デイダラside…
オイラ達は大橋以外の橋に続く渋滞の上空を旋回しながら静香達が乗ったマイクロバスを探していた。オイラは左目に付けたスコープで、麗はオイラが渡した予備のスコープを使ってもらっている。このスコープ、実は驚いた事に電子機器どころか電気を使ってないのだ。なのに拡大縮小どちらもボタン操作で出来る。
前世から思っていた事だが、『NARUTO』の世界って何気に現代の科学では出来なさそうなアイテム使ってるよな。
「麗、どうだ?静香達は見つかったか?」
「ダメ、まだ見つからない。デイダラは?」
「見つけてるならこんな事聞かねーだろ…うん」
しかしホントに全然見つからねぇな。もしかしてこことは違う橋に向かったのか?
「もう少し探したら別の所に行くぞ。この大渋滞だと静香達も橋を渡れてない筈だからな」
「分かったわ。そうしましょう」
梟型起爆粘土を操作して1度橋から渋滞の終わりまで飛んで回った。この橋も床主大橋の様に交通規制がされている。渋滞の最後尾辺りは機動隊と〈奴ら〉が戦っており、市民達は車を捨てて自分の足で逃げている。
これが映画の撮影か町ぐるみのドッキリで〜す♪…とかだったらどれだけ良かった事か……あ、その場合オイラ達は殺人、窃盗、バイクのノーヘル、強盗、銃刀法違反、その他もろもろで刑務所行きか。…あ、刑務所に逃げるって手もあるか?取り敢えず静香達と合流しねーと始まらねぇ。
ホントにどこにいるんだよあいつら?
「……ねぇ、ちょっと聞いてもいい?」
「ん?どうした?」
オイラが色々考えていると、麗がふと思い浮かんだかのように質問してきた。
「デイダラって携帯持ってないの?」
「………あ。その手があったか」
しまった完全に忘れてた。今まで静香と電話でろくに話した事なかったから忘れていた。うっわだせぇ…そうだよ携帯をこっちから掛ければ幾ら機械音痴の静香でも出る事ぐらい出来ると思うし、静香がダメでも周りに孝や冴子達がいるじゃねぇか。
オイラはこんな簡単な事を思い浮かばなかった自分を恥ずかしく思いながらポケットから携帯電話を取り出した。
「もしかして…忘れてたの?」
「…静香達に言うなよ…うん」
クスクス笑っている麗に静香達には黙っているよう頼み、オイラは静香の携帯電話の番号に掛けた。
★
高城 沙耶side…
もうすぐ4時…この調子じゃ宮本達との待ち合わせ時間に間に合わないわね。バスを捨てて別の橋を目指した方がいいわね。何より、後ろの席の方がヤバくなって来てるし。
「こういう時だからこそ、我々は藤見学園の者としての、誇りを忘れてはならないのです!その意味で、バスを飛び出した宮本さん、そして彼女を追ってバスを降りたあの男は、皆さんの仲間に相応しくなかったのです!生き残る為に、団結しましょう!」
紫藤は私達以外の生徒達にずっとあの調子で演説…いえ、最早洗脳を続けている。既に私と毒島先輩、デブオタ、小室、静香先生以外の生徒達はみんな紫藤を信頼しきった目で見つめている。
「マジヤバいわよ…」
「確かにな…アレではまるで、信仰宗教の勧誘だ」
「まるでじゃなくてまんまその通りよ。話を聞いている連中を見てみなさい。宗教カルト…紫藤教の始まりを目の当たりにしてるのよ。私達は…」
「洒落になってねぇな。麗の予言は見事に的中した。あいつ等は助けるんじゃなかった」
私以外にも小室と毒島先輩は険しい顔で紫藤達を見ていた。これは一刻も早くバスを捨てて宮本達と合流しないと…。
「道がこの有様では、バスを捨てるしかないな。早く行かねば暁月さん達との待ち合わせ時間に遅れてしまう」
「はぁ…静香先生があいつの電話番号を知ってたら、今頃バスを捨てて紫藤達から離れられたのに」
「うぅ…ごめんなさい」
静香先生は申し訳なさそうに頭を下げた。それにしても携帯の扱いすら上手く出来ていないのに、よくここまでバスを運転出来たわね。
「しかしどうする?どうにか橋を渡って東署に向かわねば本当に待ち合わせに間に合わんぞ?」
「なんか、随分と暁月さんとの待ち合わせを気にしますね?ご両親とか心配じゃないんですか?」
確かにさっきから待ち合わせの約束を気にしてるわね?何か理由があるのかしら?
