機動戦士ガンダムティボウキナ   作:クワス

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ソロモン前哨戦 UC:0079 12/13

全天周囲モニターから映し出される光景は今までのモビルスーツでは味わえないものである。

 

ゲルググの加速力は申し分ない。キマイラの高機動型やMS-06R-2以上であるといっても過言ではなかった。

 

事実、このゲルググJは前乗機のリックドムⅡと比べ二倍近い速度で加速している。

 

「アイン。スキウレ砲の射程ギリギリで狙撃を行え。目標は前方のサラミス二隻!シグとセラは付いてこれるな?」

 

『アイン・レヴィ了解。』

 

『このザクなら何とか付いて行けるさ。』

 

『以前まで私が切り込み役立ったが、凄いな。このバインニヒツを優に超える加速とは。』

 

小隊各員からの返信を受け取る。

 

「曹長。一気に距離を詰ます。マゼラン級に小隊奇襲をかけるのでその間に。」

 

「分かりました。情報はしっかりと抜き取ります。」

 

シグの乗るR-1Aザクは黒い三連星も搭乗した高機動タイプである。

 

カートリッジ式の推進剤パックを用い機動力と航続距離の向上を実現した。

 

武装はジャイアントバズにMMP-80マシンガン、シュツルム・ファウストそしてヒートホーク。

 

対してセラはドム・バインニヒツである。

 

地上用重MSのドムを対航宙艦攻撃機使用に変更したもので、脚部ユニットを大型ブースターに換装。

 

さらにラッチの増設とサブ・ジェネレーター装備のバックパックに換装することによってさらに攻撃力を上げている

 

武装はラケーテン・バズ、ビーム・バズーカ、シュツルム・ファウスト四本、ヒートサーベルである。

 

「シグ、セラ。前方に突出しているサラミスにはシュツルムファウストだけをくれてやれ。本命(マゼラン)のために弾薬は温存しておけよ。」

 

『ああ。艦橋に一発だけ喰らわせてやる。』

 

『言われなくとも分かってるさ!』

 

俺達の小隊の接近に呼応し敵艦からはミサイルとメガ粒子砲による攻撃が始まる。

 

「遅いッ!」

 

メガ粒子砲の光が真横を通過する。

 

MS-05、06Cならいざ知らずもはやその程度の砲撃は命中するはずがなかった。

 

敵艦隊はカーヴィング・フォークの形態をとり、最先方にサラミス二隻、中央に木馬級、最奥にマゼラン級が存在している。

 

俺たちの小隊がサラミス二隻の間を通過すると後方で派手な爆発が起きる。

 

シュツルム・ファウストがサラミスの艦橋を吹き飛ばしたのだ。

 

後方カメラの映像を正面に回すと無数の大小さまざまな光がこちらへ向かってきているのがわかる。

 

大きい物はスキウレ砲のビーム、そして艦隊が放っているメガ粒子砲だろう。

 

小さいものはカンルとゼールクトから発艦したリックドムⅡとF2型ザクだ。

 

「あれが木馬か…。」

 

「MSは発進してこないみたいですが…」

 

ゼーレマン曹長は不思議がる。

 

「分からないな…いや、あれは!?」

 

木馬の脚が開きそこから光が飛び出る。

 

「あれがカタパルトか…。するとあそこからバズーカかロケットを撃ち込めれば…。」

 

ゼーレマン曹長はその道のプロである。設計図や写真からいち早く弱点を見つけ出しそこを攻撃する戦法でゲリラ戦やスパイを行ってきたのだ。

 

俺は通信をファーレン戦隊に所属する全MSに強制的に割り込めるモードへ変更する。

 

「全員聞こえるか?こちらはジャスターク・エーシス大尉だ。木馬級からMSらしきものの発艦を確認した。各員注意してデータ収集並びに撃破に当たれ。以上」

 

味方への念密なレーザー通信である。このモードは各個人からの返信はできない仕様となっており一方的に命令を下す、つまり訓練で教官機が指示を与える時等によく使われている。

 

(…ガンダムとか言うやつ出てくるか?)

