-UC:0093 地球軌道上 小惑星アクシズ-
『少佐!もういい!他のMSを引かせてくれ!』
通信がノーマルスーツの中に響く。
「アムロ大尉。これでも
目の前のモニターには地球へ今落下しようとしているアクシズの断片が大きく映る。
俺の乗っている機体「μガンダム」は出力を最大にしてブースターを吹かす。
『しかし…!』
うろたえた声が聞こえる。
『アムロ・レイ!私たちニュータイプは何のためにいる!人を存続させるためだ!それなら…地球を壊しちゃいけないんだ!。』
周りには俺と同じμガンダムを素体に開発した「先行試作量産型νガンダム」が2機。同じくアクシズを押している。
そのうちの1機に乗る「プル・ファイブ」の声。
『プル・ファイブ…。だからだ!君たちは生きなきゃいけない!オレとこのνガンダムなら!アクシズを押し返す!』
「アムロ!何を…アムロ!」
サイコフレームより生じられた緑の光。そのウェーブがνガンダム以外の機体をアクシズから引き離した。
《少佐…ブライトに伝えてくれ…。人はまだまだ絶望しちゃいけないって…。それと…6年間ありがとう。君たちとの日々…楽しかった…。》
「アムロ…!」
νガンダムは眩く…暖かい緑の光へ飲み込まれる。そして…緩やかにアクシズは軌道を逸らす…。
「アムロ!」「アムロ大尉!」「ホワイト!」「大尉!」
…それぞれの機体が、そしてパイロットが…英雄の名を叫ぶ…。
「アムロ…。」
俺が初めてアムロレイと出会ったのは…そうか。一年戦争。あのソロモンでの戦いか…。
-UC:0079 12/13 ソロモン外縁宙域 ファーレン特務戦隊 ザンジバル改級「アウスラ」ブリーフィングルーム-
「これが現在の連邦艦隊の布陣だ。」
艦長のブラード・ファーレン中佐が言う。
ザンジバル改級機動巡洋艦アウスラのブリーフィングルームは熱気に包まれていた。
何故かといえば、ファーレン戦隊に重要な任務が下されたからである。
「遊撃軍として連邦艦隊の奇襲、攪乱を行う。」
キシリア部隊から一時的にソロモン防衛軍へ下った俺たちに対しソロモン防衛軍の中でもトップクラスのカーレル・ビルシュタイン大佐からの直々の部隊編成命令であった。
これによってファーレン特務戦隊と同じく他複数の特務戦隊が生まれ、各所で漸減作戦のために行動している。
現在、ジオン公国の誇る宇宙要塞「ソロモン」攻略のため連邦の艦隊が集結している。
その中にはあの…青い巨星、黒い三連星等を葬り去った連邦の「木馬」の部隊がいるという。
しかし、その木馬艦隊は主力艦隊行動から外れ「サラミス級」と「マゼラン級」を引き連れ独立的な艦隊を組んでいるらしい。
俺たちの任務はその独立部隊に対する…威力偵察。といったほうが適切か。または捨て駒といったほうが適切か分からないが。
ともかく旗艦の「アウスラ」僚艦のムサイ級「カンル」「ゼールクト」の3隻では到底勝てるような相手ではないのは分かる。
「艦長。噂によれば敵は量産MSを投入してくるって話らしいが…。」
「どうしたシグ。怖いのか?なら私が慰めてやろう!」
隣に座っていた同僚のシグ・ウェドナー中尉が話をし、そしてセレイン・イクスペリ少尉がまるで恋人か妻のような発言をする。
「シグの言った噂は本当だ。地上や宇宙の一部では今まで少数の連邦製MSが確認されてきた。だが今度ばかりは違う。」
ピ、ピ、ピと画面に数枚の写真が映し出される。…そして当然のごとくセレイン中尉の発言は無視だ。
「これがジャブローでとられた写真だ。そしてこいつが603技術試験部隊が遭遇した敵MS部隊…。」
「…その603部隊の写真。もしかしてビーム兵器を?」
今まで黙っていたアイン・レヴィ曹長が口を開く。
「そうだ。威力的には白いやつ…ガンダムとかいうのよりは低いらしいが、ザクでは十分脅威だ。」
写真をさらに映す。その中にはザクキャノンのようにキャノン砲を付けたらしい写真もあった。
「本艦に下された任務は敵の攪乱と情報収集…つまり強行偵察だ。」
更に複数枚の写真が映し出される。こんどは各所の偵察衛星が確認した連邦艦隊の写真だった。
「作戦開始は先にも伝えたが二時間後の13:00である。では諸君幸運を祈る」
