは詳しくは知らない。ただ、教えれば教えた分だけ、色んな剣術を身に着けていくから、様々な剣術を高いレベルで習得する事が出来る程度の能力だと思っている。……そのうち、剣術だけなら私を超えそうで楽しみである。

 

 紅美鈴。

 二つ名を華人小娘、紅魔館の主であるレミリアちゃんに仕えており、紅魔館の門番をしている。

 髪は腰まで伸ばされた紅のストレートヘアーで、側頭部を編み上げて、リボンで結んでいる。スタイルは抜群で、むしゃぶりつきたくなる豊かな胸とすらりと伸びた美しいお御足が大変素晴らしい。

 普段は華人服とチャイナドレスを足してから二で割ったような、淡い緑を主体とした服装をしている。頭には龍の一文字が入った星型の飾りが付いた、緑色の帽子を被っている。

 

 職務には忠実で真面目ではあるが、本人の性格は穏和で、暢気である。

 そのため、紅魔館への侵入者か、喧嘩を売られでもしない限りは決して襲ってくることはない。人間相手でも友好的であるので、紅魔館のイメージアップに貢献もしている。

 また妖怪でありながら、人間の武術に精通しており、特に八極拳や中国拳法などのアジア圏の武術を得意としている。彼女の能力である『気を操る程度の能力』と相まって、こと近接戦闘の技術に於いては、この人外魔境である幻想郷でもそれなりの上位にランクインする強者である。 

 舞うような武術の冴えと、それに合わせて揺れる大きな乳房のコントラストは、見ている者を魅了する。

 ちょっとそこの門番さん。すこーしだけ、そこの木の陰で私の動きに合わせて、前後運動しないかい? イチモツは無いけど、霊力とかの応用で擬似的に再現したりは出来るからさぁ。ちょっと私が果てるタイミングで体内に私の霊力が放出されるだけだからさぁ。

 能力はさっきも言った『気を操る程度の能力』である。

 どこぞの野菜人の様に、手の平からビームを出したり、身体を強化したり色々と応用が効く能力である。しかし、それ故に器用貧乏にもなりやすく、美鈴本人も決定打を持っていない事に歯噛みしている様子。

 うーん、今度色々と仕込んであげようかねぇ? 美鈴だったら絵になりそうな技も幾つか知ってるしねぇ。……勿論、二人っきりだよ? 房中jゲフンッゲフンッ! 気を使った色々な技を教えてあげたいからさ!

 

「このぉっ! 当たって! 下さいっ!」

「当ててみろ」

「またですかっ!?」

「フッ、残像だ」

 

 二人共、汗をダラダラと垂れ流しながら、今にも倒れてしまいそうなくらいに必死な表情で、私を攻め続けている。上から、下から、はたまた横から、ありとあらゆるところを攻め立ててくる。

 こ、こんなに美少女に求められるなんてっ! んっ、ふぅ……いやいや、何もヤッてないし、何もイッてないぞ。ちょっと股の方が湿ってる気がするけど、きっと気のせいだぞ。

 

 それにしても、必死になっている美少女ってどうしてこんなにエロティックに感じるのだろうか?

 息を荒げているから? それとも汗で服が透けているから? 紅潮した肌が色っぽく見えるから?……何にせよ、必死な美少女はエロく美しい、それが真理である。

 でも、ごめんね。君たちの想いには応えてあげたいんだけど、私はそんなに安い女じゃないんだ。……私は攻められるよりも、攻める方が好きなんだよぉ!

 

 私の手でヨガり狂う、そんなお前たちの姿が堪らなく大好きなんだよぉっ!

 

「踏み込みが浅いぞ、妖夢。もう少し深く切り込んで来い」

「はいっ!」

「美鈴、お前少しは焦り過ぎだ。冷静になって一撃一撃を考えて打て、それではただ闇雲に攻め立てているだけだ」

「了、解っ!」

 

 妖夢が振るう刀の腹をデコピンで弾き返し、美鈴の蹴りを同程度の威力に調整した手刀で弾いて返す。……傷を付けないように、怪我をさせないように、最大限に、細心の注意を払って、一つ一つ丁寧に丁寧に迎撃する。

 

 一応、反撃もしている。かるーく胸を揉んでみたり、頭を撫で撫でしたり、腰を鷲掴んだり、太腿をスリスリしたり。

 ふむふむ、妖夢はちょっと前より育ったかな? 胸の膨らみが僅かに増している。……だけど、それでもまだまだ身体の線が細いなー。もう少しよーく食べて肉を増やした方が良いんじゃないか? って巫女は思うよ。

 ははーん、美鈴の奴め。まーたまた門番の仕事をサボって昼寝してたな? 運動不足のせいか、腹回りがすこーしだけむちむちしているぞ? ぽっちゃり体型が嫌なら、一緒に運動(意味深)してダイエットしようねー。

 

 うむ、対象的な身体つきしているけど、どっちもええ身体しているなぁーッ! ぐふふっ、ジュルリジュルリ……た、鍛錬だからね! 他意は無いからね! ちょっと私が妖夢と美鈴で(過激な)運動するだけなんだからね!

 

 話は変わるが、私達が修行してる場所は、『博麗道場』である。

 

 博麗道場。……正式名称を博麗式女傑育成修行道場という。

 博麗神社の近くにある森を開拓して、無理矢理建てた違法建築物である。

 建物自体の大きさは、紅魔館と同じ程度。しかし、内部の方は、力任せに空間拡張して大きく広げてあるからかーなーりー広い。……大体で霧の湖三個分くらいの広さはあるんじゃなかろうか?

 

 女、特に選りすぐりの美少女のみに入門することを許可された道場である。

 まぁ、不細工だったとしても、磨けば光る原石もいるし、私が課している修行を受ければ、例えゴリラ顔でも数ヶ月で、目も覚めるような天女の出で立ちにする事も不可能ではないから、別に美少女だけに限定しているわけでもないんだけどね。……だが、野郎共、テメーらは駄目だ。寄ってくるな、あっちへ行け、しっしっ。

 

 そう、此処は男子禁制の乙女の花園。

 あらゆる多種多様の少女達がこの場を訪れ、肉体を、精神を鍛え、技を磨き上げるための施設だ。

 私が作ったお手製の鍛錬グッズが数多く揃えられており、空気中の霊力や妖力から飲み物を生み出すウォーターサーバ的な物を設置しており、更には鍛錬の疲れを癒やすため、私の手による特別なマッサージを受ける施設なども完備している。

 妖怪の美少女を中心に人気を集めている、この幻想郷でもかーなーりーホットなスポットである。

 

 今日は、道場に妖夢と美鈴の二人が訪れてくれたので、道場の師範であるこの私自らが鍛錬に手を貸してあげているのである(邪心百二十%)。

 

「取った!」

「捉えましたっ!」

 

 考え事をしていたせいで出来てしまった僅かな隙、それを突いてきた。……無論、態とである。

 ほうほう、さっき指摘したところを直して、ちゃーんと反映していますな、動きのキレが良くなってるよ。

 妖夢はより深く踏み込めているし、美鈴はちゃんと私の動きを予測しつつ、身体の中心を狙って打ち込んでいる。

 更には個々のタイミングを僅かにずらす事で、回避しにくい様に工夫している。……うん、成長速度が早いな。流石は妖夢と美鈴だぁと褒めてやろう。

 

