とある飛空士への哀唄   作:メザシ

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第四話

そうして自分はあの作戦を語りだした。何十年も前のことだったがまるで昨日のことーーいや目の前で映像を見ているかのように鮮明に思い出し、この女性にこの物語を語ることができた。もう一度でいいからファナに会いたいがそれはもう二度と叶うことはない。ーー何故ならもう彼女は死に自分は別の世界にいるのだから。次元の壁と生死の壁が二人の障害となりそのまま分け隔てなく壁が山脈ーー高さでいえばヒマラヤ山脈といえばいいのであろうか、それくらいの壁が二人の間を隔てている。この恋は一生ーー未来永劫過去現在叶うことはないのだ。

 

そんな追憶の物語を自分は語り終えた。もちろん一文、一語欠けずに伝えきった。ファナとの空での話、無人島での楽園で生活していたような話、話したこともない親友との空戦の話、最後のファナと自分の別離の話。その最後までを伝え切ったのだ。

 

ふと緑髪の女性をシャルルは見る。見ると泣いてしまっていることがシャルルにはわかった。ツーって頬から涙が垂れ、水滴が床へとポタポタと落ちる。ーーまるで雨が降ったあとの葉っぱから落ちる雫のように。どうやらこの恋と空戦の物語に涙を流してくれたようだ。それだけでもシャルルの気持ちは少しばかりか分かってくれたのだろう。

 

涙を流していることに今まで気づいていなかったのか緑髪の女性は慌ててポケットからハンカチを取り出し目の周りを拭った。流した涙はティッシュをとりだして拭き吹いたあとのティッシュをゴミ箱に投げ捨てた。ストンと音がしゴミ箱に入る。ティッシュは綺麗なフォームを見せながらもゴミ箱に入った。

 

「......みっともないところを見せてしまいましたね。随分と壮大でそして悲壮なお話ですね。こんな物語のようなノンフィクションがあるなんて夢にも思いませんでしたよ」

 

「この話はその誰かがこの作戦ーー「海猫作戦」を話したことがきったかけで本になったといっていたがその時どう思った」

 

「ええ、初めて見た時はそれはもう大変驚きましたよ。たまたま書店に顔をだした時にこの本が山積みされていて皆手にとってレジのところまでいくのは本当に驚きましたよ。最後の言葉についてはこう答えるしかないんですけどね。

狩乃シャルルはその任務の遂行後に消滅し永遠に、どんなことがあろうとも狩乃シャルルとしてファナ・レヴァームとは会うことはないーーいや出来ないって。自分はもうすでに「狩野シャルル」という名前ではなく「海猫」なのだから」

 

シャルルはスーツのほうの女性を見ると何か考え事をしていることがわかった。眉間にはシワがより目を細めてる。指を口元辺りに置きいかにもと言った感じだ。

 

「どうかしましたか? 」

 

シャルルが質問するとスーツのほうの女性ははっとしこちらに顔を向けてくる。

 

「ああ......少し考え事をしていてな。もしかしたらーーいやこれはお前がここに辿り着いたことの理由ーーつまりは必然だ。その可能性について考えていてな。狩野ーーこのゴーグルに見覚えはないか? 」

 

シャルルはゴーグルを見るとそれは大きさが自分というよりも人間には会わないようなサイズだということがわかる。つけるとしたらリストバンドのように腕に巻く感じだろう。ふと目を凝らすと海猫の刻印が幾つかされていることがシャルルには分かった。一体これはなんなのだろうか。次元の壁を突っ切った時にできた何かなのだろうか?

 

「いえ......見覚えはありません。一体なんなのでしょうか? 」

 

「こいつをお前が目を覚ます前に検査してきた。もしやと思ってな。ーーすると見事に予想が当たってしまったのだよ。このゴーグルはさっき言っていたISーーインフィニット・ストラトスだという反応がな」

 

シャルルは目をギョッとしゴーグルを見つめていた。ーーだがその顔はすぐに暗くなった。この世界の空が自由でなくなったのは何が原因で何が要因なのか。そうISの欠点はーー「女性にしか動かせないこと」だ。自分は男性だ。ーーつまり動かすことが出来ない。もう昔のように空をふわりふわりと海月のように飛ぶことは出来ないのだ。

 

「今、お前はこのISを使うことが出来ないと思ったな。私は可能性を言おう。ーーつい先日、ある馬鹿者が男性でありながらISを動かした。......まぁ私の弟なんだがな」

 

つまりはこの女性はこう言いたいのだ。一つの可能性が増えたのだから可能性が零に近いかもしれないーーいや近いな、低い確率の可能性にかけるということを。一人起動できたのだから二人目もいてもおかしくないということだ。

 

シャルル達三人は可能性にかけるためにISのアリーナに来た。深夜真っ只中なせいなのか音という音ーー匂いという匂いがしなかった。アリーナは闘技場のようになっていて観客席がアリーナを囲んでいる。ーーまるでコロッセオのようだ。

 

風がシャルルの身体を通過する。

ーーなんて心地いいんだとシャルルは思う。この風をもっと上でもっと上であの空で味わえたらもっといいだろうとシャルルは思った。

 

シャルルはスーツのほうの女性からゴーグルを手に置いた。するとゴーグルは光だし一つの形を作り始めた。シャルルには幾分もの情報の雪崩が頭の中にインストールされて行き目には情報の雨あられが見える。情報の雨あられが見えなくなると自分は白銀と青が混じったような鎧のようなものを纏っていた。背中には羽というより飛行機の翼のようなものが装着されており、目には様々な照準グラフィックが映った。

 

「やはり...か...そしてこのISの名はーー」

 

スーツのほうの女性がISの名を告げようとするとISに意思があるかのようにモニターを映し出した。そこにはこのISの名が刻まれていた。ーーその名前は

 

 

 

 

 

 

 

「海猫」

 

 

 

 

 

 

と。シャルルのコードネームというより現在の名前であり敵に恐れられる生きた伝説になったほどの二つ名が刻まれていた。ーーその時シャルルはまた空を飛べるという奇跡に感動しツーっと涙を流していた。

 

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