ザッとブリーフィングを受けた兵士たちは立ち上がる。
「敬礼!」
副長のマカベ・ホムラ少佐の声で一斉に敬礼をする。
「解散!…ジャス!ジャスターク・エーシス大尉。君だけは残れ。」
マカベ副長が俺の名を呼ぶ。
「ハッ?自分だけですか?」
「ああ。他は各所で待機してくれ。」
兵たちが艦の各地へ散らばる中、一人だけ残される。
「それで、マカベ少佐。自分に何か?」
「ああ。君には…新型機の受領命令が出ている。」
タブレット端末を操作し受領命令書をこちらに見せる。
「新型機…ですか。」
「ああ。なんでもビーム兵器を運用できるらしい。」
「ビーム兵器ですか…。」
「ああ。名前は確かゲルググとか言ったな。」
「あ、あのシャア大佐やジョニーライデン少佐の部隊に渡された機体ですか!?了解しました。ありがたく受領させていただきます。」
「ああ。戦果を期待する。輸送艦は30分後に接触の予定だ。格納庫にノーマルスーツを着て待機しておけ。」
「了解しました。では。」
トンと床をけり廊下へ移動する。無重力空間ではいやというほど味わえる動作だが、なんでも地上から帰還した兵にしては感動すら覚えるらしい。
「ゲルググタイプ…俺も随分高く見られたもんだな。」
そう言って俺は格納庫へと向かった。
-格納庫-
格納庫では30分後のランディングのため整備員や班員が休む暇もなく動いている。
さて、この「アウスラ」は通常のザンジバル級では格納の難しい機体を数機保有している。
その問題は後部に大型の格納庫を増設することで解決している。
さて、何を積んでいるかといえば…。
「整備班長!調子は?」
「おお!ジャスターク大尉!そうですね。リックドムⅡ用に懸架調節をやっていたスキウレですが…すでに98%まで完了しています。」
マキノ・モースライヒ整備班長。若干22歳ながら天才的な腕でこの艦の整備班長になった女性である。
まぁ、俺の歳も17だから若干も何も言えんが。
「新兵器…使えるか?」
「分かりませんね。もともとザク用らしいんですが…いやはやですが技術者冥利に尽きます。」
「ま、グラナダ特戦隊のおこぼれらしいが。」
「ギレン閣下指導の…たしかぺズン計画でしたか。」
「ああ。キシリア閣下の統合整備計画の対抗するもの…らしいが。それでできたザクタイプとドムタイプ、ゲルググタイプの新型をアバオアクーにいくつかやる代わりにもらったものらしい。」
「…ザビ家にもいろいろあるのですね。」
「政治の世界は俺達にはわからんさ。ただ命令に従うのみだ。」
「そうですね。そういえば数分後の接触で大尉のゲルググが来ます。」
「ああ。何のタイプが来るか知っているか?」
「いえ。自分はゲルググとしか聞いていません。…キマイラに配属された高機動性でしょうかね?」
「いや。わからんな。班長。来るまで俺は待機室にいる。それまで頼むよ。」
「分かりました。」
目まぐるしく人が動く。
MS格納庫内に設置された待機室ではドリンクとサンドイッチ等の軽食のヴェンダーがあった。
硬貨を入れ、スポーツドリンクとハンバーガーを買う。
「こんなところで一人寂しく食事とは。MS部隊長殿はよほどお暇なようで。」
藍色の髪が横に揺れる。こんなことを言うのは間違いなくアイツだった。
「セレイン中尉。俺は受領を待っているだけだ。決して…艦内に共に食事をする友人がいないというわけではない。」
「おやおやそれは驚きだ。まぁ、私にはシグがいるからそのお気持ちは良くわからないが…。」
「お前フラナガンで俺が声をかけなかったらずっとボッチだったじゃねぇか。」
ギクリ。彼女のめが泳ぐ。効果は抜群である。
「そ、そんな昔のことは覚えていないなぁ…。」
「お前にとっては三か月が昔になるんだな。」
「そ、そうだ。私は愛機の調整のために来たんだった。それではな。部隊長殿。」
逃げるときは素早く兎のように。その姿はセレイン中尉の愛機「ドム・バインニヒツ」のようだった。
彼女が出て数分後、今度は赤髪のパイロットが入ってきた。
「ジャス。ゲルググの搬入までもうすぐらしい。班長が呼んでたぞ。」
「ああ。シグ。ありがとう。」
これまた同僚のシグ・ウェドナー中尉である。