 

「シグ、セラ。モビルスーツは無視だ。マゼランの近くで曹長を出したら一旦敵艦隊の後方を突き抜ける。そうしたら反転して側面から木馬に攻撃をかける。」

 

『了解』

 

『ああ。わかっている!』

 

迎撃のミサイルとメガ粒子砲、機関砲の雨あられを潜り抜けマゼランの前へたどり着く。

 

「曹長。30分後この誘導機で呼んでください。俺の機体のコードを入力して戦場の中に照射してくれれば自動的に機体の方で捕捉します。」

 

シートの後ろにいる曹長へ誘導機を渡す。

 

「了解しました。お任せください。」

 

コックピットが開き、ゼーレマン曹長は戦場へ飛び出す。

 

「ゼーレマン曹長が降りた。加速をかけ一旦突っ切るぞ。」

 

小隊は一気に加速をかける。

 

高機動性タイプで編成された小隊だからこそできる一撃離脱戦法なのである。

 

数百メートル離れたところで一気にターンをかける。

 

「俺は木馬の砲座とモビルスーツの対処をする。その隙に二人はエンジンを黙らせろ。」

 

後方にいたバインニヒツとR-1Aザクは俺のゲルググを抜き去り対艦用のバズーカとシュツルム・ファウストを木馬のエンジンに撃ち込んでゆく。

 

(さすがエースだ。命中率の悪い高機動戦闘でしっかりと当てている。さて…)

 

ゲルググJの射撃モードを長距離戦仕様へ変更する。

 

「当たってくれよ…。」

 

銃口から放たれた黄色いビームの光は一キロ先にある木馬の側面のメガ粒子砲を寸分の狂いなく命中させる。

 

しかし、二射目を安全に撃たせてくれるほど甘くはない。

 

「チッ!奴はハリネズミだな。」

 

木馬の側面に装備されたミサイルと中央に装備された主砲がこちらへ無数の弾を送り込む。

 

「ニュータイプを…なめるなよ!」

 

上方へ回避しそのまま1キロの距離を詰める。

 

数百発の弾幕の中を潜り抜け、木馬の直上まで到達する。

 

ゲルググには敵弾による傷は一つたりともついてはいなかった。

 

「コイツは…いけるか?」

 

マシンガンモードへ切り替えたライフルと、両腕の機関砲が同時に火を吹いた。

 

今までのお返しと言わんばかりの猛烈な弾幕は木馬の主砲と対空火器を沈黙させるに十分なものであった。

 

すると、突然ヴィーヴィーヴィーと警報が鳴る。

 

「高速飛翔体?なんだ!?」

 

側面を見ると大型の宇宙戦闘機に乗ったモビルスーツがこちらへと迫っていた。

 

「クッ!!」

 

ビーム・マシンガンを発射し、近づく戦闘機を落とす。

 

しかしモビルスーツのほうは爆発の瞬間に飛び上がり、ビームサーベルを展開しこちらへ迫ってきた。

 

「舐めるなァ!」

 

腰に装備されたビームサーベルを抜き敵MSのコックピットへ突き刺す。

 

沈黙した敵MSを蹴り上げ、ビーム・マシンガンを回収すると、通信が入った。

 

『隊長。サラミス級並びに敵モビルスーツの沈黙を確認しました。』

 

後方で狙撃を行っていたアイン曹長からだった。

 

「了解した。補給が必要なら一度帰還して補給を受けてくれ。…ガンダムは落としたのか?」

 

『いいえ。ガンダムと思わしきMSは居ませんでした。キャノンなら似た形のやつが。』

 

「分かった。」

 

通信を切ると、サブモニター上にポップが表示される。

 

「θレーザー波感知…ゼーレマン曹長か。」

 

モニター上には誘導経路とあちら側の位置が表示される。

 

マゼラン級からは十分に離れた位置であり、回収も容易であった。

 

流石はプロである。

 

「ご無事で?」

 

「はい。それよりも早く離脱を!」

 

ゼーレマン曹長は急かす。

 

「なぜです?」

 

「新手が来ます。この部隊は噂の木馬の部隊ではありませんでした。あの木馬級はただの同型艦です。」

 

「ガンダムと木馬の部隊が増援に来ていると?」

 

「そうです。急いでファーレン艦長にも伝えないと。」

 

「分かった。後退信号を出す。」

 

「了解。」

 

ボタンを押すと手の甲から後退指令の発光信号が出る。

 

しかし、特は遅くメガ粒子砲接近の警告が響く。

 

「あれは…?」

 

発射された方向へズームをかけると木馬級にサラミス、マゼランを合わせ八隻ほどの艦影が確認できた。

 

「これは…少しまずいな。」

 

ブースターを吹かしアウスラ方面へと急ぎ向かう。

 

運よく帰還途中であったシグとセラに合流が出来た。

 

『隊長。どうする?私たちの戦力でもあれは難しいぞ。』

 

セラが接触通信をしてきた。

 

「まずいな。こちらの戦力が足りない。」

 

『後退してもあの戦力なら落とされるのがオチだぞ。』

 