 しかし、残念。取ったんじゃない――

 

「「嘘ぉっ!?」」

 

――取られたんだ。

 

 踏み込んできた二人が攻撃を繰り出すよりも速く、一人ずつ動きを抑える。

 

 確かに素晴らしい動きだった。

 力の入れ方、呼吸の合わせ方、その全てが精錬された高水準なものだった。並みの相手ならば確実に致命傷を与える事が出来る程……相性によっては格上すら通用するかもしれないキレのある完璧な連携だった。

 

 その上で君たち二人には決定的に足りないものがある。

 情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ! そして何よりも――

 

「踏み込みも良かった。タイミングも完璧だった。――だが、足りない。足りないぞ二人共」

 

――速 さ が 足 り な い。

 

「フッ、精進あるのみだな。……飛べ」

「きゃあぁぁぁぁぁ!」

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

 美少女が、錐揉み回転、大変だぁ。……博麗霊夢、心の俳句(字余り)。

 二人は空中高くまで吹き飛ばされ、目にも止まらない速さで縦に大回転している。抵抗しようと頑張っているみたいだけど、回転の勢いを少しも落とせていない。……むふふー、この私がそれなりに本気で投げたんだから逃げられるわけないじゃないか(強気)。

 

 やがて、二人が徐々に落ちてきて……。

 

「みょーん」

「ふへぇ」

 

 床に叩きつけられる前に、猫を持つみたいに、首根っこを掴まえる。

 

 強い回転に晒された影響で、二人共漫画みたいに目をぐるぐると回して、ぐったりとしている。

 妖夢、美鈴戦闘不能! 博麗の勝ち! 二人の身柄を手に入れた! やったね霊夢ちゃん! 家族(意味深)が増えるよ!……具体的に言うならば、妖夢と美鈴の二人の他に、私と二人の血を引く小さな生命が増えるよ!(ドストレート)

 

 まぁ、覇王モードパイセンがスタンバってるんで、手は出せないんだけどね。

 仕方がないので、普通に優しく介抱することにする。……そう、博麗が誇る伝家の宝刀、膝枕(HI・ZA・MA・KU・RA)の出番が来たのである。

 私の膝枕は特別中の特別、疲労、傷の回復などの効果もある優れものなのだ。こうして私の膝に頭を乗っけてあげるだけで……。

 

「……うぅ、目が回りました」

「頭が、ふらふらします」

 

 ほーらこの通り、気絶程度ならすぐに回復させることが出来るのである。

 さっすが私の膝枕だね! 一家に一人博麗霊夢の膝枕、貴方の全てを癒やします! 美少女相手なら、特別に耳かきや子守唄、おまけに赤ちゃんプレイなどの特殊なサービスなどもお付けします!(ただし野郎ども、オメェらは駄目だ)

 

「全く、あれくらいで情けないぞ二人共」

「霊夢さんを基準で考えないで下さい」

「人間どころか妖怪でもアレは耐えられませんって」

 

 身体を起こしながら、ぶーたれる二人。……普段から鍛えていないから駄目なんだと思いますー。

 私は鍛えているから耐えられる、貴女達は鍛えていないから耐えられない。そんな単純明快でシンプルな答えなのだ。……どぅーゆーあんだーすたんど?

 

「あの程度は鍛えていれば問題はないと思うが……魔理沙なら、あの程度では音を上げないぞ?」

「……魔理沙さんって人間でしたよね?」

「その筈です。……うぅ、あの頃の純粋な魔理沙さんはいなくなってしまったんですよ。これも全部この巫女のせいです」

「おのれっ霊夢さん! 貴女の血は何色ですか!」

「……後半は覚悟しておけよ?」

「「すいませんでしたぁぁぁ!」」

 

 全く失礼しちゃうわね! ぷんぷん。

 確かに私は魔理沙たんの鍛錬に手を加えたけど、殆どは魔理沙たん自身の努力が実った結果だ。

 面と向かって言われちゃったよ。「今に見てろよ! いずれ私はお前の隣に立ってやるんだからな!」ってさ……キャッ、プロポーズされちゃった。てれりこてれりこ。

 その時の魔理沙たんの真剣な眼差しに不覚にもですね、ちょっと下着がまずーい事になってしまったね。

 

 正直、魔理沙たんには才能と呼べるものはない。魔法使いとしての才は並程度、格闘センスも人並みの域を出ない。……それでも魔理沙たんには一つだけ、誰にも負けない才能があった。それは――

 

――努力する才能。

 

 周りが自分よりどれだけ優れていようとも関係ない、それに追いつくためにめげずに努力し続ける。つまり決して諦めない不屈の精神が、燃え上がる情熱が、魔理沙たんにはあるのだ。

 十の努力で一を知り、百の努力で漸く十を知る。才能という一面では、誰よりも平凡な魔理沙たんであるが、しかし、膨大な鍛錬から得られるバックボーンは計り知れない。

 言うなれば魔理沙たんは大器晩成型。時間を掛ければ掛ける分だけ、後から得られる結果は計り知れない価値を持つことになるのだ。

 無論、まだまだ負けるつもりは毛頭ないけど、将来的には私もうかうかしていられないくらいの実力を手にすると踏んでいる。……博麗霊夢は幻想郷にて最強、それを覆しかねない可能性を秘めている存在なのだ。

 まぁ、私にとっては可愛い可愛い魔理沙たんっていう事実は変わらないんですがね。ああ、可愛い可愛いよ、魔理沙たん。はぁはぁ。ちょーっと博麗の巫女と大人の階段に上ろう? 気持ちいいからさぁ、ね。

 結論を言うなら、私の魔理沙たんは努力家で可愛い天使だって事だ。

 

「それにしても、霊夢さんに貰ったこの服。ちょっと変わってますけど、かなり動きやすいですね。いつもより刀が振りやすかったです」

「私もいつもよりも技にキレが出せた気がします」

「フフッ、気に入ってくれているようで何よりだ」

 

 鍛錬中、二人には普段の服装とは違う、私が自作した衣服を身に着けてもらっている。

 ピッタリと肌に張り付き、二人の少女達の美しい身体のラインがハッキリと見て取れる。それなりに露出が高いため、大変目の保養になっている。……言うなれば競泳水着のエロいバージョン、レオタード的な?

