列車に揺らされること約一時間、俺達は無事にケルディックの町に到着していた。
「ようやく、着いたな。
ケルディックの町には初めて来たな。」
「ここがケルディックかぁ。」
「のんびりとした雰囲気だけど、結構人通りが多いんだな。」
ケルディックは農作物全般からバリアハート特産の宝石や毛皮、さらには大陸各国からの輸入品まで様々なものがある《大市》が有名な街なそうだ。
また、昔から大穀倉地帯としても知られている。
街の中には風車も見られてのどかな感じだが、大市もあるせいかその人通りは想像以上に多い。
俺たちがケルディックについて様々な感想を漏らす中、サラ教官は得意げに口調で俺たちに語る。
「ちなみに特産品はライ麦を使った地ビールよ。アンタたちは学生だからまだ飲んじゃダメだけどね♪」
本来ならいるはずのないサラ教官は補足説明があるとのことで、俺たちA班に付いてきていた。
ちなみにB班の方に行かなかったのは、あっちの方がメンドクサそうだからという理由らしい。
向こうでトラブルが発生したら、フォローに向かうらしいが・・・・ 。
「それじゃあ、今日泊まる宿に案内するわね。
まあ、すぐそこなんだけどね。」
先に歩いていったサラ教官をみんなで追い、数分で宿屋に着いた。
宿の中に入ると、酒場のような箇所があった。
この宿は酒場も一緒に経営しているみたいだな。
酒場のカウンター近くにいた中年の女性にサラ教官は慣れた様子で話しかけた。
女性の方もサラちゃんと呼んでるみたいで、2人は知り合いのようだ。
その女性は、マゴットさんという名前でここの女将だそうだ。
俺たちもマゴットさんに軽く自己紹介をした後、本日泊まる予定の部屋に案内された。
案内された部屋はなかなかの広さで、一泊するにしては充分すぎるものだった。
しかし、問題が1つあった。
「ま、まさか男子と女子で同じ部屋ってことですか!?」
部屋を見たアリサが驚きの声をあげる。
部屋には、俺たち人数分のベッドがある。
アリサの言うとおり男女同じ部屋で寝泊まりすることになるみたいだ。
部屋での通信出来ないじゃないか・・・・
学生だから贅沢は言ってられないが。
仕方ないか。緊急の時のみ外に出て連絡しよう。
マゴットさんに話を聞くと、部屋を同じにするようサラ教官から言われたらしく、悩みはしたもののサラ教官の言う通りにしたそうだ。
どうしようか悩んでいると、ラウラがアリサに話しかける。
「アリサ、ここは我慢すべきだろう。そなたも士官学院の生徒。それを忘れているのではないか?」
「そ、それは……。」
「そもそも軍は男女区別なく寝食を共にする世界。ならば部屋を同じくするくらいいずれ慣れる必要もあろう。」
ラウラの言っていることはもっともだった。今は士官学院の生徒だ。
彼女の言う通り、これが軍ならば当たり前のことだな。
アリサもラウラの話に反論もできず、なんとか納得したみたいだ。。
「ううっ……。分かった、分かりました!」
納得したアリサは俺達に視線を向けながら注意する。
「――あなた達、不埒な真似は許さないわよ?
そういうのは、お互いに好きあってなんだからね!?
ツヴァイは特に理解した!?」
アリサは顔を赤くし俺を見ながら言った。
「何で俺だけ名指しなんだ?
流石にそこまでするアホじゃないぞ!
そんなのしたら完全にお縄じゃねーか!
それ以前にサラ教官にバレたら、俺が間違いなく殺されるぞ・・・・。」
「あはは、しないってば。
ツヴァイの場合、リアリティがあるね。」
「したらしたで、あとが怖いしな。」
俺とエリオットとリィンはそう答えた。
俺たちの返答を聞いたアリサは寝るときに簀巻きにすれば安心できるなどと物騒な発言をしていたが、止められた。
マゴットさんから、特別実習の課題を受け取った。俺たちは早速その中身を確認すると、何やら街の人たちからの依頼が書かれていた。
薬の材料調達や魔獣退治などその種類は様々で、一日の終わりにはレポートも書かないといけないみたいだ。
これって遊撃士の依頼みたいだな。
なるほど、そういうことか。
帝国に無い新たな風が狙いね。
全く面白いことを考える御方だ。
俺は内容の意図に気づき、リィンも何かに気づいた様子だった。
俺達はサラ教官に特別実習について改めて聞こうとしたのだが.....
「んくっ、んくっ、んくっ……ぷっっはあああああッ!!この一杯のために生きてるわねぇ!」
案の定、サラ教官は昼間からビールを満喫していた。顔も少し赤くなりほろ酔い気分になっている。
呆れた様子で見ていたらサラ教官は気づき、
「あら君たち、まだいたの?あたしはここで楽しんでるから、遠慮なく出かけちゃっていいわよ?」
「も、もう!勝手に纏めないでください!何なんですか『特別実習』の内容って!?」
「思っていたよりもハードじゃなかったのは安心したんですけど....」
サラ教官にアリサとエリオットが特別実習について聞く。すると、サラ教官は少し考えて俺たちにアドバイスをする。
「とりあえず、必須のもの以外はやらなくていいわよ?
全部君たちに任せるからあとは好きにするといいわ♪」
はぐらかしたような返答にアリサがサラ教官に聞き出そうとするが、リィンがそれを止めた。どうやら彼はサラ教官の発言で気づいたみたいだな。
リィンと俺の様子を見たサラ教官は真面目な表情に戻り、付け加えた。
「実習期間は2日間。それまでの間、自分たちがどんな風に時間を過ごすのかせいぜい話し合ってみることね。」
俺達は宿から出ていった。
俺が最後に宿を出るさいにサラ教官から
「ツヴァイ、あの子達で対処できないことが出てきたらサポートしてあげて。」
「分かりました。それに、命の危険が及ばないように絶対に守りますよ。」
「貴方も無茶したらダメよ。
それじゃあ、頑張ってきなさい。
行ってらっしゃい。」
「行ってきます!」
俺は宿から出て、リィン達と合流した。
「ねえ、いったいどういうことなの?」
「どうやら何かに気づいているみたいだけど……」
「ああ、それは……」
ピンときていない様子のアリサとエリオットの質問にリィンが答えようとすると、ラウラがリィンに話しかける。
「先日の自由行動日。そなたがどう過ごしたのかと関係があるといった所か?」
「そうだろうな。俺も手伝いで同じことしてたし間違いないだろう。」
俺はラウラの質問に答え、リィンも答えた。
「ご明察。ちょうどあの日も、今回みたいに生徒会からの依頼を回されていたんだ。」
予想通りリィンがやっていた生
つまり、サラ教官が言いたいのは自分たちで判断して行動し、その身をもってこのケルディックについて理解を深めてみろということだろう。
全員が趣旨を理解したところでリィンは俺たちに改めて提案する。
「サラ教官の思惑はともかく……まずは周辺を回りながら依頼をこなしてみないか?」
「ふん、面白いじゃない」
「うん、賛成だよ」
「うむ、まずは動くしかあるまい」
「うっし、そうと決まればさっさと依頼を片付けちまおうぜ!」
全員の意見が揃い、俺たちは『特別実習』の一日目を開始した。