あ、ごめん。ちょっとダンジョンしてくる。 作:トウキキュウギョウ
僕はご飯が乗っけられていたトレイに1つ書き置きをした。
この料理を作ってくれたであろうダンジョンの主に(人であるかは定かでは無いが)お礼を言いたかったからだ。
本来なら、このまま飯食ったり歯磨きしたりなど色々やってから一緒に持って来たカバンを持っていざ登校!って感じだったが、今はこの通りダンジョンに来てしまった。
正直、朝何も食べずにここを攻略するもんだと思ってたから本当に有難い。
僕はカバンからシャーペンを取り出すとダンジョンから貰った書き置きの裏側に朝飯のお礼を書いて再びトレイに乗せる。
「・・・一応、元の場所に戻しておいた方がいいのかな?」
食器を片付けたいのだが、この部屋には台所が見当たらない。
ならば、あの箱の中に戻してダンジョンの主に持ってってもらったらいいのではないのだろうか。
取りに来れるのかはわからないけど。
僕は食卓のある部屋を出て、箱のあった部屋に戻ると箱を開け、中にトレイごと食器達を戻した。
ダンジョンの主さん、ご馳走様でした。
さて、ここからが問題だ。
まず手持ちの物を確認しよう。
まずスマホ。ただ、文字バケがあり時間がわからない。
次にカバン。色々入ってはいるが、攻略に役立つ物は無い。
服は制服で、装備はその上から着ている皮の装備一式。
武器は青銅か何かで出来ていると思う片手剣と、木と鉄で作られている円形の盾。
盾の方はゲームでよく見かけるバックラーという奴だろうか。
カバンは背中に背負えるタイプなので、移動の妨げにはならないだろう。
装備も揃っているし、何とかなる筈だ。
「じゃ、初ダンジョン攻略頑張って行きますか!」
そう意気込んだ僕は箱のある部屋の奥にある道を歩く。
箱のある部屋は2つの道があった。
1つ目の道は隣の食卓のある部屋だから、こっちの奥の道が攻略ルートなのだろう。
真っ直ぐ進んでいると別の部屋に着いた。
そこには緑色の肌にボロボロの布を身に纏い、小柄ながらも醜悪な顔をした所謂ゴブリンなるものがいた。
「どこからどうみても、ゴブリンだよなぁ」
牙出てるし棍棒持ってるし頭デカイし二頭身だし。
ファンタジー系のゲームからそのまま持ってきたようなゴブリンがそこに居た。
(この距離だと気付かれて戦闘になるな・・・いけるかな?)
人生で初めての
しかもよりにもよって人型を相手にしなくちゃいけない。
これはゲームなんかじゃない。
やらなきゃ、やられる。
ドクンッ!
心臓が高鳴り、緊張と恐怖で体が震えてくる。
呼吸が荒くなり、冷や汗が出てくる。
すると突然奇声が聞こえ、前を向くとゴブリンがこちらを向き襲いかかってくるではないか。
「うっそだろ?!」
僕はフラつきながらも構え、ゴブリンの攻撃に備える。
「KsyaaaaaaaaaaAA!!!」
そう叫んだゴブリンは上に大きく振りかぶって棍棒を打ち下ろしてくる。
「危なぁ?!」
僕は左手のバックラーでこれを正面から受けると、勢いが死んだ棍棒を弾いて前方を思いっきり蹴飛ばす。
「おりゃぁぁ!」
「Giaaa?!」
僕の蹴りはゴブリンの顔面にクリーンヒットして、ゴロゴロと壁へ転がっていった。
その間に剣を握り直し、転がっていくゴブリンを追う。
ゴブリンは木にぶつかると、直ぐに体をおこす。
「Garrrr...」
が、もう遅い。
「これで・・・トドメだ!!」
僕はゴブリンが起き上がる前に胸の位置へ剣を突き刺す。
ゴブリンは刺された瞬間、多少暴れたが直ぐに動かなくなり、紫色の煙となってボンッと消えていった。
「せ、戦闘・・・終了・・・」
僕はその場に戦闘の疲労感から座り込む。
こうして僕の初戦闘は終わった。
ダンジョンの親切設計のおかげか死体は残らなかった。
剣の刃にも血は付いていなかった。
おそらく一刺しで仕留めたから刃に着いた血ごとゴブリンと共に煙となって消えたか。
いかにせよグロテスクな感じのダンジョンじゃなくてホント良かった。
もしそうなら、
「・・・うっぷ」
きっとリバースしていたと思うから。
最初の勢いは何処へやら。
吐き気を抑え、まだ右手に残るゴブリンを殺した感触を精一杯無視しながら次の部屋に向かうと今度はアスレチックみたいな場所に出た。
見た感じ今居る崖から木へ、その木から別の木へと枝伝いに飛び移りながら移動するのが良さそうだ。
ただ、踏み外したら奈落の底なのだけども。
でも魔物戦闘系の部屋じゃなくて本当によかった。
「まあ、どっちにしたって僕、運動得意ってわけでもないからしんどい事には変わりないけどね」
そう独り言を呟き、剣とバックラーを皮装備の各ホルダーに引っ掛ける。
よし、これで両手が自由になった。
準備を整えた僕は助走をつけ、走り幅跳びの要領で近くにある木の枝に向かって跳ぶ。
「よっと・・・」
無事着地。
次に飛び移る枝を探さなくては。
キョロキョロと比較的近めの木を探していると、遠くから風を切る音が聴こえてきた。
「何の音だrドスッ!
気が付いた時には頭に何か刺さった感触がした。
僕は奈落の底へ真っ逆さまに落ちて行く。
薄れていく意識の中、最後に見たのは
こちらをニヤッとしながら見ていた弓を番えたゴブリンの顔だった。