学園黙示録〜暁の芸術家になった転生者〜   作:☆桜椛★

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最後辺りをちょっと書き変えました。


第14話だ…うん!

小室 孝side…

 

 

「リカ!ここにはオイラ以外の男だっているんだぞ!?ちゃんとした服を着ろ!…うん!」

 

「何よ?いつもよりはマシでしょう?」

 

 

デイダラさんは僕等には刺激の強過ぎる服を着て階段を登って来たリカさんに顔を少し赤くしながらも服装を注意した。男子高校生の僕と平野にとって今のリカさんの服装はヤバい。

と言うか、あの服よりヤバいのがあるのか……///

デイダラさんはリカさんに自分が着ていた外套を着せると、リカさんと一緒に下に降りて行った。

 

 

「平野…大丈夫か?」

 

「うぇ?…うん。僕見張りに行ってくる……」

 

 

平野はフラフラとベランダに出て行った。しばらく僕もだいぶ落ち着いてきた。水を飲みに行きたいが、下に行ったら多分着替え中のリカさんとか居そうだからもう少ししたら下に行こう。

 

 

「それにしても、これからどうなるんだろうな…」

 

 

さっきのテレビで見た感じ、警察も手に負えない状態になっているのは間違いないだろう。警官が市民に向けて拳銃を向け、射殺するなど普通ではあり得る事じゃない。すぐに動いた方がいいのではと考えたが、それはデイダラさんに止められた。取り敢えず今日はここに泊まって、明日の朝橋を渡って1番近い高城の家に行ってみよう。

 

 

 

 

 

 

デイダラside…

 

 

オイラは下に降りた後、リカにもう少しマシな服を着るように言ったが、なんかもうどうでもよくなっちまった。何故なら下に降りたらリカとどっこいどっこいの服装をしている麗達がおり、静香に至っては体にバスタオルを巻いただけという完全にアウトな服装をしていたからだ。しかも静香は風呂から上がった後に冷蔵庫にあった酒を飲んだようで、さっきからオイラに絡んでくるのだ。

 

 

「あはは〜☆デイちゃ〜ん♪はれ?デイちゃん、きょーはよく首か回ってりゅね〜?」

 

「回ってねーよ!…うん!どんだけ酔っ払ってんだ静香!!」

 

 

こいつベロンベロンに酔っ払ってやがる。まぁこいつはいい…訳ではないが、大体静香は酒を飲むとこんな感じになる。テーブルに座るオイラの腕に絡み付いてくるのももう慣れた。だが問題は……。

 

 

「だ〜か〜ら〜!孝は人の気持ちを全っっっっ然!考えてくれないの〜!!分かる〜!?」

 

「なんでお前まで酔っ払ってんだよ…」

 

 

静香とは反対側の腕にグチグチ言っている麗が絡み付いている事だ。手に空になったお酒の缶を握っており、顔がほんのり赤い所を見るに、麗もお酒を飲んでいるようだ。何やってんだよ麗?お前学生だろ?酒は成人してからにしないとダメだろうが。

 

 

「あらあら、両手に花ってヤツね。デイダラ」

 

「笑いながら言ってんじゃねーよ…うん」

 

 

テーブルの向かい側には缶ビールを飲みながらニヤニヤ笑うリカが座っている。その隣には溜め息を吐いている沙耶がいる。キッチンには現在なんとか着せたシャツの上にエプロンを掛け、下はもう下着しか履いていないというギリギリアウトな服装の冴子が料理をしている。明日の弁当を作るのだそうだ。

 

 

「う〜〜……デイちゃ〜ん…スゥ…スゥ…」

 

「あら?静香寝ちゃった?」

 

「みたいだな…うん。悪いがリカ、静香をどっかに寝かしてやってくれ」

 

 

「了解」と言いながらリカは席を立ってオイラの腕に絡み付いて寝ている静香を引き剥がしてソファーに寝かした。

 

 

「いつ空港に戻るんだ?」

 

「そうねぇ…後20分程したら向こうに戻るわ。あ、デイダラ何か食べる物ない?夕飯まだ食べてないから」

 

「あん?じゃあ…サンドイッチでいいか?」

 

「ありがと」

 

 

オイラはポケットから取り出したカードからコンビニでいただいたサンドイッチを開封し、リカに渡した。リカは礼を言いながらサンドイッチを食べ始めた。因みにカツサンドである。

パクパクとカツサンドを食べるリカにオイラは聞きたかった事を聞くことにした。

 

 

「リカはいつ頃オイラ達と行動しようと思ってんだ?」

 

「そうねぇ……もう少しだけ空港にいようと思ってるわ。何かあったらこっちから連絡するわ」

 

「了解だ…うん。こっちも何かあったら連絡する」

 

 

リカは少し考えてからそう言った。それからしばらくリカと今後の話をしていると、麗が「ム〜〜!」と言いながらオイラの手の甲をつねって来た。地味に痛いんだが?

