機動戦士ガンダムティボウキナ   作:クワス

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インサート・エピソード ポケットの中の戦争 UC:0079 11/26~28

-UC:0079 11/26 アンマン基地-

 

『ふむ、まさかキリングがこれほどまでの強硬手段に取るとは思っていなかったな。』

 

画面越しにヘルメットとマスクを取ったキシリアが話す。

 

ここ、アンマン基地の会議室にてグラナダからの大まかな報告を聞いていた。

 

途中からキシリア・ザビ中将も映像通信で参加してきたのである。

 

占拠されたのはグラナダ基地第1ふ頭並びに中枢司令部であった。よってそれ以外の副司令部は生きている。

 

詳細な報告はそこから逐一来ていた。既にキリングが直接指揮を執るグラナダ第1艦隊は出港したという。

 

半ばクーデタとも呼ばれる所業であるが、さすがにキシリアですらそこまで考えてはいなかった。

 

『シャア。貴様に追討艦隊の編成を命ずる。その間のグラナダの防衛は私と合流予定だったキマイラに任せる。』

 

「私が…でありますか。」

 

『そうだ。と、いっても艦隊同士の砲撃戦をメインとするわけではない。なるべくキリングの投降、もしくは座乗艦の撃沈をあくまでも主目的に置け。』

 

「核攻撃を寛容する…と?」

 

『勿論、核ミサイルを撃たせる前にだ。赤い彗星の事だ。やれるだろう?』

 

「はッ。」

 

シャア大佐は画面に向かい敬礼をした。

 

「大佐。先ほど補給部隊からの連絡が来ました。わが戦隊は出撃準備完了しています。」

 

「ラグナロク」副艦長であるマリガン中尉が報告する。

 

「シーマ艦隊も同じく。」

 

「ファーレン戦隊は機関砲弾の補充が後数分で完了します。」

 

「ナグモ戦隊はいつでも出撃できます。」

 

それに続いて、シーマ少佐、ファーレン中佐、ナグモ中佐が報告する。

 

「では20分後に全艦出撃。サイド6へ急行する。」

 

席を立ち各艦隊指揮官はシャアへ敬礼をした。

 

-翌27日 サイド6近海-

 

MS隊の隊長達はブリーフィングのため旗艦「ラグナロク」のブリーフィングルームへ集合していた。

 

「先ず、シーマ少佐。貴女がサイド6内に残留している友軍の支援に当たってくれ。諜報員と生き残ったパイロットがいるらしい。」

 

シャアはスクリーンの前に立ち

 

「リボーへの突入は単機で?」

 

「いや、私の部下を二名つけよう。他には…ジャスターク中尉。」

 

「はッ。」

 

「先ほどの模擬戦。私たちのコンビネーションでも君を落とせなかったのだ。戦闘支援に君を加えたい。いいな?」

 

「了解しました。」

 

「ああ。その分アウスラの部隊は艦隊護衛に専念するように伝えてくれ。」

 

シャアはタッチパネルスクリーンを用いてコロニー突入部隊へ計四名の名前を追加する。

 

「他部隊は私と共にキリング艦隊を包囲する。出撃予定時刻は三時間後だ。諸君の健闘を祈る。では解散。」

 

敬礼をし、各部隊長は散る。

 

「あの赤い彗星にあそこまで言われるなんて。随分上になったものね。」

 

俺-ジャスターク・エーシスの後ろから声が聞こえた。

 

「お前ほどではないさ。」

 

声の主は間違いない。ザンジバル級「フソウ」MS部隊の隊長である「レイラ・レイモンド少尉」であった。

 

「ふん。まぁいいわ。フラナガンのシュミレーターでは18勝6敗で私の勝ちなんだし。」

 

そう、レイラは自慢げに話す。…正直彼女は少し扱いに面倒なところがあった。

 

「それにお前は最新型のゲルググで俺はドムだからな。」

 

「そうよ!なにアンタが赤い彗星に褒められたからって私が嫉妬しなきゃならないのよ!」

 

俺がレイラを「めんどくさい」と思うのはここであった。

 

自分から話しかけてきてこちらに思惑がほとんど伝わらないうちに自己解決するのである。

 

「ああ。決心がついたようで何よりだよ。」

 

「見てなさい!必ずアンタ以上の戦果を挙げるんだからね!」

 

そう言って去ってゆく。

 

「なんだったんだアイツは…?」

 

昔からアイツの考えていることは良く分からなかった。

 

「すみません!ジャスターク中尉。」

 

そう呟いたらまた後ろから新しい声が聞こえてきた。

 

「はい?」

 

「ああ。すみません。ヨハン・ネイル伍長であります。そろそろランチが出ますので、お知らせに。」

 

若い男だった。見たところ俺より年が若そうである。

 

そういえば、ランチの操縦や艦艇への荷物積み込みといった作業には15、6歳の学生が徴用されていると聞いたことがあった。

 