「あ、それとシグ。嫁さんの手綱はしっかり握っておいてくれ。」
「セラが又何か言ったのか?悪いがアイツの行動はオールドタイプの俺には読めん。自分で対処してくれ。」
「へいへい。」
そう言って俺は口の中にハンバーガーを詰め込み、スポーツドリンクで一気に喉へ押し込む。
部屋を出て、通路を抜ける。
「あ、大尉!」
整備班長が俺を呼ぶ。見るところすでに搬入作業は始まっているらしかった。
「俺のゲルググは?」
「あちらです。」
ノーマルスーツ内の通信設備を使い声をかけあう。
「…データで見たやつと違うな!」
「はい。なんでも統合整備計画のやつだとか。」
「すると…J型か?」
「ええ。それにご丁寧に大尉の好きなヴァイオレットカラーに塗装してあります。」
「乗ってみていいか?」
「ご自由に!」
小型のワイヤーガンで搬入されたばかりのゲルググに近づく。
コックピットを外部スイッチで開け、シートに座る。
「なんだこれ…モニターがないじゃないか。それに…なんだこの空間は…。」
コクピットシートと操作レバーが球状の何かに包まれているらしかった。
「起動ボタンは…ここか。」
ピと音がしその周りがすべて格納庫内の景色になる。
「なんだこれ…。班長!来てみろ。」
「なんです?」
班長も同じようにこちらに来る。
「うわぁ…なんですかこれ?」
「通常のモニターじゃなないな…おっとポップが出てきた。」
「何々、
「ああ。いずれにしても画期的な装備だ。」
「次世代の機体は全部これになるんでしょうね。」
「ああ。更新まで何年かかるか分らんが…確実にそうなるな。下方や裏の映像を別枠として表に出せば事実上死角がなくなる。」
システムをシャットダウンさせ、シートから離れる。
「こいつの武装は?」
「はい。ビームマシンガンとビームサーベル。それに機関砲です。」
「機関砲は腕のやつか?」
「はい。装填されていた弾薬はスポッター用ですね。」
「狙撃戦前提の機体か。」
「前提というよりは狙撃戦も主眼におけるといったところでしょうか。」
「オールラウンダーと、言うわけか。」
「はい。」
「すまんが弾薬は両腕とも鉄鋼焼夷炸裂弾に再装填しておいてくれ。」
「了解しました。」
これでMSは4機。シグのR-1-Aザク、セラのバインニヒツ、アインのリックドムⅡ、そして俺のゲルググJ。
正直ザンジバル改級に積むMS数にしては少なすぎるが艦隊の特性上アウスラはカンルとゼールクトのMS補修用部品や武器弾薬燃料等も積んでいる。
つまりはアウスラは補給艦は替わりでもあるということである。それにスキウレ砲や各種兵装も搭載している。
数分後、艦内アラームが鳴った。
『カンルのザクフリッパーより入電。敵前方200キロ。MS隊は発進準備を急げ。以上』
それを聞いた途端パイロットたちはすぐに体が動く。
次なる行動は格納庫内になる少し小さいモニターでブリーフィングを行うとわかっているのだ。
既にアイン・レヴィ曹長がタブレット端末を操作し情報を他艦から得ていた。
「隊長。遅いですよ。」
「すまん。そのタブレットを貸してくれ。」
受け取った端末の情報をまとめモニターへ映す。
その間にシグもセラも到着していた。
「最終ブリーフィングだ。この図を見ろ。」
モニターに移されたのは周辺地図にこちら側の三隻と敵艦四隻のアイコンが示される。
「本艦から200キロ地点に敵艦四隻をカンル所属のザクフリッパーが確認した。敵編成は木馬級1隻。サラミス級二隻、マゼラン級1隻である。」
ザクフリッパーから送信された写真、映像と共に敵艦のアイコンにそれぞれのクラス名が記される。
「目標は敵艦隊の制圧である。決して殲滅ではない。サラミス級の二隻は潰しても良いが、マゼラン級もしくは木馬級はできるだけ投降させろ。」
「なぜ全滅じゃいけないんだ?」
セラ(セレイン中尉の愛称である)が聞いてくる。
「いいか。まだ敵主力艦隊はこいつらの遥か後方にいる。するとこいつらの任務は偵察と何か攻略用の巨大メガ粒子砲のようなものを運用する地点の観測。そう考えることが出来る。」
「あくまで情報をいただくと?」
「ああ。もしマゼランと木馬両方の降伏ができ無い場合のバックアップとして彼を呼んだ。すまんが来てくれ。」