 

 

「ねぇ〜!聞いてるのデイダラ〜!?」

 

「へいへい、どうした麗?」

 

 

それからしばらくの間オイラは麗の話を黙って聞くことになった。酒の所為かは不明だが、若干幼児退行してる様な感じがする。最初は孝の事でグチグチ言っていたのだが、段々とオイラが人間のまま殺した永君の事や、麗の両親の話になっていった。リカは麗が話している途中に自分の銃の扱いや注意事項を上の孝とコータに教えに行った。一応後少ししたら空港に戻る為、既に来た時の服装に戻っており、あの2人も大丈夫だろう。

 

 

「どうしてこんな事になっちゃったのかな?…世界はこんな事になっちゃうし……永は死んじゃうし…」

 

 

麗は最終的には俯いて泣き始めてしまった。流石に泣かれたらオイラは何を言えばいいのか分からねーから黙って麗の頭を撫でてやる事にした。そして麗が落ち着き始めた頃、外から犬の鳴き声が聞こえて来た。麗もそれに気付いて声のする外の方を見る。

 

 

ワン!ワンワン!ワン!

 

「…?わんこが吠えてる。…近いわよ?」

 

「……ちょっと上から外を見てくる。ここで待ってろ…うん」

 

 

オイラは麗にそう言って席を立ち、2階に上がって行った。2階に上がると孝とコータ、そしてリカがそれぞれ銃を持ってベランダに出ていた。

 

 

「リカ、何かあったのか?」

 

「ちょっとやばいわね。犬が〈奴ら〉を威嚇して吠えるからこの辺りに残ってた〈奴ら〉が集まり始めたわ」

 

「マジかよ…」

 

 

オイラもベランダから下を覗くと、そこそこの数の〈奴ら〉が集まっていやがった。だがやはり柵は乗り越える事が出来ない様で、アパートの周りに群がるだけで済んでいる。…まぁ、それはオイラからしたらだがな。

 

 

「……さて、デイダラ。私はそろそろ空港に戻るわ。しばらくの間静香達をお願いね?近い内に私も空港を出るから」

 

「了解だ…うん。お前も気を付けろよ」

 

 

リカはニコリと笑いながら頷き、分身に持たせていた自分の携帯に電話した。電話を終えて少しすると、リカはボフン!と煙に包まれて空港に戻って行った。手を振りながら煙に包まれて消えて行ったリカに手を振り返していると、外から銃声が聞こえて来た。

厄介な事になりそうだな。

 

 

 

 

 

 

毒島 冴子side…

 

 

私は風呂から上がった後、キッチンを借りて明日の弁当を作っていた。完成した料理を重箱に入れていると、外から銃声が聞こえて来た。

リカさんの話では私達に銃を貸していただけると聞いていたのだが、音に反応する〈奴ら〉を試し撃ちの的にするとは思えない。となると生存者が近くにいるとみていいだろう。

私は一旦作業を止めて2階に向かった。皆はベランダにいた。リカさんの姿は見えなかったが、風呂場で教えてもらった忍術で帰ったのだろう。

 

 

「どうした?先程から銃声が聞こえて来るのだが…何か問題か?」

 

「毒島先輩。実はさっきからずっと外を観察していたのですが…状況が更に悪化しているんです」

 

「何?…私にも見せてくれないか?」

 

 

私は平野君から双眼鏡を借り、銃声がする方を見た。そこには1人の青年が銃を構え、手当たり次第に〈奴ら〉を撃ち続けていた。しかし弾は頭部には当たっておらず、倒れた〈奴ら〉は起き上がり、再び青年を追っていく。

そして遂に彼は〈奴ら〉に囲まれてしまい。食われてしまった。

 

 

「……確かに、悪化しているな」

 

「あぁ…おそらく、これから更に悪化していくだろうな…うん」

 

