「なっ...なんですの⁈ 」
そう驚くはずだ。さっきまでそこまで危険そうというかヤクザのような雰囲気を出していなかった好青年が怒りを露わにしたのだ。ーー露わにしたというよりも爆発したに近い。ーーその風格はまさに歴戦の戦士を思わせるかのような佇まいで威圧していた。
「何が日本は猿の国だーーその猿の国が無かったらこの場所は存在しないだろ? 何が男性は女性に従っていればいいだ‼ じゃあこのISを作成するのに男性の手を借りていないのか?ーー違うだろ? 寧ろ作成することに関しては男性の方が断然多いはずだ‼ そう言ったことを考えて発言してくれ‼ 」
クラスメイトはガヤガヤと騒ぎ、その中には狩野シャルルを罵り、馬鹿にし、呆れ、憎悪し、怒る者もいる。ーーそれもそのはずだ。さっき狩野シャルルが言ったとおり、この世界は「IS」という「暴力」によって無理やり「女尊男卑」に落とし込められその中で生まれた感情はそういったものもあるだろう。
「さっきから御託を並べてーー言い訳にもほどがありますわ‼ 」
「何が言い訳だ? 自分はーー僕は「男性」という視点で発言させてもらったが正しいはずだ。じゃあIS開発者の「篠ノ之束」は何人だ? ーー答えてみろセシリア・オルコット‼ 」
そういうとセシリアは歯切りをたてる。ギリっと音がし顔が少し歪んでしまっている。
「そこまでにしておけ狩野、オルコット。さっさとISで戦うか何かをして決着でもつけろーーついでに織斑もだ‼ 」
そういった織斑先生の一喝により、クラスは静まる。一夏は凹み、「何で俺まで......とばっちりじゃねーか」と漏らしているのを織斑先生にばれ、必殺の出席簿で殴られる。ーー済まないな巻き込んでしまって......
そして一夏は挑発のつもりなのか「で、ハンデはどれくらい付ける? 」と質問する。ーーなんて珍質問だ。予想通りというかクラスメイトはクスクスと笑い、「ちょっと織斑くん、それ本気?や「男が女より強いなんて、ISが出来る前の話だよ?」とか「もしも男と女が戦争したら、三日持つことはないって言われてるのに」といった具合に批評の嵐だ。ーー最後の言葉には納得がいかない。たとえトップクラスの戦闘能力を持つISでも一斉射撃を受けたら幾ら何でも無事では済まない。そういった考えはないのであろうか?ーー無いのだろう。ーーここで反論してやってもいいかもしれないーー久しぶりの空戦が味わえるのだから。
「自分はーー僕はそんな高飛車な人には負けないよーー空戦に関してはそっちよりも五万と積んでいるからね」
「空戦ーーさしづめ飛行機での何かでしょうがISとは根本的にちがいますのよ?ーー稼働時間でいえばわたくしのほうが上ですわ‼ 」
「飛行機だろうがISだろうが僕にとって空で戦うことには変わりはないよ? ーー僕はある人に誓ったんだ。もう空戦では負けられない。負けないってーーだから負けない‼ 」
その自信に満ち溢れた姿はまさに凛々しく、圧倒的な存在感を放っている。一瞬だがセシリア・オルコットは怯えてしまったが直ぐにその怯えは消え去った。
「お前ら...盛り上がるのはいいが決戦は再来週後だ。それまでに万全にしておけ」
そうしてホームルームは終了した。厄介ごとが増えたかのように織斑先生はため息を吐き、肩を竦めていた。もはや空戦までの序曲は始まり、再来週後には夜想曲が始まる。空戦という踊りで狩野シャルルは負けるという概念が存在しないと思っているかのような状態だ。飛行機だけでもあの無謀とも言えた「海猫作戦」を成功させ、その後も名前を変えたーー変えさせられたが、神聖レヴァーム皇国のエースパイロットとしてあの話したこともない狩野シャルルの親友に対しての敗北を除いて負けたことがないのだ。ーーつまりは狩野シャルルには圧倒的な年月、圧倒的な技術力での空戦というセシリア・オルコットから見ればとても、とても小さなアドバンテージだが、狩野シャルルにとっては最高のアドバンテージなのだ。空戦において負けるという単語は狩野シャルルの頭の中の辞書には存在しないーーただ、勝利という言葉が狩野シャルルの頭の中の辞書には存在するのだ。あそこまで見栄を張ったからには負けるわけには行かない。そうして狩野シャルルはまず始めに出切る程度の情報収集を始めた。無論調べる内容はセシリア・オルコットの専用機であるISの情報やISにおいて役立つ豆知識などを調べ始めた。