 

 妖夢のは、緑色のラインを奔らせ、腰からスカートの様に緑色のレース伸ばしてみたり、胸元には半霊に黒いリボンが付いたマークを入れてみたりしたもので、彼女の僅かに花開き始めた若葉を楽しめる一品となっている。

 美鈴のは、全体的に中華の要素を取り入れて、赤と緑の入り混じった華やかなデザインに仕上がった。出来栄えとしては、肌にピッタリとくっついたチャイナドレス、と言ってしまった方が良いかもしれない。そして、胸元には彼女のトレードマークである龍の文字が入った星を付けてみた、彼女自身の肉付きの良い豊満な肉体と相まって、非常に魅力的である。

 

 それぞれの特徴を基にデザインしてみたんだけど、うむうむ、私の考え通りでバッチリ似合っているね、可愛いし、綺麗だよ二人共。

 

 この服、生地をかなり薄くしたから、汗で濡れれば濡れるほど透けるんだよね。

 彼女達の美しい素肌は勿論、胸の先端にある桜色の果実もうっすらと見ることができるくらいだ。おまけに、私の眼力であれば、彼女たちの大切な乙女の花園まで確認できる。……ちなみに未使用でした。穢れを知らない少女って良いよね。

 女同士だからか、本人たちもそこまで羞恥心はないみたいだし、結構ガン見してても何も言われない。……本当に良い仕事したな、私(満足)。

 

「何が食べたい? 前半の鍛錬は中々に頑張っていたからな、それなりに要望を聞いてやるぞ?」

「では、私は和食を頂けますか? 霊夢さんの作る味噌汁が食べたいです」

「私はシンプルにラーメンで、前に作ってもらった豚骨が良いですね」

「了承した、少しだけ時間を貰う。ゆっくりと寛いでいてくれ」

 

 場所を移動して、博麗神社の居間である。

 鍛錬後でお腹が空いているだろうと思い、二人にご飯を振る舞うことにしたのだ。

 

 ではではー、早速お料理と洒落込みましょうかね。

 さーて、今回もまた博麗霊夢のーパーフェクトクッキング教室の時間が始まりました。司会進行兼調理担当は、皆さんご存知、博麗霊夢、博麗霊夢でお送りさせてもらいまーす!

 今回のお題は、味噌汁を中心とした和食と豚骨ラーメン。これは腕の見せ所といったところですな!

 先ずは使用する道具に、私の霊力を込められるだけ込める。……これが味の決め手になるからね、仕方ないね。

 

 霊力を込め終えたらいよいよ、料理開始である。

 今回の和食は無難に具沢山味噌汁で行くつもりだ。

 白菜とか大根とか里芋とかしいたけなんかの野菜を沢山切り刻んで、沸かしておいたお湯の中に投入して、柔らかくなるまで、じっくりと時間を掛けて煮込んでおく

 その間に、ラーメンの準備だ。先ずは自家製の豚骨スープを温める。そして、温めている間に、上に乗っける具材を切っていく、極太のチャーシューに、ナルト、ゆで卵、これらを切り、メンマやモヤシなんかを用意する。

 で、昨晩寝かしておいた生地を取り出して、麺棒で何度か引き伸ばして折りたたみ、それを細麺サイズに切ります。細麺サイズにすることで、スープが絡んで味を楽しめるからね!

 そして、このタイミングで味噌汁の野菜が柔らかくなっている筈だから、お味噌を投入。ゆっくりと溶かし、調味料を加えて味を調整していく。

 最後に自家製の油揚げを一口サイズに切り分けて、投入すれば具沢山味噌汁の完成である。

 ラーメンは、作った麺をお湯で湯掻いて、湯切りもしっかりと行う。

 仕上げに器にその麺を入れて、特製の豚骨スープを入れていく。そして、切って置いたチャーシューなどの具材をこれでもかと豪快に乗っければ、ラーメン完成である。

 そして最後に料理に向かって「美味しくなーれ! 巫女巫女きゅん!」っと、私の味の素(霊力)をたっぷりと注入したら終了である。

 

 完成ッッッ!! これこそが博麗の巫女たる私の手料理『べ、別にあんたのために作ったんじゃないからね! 博麗具沢山子沢山味噌汁〜ツンデレ風味〜』と『巫女の霊力がたっぷりと染み出た博麗豚骨ラーメン』である。

 

「ほら、出来たぞ。存分に食べると良い」

「うわぁ、具が沢山で美味しそうです」

「妖夢さん、見てくださいよ、このラーメンのトッピング。すっごい贅沢ですよ」

 

 であろう? であろう? 美味しそうであろう? そうであろう?

 こんな毎日食いたいでしょ?……なら家に住みなよ〜、夫婦の関係になろうよ〜、みーと結婚しちゃいなよ〜。

 

「「いただきます!」」

 

 一心不乱に脇目も振らずに食べるッ、食べるッ、食べるッ! ただただ、食らうッ 食らうッ、食らうッ!

 こんだけ美味しそうに食べてくれるのって、嬉しい限りだよね。私の物を美少女が飲んだり食べたりしている姿に興奮するよ。

 よくよく考えたら、素材の味を引き出すために私の霊力が使われているから、彼女たちの体内には私の一部が漂っているということになる。つまり彼女たちと私は一心同体、一つに合体(意味深)しているという事なのでは?……やべぇ、下着が、下着が変態な事になってしまった。博麗ぱわーで乾かさねば。

 

「「ごちそうさまでした」」

「お粗末さま」

 

 もう食べやがったよこの娘達。

 満足気にお腹擦りやがって、ぽっこりしてやがるじゃねぇか。……妊娠かな? 是非とも私と妊婦プrげふんげふん。

 いやーでも、残さず完食してくれて、嬉しいねぇ。これが料理人冥利に尽きるって事だねぇ。

 

「では、後半の準備をしてくる。その間、少し休憩を取ると良い」

「準備ですか? 普通に霊夢さんと組み手をするだけでは?」

「いつも私ばかりと稽古してもつまらないだろう?……少し趣向を変えようと思ってな」

「はぁ、趣向を変える、ですか?」

 

 うん、絶対楽しいよー。さっき思いついたんだけど、絶対楽しいと思うよー。

 この博麗式女傑育成修行道場の師範である、博麗霊夢が考案する一大イベント『博麗女傑祭り』はねー。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 白玉楼の剣術指南役兼庭師を務めている半霊、魂魄妖夢にとって、博麗霊夢という人間は憧れである。

 

 強さの極限。自分の目指す先にいる存在。

 人間の身でありながら、超越的存在である神も、悪逆非道の限りを尽くす大妖怪すらも屈服させる絶対的強者、それが博麗霊夢という人間である。

 

 初めて出会ったのは、異変の時。

 世に言う『春雪異変』にて、西行妖が暴走し、冥界どころか危うく幻想郷にまで甚大な被害が広がろうとしたあの時。幻想郷でも名だたる実力者達のどんな攻撃も効かず、あの隙間妖怪ですら、半分諦めるほどの災厄。

 そんな絶望的な状況の中、颯爽と現れ、その圧倒的な強さで以て、西行妖を駆逐し、取り込まれた幽々子様を助け出し、奪われてしまった春すらも全て取り返したのが博麗の巫女である彼女だった。

 妖夢はその姿に、その強さに惹かれたのだった。自分もあんな風になりたい、と思ったのだ。

 

 だからこそ妖夢は博麗霊夢の強さに迫るために、彼女が建てたという道場に足を踏み入れたのである。

 その直後に少しだけ後悔することになってしまったが……彼女の鍛錬は一言で表すなら、異常そのものだった。

 

「切れないものがある? なら切れるまで切れ」

「妖力が足りない? なら限界まで使って無理矢理にでも限界値を底上げしろ」

「私に勝てない? そんな事は当たり前だろう、この私が最強なのだから」

 

 何ですかそれ、意味が分からないです。

 基礎の基礎から徹底的に鍛えさせられた。剣の振り方、的確な急所の突き方、そして、片手平突き牙突? なる技のやり方とかまで、色々と教え込まれた。

 普段は菩薩の様に優しい巫女は、こと鍛錬に関して言えば、それこそ地獄の閻魔よりも恐ろしかった。

 少しでも身が入っていなかったりサボったりしていたら、お仕置きと称して、イイ笑顔でほっぺたをムニムニされたり、死ぬほど擽られたり、絶大な痛みと飛んでしまいそうな快楽が同時に体験できる、あまりにも危ないマッサージを強行されたりした。