「それでは、15分以内にお越しください。」

 

「ああ。ありがとう。」

 

俺は急ぎ格納庫へ向かった。

 

 

-数時間後 旗艦 ラグナロク ブリッジ-

 

「キリング艦隊捕捉。」

 

レーダー監視員であるロコ軍曹がシャアへ伝えた。

 

「よし。全艦モビルスーツ隊発進。マリガン。ビスマルクへレーザー通信をかけろ。」

 

「はッ。」

 

シャアは艦長らしく、シートへ座る。

 

「レーザー通信開きます。」

 

マリガンがシャアへ伝えた。

 

『何かね?シャア大佐。』

 

「キリング中佐今すぐ艦隊を引き返したまえ。」

 

『それは聞けぬ命令だな。』

 

「こちらにはビスマルクの撃沈もやむなしと令を受けている。」

 

『脅しか?ふん。この作戦は私に課せられたものだ。すべての指揮権は私にある。何としてでもここでガンダムを沈めなければならない。』

 

「そのためにもだ。貴官が投降すれば、その戦力もこちらに入れ、サイド6より移送されるガンダムを襲撃するという作戦もできる。」

 

『それではこちらに被害が出るではないか。私が今ここで核を撃てば駐留中の連邦艦隊もろとも消滅できる。こちらの艦隊はあそこにはいないからな。』

 

「まだ中に味方がいるんだぞ!」

 

珍しくシャアが声を荒げた。

 

『サイクロプス…?まだ生き残りがいたのか。しかし、任務に失敗した兵ほどいらぬ物はない…。それよりもだ。シャア大佐。これ以上わが艦隊を止めると言うなら、こちらも相応の対処をさせてもらう。』

 

そう、キリングが言うと同時に通信が切れる。

 

「マリガン。シーマ少佐へ連絡。別動隊は至急行動を開始。他の艦艇とモビルスーツ隊にもキリング部隊の迎撃とビスマルクの撃沈命令を伝えろ。IFFのキリング部隊を敵に変更。私も出る!」

 

「了解しました大佐。」

 

シャアは格納庫へ急ぎ向かった…。

 

 

-サイド6領域内 リボー突入部隊母艦「リリー・マルレーン」-

 

先ほどのブリーフィングが終わった段階でリボー突入チームはすべて海兵隊旗艦「リリー・マルレーン」へ異動していた。

 

キリング艦隊とは別ルートでリボーへ接近していたのである。シャア大佐からのレーザー通信を合図にリリーマルレーンよりMSが発進していく。

 

その一人は俺であった。

 

『マリーネ・ライター出るよ!』

 

チームワークを円滑にするため今回はすべてのパイロットの無線が聞こえるようになっている。

 

『アンディー・ライスン。ドム出るぞ。』

 

『リカルド、同じくドム出る!』

 

リリーマルレーンに搭載されたMS用リニアカタパルトからゲルググ一機とドム3機が発進する。

 

「ジャスターク、ドム出るぞ!」

 

急加速された機体はアポジモーターのオートバランサーによって制御される。

 

『いいかい?今回の任務は戦闘中のザクの救出だ。連邦の雑魚に目をくれるんじゃないよ!』

 

シーマ・ガラハウ少佐はまぎれもないエースパイロットである。地球軌道上の哨戒任務中に出くわした連邦のモビルポッド15機を1機のザクFs型で殲滅している。

 

さらにムサイ単艦と二機のザクⅠでセイバーフィッシュとサラミスからなる敵の警戒艦隊を撃破したこともあるそうだ。

 

海兵隊に良いうわさは聞かないが彼女や部下の戦歴や撃墜数を見れば信用たる仲間であることは間違いなかった。

 

『了解』『了解』

 

続けて聞こえてきたのはシャア大佐直属の部下であるアンディー・ライスン曹長、リカルド・ヴェガ曹長。

 

この二名も歴戦のパイロットであった。

 

…周囲に連邦の艦船は存在しない。恐らく本隊のほうへ向かったのであろう。

 

連邦のモビルスーツ…まだ出くわしたことがないがここ部隊にも配備されているのだろうか。

 

失敗に終わったジャブロー攻略戦時にシャア大佐は本格的なMS生産プラントを発見したらしいし、それに地上に挙がってきた兵によれば地上では既に量産型MSが続々と戦線に投入されていたらしい。

 

グラナダの諜報部もルナツーでMSを生産している可能性だって十分にあり得ると言っていた。

 

そう考えていた時センサーが光源を捉えた。

 

「少佐、右前方高速に接近する物体二つ。」

 

『無視しな。リボー突入を優先させる。』

 

「了解」

 

ゲルググは一気に加速をかける。それに伴ってドムも速度を増す。

 

通信にはしきりにリボーからの領域侵犯メッセージが届くがすべて無視する。

 

