「全身装甲か......なかなかお目にかかれないタイプのISだな」
スーツのほうの女性はそう呟く。どうやらISは普通全身を装甲で覆うわけではないようだ。自分の身体からある感情が水流のように流れて来て止まらない。空を飛びたい、空を飛びたい、空を飛びたい、空を飛びたい、空を飛びたい、空を飛びたい、空を飛びたい、空を飛びたい、空を飛びたい、と頭にはその感情だけで埋め尽くされる。飛んでしまいたい、飛んでしまいたい、飛んでしまいたいと欲求のように流れ込んでくる。ーーまるで麻薬のようだ。きれてしまっては禁断症状が出てしまう。ーーその前に一刻もはやく空を飛ばなくてはと自分の欲求から自分の義務へと勝手に脳が変換する。それほど自分は空を飛ぶことに執着があったのだ。
自分は鳥になった気持ちでISを手探り感覚で動かす。初めて動かすためぎこちないがそのぎこちなさも何十年も間、飛行機に乗ってきた経験からなれていった。夜空を飛ぶのはとても気持ちがいい。夜戦は飛行機では大変ハードルの高いことだがISについているハイパーセンサーと呼ばれるもののおかげでそういったハードルは一気に下がっている。雲を突っ切ると周りには雲の絨毯、大きな満月、たくさん粒のように光っている星々、夜に吹く少し暖かな春風。その全てを自分は感じていた。
ふと自分の視界がゆがんでいることに気づく。どうやら涙をいつの間にか流していたようだ。久しぶりの全力の飛行ーーいや空中ダンスは自分にとっては生き甲斐だったものなのだから。ISにもほぼ慣れてきた。物理法則が違うせいか、若干まだ感覚が取り戻せない。おそらくはこの状態で発砲してもターゲットには当たらないであろう。飛行機とは勝手が違うがやはり空を飛ぶのは気持ちが良い。風と一体になるこの感覚は別の世界にいっても変わりはないようだ。ーー今の自分ならこの世界のはじからはじまで飛ぶことが出来ると自分は確信した。
そしてしばらく空中ダンスをしていると一人のメッセージがあることが分かる。ーー第一施行完了、単一能力を解放します。モードの一覧を見てくださいと書かれていた。空中ダンスをいったん止め、メニューを開きモードの一覧を見る。するとモードの一覧のところには一つの項目が増えていた。単一能力ーー「サンタ・クルス」と。自分の愛機であった「サンタ・クルス」の名を付けられたこの能力は一体なんなのだろうかと思いながらも自分は「サンタ・クルス」と叫んだ。すると後ろのスラスターが可変し、二つの翼に変化する。腕についていた合型レーザー銃「燕」が外れスラスター本体の方に接合した。何もついてない腕には照準を合わせる機会と合型レーザー銃のトリガーがセットされる。ISは縦ではなく横になりスラスターが上になるようになっておりその上には巨大なレーザー砲である「鷲」がセットされる。それと伴い「鷲」のトリガーも腕の近くにセットされる。そうして出来たのは飛行機により近くなった「海猫」だった。
身体が自然と軽いことに気づく。ーーまるで物理法則があっちの世界に戻ったかのようだ。このISの単一能力の名は「サンタ・クルス」能力の概要は「飛行モードの発動によるより高速の動きになるようになる」ということとーーそして、「操縦者に一番あった重力に周辺を変換する」という内容だった。これはまるで自分のために出来たようなISだと自分は思った。
試しにスーツのほうの女性に連絡をとりターゲットを置いてもらう。そして合型レーザー銃のほうのトリガーを手にとりターゲットに命中させていく。一発も外してたまるものか。自分が外していい相手はあの「話したこともない親友」ただ一人だ。ターゲットは二十あったがもうターゲットという存在は消えていた。どうやら全弾命中させることが出来たようだ。久しぶりの訓練にしては上出来だと自分は思った。
「にして凄いですね......彼、ISを動かしたにも関わらず初めてISに乗るはずなのにあんなトップクラスの動きが出来るなんて」
「流石はあっちの世界で自分でまるで約一名を除いては負ける気がしないーー世界最強だと豪語しているやつがこれくらいのことはやってのけるか......しかもIS適性は私の愚弟はCだというのにSときたか。ーーまるであいつは空に愛されているかのようにさえ感じるよ」
「この操縦者ーー狩野さんとそのISである「海猫」、どちらも他の国からしたら喉から手が出るほど欲しい人材と機体ですね」
「ああ......それとあいつをこれからどうするか考えなくてはな。まぁ......とりあえずIS学園に放り込むことは確定しているのだが二つの国がしゃしゃり出でこないといいがな。日本とフランスだがな」
そうしてスーツのほうの女性と緑髪の女性はため息をはきながらも、シャルルが空中ダンスをしているところに見惚れていた。