 何度死ぬ、と思ったか分からない。お仕置きのせいで恥ずかしい姿を晒したのも一度や二度どころの話ではない。

 だが、そのお陰で、妖夢は以前とは見違えるくらいに強くなれた。

 剣術だけに関して言えば、この幻想郷でも最上位に立てると、あの霊夢にも太鼓判を押されたほどだ。

 自分がそれを成し遂げたという事を誇らしく思うし、正直、霊夢に対しては感謝の気持ちしかない。……お仕置きなどの恨みがあるから、本人に面と向かって言ったりはしないけども。

 

 そんな霊夢が、今までとは趣向を変えると言う。

 基本的に、この道場では自己鍛錬と、霊夢との組手が中心だ。霊夢から改善点を指摘され、技などを教えられ、それを基に自己鍛錬をし、霊夢と組手をし、改善点を指摘され、自己鍛錬。その繰り返しで実力を伸ばしていくのだ。

 それを、変える。一体、どんな風になるのだろうか? 妖夢は興味津々だった。

 

「一体、どんな内容になるんでしょう?」

「さぁ、でもあの霊夢さんの事です。普通ってことはまず有り得ないでしょうね」

「ですよねー」

 

 あの霊夢が普通で終わらせる筈がない。

 こちらの予想だにしない、とんでもない地獄が待ち受けているに違いない。

 

――準備が出来たぞ、表に出てくるといい。

 

「の、脳内に直接?」

「うわーこんな事も出来るんですね」

 

 突然、頭に響いた霊夢の声に、妖夢は戸惑いを、美鈴は呆れ返った。最早、何でもアリだな、あの巫女は……。

 取り敢えず、霊夢の指示通り、表に出てみる二人。そこには――

 

「「何コレぇ」」

 

――『博 麗 女 傑 祭 り』

 

 妙に達筆な文字が掘られた、巨大な門が立っていた。

 更に、その門には様々な絵が描かれていた。描かれていたのは宴会の風景だ。

 妖精が妖怪が鬼が、舞い、騒ぎ、酒を飲み、つまみを食らう。幻想郷で霊夢と交友関係にある少女たちの姿が描かれていた。……当然、妖夢や美鈴の姿まで綺麗に描かれている。

 

「え、一時間も経ってないですよね?」

「霊夢さんが、本当に人間か怪しくなってきましたね」

 

 人間って何だっけ?……。二人は考えるを止めた。これ以上考えたら戻れなくなる気がした。

 

――そこの門から入ってこい、門の先には試練が待ち受けている。

 

「ああ、趣向を変えるって」

「そういう感じですか」

 

 霊夢の悪い癖が出た。興が乗りすぎると、偶にこういったお遊びを盛り込んでくるのだ。

 以前は鬼の萃香相手に、コスプレで組手を行うという遊びをしていた。萃香にはマイクロビキニという布面積が極端に少ない衣装を無理やり着せ、霊夢自身もまたスリングショットという紐みたいなやつを着込んでいた。動く度に、大事なところが溢れてしまいそうで、皆目のやり場に困っていた(一部はガン見していたが……)

 

 今回は二人に試練を課して、四苦八苦している様を見ながら楽しみたいという事だろう。

 無論、二人のためになる試練なのだろうが。……二人の脳裏には、意地悪な笑みを浮かべる博麗の巫女の姿が浮かんでいた。

 

「美鈴さん」

「何でしょう、妖夢さん」

「完膚なきまでに試練を乗り越えて、霊夢さんに一泡吹かせましょう!」

「ええ、絶対に、絶対にだ!」

 

 「打倒博麗の巫女」を目指して、二人の結束は固まった。

 おのれ博麗の巫女めっ! お前の思い通りになって溜まるかっ! そんな決意のもと、いざ、門へ――

 

「よ、よく来たわね! わ、私はモヤシパープル!……モヤシって何よ、モヤシって」

「私は腹ぺこ仮面よ〜、よろしくね〜」

 

――何かいた。

 

 開け放たれた門の先には、奇妙な姿をした二人の人物が待っていた。

 一人は上半身から下半身を紫色のレオタードで覆い隠し、舞踏会で付けるような蝶のベネチアンマスクを付けた人物。その髪の色は紫色で、頭に付いた月を模倣した髪飾りが幻想的だ。

 もう一人は、露出が多い桜色の着物に、謎のピンク色の生き物を模倣した仮面を付けている人物。桃色のミディアムヘアーが美しく。ひと目で高価と分かる蝶が描かれた扇子から、彼女がそれなりの立場にいると分かる。

 

「貴方達は……何者ですかっ!」

「え、妖夢さん?……マジで言ってるんですか?」

 

 妖夢の声に驚きしか出ない美鈴。

 服装こそ違うかもしれないが、どう見てもパチュリー様と、貴女の主である幽々子さんでは?

 

「妖夢、気を使わなくても大丈夫よ。どうせバレて……あ、これ本気で分かっていないみたいね」

「妖夢は天然さんだからね〜」

 

 何とも言えない微妙な空気がその場に流れる。……真面目な顔をしているのは妖夢だけ。

 

「と、兎に角! この先に進みたいのなら、私達の正体を暴きなさい!」

 

 パチュリーもといモヤシパープルは、締まらない空気をそのままに、強引に話を進める事にした。

 ただでさえ、こんな下らないお遊びに無理矢理付き合わされているのだ、こんなにグダグダされて堪るかっ!

 

「言われずとも! 美鈴さん! あのモヤシパープルなる人は私が相手をします! 貴女はそちらの腹ぺこ仮面と名乗った方を頼みます」

「はぁ、分かりましたよ」

 

 モヤシパープルの前には妖夢が、腹ぺこ仮面の前には美鈴が、それぞれ立つ。

 

――では……始めぇぇぇい!

 

 妙に威圧感を醸し出している霊夢の声が、それぞれの脳内で響き渡る。

 

「さぁ、掛かってきなさい」

「何処からでも掛かってくるといいわよ〜」

 

 勝負の幕が切って落とされた。

 先に動いたのは挑戦者である妖夢。刀を構え、一直線にモヤシパープルとの距離を詰める。

 

「せやっ!」

 

 刀の切っ先が煌めき、一閃――

 

「甘いわね」

 

――が、しかし、突然その場に出現した分厚い本によって防がれる。

 

 驚くことに、刀とぶつかりあったにも関わらず、本には僅かな傷も付いていない。恐るべき強度で以て、妖夢の斬撃は完全に受け止められていた。

 

「お返しよ」

「きゃぁ!?」

 

 防がれている刀をそのままに、モヤシパープルはもう片手にもう一冊本を出現させ、思いっ切り振りかぶって妖夢にぶつけ、そのまま妖夢を吹き飛ばす。

 

「くっ、強いっ」

 

 まだ一合のみしか刃を交わしていないが、相手が生半可な実力者ではないと思い知らされた。

 体格や筋肉の付き具合などから、接近戦は不得意であると踏んで速攻を掛けたが簡単にあしらわれてしまった。

 

「まさか、本を武器にするなんてっ」

「本当は魔法の方が得意なのだけど、一応は肉弾戦限定って言われたから……最も、私は肉弾戦もそこそこ出来るのだけど。れい……あの人に徹底的に扱かれたから」

「それの何処がモヤシなんですか」

「知らないわよ、れい……あの人が勝手に付けたんだから」

 

 はぁ、と重たい溜息を一つ。どうやらあの人とやらに相当苦労させられているようだ。妙に親近感が湧いてくる。

 モヤシパープル、侮りがたい実力。でも――

 

「霊夢さんほどじゃない! 貴女を倒して、私は先に進みます!」

「暑苦しいわね、勝手にしなさい。……出来るものならね」

「覚悟ッ!」

 

 今、白玉楼の庭師妖夢と、七曜の魔女であるモヤシパープルがぶつかり合う!