『少佐、先ほどの飛翔体は恐らくリーア防空軍のトリアーエズと判明。』

 

ひそかにデータを取っていたのであろう。アンディー曹長が報告をした。

 

『ふん。セイバーフィッシュなら十機もありゃザクを仕留められるがトリアーエズとはね…。』

 

シーマ少佐は呪詛のようにつぶやく。

 

MSのインジケーターはコロニー接岸までの距離を示す。

 

その距離は600メートル。MSの速度では一瞬で到達する距離であった。

 

機体を着艦、無誘導モードへ切り替えコロニー内の港湾ブロックへ侵入する。

 

機体の音響センサーはまだ戦闘音を捉えていなかった…。

 

-同時刻 サイド6 領域内-

 

「全部隊、目標はザンジバル級ビスマルクのみだ。発進する敵MS部隊は各個に迎撃せよ。」

 

シャア・アズナブルは配下のモビルスーツ部隊へ指示を出した。

 

ザクやリックドムⅡをはじめモビルスーツとするモビルスーツ部隊は各個に小隊を編成する。

 

無数の光が前方艦隊へ向かう。しかし、それを歓迎するようなキリング艦隊ではなかった。

 

インターセプターであるMS隊をすぐさま射出。接近を断固阻止を図った。

 

「えぇい。貴様らとて自分の行いがわかっているだろうに!」

 

シャアは言葉を打ち付ける。グラナダ所属のMS部隊は手練れであった。

 

トップエースには及ばないが連邦の戦闘機、戦艦、空母、モビルポッド。

 

さらには宇宙用に配備されていた連邦のGM(ゲム)と交戦し殲滅した部隊もいた。

 

少なくとも強敵である。

 

「久しぶりにやってみるか…。」

 

シャアは相対するムサイ級の船体をけり、一気にゲルググを加速させる。

 

恐らくビスマルクのブリッジでは「通常の三倍」で接近するゲルググに困惑しているであろう。

 

「キリング中佐!もう1度言う。投降せよ。」

 

『それはできない。…ガンダムの威力がわからぬ赤い彗星ではあるまいに。』

 

「貴官はやり方を間違えた。あのガンダムは我々のほうで処理をするだけだ…。」

 

シャアのゲルググがビスマルクのブリッジに向けビームナギナタを突き刺した。

 

『大佐。グラーフツェッペリンより入電。投降するとのことです。』

 

通信の相手はマリガンであった。

 

「よし。海兵隊所属を残し全艦帰投する。警戒怠るな。連邦が出て来るやもしれん。」

 

『了解。MS収容を確認の後、方位をグラナダへ取ります。』

 

「後は彼らを待つのみか…。」

 

シャアは自機を母艦ラグナロクへ向けた。

 

 

-リボー内部-

 

『ガンダム発見』

 

その報はアンディー少尉からもたらされたものだった。

 

『アタシとリカルド少尉がガンダムを陽動する。アンディー少尉はそのまま別動隊の警戒。坊やはザクを救出。』

 

シーマ・ガラハウは的確な指示を出した。

 

「あれが…ガンダム!」

 

資料では見ていたが実物を目にしたのは初めてだった。

 

俺は、ドムのブースターをコロニー内用に設定し、一気に吹かす。

 

ガンダムへ向けモノアイを拡大すると、戦闘場所の近くに人影を確認した。

 

「なんだ…?子供!?」

 

10歳にいっているだろうか。少年が必死に走っている。

 

『そこの子供!早く逃げろ!ここは戦場だぞ!』

 

ドムの姿を見て少年は何かを察するように離れる。

 

ガンダムの方向には無数の着弾音が聞こえる。コロニー専用弾が装填されたMMP-80マシンガンだ。

 

「中佐たちはうまくやってるな。」

 

上手くガンダムが困惑している。

 

「ザクのパイロット!聞こえるか!脱出する!」

 

小型ワイヤーをザクに接着させ、接触通信を行う。

 

『味方!?』

 

「ガンダムは後回しだ。脱出するぞ。」

 

『核攻撃は…!』

 

「赤い彗星が阻止した。とにかく行くぞ!」

 

ザクを引き連れジャンプする。

 

「中佐!目標を確保これより合流ポイントへ向かう」

 

『よし。全機牽制しつつ後退。トンズラこくよ!』

 

シーマ機が撤退のサインを出した。一先ず、これで作戦は成功となる。

 

「ケガは?」

 

『頭を打ち付けただけだ…。問題ない。』

 

ザクのパイロットは出血が激しかった。

 

「すぐに治療班に引き渡す。数分の辛抱だ我慢してくれ。」

 

『ああ…。アル…。クリス…。』

 

部隊はリリーマルレーンへ帰投した。

 

数日後、連邦内へ潜入していた諜報員の回収作戦も無事成功。

 

連邦のMS生産、配備計画が一気にジオン国内に流れることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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