シグも同じく接触通信を行う。

 

「…万事休すだな。破損したモビルスーツは?」

 

『ゼールクトのザクが1機中破しただけだ。』

 

「…通常の艦隊ならモビルスーツだけで充分なんだがな。」

 

『ガンダムか。』

 

「ああ。あの部隊となると厄介だ。」

 

そうシグと話しているとアウスラが見えてきた。

 

ゲルググは甲板着艦し格納庫へ収容される。

 

コックピットを開け、ゼーレマン曹長を先に下ろす。

 

「では、大尉。私はこれを解析にかかります。」

 

「ああ。よろしく頼む。」

 

そう言うとコックピットの中に一人入ってくる。

 

「大尉。水です。」

 

「班長。すまんな。補給が完了したらまた出る。」

 

そう答えて彼女から水を受け取り、勢いよく水を飲む。

 

「分かりました。補給は二分後に完了します。」

 

そう言って機体を離れる。

 

しかし、通常なら8分はかかる作業を合計で4分で終了させるのだ。

 

ファーレン戦隊はキマイラにもシャアNT部隊にもグラナダ特戦隊にもシーマ海兵隊にもデギン公王ロイヤルガードにも引けを取らない。

 

そう確信が出来る。そんな部隊をここで失うわけにはいかない。

 

サブモニターで外部のライブ映像を確認する。木馬艦隊は着々と迫っていた。

 

幸い敵のMSは発艦していない。あくまでも砲撃で沈めたいのだろう。

 

相手はMSの推進剤と弾薬をできるだけ消費したくないのだ。

 

 

『ジャス大尉。アウスラは敵艦隊から全速力で後退していますがおそらく追いつかれます。MS隊には時間稼ぎをお願いします。』

 

通信兵であるレオナルド・マエッセン軍曹が伝える。彼も若くまだ二十歳になったばかりだという。

 

「了解した軍曹。ジャスターク、ゲルググ出るぞ!」

 

カタパルトへゲルググを接続する。

 

他のシグ、セラ、アインの機体も発艦可能だった。

 

後進するアウスラの前に出た時だった。最大ズームしたモノアイがメガ粒子砲の直撃を受け沈む様子が見えた。

 

「なんだ…?マエッセン軍曹!」

 

『はい!援軍です!ナグモ戦隊の救援です!』

 

「ナグモ戦隊か!」

 

ナグモ戦隊。同じグラナダにて編成を受けたNT部隊である。

 

キリング中佐の一件では同じ追撃艦隊に所属

 

俺とセラの同期であり強化人間。レイラ・レイモンド少尉、戦災孤児内から発見され、高いNT適性を持つクスコ・アル少尉。

 

そして、突如昏睡より覚醒し「彼の思いを受け継ぐ」と言って軍に特別入隊。

 

シミュレーターではエースパイロット級の戦果を叩き出したマリオン・シュターゼン曹長。

 

三人ともグラナダでの模擬戦の相手はいつも俺だった。

 

『ヨシヒサ・ナグモ戦隊長よりジャスターク隊長宛に入電です。ウチの娘どもがギャーギャー騒ぐ。なだめて差し上げろ。以上です。』

 

「了解した。他のMSも全力出撃だ。後退までの足止めをするぞ。」

 

『了解。伝えます。』

 

ナグモ戦隊旗艦ザンジバル級「フソウ」並びにチベ級ティベ型「アカギ」「カガ」からもモビルスーツが発進する。

 

ゲルググのメインカメラはそのモビルスーツを明確に捉える。

 

オレンジで塗装された高機動型ゲルググ、栗色で塗装されたゲルググキャノン、ブルーで塗装されたF型ゲルググをはじめ、FZ型ザクやリックドムⅡの姿も見える。

 

コンピュータが大まかな形を読み取り型式番号をアイコンに追加表示する。

 

形勢は逆転したも等しかった。敵艦隊はマゼラン級並びに新たに到着したサラミス級を前面に押し出し、木馬級二隻と他の艦艇は後方に存在する。

 

その距離は約十二キロ。相手に何があったのかはわからないが艦隊戦でそのような距離で陣形を取ることはまずない。

 

大方生き残ったマゼランの艦長が木馬級の部隊に「貴様らは援護に徹しろ。我々が沈める」とでもいったのであろう。

 

『ジオン軍所属の全モビルスーツへ。艦隊はこれより後退しつつ砲撃戦に移る。モビルスーツ隊は立体攻撃を主とし、艦隊の後退が完了するまで時間を稼げ。以上!』

 

声の主はファーレン戦隊の戦隊長であるブラード・ファーレン中佐だった。

 

