とある飛空士への哀唄   作:メザシ

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第三話

「狩乃シャルルか、日本人とフランス人のハーフの名前っぽいな。ーーそして海猫ーー何処かのコードネームか」

 

スーツの女性はそういうが自分には「日本」や「フランス」は何処かの国の名前ということぐらいしかわからなかった。ーーもしかしたらこの世界における天ツ上と神聖レヴァーム皇国なのかもしれない。

 

「はぁ......で、ここは何処なのでしょうか? 」

 

自分にはこの場所が何処で何をする場所か分からない。警備が厳しかったことから推測するに軍の何かか研究所の類だろう。

 

「ここはIS学園というのだが知らんか」

 

ISと言われてもイマイチピンとこなかった自分は首を横に振った。ISとは兵器かなにかなのかつまりここはそのISとやらを使うための訓練施設ではないのか。ーーならあんなに警備が厳しかったことがうなづける。

 

「そうか......「ISを知らない」、「神聖レヴァーム皇国」という見たことも聞いたこともない国の名前ーー何処かの秘密結社の名前かと思ったがどうやら本当にお前が住んでいた「神聖レヴァーム皇国」はお前が知っている限りでは存在していたようだな。並行世界というSF的な考えが一番有力なのだろうか? 」

 

自分もそう思う。あの次元の壁は向こうの世界のはじとはじを結ぶものだけではなく、向こうの世界とこちらの世界を結ぶものでさえあったということが考えられる。つまりこの世界には「狩野シャルル」とう同姓同名性別姿が一緒でもこの世界における「狩野シャルル」であった自分である「海猫」の称号を手にした「飛空士」である「狩野シャルル」ではないのだ。ーーつまりはこの世界でファナを探してもそれは自分が恋した王妃ーー「ファナ=レヴァーム」ではないのだ。

 

「どうやらお前もこのSFチックな考えに至ったのか? 」

 

自分はその答えに首を縦に振る。それくらいしか僕が若返ったことやここにいることの理由が分からないからだ。

 

「それと......ISというのはなんなのでしょうか? これだけ警備が厳しかったことから一応推測ですが兵器かなにかの訓練所か製造所じゃないかと推測します」

 

「ほう......随分と感というか目というかとても高いみたいだな。「世間」ではスポーツ用と言われているが私ーーIS発足時から見ていた私からすれば兵器以外の何物でもないと思うぞ」

 

そうしてこの女性はISについて語り出した。ーー一人の天災の女性によって自由だった空までもが身分によって決められる世界になった発端の物語をーー

 

ISーー正式名称「インフィニット・ストラトス」。宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ。開発当初は注目されなかったが、どっかの誰かさんが引き起こした「白騎士事件」によって従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能が世界中に知れ渡ることとなり、宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして軍事転用が始まり、各国の抑止力の要がISに移っていった。つまりはあれだ。戦車、戦艦ーーそして飛行機が戦力から離脱しこのISが主軸になったということだ。ちなみに「白騎士事件」とは某ISがミサイルを五千発を綺麗に片付けるという異例の強さを発揮した事件のことらしい。

 

ISには謎が多く、全容は明らかにされていない。特に心臓部であるコアの情報は自己進化の設定以外は一切開示されておらず、完全なブラックボックスとなっている。まぁ要するに特許というよりも完全機密ーー軍がよく作る軍事機密に近いものだろう。原因は不明であるがISは女性にしか動かせず、それが原因でこの世界は女尊男卑の世の中になってしまった。ーーそうつまりは海の上で飛ぶことも陸の上で飛ぶことも雲の上で飛ぶことも全てはーーほとんどが女性の手の中にあるということだ。ほとんどというのは旅客機や自家ヘリなどのパイロットを除くということだ。ーーあぁなんて悲しいことだろう。あの身分制度が激しく、混血児というだけで死にそうになるまでになったあの世界でさえ空は身分も性別も関係なく飛べたというのにこの世界ではそれさえも許せないようだ。

 

コアを製造できるのは開発者である束ーー苗字は篠ノ之といいどうやらこの女性の幼馴染のようだ。その篠ノ之束のみであるが、ある時期を最後に束はコアの製造をやめたため、ISの絶対数が467機となり、専用機を持つ者は特別扱いされることが多い。ーーつまりはISの数は決まっており宝石よりも価値があるということだ。おそらくはISを一つ孤島に置くだけでそこは戦場の焼け野原になるであろう。

 

そこでこの女性の話は終わった。

 

「おいどうした狩野? 顔色が悪いぞーーそれと顔つきも強張っている」

 

どうやら自分はいつの間にかこの悲しき物語を悲しみ空が女性の手の中にあり自分ら男性は自由に空を飛ぶことができないという事実に怒りを持っていたようだ。

 

「いえ......空が自由でなくなったことに悲しくなってしまって......自分は飛空士だったもので.......」

 

「そうか......ISができた時にたくさんの男性軍人が退職したというーーお前もそれと同じ気持ちになったのだろう。ではそちらのことも聞きたい。少し名刺を見せてもらったがどうやら大尉とそうとうな実力があったようだな。一つくらい自慢話くらいあるだろう? それを話してもらいたい」

 

自分はその時二人の話が頭をよぎった。一つ目は話したこともない親友との戦いーーもう一つは、

 

「分かりました。この話は一時的というか誰かが世間に公開するまで軍事機密にもなったほどの作戦です。今からして思えば無茶苦茶な作戦だったのでしょう。ーーそれでは聞いてください「とある飛空士への追憶」 」

 

そうして自分はあの作戦ーー海猫作戦を語りだした。

 

恋と空戦の物語を青年が紡ぐ。なにひとつ忘れることのないあの充実した作戦の日々をーー

 

 

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