 

 

ーーーーー

 

 

「あっちは始まったようね〜、それで〜貴女は攻めてこないのかしら〜?」

 

 隙を一切見せないくせによく言いますね。

 ただ立っているだけなのに、まるで空を舞う蝶の様に掴みどころがない。どんな風に仕掛けても、次の瞬間には手痛い反撃を受ける。……そんな光景しか見えない。

 

「いや、流石は冥界の女主人ですね。全然隙がありません」

「何の事かしら〜私は腹ぺこ仮面よ〜」

 

 会話を混ぜて隙を作ろうとしても、柳に風と言わんばかりに流されてしまう。

 

「はぁ、仕方がないですね。考えていても埒が明きませんし、胸を借りる気持ちで、一回仕掛けてみましょうか」

「ふふふっ」

「紅魔館が門番、紅美鈴! 行きますっ!」

 

 床を踏み砕いて力を溜め、瞬時に距離を詰めながら、重心を乗せて蹴りを放つ。狙いは仮面がある側頭部っ!

 速さ、重さ、全てを兼ね備えた、これ以上無いほどベストな蹴り。無防備に当たれば相手が大妖怪でも少なくないダメージを与えることが出来る――

 

「はい、ざ〜んねん」

「っ! やっぱりそう甘くはないですよね」

 

――しかし、防がれる。

 

 片手に持っていた扇子。それで美鈴の蹴りは軽々と防がれていた。

 遅れて美鈴の足に響く鈍痛。扇子の強度に負け、逆に蹴った方の足にダメージが入ってしまったのだ。

 

「気で強化していなかったとはいえ、蹴った私の方がダメージを受けるだんて……それ、鉄扇ですか」

「そうよ〜あの人にすっごい仕込まれたんだから〜」

 

 あの人――この茶番の元凶である博麗の巫女の事だと、美鈴は思った。……ただでさえ強い人に何て事を、恨みますよ霊夢さんっ!

 笑顔でサムズアップしている巫女の姿が一瞬だけ頭に浮かぶ。……とても腹が立つ。

 

「安心していいわよ〜肉弾戦だけしかしないから〜」

「それだけが唯一の救いです。……元々の力に差がありすぎるから、それでも大分キツイんですが」

「簡単だと試練じゃないでしょ〜?」

「確かにそうですね。……それでは改めて参ります!」

「頑張りなさ〜い」

 

 再度駆けるは紅魔の門番、迎え撃つは冥界の女主人腹ぺこ仮面。此処でも試練が開始された。

 

 

ーー数時間後ーー

 

 

 試練が始まって数時間が経つが、戦いはまだまだ続いていた。

 一方では妖夢とモヤシパープルによる一進一退の攻防。その一方では美鈴が圧倒的格上である腹ぺこ仮面に粘り強く食らいついていた。

 

「その本、固過ぎですっ! 魔法は使わないんじゃなかったんですか!」

「魔法じゃないわ、ただ魔力を込めて強化しているだけよ」

「魔法使ってるのと一緒じゃないですか!」

「負け犬の遠吠えね。つまらないわ」

 

 接戦も接戦。妖夢が攻め、それをモヤシパープルが防いでカウンターを返す。そのカウンターを妖夢が躱して、再度攻める。そしてまた防がれカウンター。

 攻めては防がれ、カウンターすれば躱される。……終わりの見えない膠着とした戦いが続いていた。

 

「そんなに悔しかったら、貴女も霊力で強化してしまえばいいのにね」

「霊力で、強化……」

「魔力も霊力も一緒よ、武器に込めればそれだけの恩恵があるの、それなのに貴女はただ刀を振るうだけ、そんな様では、私の守りは永遠に突破できないわ」

 

 そう言えば、そうだ。

 相手が魔力を使ってくるなら、自分が霊力を使っても何も問題は無い。そんな簡単な事に気が付かない自分の未熟を妖夢は恥じた。

 

「私の未熟を正して頂き、ありがとうございます」

「別にいいのよ、私もただ戦い続けるのは飽き飽きしてたから」

「それでは――行きます」

「漸くお目覚めね。……さぁ、来なさい」

「いざっ!」

 

 妖夢が駆ける。それを迎撃するモヤシパープル。

 モヤシパープルが無数の本を出現させ、強化して投げつける。それを妖夢は躱して、躱して、剣で払って、払って駆け抜けていく。そして、モヤシパープルに向かって刀を大きく上段へと振り上げる。

 

「そんな単純な攻撃!」

 

 刀が振り下ろされる前に、モヤシパープルは再度妖夢を吹き飛ばすために、本を投げる、投げる、投げまくる。……もう、遠距離攻撃とは言ってはいけない。

 本による物理的弾幕が妖夢の胴体にぶち当たり、為す術もなく妖夢は吹き飛んでいく。……筈だった。

 

「すり抜けたですって!?」

「残念ですが、それは私ではありません。私の姿を模倣した半霊です!」

 

 吹き飛ばされていく筈の妖夢の姿が崩れ落ち、もちもちしてそうな真っ白な塊に変化する。そして、モヤシパープルの背後には、刀を引き絞って構える妖夢の姿がっ!

 

「いつの間、にっ!」

「これで最後です! 霊夢さんに散々仕込まれた技の数々! その内の一つを見せましょう! 一撃必勝――」

「ぐっ、間に合わない!?」

「牙突ッ!」

 

 突き出された刃の一撃が煌めき、銀色の閃光となって、モヤシパープルの仮面を切り裂き、粉々に吹き飛ばす。

 

「我が楼観剣に切れぬものなど、あんまり無い!」

 

 決まった、これ以上無いくらいに決まった。妖夢はみょんな達成感と共に、モヤシパープルの方を見る。……果たしてその素顔はどんなものなのだろうか?

