機動戦士ガンダムティボウキナ   作:クワス

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ソロモン防衛戦 前編 UC:0079 12/14~

-UC:0079 12/14 ソロモン基地 会議室-

 

「さらなる支援が来るということか!流石兄貴と姉貴だ!」

 

野太い声はディジタル・スクリーンに映し出された二名の男女へ向けられる。

 

片方はジオン本国にいるギレン・ザビである。もう一人はグラナダへ帰還したキシリア・ザビであった。

 

『ああ。エギーユ・デラーズの部隊を送る。それと、ビグ・ザム用の改良型冷却装置の設計図もソロモン工廠へデータを送った。』

 

デラーズ艦隊はエギーユ・デラーズ率いるグワデンを旗艦にチベ級x3 ムサイ級x6で構成された艦隊でこれにシロディール級MS母艦が二隻付いた。

 

『こちらはドロワとムサイ二隻を送る。前々からキャリフォルニアベースの件で約束していたモノだ。それと新型MAの調整が終了次第増派する。』

 

「到着は早くて明日か…。よし、では兄貴たちの部隊を合流させて後方から叩こう。こちらもMS一個中隊をデラーズ部隊と合流させる。」

 

『ドズル…くれぐれも貴重な宇宙戦力を失うなよ。』

 

「ああ。連邦なぞ一捻りよ!」

 

『期待している』

 

通信が終了すると同時に具体的な防衛戦略の見直しが始まった。

 

とある諜報員が「ソーラ・システム」という連邦の新型兵器のデータと展開場所の情報を入手したのである。

 

ソロモンの第5~11番スペースゲートのあるC-Fフィールド方面に対し照射が予定されている。

 

これに対し5~11番ゲートの早急な無人化が図られた。本国で開発された新兵器「ダミーバルーン」によって艦艇数を調節。

 

そして旧来から存在した「ビーム攪乱膜」の無人発射装置も厳重な隔壁で守られジオン側は実弾兵器による防衛戦略へ出たのである。

 

制空隊として配備されたザクや一部ドムにはMMP-78並びにMMP-80用対MS弾の完全配備が完了。攻撃機部隊としてのドムシリーズの整備も万全であった。

 

そして超大型機動兵器である「ビグ・ザム」にはIフィールド発生装置の実弾防御強化と冷却装置の強化等の改修が行われた。

 

艦隊の配置、整備も万全であった。

 

ア・バオア・クーから発進したデラーズ艦隊は既に合流ポイントへ向かっていたトワニング艦隊と合流を図った。

 

作戦としては単純で隕石ミサイル等大型質量兵器を用い敵艦隊を漸減。ソロモン近辺では対MS用サポートOSを積んだ制空隊並びにモビルアーマー「ビグ・ザム」が「ゲム」を迎え撃つ。

 

艦隊は増派艦隊含め三つに分かれ、敵艦隊を強襲。一部別動隊を編成しソーラ・システムのコントロール部隊を一気に強襲し殲滅ないし鹵獲。

 

艦隊が補給艦、宇宙空母を狙っている間にドムを主軸とした攻撃機隊が戦艦、巡洋艦隊を攻撃するいたってシンプルな作戦であった。

 

その別動隊には…ファーレン、ナグモ両戦隊が編成された。

 

 

 

 

-UC:0079 12/15 0:00(UTC)-

 

 

連邦軍第二艦隊旗艦タイタンのブリッジではマクファティ・ティアンム中将が作戦開始の命を発令した。

 

と同時に第三艦隊のワッケイン少将も陽動を開始した。

 

連邦軍のドクトリンは優勢火力を主とする。ソーラ・システムの照射で敵防衛設備を沈黙させ反対側から出て来る艦隊を第三艦隊が攻撃。

 

その間に第二艦隊は陽動部隊とは反対に回り込み一気に殲滅を図るものであった。

 

「目標!ソロモン第五スペースゲート!その後手筈道理に第六から十一へ向け照射!」

 

ティアンムは勝利を確信していた。地上から憎きジオンを追い出し、宇宙ではジオンの生命線へ刃を入れようとしている。

 

ルウムでの屈辱を晴らす時であった。

 

「照射まで20…10…3、2、1、0!」

 

通信兵が叫ぶ。

 

左側よりまばゆい光が放たれソロモンのスペースゲートを焼いてゆく。

 

2分間の短い照射は確実にソロモンを陥落するのを容易くさせる…とティアンムは信じ切っていた。

 

「よし!各艦予定のコースをたどれ!戦術士官!敵艦隊との会敵予想は!」

 

「はッ四時間三〇分後であります!」

 

「うむ。何としても敵将ドズルを討ち取らねばな…」

 

 

 

 

 

 

-同時刻 ソロモン司令室-

 

「閣下。敵艦隊はすべて情報通りに動いています。偵察隊がティアンム本隊を確認しました。」

 

