特別実習に行く日の朝になった。
俺は姉さんと通信していた。
「今日から実習だったわよね?
気をつけて行くのよ?」
「分かってるよ。んで、各方面の蛇の動きはどうなっているんだ?」
「今の所は沈黙しているわね。そろそろ動きだすとは思うんだけど。ツヴァイとしたら、どう動くと思う?」
「そうだな。俺の予測としたら、帝国、共和国、クロスベルの3ヶ所同時で動きだすだろうな。それぐらいの技術は普通にあるし、俺も含めて化け物揃いだったからな、あの組織。」
「なるほど。共和国側は私が対応するようにしてるわ。帝国は、ツヴァイとライサンダー卿が対応して、クロスベルは今の所ヘミスフィア卿が潜入して探っているわ。」
「んー、クロスベルにもうちょい戦力増強したい所だな。」
「どうしてなの?」
「あそこは共和国、帝国両方を動かせる生命線みたいなものだからな。クロスベルを動かすと、帝国・共和国共に傾くレベルだからな。
蛇からしたら格好の的だろうよ。」
「確かにそれもそうね。
でも、どうしようかしら?
戦力増加するには、厳しいわよ?
クロスベルの司教様は、騎士団嫌いで有名だし。」
「遊撃士の方に頼んでみるか。遊撃士なら自由に動けるだろうし、リベールの件以来、蛇を注視してるからな。」
「そうね。お願いできる?
今回も、
「間違いなくな。それに白面を刈ったリベールの件で、俺が生きていたことも割れてるしな。
まあ、白面を刈ったとしても、次の第三柱がすぐに見つかるだろうが。
未だに第一柱が不在のままなのが納得できないが・・・・・。」
「それは・・・・。
ツヴァイを蛇に戻すのを諦めてはないんじゃないの?」
「それはないだろう。
何せ、
「そう・・・・・。
「ああ。それだけはな。
すまない、姉さん。
あの人が表舞台に出てくるまでは黙っているさ。
蛇時代に、世話になった恩だよ。」
「分かったわ。
それじゃあ、遊撃士の件についてはお願いするわよ。
気をつけて行ってらっしゃい。」
「ああ、ありがとう。
行ってきます。」
俺は姉さんとの通話を切り、遊撃士の伝手へと連絡した。
〈ツヴァイ Side out〉
〈シェラザード Side〉
私は今想い人から連絡を受けていた。
「おう、久しぶりだな。
今時間大丈夫か?」
「あらー。どちらさんかしら?
全く連絡を寄越さない朴念仁は知らないんですけど。」
本当久しぶりよね。リベールの異変以降全く連絡してこないし……
「悪かったよ。今まで色々とゴタゴタしていたんだ。
これからは定期的に連絡するようにするよ。
元気だったか、シェラザード?」
「今度、私に付き合いなさい。
それで許してあげるわ♪
ええ、元気よ。
エステル達も含めてね。
あの姉弟は仲良くしてるわよ。
まあ、エステルの方は、貴方にすごく会いたいみたいだけどね。
ヒーローさん?
まあ、私を救ってくれたヒーローでもあるけど....。
それで、どうしたの?」
「分かったよ。
そうか。
それなら良かったよ。
ヒーローって柄じゃないよ。
どちらかと言えば、悪役が似合うさ。
シェラ、その後何か言ったか?
小さすぎて聞こえなかったんだが。
頼みごとがあるんだが良いか?」
「小声で言ったことは気にしないで。
頼みごと?
内容によるわね。」
「ああ、実は。蛇が近々動き出す可能性が高いんだ。
動き出す可能性が予測される場所は、
帝国・クロスベル・共和国だ。
帝国・共和国は、俺達の戦力で対処する予定なんだが、クロスベルだけは、ある事情で騎士団が介入できないんだよ。
それで、遊撃士の方に協力を頼めないかなと思ってな。
」
「なっ?! 蛇が動き出すってホントなの?」
「間違いなくな。リベールの件は、はっきり言って前座だ。次の計画が間違いなく動き始めている。」
「そう、分かったわ。
クロスベルに私達の誰かを送って動けば良いのよね?
私は今忙しくて、ここから離れられないし・・・・
それに近いうちに帝国に行かないといけないし。
エステル達に頼んでみるわ。
ちょうど帰ってきたみたいだし。
あの子達の声も聞こえるようにするわね。」
「ただいまー。疲れたよ、
あー、だらだらしたいよ!
ねぇ、シェラ姉って通信中?」
「ただいま、戻りました。エステル静かにしないと。ツヴァイ兄さんに聞かれたりしたら、大変だよ?」
「大丈夫だよ、ヨシュア! ツヴァイさんの前ではシャキッとしてるから!
嫌われたくないし。
こういうのは身内しかいない時しかしないから!