設置してある艦内通話で先ほどの情報整理の時に待機室へ移動してもらった人物を呼び出す。
「ロール・ゼーレマン曹長です。」
連邦姿のノーマルスーツに完全装備した男が一人。やってくる。
「彼は青い巨星、つまりランバラル大尉の下でゲリラ戦並びに特殊戦を学んだスペシャリストだ。」
「先ほどのパゾクより乗艦しました。ファーレン中佐にはお話してあります。ぜひ私をお使いください。」
「するとなんだ。俺たちが戦闘している間に彼を送り込むと?」
シグ中尉が聞いてくる。
「ああ。敵のマゼラン級に潜入してもらう。出来れば木馬は投降させたい。彼が戻ってきたら遠慮なく俺たちはマゼランを沈められるって訳だ。」
「よろしくお願いします。」
ゼーレマン曹長は会釈をする。
「マゼラン級の近くまでは俺が届ける。そこからは曹長。頼みます。」
「了解しました。お任せください。」
「よし、全員MSへ搭乗。命令あり次第順次発艦。以上解散!」
敬礼をし、各々は自らのMSへ乗り込む。
そしてカンルへザクフリッパーが収容されたと同時に発艦命令が下った。
シグのR-1Aザクを先頭に続々とカタパルトへ並んでいく。
「…噂には聞いていましたがこれが新型モニターですか。」
後ろで立っているゼーレマン曹長が言った。
「知っているんですか?」
「ええ。連邦のガンダムタイプにも同様のものが配備されていました。」
「ガンダムタイプ?」
「そうです。…ルビコン計画とサンクス・ギヴィング作戦はご存知で?」
「勿論。このファーレン戦隊は核攻撃を行おうとするキリング艦隊の阻止とコロニー内に残されたサイクロプス隊を救出する任務を受けていました。」
これは十五日前の事だ。核攻撃という蛮行を同じ突撃機動軍のシャア・アズナブル大佐、海兵隊のシーマ・ガラハウ中佐の艦隊と共に阻止任務に就いた。
ガンダムへ決死攻撃を行おうとするパイロット…確か名前はバーナード・ワイズマン伍長といったか。彼の救出を行ったのも記憶に新しい。
ちなみにその時の戦闘で俺は乗機のリックドムⅡの右足と左腕部を失いそのままソロモンで機体を明け渡した。
「作戦に参加されたのですか。それは失礼。私はサイクロプスに新型ガンダムの図面を提供する任務に就いていました。」
「スパイを?」
「ええ。連邦軍内に潜入し、新型のガンダムNT-1の設計図ならびに各種機密データの奪取が任務でした。」
「じゃあ、この全天周囲モニターは連邦の技術を?」
「もともと統合整備計画の一環でこの全天周囲モニターはわが軍でも開発されていました。しかし試作段階からこれほどまで短期間で仕上げられたのは私の渡したデータのおかげだと思っています。」
そう話しているとアインのスキウレ装備のリックドムⅡが発艦した。
『ジャスターク機。カタパルト接続。発進どうぞ。』
オペレーターの声がノーマルスーツ内に響く。
「了解した。ジャスターク・エーシス。ゲルググ出るぞ!」
超電磁式カタパルトが80tはある18メートルの巨体を光が無数にきらめく宇宙へと押し出す。
ジャスタークは心地よさを感じた。最新式のシートと戦場へ向かう高揚である。
フラナガン機関出身の兵とはいえ彼はもともとパイロット志望であったのだ。
このモビルスーツの中で感じる高揚は彼の類まれないニュータイプ能力が余計にそう感じさせている。
宇宙の空気を味わっているのだ。それは到底オールドタイプには決してわからぬ物であった。
(戦闘はすぐ始まるな…)
ジャスタークはレバーを握りゲルググのブースターの出力を上げる。
それに答えるかのようにゲルググは恐ろしいスピードで加速する。
敵艦隊はもう、すぐそこであった…。
クワスと申します。
本作は私が再編、独自解釈を加えさらにオリジナル要素の入れたガンダムの二次創作になります。
機体や設定、展開はなるべく無理のない範囲にやっております。
例を挙げれば「宇宙世紀にGN粒子が存在する」というような転生チート系がなければ不可能な系統ではありません。
以上の点において受け入れていただけるのであれば、わたくしの駄文をお楽しみください。
意見、感想その他いろいろと受け付けています。沢山お送りください。