学園黙示録〜暁の芸術家になった転生者〜   作:☆桜椛★
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第10話だ…うん!

床主市国際洋上空港。世界でも珍しいこの洋上空港にも〈奴ら〉は現れていた。そんな滑走路を我が物顔で彷徨う〈奴ら〉を離れた場所に停車している警察の大型人員輸送車の屋根の上で見ている人間が2人いた。

1人は白いキャップを被り、弾着観測用(スポッティング)スコープを覗いている男性。彼は県警特殊急襲部隊第1小隊の隊員の観測手、《田島(たじま) (あつし)》。

そしてもう1人は、彼の隣で伏せ撃ち状態で【H&K PSG-1】というスナイパーライフルを構え、スコープを覗いている紫色の髪をポニーテールにし、引き締まった身体をした美女。この小麦色の肌した彼女がデイダラの幼馴染であり、県警特殊急襲部隊第1小隊の隊員で狙撃手である

南 リカだ。

リカは【H&K PSG-1】のスコープの向こうに見えるにやけ面で眼鏡を掛け直す動く死体を見て少し顔を顰めた。

 

 

「はぁ…嫌なにやけ面」

 

「俳優だよ。床主市にロケに来ていた…」

 

 

リカの呟きに隣の田島が答えた。田島は耳に付けた通信機に手を当て、真剣な表情になった。

 

 

「距離、450……伏仰角、(マイナス)6……左右の風はほぼ無風……射撃許可…確認した。いつでも撃っていいぞ」

 

「了解…」

ズダァンッ!!

 

 

リカは返事をして数秒後、先程から見ていた元俳優の動く死体に狙いを付け、引き金を引いた。放たれた弾丸は真っ直ぐ元俳優の動く死体の眉間に飛んで行き、見事に眉間を撃ち抜いた。リカはすぐさま次の目標に狙いを定め、再び引き金を引いた。彼女のライフルが銃声を発し、弾丸を飛ばす度に、滑走路を彷徨っていた〈奴ら〉は1体、また1体と頭を撃ち抜かれ、地に伏していった。

 

 

 

 

 

 

南 リカside…

 

 

(最後の1人……)

ズダァンッ!!

 

 

私は【H&K PSG-1】のスコープに映る動く死体に狙いを定め、気圧・気温・湿度などを計算してから引き金を引いた。放たれた【7.62x51mm NATO弾】は私の狙い通りの軌道を通って最後の1人の眉間に命中した。

 

 

「命中確認。お見事」

 

「ふぅ……」

 

 

私の隣で弾着観測用(スポッティング)スコープを覗いていた田島がすかさず報告する。それを聞いて私は朝からずっと伏せ撃ち状態だった体を起こし、立ち上がって凝った場所をマッサージしていく。

 

 

滑走路(Runway)上のターゲットは全て無力化した…終わり。……って、何やってんだ?」

 

「朝からずっと寝転びっぱなしだったのよ?痺れちゃった。ん、ん〜!」

 

 

全く、テロリスト対策の為にこの洋上空港に派遣されたのに、まさか噛まれるだけでアウトな動く死体を相手取るなんて思いもしなかったわ。お陰で朝からずっと伏せ撃ち状態で胸とかも痺れちゃったわ。

 

 

「俺が揉んでやってもいいぞ?」

 

「私より射撃が上手いなら少しだけ考えてあげてもいいわよ?ま、その後デイダラに物理的に潰される可能性が高いけどね」

 

「ゲッ!全国の警官でベスト5に入るお前にかぁ?しかもあの剣道や柔道の試合で無敗の記録を残したデイダラ先輩にか……無茶言うなよ。あの人、射撃だってお前の次くらいに上手かったろ?」

 

「そうよ。ま、無理なら諦めて」

 

 

私はベストを脱ぎながら田島に諦めるよう言った。そう言えばデイダラはちゃんと静香と合流出来たのかしら?まぁ、あいつの事だから昨日の内に静香とは合流して学校を脱出しているでしょうけど…まだ連絡が無いのよね。少し心配だわ。

 

 

「にしても、船でしか来られない洋上空港にも出るとはな……立ち入り規制はしてるんだろ?」

 

「えぇ、要人とか…空港の維持に不可欠な技術者、彼等の家族。その中の、誰かがなったのよ」

 

 

それによって増えた動く死体を今さっき私達が無力化した。私が撃った連中の中に幸いパイロットはいなかったけど、航空機の整備士や要人の家族も何人か含まれていた。

 

 

「今はまだいいけど…いつまで持つか」

 

「ここだって、俺達がテロ警戒の為に派遣されてなければ…どうなってたことか。とは言え、弾も無限にある訳じゃないから…」

 