シェラ姉だって同じでしょ?
ツヴァイさんが関わるとすごく機嫌が良くなるし、やたら気合い入れて化粧とかしてるし。
どれだけツヴァイさんが好きなのよって感じよね~。
普段はお酒飲んでばかりでだらしないのに。」
あら~
エステルったら好き放題言ってくれるわね……
ちょっと説教が必要かしら?
「エステルだって一緒でしょ?
兄さんの前だと化粧直してるし、シェラさんに言ったことが全部返ってくるよ・・・・!?」
「なっ!? しょうがないでしょ!
そうでもしないと意識してもらえないんだから!
って、どうしたのヨシュア?」
「エステル、あれを見て!」
「もう、何なのよ。
ってシェラ姉?
顔真っ赤にしてプルプルしてどうしたの?」
うわー。これはキツいな。
通話本人にただ漏れすぎて恥ずかしいんだけど!
しかも私の気持ち間違いなくツヴァイに聞かれたわ!
ってそれよりもエステルがこれ以上暴走しないように止めないと。
「ヨシュア。悪いんだけど、通話変わってもらえるかしら?
私は、エステルと話があるからよろしくね。
エステル、あっちの部屋でお話しようか。」
「あれ、シェラ姉? どうしたの?
何か怖いよ? ちょっと、ヨシュア!
助けてよ! いやぁぁぁぁ!」
私はヨシュアに彼との通話を頼み、笑顔でエステルを隣の部屋へと引き摺っていき、ドアを開けた状態でヨシュアと彼の会話に耳を傾けながら、エステルに説教した。
「エステル・・・・・。
すみません、変わりました。
こちら遊撃士協会です。」
「相変わらず賑やかだな。
それと久しぶりだな、ヨシュア。
元気にしてるか?」
「ツヴァイ兄さん!? 久しぶりだね。
さっきの会話聞こえてたのか?」
「ああ。エステル達が帰ってきた瞬間スピーカーモードにしてたからな。
聞こえてたよ。
シェラとエステルから思われるなんて、嬉しい限りだよ。
俺みたいな闇で生きていた奴をな・・・・。」
「そっか.....。
それは僕も一緒だよ。
今は何をしてるんだい?
騎士団の任務?」
「いや、オリビエからの依頼で学生してるよ。」
「え? ホントかい?
学生って?」
「まあ、色々と楽しんでるよ。若い連中と色々とつるめるし、この歳になっても勉強できるとこがあるから新鮮だな。」
「それなら良かったよ。
何か依頼があったんだよね?」
「ああって、そろそろ時間だ。悪いが詳しいことはシェラから聞いてくれ!
休みが取れたら、またそっちに顔出すようにする!
エステルとシェラにもよろしく言っておいてくれ!
それじゃあ、またな!」
「う、うん。またね。
ってもう切れたよ。
相変わらず忙しないな、兄さん。」
「ヨシュア! ツヴァイの奴エステルが言ってたことについて、何か言ってた?!」
「ははは。全部聞こえてたって。その気持ちは嬉しいって言ってたよ。」
「そ、そう! もう、素でそんなことをさらりと言うんだから。
エステル~?
こっちに来なさい。話があるから。」
「もう、シェラ姉ひどいよ~!
ツヴァイさんと連絡している途中なら早く言ってくれれば良かったのに!
恥ずかしいこと話しちゃったじゃない!
ヨシュアもあの人と話してズルい!
今度は私も絶対に話すんだから!」
「ははは。エステルにもよろしくって言ってたよ。
それで、兄さんに何を依頼されたんですか?」
「そうね。
ツヴァイから、蛇が本腰を入れて近々動き出すと言われたわ。
場所は、帝国・クロスベル・共和国らしいわ。
それで帝国と共和国は騎士団が既に介入して対処できるようにしているらしいわ。
ただ、クロスベルだけが介入できないらしくて私達遊撃士の力を借りられないか?っていう内容だったわ。
それでなんだけど、
エステルとヨシュアは、これからクロスベル支部に出張って形で行ってもらうわ。
蛇が動き出したら対処して欲しいの。
お願いできるかしら?」
「分かったよ、シェラ姉!
ツヴァイさんからの依頼なら俄然やる気になるぞー!」
「分かりました。蛇とは因縁もありますし、おそらく兄さんを戻すのをまだ諦めて無いんだと思います。
ツヴァイ兄さんは、面倒見が良くて、レーヴェ兄さん以上に組織で人気者でしたから。
いつからクロスベル支部に行けばいいんですか?」
「手続きが終わり次第行ってもらうわ。
それじゃあ、お願いね二人とも。」
「はい!」
二人が返事したのを見て、私は依頼してきた大好きな人が、また無茶をするのではないかと心配するのだった。
〈シェラザード Side out〉