「心配だが、家族は父1人だし、国外の道場にいる。つまり、今の私にとって守るべきは、暁月さんとの待ち合わせの約束以外には、自分の命だけなのだ。まぁ、静香先生の話を聞いてから一度手合わせを願いたいと思ってはいるが…この状況ではな」
「そういえば暁月さん、剣道や柔道の試合で無敗記録残してるんでしたね」
毒島先輩の話にデブオタが思い出した様に言った。静香先生にあいつ…暁月が県警の特殊急襲部隊の元隊員と聞いてから、暁月の事を色々聞いた。その内の1つにあった剣道や柔道などの試合に一度も負けた事がないという話を聞いてから毒島先輩が暁月に興味を持ち始めたのだ。
「皆さん、お家はどこなの?」
「僕と高城は橋の向こう側です」
「あ、僕も両親は近所にいないんで…その、高城さんと一緒なら…」
キモッ!モジモジしながら言わないでよデブオタ!!
モジモジしながらこっちを見るデブオタから少し引くと、ピリリリリ♪と携帯の着信音が鳴った。私はこの中で携帯を持っているであろう静香先生を見ると、予想は的中し、手には着信音を発し続ける携帯があった。静香先生はオロオロした様子で携帯を開くと、途端に嬉しそうな顔になった。
「デイちゃんからだわ!良かった〜♪無事だったのね♪」
「ちょ!それより早く電話に出て下さい!」
「あ!そうだったわね!《ピッ!》はーい!もしも〜し?」
なんか……ホントに嬉しそうね。静香先生。
私が静香先生を見ていると、先生の電話から声が漏れてきた。
『よぉ静香。悪いが今どこにいるか教えてくれねぇか?』
「ふぇ?え〜〜っと……ここどこだっけ?」
「(あ、コレはダメね)静香先生、ちょっと電話代わって」
私は静香先生に電話を代わってもらい、暁月と話をする事にした。
「もしもし?聞こえてるかしら?」
『あん?その声…高城か?ちょうどいいな…うん。静香じゃちょっとダメな感じがしたからな。お前等、今どこにいる?』
「御別橋の渋滞の中よ。でもここに来る必要はないわ。もうすぐバスを捨てて別の橋を目指そうと思ってたから」
『………紫藤って教師が何かしたのか?』
へぇ?ピンポイントで当ててきたわね。可能性は他にもあった筈だけど?
「えぇ、今や紫藤教の教祖として宗教勧誘中よ」
『成る程な…うん。まぁちょうどオイラ達も他の橋回り終えて次が御別橋だったから取り敢えず合流はするぞ…うん』
「早いわね?どうだったの?」
『全部警察が交通規制をしてやがった。無理に渡ろうとしたら学生でも容赦してなかったな…うん』
成る程ね。じゃあ今日は橋を渡るよりどこかで泊まった方がいいわね。とにかく、暁月達の方から来てくれるなら早めに来てもらいましょうか。
「そう。じゃあ取り敢えず合流しましょう。ちょうどすぐそこに歩道橋があるわ。バスの周りは軽自動車ぐらいしかないから、すぐに見つかる筈よ」
『了解した……とか言ってる間に見つけた。すぐ行くぜ…うん』ブツッ!
暁月はそう言い残して電話を切った。その後私が携帯を静香先生に返していると、バスの天井からバン!と何かが落ちて来たような音が響き、洗脳をしていた紫藤やされていた生徒達、そして私達は上を見上げた。静かにしているとバスのドアがコンコンと叩かれ、ドアを見ると、窓の外に暁月と宮本がいた。
★
デイダラside…
「デイちゃん、無事で良かったわ♪」
「デイちゃん言うな!責めて『ちゃん』は止めろ『ちゃん』は!後今抱き付くのは止めろ…うん!」
オイラはバスに入った瞬間抱き付いてきた静香をどうにか引き剝がしながら『デイちゃん』呼びの訂正を求めた。というか力強いなお前!