 

「そこは何もないって言っておきなさいよ。締まらないわね」

 

 仮面が割れ、露わになったのは呆れた表情を浮かべる美しい顔。髪の色と同じ紫色の瞳、そして、その瞳には確かな知性が垣間見える。

 

「それが貴女の素顔ですか、その顔、貴女は――」

「流石に顔を見たら分かるわね。そうよ紅魔館のヴワル魔法図書館、そこの司書をしているパチュリー・ノーレッジ」

「――に似てる人!」

「もうヤダ、この娘。……もう合格でいいわ。先に行きなさい、私は疲れたわ」

 

 あんまりと言えば、あんまりと言える妖夢の天然っぷり。それに心底疲れたと首を振り、先へ向かう様に促すモヤシパープル改め、パチュリー・ノーレッジであった。

 

 

 一方、である。

 

 

「くっ、重い」

「も〜女性に重いは失礼よ〜」

 

 腹ぺこ仮面の振り下ろした鉄扇の一撃を、気を込めた拳で防ぐ。しかし、余りにも重いその一撃に、美鈴の足元は軽くクレーター状に凹んでしまっている。

 

 美鈴と腹ぺこ仮面の戦いは、美鈴の防戦一方な状況だった。

 

「隙有り! って、痛ぁ!?」

「全然効かないわ〜」

 

 何故、防戦一方なのか? それは、美鈴の攻撃が腹ぺこ仮面に全く通用していないのが原因だ。

 腹ぺこ仮面の身から溢れ出る膨大な妖力。圧倒的な妖力が壁となり、美鈴の攻撃の威力を完全に殺していたのだ。どれだけの力を込めようが、どれほどの気を込めて殴ろうが、一切貫けない。天然の絶対障壁。

 この時の美鈴の脳裏に浮かんでいたのは巨大な城塞、個人の力だけでは打ち砕く事の出来ない腹ぺこ仮面という名の城塞の姿だった。

 

「ちょっとは抑えて下さいよ! そのアホみたいな妖力! 全然試練にならないじゃないですか!」

「ごめんね〜これが限界なのよ〜」

 

 化物ですか? 美鈴は素直にそう思った。

 でも、この人を突破しないと、後から霊夢に色々されてしまうだろう。

 それを考えたら、せめて一撃だけでも入れないといけない。……如何に暢気な美鈴と言えど、あの巫女の手によるお仕置きコースは嫌なのである。これはもう死にものぐるいでやってのけるしかない。

 維持でも突破してやるっ! 美鈴の拳に無意識に力が入る。

 

「私の気の総量では、貴女が無意識に垂れ流している妖力ですら突破できない。……だったら、こうする、までです!」

 

 己のリミッターを無理矢理外して、自分の潜在能力を爆発的に増大させる禁じ手。

 下手をすれば、自分の身体が壊れてしまうかもしれない禁じ手だ。……開放された気を無理矢理にでも操って制御し、安定させる。

 

「確かにさっきよりは強くなったわね〜、でも」

「はい、確かにこれだけでは足りません、だから――」

「っ!? 器用な事するわね〜」

「――こうしますっ!」

 

――美鈴を中心に、膨大な気が”周囲”から集まっている。

 

 一人で足りないならっ、一人の力で足りないのならっ! 周りから持ってくればいいっ! 個々で駄目なら、束ねてぶつけてしまえばいい!

 美鈴に収束していく膨大な力に、流石の腹ぺこ仮面も、おちゃらけた雰囲気を消して警戒している。

 

「私一人の全力では足りない、なら他から持ってくれば良いんです。どうですか? 少しは驚きました?」

「驚いたわ〜そ~んな隠し玉が有ったなんて〜……少しは本気を出さないと、拙そうね〜」

 

 腹ぺこ仮面から漏れ出す妖力が増大する。

 限界まで気を高め、周囲からまで気を集めた自分よりも、頭一つか二つは上の膨大な妖力。……だけど、それがどうした。そんなもの、あの化物巫女に比べたら遥かにマシだ!

 

「だから何ですか! 我が拳に貫けぬものなし! 行きますよぉぉぉ!」

 

 狙うは一点集中。

 あの巫女も言っていただろう。常に冷静になって状況を見極めろと。相手の妖力が膨大とは言え、何処かに必ず薄い部分がある筈、それを探せっ! それを見つけ出せっ! そして――

 

「捉えたッ! いっけぇぇぇ!」

 

――見つけたッ!

 

 他と比べて僅かに妖力が薄い部分、そこに向かって気を全て集中させた一撃を渾身の力でぶつける。一瞬の抵抗と共に、美鈴の拳は妖力の壁を突っ切って――

 

「あら〜抜かれちゃったわ〜」

 

――腹ぺこ仮面の仮面を吹き飛ばした。

 

 仮面が吹き飛び、露わになったのは美麗なる少女の素顔。桃色の髪と同じ瞳を持った、見目麗しい冥界の女主人、西行寺幽々子その人であった。

 

「はぁ、はぁ、やっぱり、はぁ、幽々子さんでしたか」

「素顔を見られたからには私の負けね〜残念だわ〜」

 

 などと言いつつも全く残念そうに見えない。

 本人にとって、勝負の勝ち負けはどうでも良かったのだろう。のほほんとした雰囲気で、上品な微笑みを浮かべている。

 

「霊夢さんに頼まれたんですか?」

「そうよ〜試練の相手をやってくれるなら、おはぎを沢山くれるって言ってたから、手伝ったのよ〜」

 

 おはぎって、そんな事のために、私はこんな化物みたいな人と戦う羽目になったんですか。最早、怒りを通り越して、変な笑いしか出てこない。

 

「幽々子さんらしいと言えば、らしいですね。……私は先に進みます。お相手ありがとうございました」

「いいのよ〜私も最後のアレはちょっとだけ楽しかったしね〜、妖夢をよろしくね〜」

「頼まれました。……では」

 

 ゆるりと手を振る幽々子に礼を返して、美鈴は先に進む。

 次の扉の前には、既に妖夢が立っていた。妖夢は何やら難しい顔をしている。一体何があったのだろうか?

 

「どうしたんですか?」

「あの、美鈴さん」

「……はい、何でしょう?」

「さっきの人の素顔、幽々子様に似ていましたよね」

「……え?」

「それに、あのモヤシパープルなる人も、パチュリーさんに似ていませんでしたか?」

「あ、はは、ハイ、ソーデスネ。ニテマシタニテマシタ」

「ですよね! 私、びっくりしましたよっ!」

 

 いや、そんな貴女に一番びっくりしていますよ。

 至極真面目な表情で、天然丸出しな発言をした妖夢に、美鈴は苦笑いを浮かべながらそう思った。

 

「何はともあれ、先に進みましょう!」

「そうしましょうか」

 

 そこからは先は、更に過酷な試練の連続だった。

 「通常の三倍は重い」と真っ赤に塗装された巨大な丸太を背負わされて、何百段もある階段を登らされたり。

 目隠しした状態で、床一面が白い液体(霊夢が霊力をコネて作った)でヌルヌルに満たされた場所で素振りなどをさせられたり。

 バナナを咥えさせられた状態で、狭い通路を四つん這いで進まされたり。

 兎に角、罰ゲームとしか思えないような数々の試練を四苦八苦しながら、二人は乗り越えた。……時折脳内で響いている、あの性悪巫女の押し殺したような笑い声にイラッときて、根性で乗り切ったのである。

 そして辿り着いたのが――

 

「はぁ、はぁ、ここが、はぁ、最後の扉ですか」

「はぁ、はぁ、ただならない、はぁ、威圧感を、はぁ、放っていますね」

 

――『最終試練、獣の扉』。

 

 獣と書いて、けだものと読む。

 シンプルに真っ黒に塗装された巨大な扉は、妙な威圧感を放っている。

 

「獣の扉、ですか」

「行きましょう妖夢さん」

「はい」

 

 扉を開け放つ。

 そして、驚愕に目を見開いた二人。扉の先に広がっていた光景は、圧巻の一言だった。

 

「こ、これは!?」

「そんな馬鹿な」

 