副官のラコックが伝える。

 

「よし。陽動部隊の対処は予定通りバレンシア艦隊。ティアンム部隊はサラゴサ艦隊だ。衛星ミサイル随時発射いいな!」

 

「はッ!」

 

ソロモンの防衛の中核をなしていたのが衛星ミサイル群である。これは小惑星に各種センサーと推進装置を備え付けたもので、原始的な質量兵器であった。

 

しかし高速で飛来する小惑星となれば巡洋艦を一撃で撃沈する攻撃力を持っていたのである。

 

「ラコック。俺のザクの用意をしておいてくれ。場合によっては出るかもしれん。」

 

「了解しました。」

 

 

 

-同時刻 グワデン作戦司令室-

 

グワジン級はその大型メガ粒子砲並びに対空機銃が特徴的な戦艦である。

 

MS運用能力も当然存在するがグワデンには迎撃用のMS2個小隊しか配備されていない。

 

余ったMS格納庫へはソロモン側から各種仲介を行うためのMS1個中隊(4個小隊)が派遣された。

 

中隊長はアナベル・ガトー大尉であった。

 

作戦司令室ではガトー他各小隊長が最後の確認をしていたところであった。

 

全パイロット向けのブリーフィングは終了している。

 

「現在、ティアンム艦隊はBフィールドから800キロ離れた位置に存在する。先刻のブリーフィングより若干移動しているが問題はない。」

 

最新の偵察情報がザクフリッパー隊の隊長であるコロナ中尉から伝えられた。

 

「よし。では次、整備状況の遅れが出ている部隊は?」

 

ガトーが問い詰める。

 

「はッ。先ほどドロワのR-1A部隊の推進剤補充が終わっていないと報告がありました。2:00には終了するそうです。」

 

「よし、作戦に影響がある程度ではないな。他、何かあるか?」

 

「グワデン通信兵、ヨハン一等兵であります。レーザー通信にて先ほど、ドズル閣下がザクで出撃する可能性アリとの報告が来ました。つきましてはシン・マツナガ中尉の部隊を護衛に回してほしいとのことです。」

 

「随分急だな…。だがドズル閣下の命。守らねばなるまい。マツナガ中尉。」

 

白いパイロットスーツを着た男を呼ぶ

 

「はッ。」

 

「君の部隊は早急にドズル閣下のもとへ向かえ。」

 

「了解。マツナガの名に懸けてドズル閣下をお守りします。」

 

「よし、他には?」

 

誰も言うことはなさそうだ。

 

「では解散!」

 

ガトーが敬礼すると全員が敬礼を返す。

 

 

 

 

 

-対ソーラシステム別動隊 旗艦「アウスラ」ブリーフィング・ルーム-

 

「全員いるな!では作戦を説明する!」

 

俺-ジャスターク・エーシスは特務部隊として編成されたナグモ、ファーレン両戦隊のMS部隊長として、ブリーフィングルームに立っていた。

 

「目標はあの光の元…つまり連邦の新型兵器の奪取もしくは完全破壊だ。先ず、ナグモ戦隊のMSが先陣を切り陽動を行う。S58から侵入し、その後方からアカギ、カガのMS部隊が敵艦隊への殲滅攻撃を実行。」

 

後方のスクリーンには偵察機からの写真が次々に映し出されている。

 

「そして、フソウのMS隊が統制艦へ降伏勧告を行え。既にゼーレマン曹長の前情報によってコロンブス級マミヤ・リンゾーが統制艦であることは判明している。」

 

投降後は本来要塞内白兵戦に割り当てられる歩兵2個小隊約100名が担当する手筈となっている。既に彼らはアウスラ艦内にて宇宙型キュイ歩兵戦闘車と共に万全の状態で待機している。

 

余談ではあるが彼らはランバ・ラルの元で各種特殊作戦を遂行した兵であり、ゼーレマン曹長の戦友も数多くいた。

 

「これまでで何か質問は?」

 

スッと手を上げるものが1名。ナグモ戦隊(ウチ)の『カンル』所属、ボット軍曹であった。

 

「ミラー本体への攻撃は?何割残ってればいい?」

 

「最低でも20基は望ましい…だが最悪文字道理の殲滅も許可されている。…他は?」

 

パイロット達は自信に満ち溢れた顔をしている。

 

「よし!では出撃まで各自待機。30分前格納庫集合だ。解散!」

 

全員立って敬礼をする。

 

(さて、俺は突入部隊へ挨拶をしてこないとな…。)

 

敵はすぐそこであった…。

 

 

 

 




原作とは大きく違う流れになりました。しかしここでジオン側の戦略的勝利はないものと見てもらって構いません。

またシロディール級とは名称は本作オリジナルですがこれはMSイグルーのヨーツンヘイムと同型の輸送艦兼宇宙空母です。


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