 

私の場合はデイダラに教えてもらった忍術でなんとかなるかもだけどね。私の“磁遁”は最大ドラム缶1個分の砂鉄なら操れるけど…他の人達はそんな事出来ないし。

 

 

「逃げるつもり?」

 

「そのつもりは無い。……まだな」

 

「そう……」

 

 

ちょうどその時、無力化した死体が片付いて空いた滑走路を旅客機が1機走って行き、空へ飛び立った。私は次第に遠くなって行く旅客機を眺めながら自分の考えを田島に言った。

 

 

「私は町に行くよ……いずれは」

 

「へぇ?なんだ?男でもいるのか?」

 

「……友達がいるのよ」

 

 

私がそう言うと田島は目を見開いて私を凝視した。

……何よ?

 

 

「お前……デイダラ先輩と俺以外に友達いたのか?」

 

「あんたの頭にライフルの弾撃ち込んでやろうか?」

 

 

 

 

 

 

鞠川 静香side…

 

 

はぁ〜、全然進まないなぁ。ちゃんと進んではいるんだけど、今じゃ1時間経っても1キロの半分も進んでないし、デイちゃんは宮本さんと一緒に別行動中だから退屈ねぇ。

 

 

「そ〜です!ですから、それぞれが勝手に行動するよりどこか、安全な場所を得た後に行動すべきです!」

 

(あ、紫藤先生まだあの演説してたんだ。もしかして一晩中あんな大袈裟な素振りをしながら演説してたのかしら?)

 

 

もしそうなら凄いわね。ずっと話し続けてるけど…喉が渇いたりしないのかしら?……もう飽きて来たからちょっと高城さん達の所に行きましょう。

私が運転席を離れて高城さん達の所に向かった。高城さん達と軽いお話が出来たらいいな〜と思ってたんだけど、なんだか難しい話をしていた。

 

 

「確かに、町の外に行くなら車じゃなくても、洋上空港なら飛行機があるし…後は電車っていう手もあるな」

 

「そう、小室が言う通り、車以外の町からの脱出手段はあるわ。都市部が危険なのは目に見えてるから、どこかの島や、武器の人口比が高い独立した地域とかに逃げようとしている連中が、山の様にいる筈」

 

「沖縄…とか?あそこにいるアメリカ軍は戦闘部隊じゃなくて…ッ!自衛隊がいるか」

 

 

高城さん、言っている事はあまり分からないけど、小室君や平野君が真剣な表情をしているからきっと凄い事を言ってるんだろうなぁ。

 

 

「じゃあ、空港に向かっているのはそういった自衛隊とかが〈奴ら〉の対処が出来ているかも知れない所に行く連中だって事か?」

 

「じゃあ、僕等もそういうとこ行きますか?」

 

「いいえ!遅過ぎるわ!既に対処出来ているなら、その地域への外部からの受け入れに厳しい方針を取り始めているはずよ。例え何処かに立て篭もろうと考えても、世界中の人間が同じ事を考えたらどうなるかしら?生きる為に必要な、最小限のコミュニティを作るようになったら……」

 

 

小室君と平野君が難しい顔をしてるけど、全然話について行けないわ。後で分かりやすく教えてもらおうかしら?

 

 

「ゴクッ!…高城さんは、本当に頭がいいんですね」

 

「何言ってんのよ?…あいつ、もうそういう乗りになってるわ。…自分で気付いてるかどうかは分からないけど…」

 

 

高城さんが指差した先にあったのは紫藤先生が女子生徒の1人の頬を撫でている光景だった。なんだか紫藤先生が気持ち悪い……。

 

 

「いい?たった半日でそうなのよ?」

 

「…追い出しますか?」

 

「やめとけ平野。あんな奴より、今は僕等がどう生き残るかを考えるのが重要だろ?」

 

「そうね。信用出来る相手と、水と食料。後は〈奴ら〉に対抗するための武器……小室はそんな人間に心当たり無い?」

 

「悪いが無いな。…静香先生はどうですか?」

 

 

ふぇ!?いきなり私に話振らないでよ小室君!え、え〜〜っと…つまり信用出来て、ご飯とか分けてくれそうで、武器を沢山持っている人だから………あれ?

それ全部デイちゃん当てはまってないかな?