 扉の先に広がっていたのは、草原だった。青々とした草原が広がっていたのだ。

 何よりも有り得ないのが、室内なのに空が、無数の星々が散りばめられた満点の星空が存在しているという事実。

 幻術とか空間操作とか、そんなちゃちなもんではない、博麗の巫女の恐ろしい片鱗を味わった気分だった。

 

「よく来たな、挑戦者諸君」

「「っ!?」」

 

 眼前に広がる光景に圧倒されていた二人に背後から声が掛かる、途轍もない威圧感を秘めた声だ。背後を取られた事に色んな意味で危険を感じる、声。

 

 反射的に後ろを振り返り、再び驚愕する。

 そこにいたのは女だった。長身でスタイル抜群な身体、その身に纏っているのは露出が目立つ特徴的な巫女服。……何よりも目を引いたのが、狼の頭を模倣した仮面だった。

 無駄にリアルに再現されている狼の仮面に、ちょっとした恐怖心が芽生える。

 

 狼の仮面を付けた巫女服の女。彼女から溢れ出る圧倒的な覇気が、埋めようのない実力の差を二人の頭に理解させた。

 無理だと悟った。どう足掻いたところで、例え逆立ちしたって傷一つ付けられないっ!

 

「っ!? 何て強大な存在感。それにその特徴的過ぎる巫女服に、妙に聞き覚えのある魅力的な声……貴女は何者ですか!」

「な、ナニモノナンダー」

 

 マジか妖夢さん、マジなのか。どう考えてもあの人の正体は、あの巫女だって分かるでしょうに。……美鈴の嘆きをよそに、話は進んでいく。

 

「ほぅ、この威圧の中、よくぞ吠えた。その勇気に免じて、我が名を聞く栄誉を与えよう。聞け、我が名は――」

 

――けだもの仮面!

 

「けだ?」

「もの?」

「「仮面?」」

 

 妖夢は純粋に驚愕を、美鈴は彼女に似合わない名称に、ちょっとした疑問を抱いた。

 普段から優しい貴女がけだものとは……いや、お仕置きしてる時とか、今みたいに悪ふざけしている時はその限りではないのですが。

 

「抑えられない獣性と欲望を兼ね備えた私に相応しき面だ。……さぁ語りはここまでだ。掛かってくるが良い」

 

 けだもの仮面が構える。……左手を上に、右手を下に。

 

「あれは、拙いですね」

「めいり院、アレを知っているんですか?」

「美鈴です。あれは天地魔闘の構えです。私でも知る限りで、実戦レベルで使えるのは霊夢さんしか知りません」

「天地、魔闘?」

「そう、天地魔闘です。天とは攻撃、地とは防御、そして魔は魔力を使うことを意味するんですが……彼女の場合は霊力ですね。相手の攻撃に対して、いくつかの必殺技クラスの攻撃を同時に繰り出す。所謂、究極のカウンター技です」

 

 つまりは絶対に破れぬ、難攻不落の迎撃要塞の出来上がりというわけだ。

 

「一応、カウンターの直後には僅かに硬直するらしいんですが……」

「よく知ってますね。めいり院」

「美鈴です。次言ったら殴ります。以前に霊夢さんが、お嬢様と妹様に教え込んでいるのを見ましてね。その時に説明も小耳に挟んだんですよ。……今回は肉弾戦のみに限定されていますから、私達でも攻略できる可能性があります」

 

 あの時はヤバかった。

 お嬢様と妹様が連携して必殺技を繰り出しているにも関わらず、その全てを撃ち落とし、挙句お二人も容易く捕まえる始末。……あの後のお仕置きが一番恐かった。その時の光景は未だに目に浮かぶほどだ。軽くトラウマになっているかもしれない。

 逃げようとするお嬢様たちを無理矢理腕力で押さえつけ、そして、その幼い肢体を徹底的に揉み解していた。……博麗式のマッサージで痛みと快楽を同時に叩き込まれて嬌声を上げるお二人の姿。

 もしも、アレが自分に向けられたらと思うと……恐怖で心臓が激しく動悸する。

 あんな目に遭うと分かっているのに、どうしてお嬢様達は霊夢に突っ込んでいくのだろうか。それが分からない。

 

「兎に角、先ずは隙を作らないことには話にもなりません。……私がどうにかして隙を作ります。妖夢さんが決めて下さい」

「分かりました。タイミングはお任せします」

 

 美鈴はけだもの仮面の正面に、妖夢は背後にそれぞれ移動する。

 挟撃、というわけだ。……小賢しい手ではあるが、やらないよりはマシだろう。

 

「美鈴、お前なら自分達がこの技を破れない事くらいは理解できる筈だ。何故、抗う?」

「一応、試練らしいですからね。やりもせずに諦めるのは格好悪いですし……何より、此処まで頑張ったんですから、結果がどうであれ、最後まで全力を出し切りたいんですよ」

「フフフッ! 良い心掛けだ。お前のそういうところが本当に大好きだよ」

「ッ!? 不意打ちは止めてくださいよ。意地が悪い」

 

 全く、この巫女は。

 そういうところが本当油断ならない。……自分を含めて、この巫女に何人の女の子が堕とされたんだろうか。

 美鈴が知っている限りでは、紫さん、魔理沙さん、アリスさん、そして我らが紅魔館の面々。……少なくともこれだけの少女たちが、巫女の魅力にやられてしまっている。

 本当に女たらしというか、人たらしというか、この巫女に惚れてしまった自分が言うことでもないが、この人ほど質の悪い人はいないんじゃないかと思う。

 せめて息を吐くように口説く癖を止めて欲しいものだ。

 

 これから仕掛けるというのに、何とも締まりが悪い。だが、適度にリラックス出来たお陰で緊張が解れている。……恐らく、これを狙って声を掛けたんだろう。本当に、この巫女は。

 兎にも角にも、これで最高のコンディションで動くことが出来る。……此処までお膳立てされたのだ、目にもの見せてやるっ!

 

「すぅ、では……行きますッ!」

 

 掛け声と共に、美鈴がけだもの仮面に向かって突っ込む。狙いは、一つ!

 

「はぁッ!」

「甘い!」

 

 一撃目は、大地を思いっ切り踏みしめて、その時の踏み込みの力を全て拳に伝える一撃、寸勁。それをけだもの仮面は、同じく同程度の威力にまで抑えられた寸勁で、相殺する。

 もしも、けだもの仮面が本気だったら、この時点で駄目だった。自分の一撃ごと身体が吹き飛ばされていないなら、かなり手を抜いているという証明だ。それなら勝ち目は十分にある!

 

「それで終わりか? なら潔く吹き飛べ」

 

 技を放って硬直している状態の美鈴に向かって、けだもの仮面の拳が襲い掛かる。

 天地魔闘にしては動きが遅い。天地魔闘の真骨頂とは、三連続同時カウンター攻撃だ。これでは同時とは到底呼びがたい。

 つまり、天地魔闘は使っていない、ということだ。かなり所か全く力を出されていない。これなら普段の組手の方がまだ力を出しているくらいである。

 しかし、力を全く出していないとしても、拳を繰り出してくる相手が相手である、殺人的な速さで拳が美鈴に迫る。

 

「やっぱり速いっ! だけどぉ!」

 

 これぐらいなら無理矢理回避できる!