「イチャイチャするのは後にしてくれないかしら?」
「ちょっと静香先生!何やってるんですか!?」///
「あら宮本さん!土偶ね♪」
「静香先生、それ多分奇遇です」
オイラも別にイチャイチャしてる訳じゃねぇっての!ってそれどころじゃなかったな。バスを捨てて逃げるんだったな。
「分かってるって高城。準備は出来てるのか?…うん?」
「えぇ、そもそも持って行く物はほとんど無いし」
「よし、取り敢えず外に出るぞ…うん」
オイラ達が外に出ようとバスの扉を開けると、ずっと見ていた紫藤が待ったを掛けた。
「何をしておられるのですか?皆さん?宮本さん達が戻って来た今、ここは一致団結して…」
「御遠慮するわ、紫藤先生。私達には私達の目的があるの。修学旅行じゃあるまいし、あんたに付き合う義理は無いわ」
気味の悪い笑みを浮かべる紫藤に沙耶が堂々と言った。紫藤は気にした様子はないが、後ろにいるオイラが蹴り飛ばした金髪チャラ男は怒りの形相だ。
「バスはテメェ等にくれてやる。安心しな…うん」
「……ほう?貴方方がそう決めたのならどうぞご自由に、高城さん。何しろ日本は、『自由の国』…ですからねぇ。ククッ……しかし」
紫藤は舌なめずりをしながらある一点を見つめた。その視線の先にあるのは冴子でもオイラでも、ましてや沙耶でもない。もっと後ろ…静香だった。
「貴女は困りますねぇ……鞠川先生」
「ふぇ?なんで私?」
「現状で医師を失うのは、マイナスが大き過ぎます。どうです?残ってもらえ「普通に嫌です」……は?」
眼鏡をクイッと上げながら話していた紫藤は静香の返事を聞いて呆けた顔をした。ぶっちゃけるとオイラも静香が即答した事に驚いていた。
「な、何故です!?こちらにも、貴女を頼りにする生徒が居るのですよ!?」
「頼りにしてくれているのはデイちゃん達も同じだし、デイちゃん達と一緒にいた方が安全だもの。それに、デイちゃんをバカにした紫藤先生は…こう言ったらダメなんでしょうけど、正直嫌いなの」
デイちゃんは止めろ静香。てか何?こいつ等オイラをバカにしやがったのか?
オイラはそれに腹が立ってポーチに手を入れ、普通よりかなり少量の起爆粘土を用意した。
「で、ですが《タシュッ!》…ッ!!ひ、平野君?」
静香に断られたにも関わらず引き止めようとした紫藤の頬を、コータの放った釘が掠め、傷を付けた。
「平野、今の弾…態と外したな?」
「暁月さんの言う通りですよ。態と外したんです」
「き、君はそんな乱暴な生徒では…」
釘打ち機を構えて紫藤を睨むコータに、紫藤は慌てて落ち着かせようと声を掛けたが、それは逆効果だった。
「俺が学校で何人片付けたと思ってるんです?大体…お前は前から俺の事バカにしてやがったじゃねぇかぁぁぁぁ!!ずっと我慢してきた…普通でいたかったから。でも、もうそんな必要なんてない。普通なんてなんの意味もない!だから俺は…殺せる。生きた人間だって殺せる!」
「ッ!?…ひ、平野君…そ、そんな事は…」
「ハハッ♪言うなぁ平野…いやコータ!良く言ったぜ…うん!よし、殿はオイラが務める。お前等先に行け!…うん!」
オイラはコータと紫藤の間に立つと、起爆粘土を持っていない方の手を紫藤達に見えるように挙げ、舌を出す『口』を見せた。それを見た紫藤達は悲鳴を上げてバスの後方へ逃げた。冴子はオイラを見てクスリと笑うと、開いたドアから静香達を連れて次々と出て行った。10秒もすればバスにはオイラと紫藤達しかいなくなった。
「テメェ等、オイラの事をバカにしてやがったらしいな?そんなお前等にプレゼントだ…うん」
「あ、貴方は…何者ですか!?」
オイラは震え声で聞いてくる紫藤に作った作品を放り投げた。それは小さな蜂の形をしていた。蜂型起爆粘土は自身の羽を動かして自分から紫藤達の前に滞空した。
オイラはニヤリと笑いながら印を結んだ。
「オイラか?オイラは…アーティストだ。…喝ッ!!」
パァァンッ!!!!!
普通より弱めに作った蜂型起爆粘土は爆竹を4つ同時に破裂させた様な音を出して爆発した。紫藤達が悲鳴を上げて頭を伏せた隙にオイラも静香達を追ってバスを飛び降りた。歩道橋を走って行く静香達に一瞬で追い付くと、オイラに気付いた冴子がこれからの行き先を聞いて来た。
「それで、これからどこに向かうのだ?」
「ここから少し離れた場所に、オイラとオイラの幼馴染の住んでる家がある。今日はそこに泊まるぞ…うん」
「分かった。道案内は任せる」
こうしてオイラ達は紫藤達と別れ、リカの借りている部屋があるアパートを目指した。