ファーレン、ナグモ両戦隊はアローフォーメーションを取る。

 

ムサイ、ザンジバル、ティベ型から放たれるメガ粒子砲は的確に突出している艦艇を直撃した。

 

モビルスーツはゾウを食い殺す軍隊アリのように一斉にダメージを受けた艦艇に群がる。

 

ゲルググのビームが火器を沈黙させ、バズーカやシュツルムファウストは艦橋やエンジンをまばゆい光で包む。

 

しかし、乗機のゲルググJのモノアイは遥か前方で何やら光ったのを探知した。

 

「モビルスーツ…か?」

 

あたりを見回すと、ちょうどファーレン戦隊の部隊マークが付けられた高機動型ザクとリックドムⅡを見つける。

 

即座に接触通信をかけ三機の小隊を組む。

 

その動きに感化されたのか、確実にマゼランとサラミスを沈めることのできる戦力だけを残し、MS隊は各個に小隊を組み後に続く。

 

小隊は綺麗に隊列を組み見事なパンツァー・カイルを展開する。

 

ほどなくするとゲルググの光学センサーは敵のMSを素早く感知しモニター上にアイコンと共に表示する。

 

(一機だけ恐ろしく速いやつ…あれがガンダム?)

 

「全機連邦のモビルスーツをやるぞ!ガンダムは俺が引き受ける!」

 

迫りくる敵モビルスーツ部隊へ牽制射撃を行う。アバウトな狙いであったがビームの先に光の球が膨らむ。

 

運良く撃墜出来たのだ。落とされたモビルスーツに乗っていたパイロットには同情する。

 

あちらもあちらでお返しとばかりにビームライフルの閃光がこちらへ向かう。

 

射手は紛れもなくガンダム出会った。

 

「あれがガンダム・・・!速い!だが!」

 

こちらはあくまで時間稼ぎ。ガンダムを引き付けその他の戦力を削ぎ落とすのだ。

 

ガンダムの動きは速かった。撃っても避けられるばかりである。流石にジオンのエースパイロットを次々と撃墜してきただけのことはある。

 

「・・・しかし!こちらも母艦を失うわけには行けない!」

 

ゲルググの加速力はガンダムを超越する。

 

モビルスーツ同士のドッグファイトはこの戦争では稀有なものだった。一撃離脱でほとんどの場合終了するからである。

 

しかし、ガンダムは一気に反転しビームサーベルを抜く。

 

こちらもビームサーベルを右手に構え、さらに加速をかける。

 

ビームの刃が鍔迫り合い、激しい勢いで干渉する。

 

空いた左手の機関砲が火を噴き、ガンダムの右脚を奪った。

 

『大尉!艦隊は敵艦隊の射程範囲外まで脱出出来ました。大尉も帰投を!』

 

マエッセン軍曹だった。ミノフスキー粒子を表示するインジケーターは通信可能の値を示している。

 

艦隊戦また、モビルスーツ戦が行われている主戦場からは少し離れていたのだ。

 

「了解した。すぐ戻る」

 

機体の脚部ブースターを使い、ガンダムを蹴りあげる。

 

それと同時に一気に機体を反転させアウスラへ帰投する。

 

帰投途中に1機のFZ型ザクが接触回線を開いてきた。

 

『あの、ジャスターク大尉ですね?』

 

「貴方は?」

 

『バーナード・ワイズマン曹長です。この前の作戦で救出していただいた・・・。』

 

「いつナグモ戦隊に?」

 

『ほんの先程です。ソロモン防衛軍にまわされたのですが、補充兵としてナグモ戦隊に。それでは。失礼します。』

 

バーナード・ワイズマン曹長。恐らくガンダム中破の功績で昇進したんだろう。

 

リボーコロニーでの戦闘から15日しか経っていないが、あの時組んだ艦隊の凄さに勝るものは無いとそう感じる。

 

アウスラ、カンル、ゼールクト、フソウ、アカギ、カガ。

 

モニター上に映る艦艇は全て参加していた。

 

機体はゆっくりと着艦プロセスに入る。勿論そこの操作は殆どオートだ。

 

機体はアウスラの甲板に着艦し格納庫まで推し進める。

 

一先ず切り抜けることは出来た。

 

幾らか休憩も取れそうである・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前回の「μガンダム」に誤字報告を頂いたのですがこれは誤字ではなく「νガンダム」と別のガンダムタイプのモビルスーツです。

まだ登場は先になると思います。スタンス的にはジャスターク・エーシスの視点から一年戦争~ラプラス紛争までを書く予定です。
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