 美鈴は全身の力を抜いて脱力、それにより自然に身体が傾いて、辛うじてけだもの仮面の拳を回避することに成功する。

 

「せいやッ!」

 

 そして脱力で傾いていく勢いをそのままに、一回転して回し蹴りを繰り出し、けだもの仮面の側頭部を狙う。

 

「ほぅ? やるな」

 

 だが、その回し蹴りは、同じく同程度の威力を持った踵落としで相殺される。……合計三回の反撃、美鈴の考えが正しければ、ここで動きを止めてくれる筈。

 

「……身体が動かんなー」

 

 棒読みも棒読み、態とらし過ぎる発言と共に、その動きを完全に静止させるけだもの仮面の身体。チャンスは、今である(投げやり)!

 

「今です! 妖夢さんっ!」

「了解ですっ!……これで決めますっ! 射殺せっ――」

「来るかっ!」

「――神槍っ!」

 

 霊夢から伝授された、とある悲しい毒蛇の技。

 その銀色の閃光は、けだもの仮面の覆面を掠め、深く走り抜ける。……ビームではない。ただ霊力で刀身を覆って、突き出すと同時に、思いっ切り伸ばしただけである。断じてビームではない。

 妖夢の放った一撃により、けだもの仮面が被っていた仮面が破れ落ちていく。……この戦い我々の勝利だ!

 

「フフッ、成長したな二人共」

 

 破れ去った仮面の下から姿を現したのは、我らがお巫女様である。仮面の中身は、幻想郷最強の人間と名高い人物、博麗霊夢その人であった。

 件の巫女は、何やら満足げな笑みを浮かべて、うんうんと首を縦に振っている。

 

「何言ってるんですか、あんなに分かりやすく手加減しておいて……技一切使ってないじゃないですか」

「使ったじゃないか、天地魔闘を」

 

 ほれほれ、と手を上下させる霊夢。……こやつ煽りおる。

 

「あれは、天地魔闘モドキじゃないですか! 普通だったら、あの後に馬鹿みたいに分厚い結界で押し潰してきたり、追尾してくる凶悪な霊力の塊が襲ってきたりするじゃないですか!」

「フフッ、成長したな二人共」

「だからッ!」

「フフッ、成長したな二人共」

 

 何処のゲームの村人なのだろうか。

 微笑んだまま、同じセリフばかりを喋り続ける博麗の巫女に、敢え無く美鈴は追求を諦めた。

 

「その顔はっ!? 霊夢さん――」

「フフフッ、そうだぞ、よくこの試練を突破s」

「――に似ている!?」

「妖夢さんぇ」

「……ほぅ?」

 

 あ、青筋が立ってる。菩薩の様な笑みを浮かべているのに、目が笑っていない、確実にキレている。

 霊夢から溢れ出す不穏な気配を感じ取り、「同じ顔の人が三人もいたっ!?」と何やら興奮している妖夢をそのまま放置して、そーっと、美鈴はその場から離れる。

 

「まさか三人目のそっくりさんと出会ってしまうとは――な、何するんですかッ!? 離して下さいッ!? そこを触ってはッ!? あああッ!」

 

 妖夢は一瞬で押し倒されて、手を頭の上で交差させられ縛られる。よく、エロ同人などでベッドに縛り付けられている人みたいにギチギチに縛られ、開脚させられる。

 そして、そのまま霊夢は妖夢の下半身を弄り出す。時に優しく、時に強く、時にゆっくりと、時に激しく。

 自分という人間を、この天然の剣士が思い出せる様に、感情を込めて、じっくりねっとりと執拗に弄り続ける。

 

「いぃぃぃッ!? この足のツボを的確に抑えて、痛みと快楽を同時に送り込んでくるマッサージ!」

「まーだ思い出せないのか、ん?」

 

 ナニもしてませんよ。ただのマッサージですよ? R指定に引っかかるような事は一切していませんよ?

 博麗式女傑修行道場。そこの名物である、博麗霊夢のマッサージ、そのフルコースバージョンが妖夢に対して行われていた。

 グリッとツボを抉り、優しく擽るように肌を撫でる。その上、霊力を込めて妖夢の足の感度を何倍にも引き上げる。

 妖夢は押し寄せる痛みに、脳髄をガンッと殴られたかのような衝撃を与え続ける快楽に悶える。

 

「この親しみ慣れた感じはっ!? まさか霊夢さんっ!? あだだだだだっ!?」

「気付いてくれて嬉しいよ……よ う む」

「ひぇっ、あ、あ、あああああっ!?」

 

 今更気付いたところで、時既に遅し。

 イイ笑顔を浮かべた博麗の巫女による、お仕置きマッサージが本格的に動き出す。

 足だけにのみ行われていたマッサージが徐々に上の方へ進んでいき、妖夢により一層の痛みと快楽を流し込んでいく。

 どれだけ、どれだけ喚いても、どれだけ涙を流そうとも、口から大量の涎が垂れ続けようとも。

 この鬼畜外道のお巫女様が満足するまで、妖夢への責苦は終わらない。

 

「今度は忘れないようにしろ」

「な、なにか んひっ! きてるっ! あんっ! きてますっ! やっあああああッ!?」

 

 目を見開いて、背を限界まで反らせて嬌声を上げる。

 限界以上まで蓄積した快楽が一気に開放されたショックで、妖夢はそのまま気絶したように脱力する。

 頬を真っ赤に染め上げ、息を荒げて、全身から溢れ出ている汗が、生地の薄い衣服を濡らし、妖夢の女を強調し、淫靡な雰囲気を演出する。……ナニも知らない人が見たら、ハッキリ言って完全に事後のような光景がそこにはあった。

 

「これでお仕置きは終わりだ。全く、手間を掛けさせる……美鈴、すまないが妖夢の事を頼めるか? 私はこの建物を片付けねばならん」

「ア、ハイ」

 

 口答えしたら、私も同じ目に合わされる。

 真っ赤な顔で霊夢の頼みごとに了承を返す美鈴なのであった。……ほんの少しだけ、霊夢に乱される自分の姿が思い浮かんだのはきっと気のせいである。

 

 後日、霊夢の姿を見る度に、切なげに頬を染め、内股でモジモジしている半人半霊の姿があったとか何とか。

 詳しい話は、あの時、最後まで熱心にその光景を見ていた何処ぞの門番のみが知っている。……ただ、一言門番から言える事があるなら――

 

「はぁ、はぁ、霊夢、さん」

 

――ああ、惚れましたね。完全に。

 

 あの時の妖夢さん、完全に雌の顔していましたもの。

 以前からその兆候はあったんですけどね。今回が止めになってしまったようで……。

 

 此処は博麗道場。

 今日も一人の少女が、巫女の魔の手に掛かって堕ちる。明日は何処の娘? どんな娘か?……それは誰にも分からない。

 

 半霊剣士は堕ちていく、巫女の手の中、堕ちていく。

 呆れる門番、何想う。巫女への期待で何想う。

 




書くのt(ry

最近、忙しすぎてギリギリの投稿が増えている気がするのである。
なのに、文字数はどんどん増えていっている。……あれかな、自分から首絞めていくスタイル。

今回のラストは展開が急過ぎる気もしたけど、ある意味で納得出来る感じに仕上げれてはいるのではないかと思いました(小並感)。

では、次は六話で会いましょう。
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