次の章は、オリジナル展開でいく予定ですのでよろしくお願いします。
俺達は、オットーさんの家で話を聞いていた。
「大市の出店場所を決める許可証を発行しておるのは先程も言ったとおり公爵家なのじゃが、些か問題が起こっておっての。」
「問題ですか?」
リィンは尋ね、オットーさんは頷いた。
他のメンバーたちも真剣に耳を傾けていた。
「最近になってクロイツェン州を収めるアルバレア公爵家が大幅な売上税の引き上げを敢行し、前年度に比べて収める税の割合が格段に跳ね上がってしまったのじゃ。」
儲けの割合が少なくなるとなれば、当然商人は手段を選べなくなってくる。そういった雰囲気が蔓延して、先程のような騒動が間々起きるようになってくるな。
商売人も生活がかかっているから当たり前か。
公爵家は一体なにを考えている?
オットーさんも元締めとしてただその状況を黙して見ていたわけではなかった。
「頻繁にバリアハートのアルバレア公爵家まで赴いて何度も陳情を行っているのじゃが、いつも門前払いをくらっておる。
陳情を始めてからちょうど2ヶ月ぐらいじゃな。」
土地を収める大貴族にしては冷遇に過ぎる対応だな....
「そうですか....」
いや、待てよ?
今までの話を整理してみよう!
何故公爵家が陳情に取り合おうともしないのか。
何故証明書の発行に際して致命的とも言える手違いを行ったのか。
俺は整理し直し考えると、謎が繋がった。
そうか! それなら辻褄が合う!
「オットーさん、今回のような騒動の取り締まりは、本来領邦軍の役割ではなかったですか?」
「その通りじゃ。近頃は、動く気配すら見せなくなってしまったがのう。」
そこまで聞いて、他のメンバーも気付いたような表情を見せた。
『領邦軍』とは、帝国政府が抱える正規軍とは違い、『四大名門』の四大貴族が有する私設軍の俗称だ。
領地内の治安を維持するという名目で各地に展開している常備軍は、ケルディックにも駐屯していた。
今回の件やここ2ヶ月の過去の騒動において領邦軍は一切動いていない。
これが意味することは
「領邦軍が動かなくなったのは増税に対する陳情を取り消すため。
それが行われない限り、公爵家はケルディックと大市に対しての『嫌がらせ』を続けるということになりますね。」
俺は思ったことを素直に言った。
「む......」
「ちょっと、ツヴァイ!?」
俺の物言いに対してエリオットが慌てる。
これが、ケルディックで起こっている騒動の真実だ。
そこまで落ちぶれたのか、四代貴族は?
オットーさんは、動揺せず讃嘆の意を込めた視線をツヴァイに向けながら
「ツヴァイ君、と言ったかな?
君は様々な価値観を持ち、その歳で色々な事を経験してきたようじゃのう。」
「そうですね。こう見えて様々な人物と関わりを持ち経験してきましたからね。知らず知らずの内に身についたんでしょうね。」
俺は暗い笑みを浮かべながら返した。
「ハハ、君は案外商人に向いているかもしれんな。僅かな情報からすぐさま推論と結論を導き出すと言うのは、商人にも必須な能力じゃからのう。
君の能力は充分適しておる。
将来商人になってみんかのぅ?」
自分たちとは違う場所で積み上げてきた経験が、今帝国最大の市場を取り仕切る人物と渡り合わせているという事を理解すると、他のメンバーの背がうすら寒くなった。
「いったいツヴァイは、どんな経験をしてきたの? あんな暗い笑顔なんて、私達の前ではしないじゃない。やっぱり、過去に何かあったのかしら....
私も彼を助けてあげよう! 何回も助けてもらってるんだし、今度は私の番よ!」
アリサはそう内心で決心していた。
「ツヴァイも俺と同じ闇を抱えているのか?
今度話してみよう。」
リィンも同様に決心していた。
オットーさんは、再びリィンたちへと視線を向ける。
「君たちが思い悩む必要などない。これはワシら『商人』の問題じゃ。君たちは気にせずに、『特別実習』に専念しなさい。」
その言葉が、対話の終わりの合図だった。紅茶を御馳走になったことを各々礼を述べてからオットーの自宅を出た。
外は、すっかり日が沈みかけていた。
「俺達は『学生』だ。この問題に関わるかどうかはよく考えるべきだろう。
自分達のできる範囲で協力すれば助けになるかもしれない。
しかし、反対に更なる問題が発生してオットーさんに迷惑かけることになる可能性もある。
その点も含めて各自よく考えた方が良さそうだ。」
俺は皆にそう言葉をかけると、頷いていた。
そうしていると、突然現れたサラ教官が俺達に話しかけてきた。
「色々あったみたいね。あんた達で、しっかり考えて行動しなさい。私は、ちょっとB班の状況が思ったより良くないからそっちへ向かうわね。頑張りなさい。」
駅へと向かう途中で、彼女は俺の耳元に顔を寄せた。
「あの子たちの事、頼んだわよ。
生徒達で対処できないことがあったら、貴方で対処してあげて。それと、貴方も無茶だけはしないようにして。」
「分かりました。臨機応変に対処して何かあったらサポートしますよ。彼らの安全と俺の安全を第一に考えて行動します。教官も気をつけて。」
リィンたちに聞こえない小声でそんな会話が交わされた後、何事もなかったかのように駅へとサラ教官は向かっていった。
すると、アリサがジト目で俺の方を見ていた。
「教官とあんなに近くで何話してたの?」
「ちょっとな。俺らも無茶しないようにだとさ。とりあえず、腹も減ったし宿屋に戻って飯にしようぜ。」
俺はアリサの頭を軽くポンポンし、宿屋に向かっていった。
「な! ちょっと、ツヴァイ!」
「リィン達も帰ろうぜ。」
みんなに呼び掛け、宿屋に戻り夕飯を食べるのだった。