もうあれから幾年経ったからも分からない。髪の色は既に白くなっており皮膚もかなりの年月を経ったかを表すかのように皺くちゃになっている。自分の人生は飛空士になったときから始まりーーそして、今、飛空士として人生を終えようとしている。高度は現在二千m、一言も会話をしたことがない親友から目印をつけろといわれたウミネコの印は皮膚と同じようにあれからどれだけの年月が経ったかを自分に教えるかのように落ちかけている。
目の前には数十年前に発見された次元の壁があった。どうやら自由に飛んでいたらここまできていたらしい。まぁ元々の演習場が次元の壁に近かったからだろうが。
この飛行機は今の時代の主流のジェットではなくプロペラだ。長年乗ってきたこの機体は時代の流れに流されメンテは行っていたもののあまり最近しようしていなかった。
プスン、プスンと飛行機が音を立てている。明らかになってはいけない音だということが分かる。長年乗ってきた機体なのだからもう寿命なのかもしれない。自分も身体が大分悪くなってきた。昔と違って自分の得意技であったイスマエルターンに耐えることが出来ない。ーーそれくらい年月が経ってしまっているのだ。
機体と身体が同時に途端にいうことを聞かなくなる。視界はぼやけ、息も出来なくなってくる。ついこの間、ファナが亡くなり大騒ぎだったことを自分は知っている。それもそうだ自分みたいな一飛空士と違って神聖レヴァーム皇国を治めていたのだから規模が違う。自分の死を悲しんでくれるのはもういない。ーーだから安心して死ねる。ーーだが心残りは一つだけあった。一度だけでいいからちゃんとしたところでファナと話したかった。もう狩乃シャルルという人物は存在しない、存在してはならないのだ。ーーついこの間「とある飛空士への追憶」という本が出たを本屋で見たことがある。あの事件を誰が漏らしたのかと思ったが最後の顛末はこう答えるべきであろう。
「狩乃シャルルはその任務の遂行後に消滅し永遠に、どんなことがあろうとも狩乃シャルルとしてファナ・レヴァームとは会うことはないーーいや出来ない」と。
ーーーーーーファナ
そうして海猫ーー元の名前は狩乃シャルルは次元の壁へと突入した。段々と身体が機体と共に崩れ、廃れ、消えていくことが海猫には分かった。やはりこの人物は飛行して始まった人生を飛行で終えるのだ。そうして海猫の人生はこの世界で幕を閉じた。
時は過ぎーー別の世界、IS学園、海辺。バーから帰ってきた私たちーー織斑千冬と山田真耶は酔いを冷ますために歩いていたら一人の青年が海岸で倒れているのを発見した。年は二十歳を過ぎたくらいに見え、軍服の様な物を着ていた。一通りの国の軍服を見たことはあるがこの青年の軍服は見たことがなかった。ーーもしかしたらあの企業に関わりがあるのかもしれないと思い、軍服のポケットなどを漁った。中からは英語に近い文字で書かれた一つの飛空士認定状が書かれていた。
この青年の名前は英語で読むなら海猫というらしく、どう考えても偽名に見えてしまう。階級は大尉と高く、どれだけこの青年が実力者かがある程度伺える。そして所属の国はーー
「神聖レヴァーム皇国か......聞いたことが無いな......」
「私もです。これだけ立派な軍服だとすると相当規模が大きい国だということが想定できますけど」
「だが私たちは神聖レヴァーム皇国というワードを聞いたことが無い。そのことに着いてはこの青年に聞くしかないがな」
「とりあえずこの青年を保健室に運ぶしかないですね」
「私が持っていくとしよう。ーーむ? なんだこのゴーグルは? 」
千冬はポケットに入っていたこの青年にはサイズがあっていないゴーグルを見つけた。大きさでいえば腕に巻きつけるのにちょうどいい大きさだろう。
それも持っていきこの青年を保健室に運びだした。
ーーーー次元を超えて恋と空戦の物語が再び飛翔する。