 

 

「う〜〜ん、多分デイちゃんかな?」

 

「?デイダラさんですか?」

 

 

私の答えに小室君達は首を傾げた。でも仕方ないじゃない。だって、今の条件に当てはまるのはデイちゃんか友達のリカぐらいしか思い浮かばないもの。

 

 

「うん!デイちゃんは私に忍術教えてくれたし、ご飯はとっても美味しいし、武器だって、刀とか手裏剣とか沢山持ってたわよ?」

 

「刀や手裏剣って……バリバリ忍者の使いそうな武器じゃない。本当に何者よあいつ?静香先生はあいつの職業とか知らないの?」

 

「ふぇ?ん〜〜っと、去年辞めちゃったけど…警察の…確か、特殊急襲部隊って所で働いてたわよ」

 

 

私の言葉を聞いて平野君と高城さんが石みたいに固まっちゃったわ。え?私、何か不味い事言ったかしら?

 

 

「「と、特殊急襲部隊ぃ〜〜!!?」」

 

「うわぁ!?ビックリした!どうしたんだよ突然?デイダラさんってそんなに凄い所で働いてたのか?」

 

「凄いに決まってるわよ!何!?あの人そんな経歴の持ち主だったの!?」

 

 

高城さん達が突然大声で叫んだ。演説の最中だった紫藤先生もこっちを見る程だったけど、すぐに演説に戻っちゃった。

私…本当に何か不味い事言っちゃったかしら?

 

 

 

 

 

 

デイダラside…

 

 

梟型起爆粘土に乗って空を進んでいたオイラ達は、合流場所に行くにはまだまだ時間がたっぷりある為、取り敢えず麗が持ってる【S&W M37】みたいな武器か、静香達の乗ったマイクロバスを上空から探していた。バスがあるであろう橋に続く渋滞は警察が守っていたから後回しにして、今は武器がありそうな警官の遺体がある無人の事故ったパトカーや人員輸送車を見て回っている。

今の所収穫は大破したパトカーから手錠が4つ、警棒3本、【S&W M37】が1丁と弾を幾つか手に入れた。

当然〈奴ら〉と遭遇したが、空を飛んでいたから問題なかった。そして昼頃になった頃、床主大橋に続く道だ爆発が起こり、気になったオイラ達はそこに向かった。

 

 

「何よこれ?…まるで戦争じゃない」

 

「こりゃ確かにひでぇな。しかも、生きてる連中も関係なしに殺してやがるな…」

 

 

そこはまるで戦争の様な状態だった。銃や肉切り包丁を持ったヤクザからサラリーマンなどの一般人の集団が〈奴ら〉や生きた人間問わず銃をぶっ放していた。麗は眼下のそれを見て顔を蒼ざめた。

 

 

「どうして!?あの人達は〈奴ら〉じゃないのに!!」

 

「頭に血が上って、連中にとっちゃ関係ねーんだろうよ。オイラ達と一緒だな…うん」

 

 

銃を持ってるならここも危ねぇな。流れ弾に当たる前に大橋に向かうか。

オイラはそう決めると大橋の方へ向かった。しかし、そこでもパニックが起きていた。警察が橋を抑えて橋の向こうへの立ち入りを規制していた。

盾を構えた機動隊の隊員達が〈奴ら〉を少しずつ倒していき、橋の入り口では噛まれていないかどうかの検査をしてから住民を通している。時間は掛かるが、今の所コレぐらいしかいい方法は無いからな。

オイラが左目に付けたスコープで様子を見ていると、怪しい行動をしている学生の男女4人組を見つけた。拡大してみるとデカいカバンを持っており、中から一万円札の束が見え隠れしている。学生達は柵を乗り越えて橋を渡り始めた。麗もその目立つ4人組に気付いた。

 

 

『そこの学生諸君!無理に橋を渡るのは止めなさい!これは最終警告である!』

 

「ざっけんじゃねぇ!ポリ公の言うことなんざ聞けるかよ!少年法は俺達の味方だぜ!」

 

 

少年達は警察の最終警告を無視してそんな事を叫んでいる。こんな状況で少年法がどうだこうだ言っても意味がねぇんだがなぁ?

 

 

「デイダラ、あの4人は何しているのかしら?」

 

「オイラが知るかよ。ただのバカ共だ…うん」

 

 

オイラがいい終えると、丁度叫んでいた少年が遊撃放水車の放水によって橋から川に落とされた。高圧力の放水を受けた学生達は気を失って川に落ちたからほっといたら溺れ死ぬかもな。

 

 

「容赦ねーな…うん。引き返して物資集めに行くぞ。探したら〈奴ら〉に襲われたヤクザ共の銃と弾が手に入るかもしれねぇ」

 

「……えぇ、分かったわ」

 

 

麗は同じ学生が容赦無く警察に川に落とされたのを見てショックを受けた様子だった。しかし、さっきの戦争状態をみると静香達が心配だな。

……物資集めは早めに切り上げて静香達を探すか。





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