 

私の隣で目に付けた機械?を使って彼の様子を見ていた暁月さんが同意した。すると銃を握り締めていた小室君が口を開いた。

 

 

「ッ!畜生…!酷過ぎる!!」

 

「おい、待て小室。お前、その銃を持ってどこに行く気だ?…うん?」

 

 

中へ向かおうとした小室君を暁月さんが肩を掴んで止めた。止められた小室君は何故止めるのだと言いたげな顔で暁月さんの方を向いた。

 

 

「決まってますよ!〈奴ら〉を撃って、みんなを助けに行くんですよ!」

 

「忘れたのか?〈奴ら〉は音に反応して襲って来る。銃なんか撃ったら銃声で只でさえ集まりつつある〈奴ら〉を更に呼び寄せちまうだろ…うん。いいか?オイラ達には生きた人間を全員救う力も物資もない。良くて後2、3人が限界だ…うん」

 

 

暁月さんは小室君を鋭い視線を向けている。その視線を受けて小室君は後退った。暁月さんは小室君から銃を取り上げると、それを見える様に持ち上げながら話を続けた。

 

 

「毒島、部屋の電気を消してくれ…うん。生きてる奴等は建物の灯りやオイラ達の姿を見つけると、助けを求める為に集まって来るからな…うん。後、今の内に暗闇に目を慣らしておけ。いつ何が起こるか分からないからな…うん」

 

 

私は暁月さんに言われた通り、部屋の電気を消した。彼の言う通り、我々には生きた人間を全員救う力はない。それにこれから先、ただ漢らしくするだけでは生きて行く事は出来ないだろう。

 

 

「……デイダラさんは、もう少し違う考えだと思ってました」

 

「事実だからな。オイラやリカは忍術を使えるが、忍術も万能じゃねーからな…うん。助けられる人数には限りがあるって事を忘れるなよ?…うん」

 

 

暁月さんはそう言い残すと部屋の中へ入って行った。私もそれに続いて部屋に入った。しかし下に降りようとすると、暁月さんに呼び止められた。

 

 

「毒島、ちょっといいか?」

 

「ん?何か用だろうか?」

 

「あぁ、コレを渡して置こうと思ってな…うん」

 

 

暁月さんはそう言って私に向かって何かを放り投げ、私はそれを掴んだ。暗くて最初は何か分からなかったが、段々暗闇に目が慣れて来ると、それは1本の刀だと分かった。

 

 

「お前にはそれを渡しておく。これから先木刀1本じゃ心許ないからな…うん」

 

 

暁月さんはそう言って下に降りて行った。確かにこれから先木刀1本では心許ないと思っていたが、まさか本物の刀を渡されるとは思わなかった。それに刀身を見た所そこらの刀よりいい刀だ。

彼には本当に世話になってばかりだな。

私がそう思いながら刀を鞘に納めると、ベランダから平野君の声が聞こえて来た。

 

 

「ロックンローーール!!!」

ダァァンッ!!

 

 

平野君の声に続いて聞こえる銃声。今度は平野君が撃っている様だ。するとベランダから小室君が入って来た。

 

 

「どうしたのだ?小室君」

 

「毒島先輩…小さな女の子を助けに行って来ます。どうやら僕、こういう人間らしいです」

 

 

小室君はそう思って下へ降りて行った。私も続いて下に降りると、玄関で宮本君と小室君が話をしていた。彼女も小室君から話を聞いたのだろう。靴を履いて外に出ようとする彼を心配そうに見ている。

 

 

「孝…どうしても行くなら、せめてコレくらいは持って行って」

 

「あぁ、サンキューな麗」

 

 

小室君は彼女から差し出された銃をポケットに入れると、外へ出た。外には暁月さんが持って来たバイクがあるはずだ。おそらくそれを使って女の子を助けに行くのだろう。私と宮本君も彼に続いて外に出る。

 

 

「小室君。言っておくが、銃を過信するな?撃てば〈奴ら〉が群がって来る」

 

「分かってます。でもどうせバイクで音が出ますよ」

 

「バイクは走る為に音を出すのだ。ここの事は任せろ。必ず生きて戻って来るのだぞ?」

 

 

小室君は分かりましたよと言いながらバイクに跨った。私と宮本君は門の前で待機し、彼がエンジンを掛けて走り出したと同時に門を開けた。小室君を乗せたバイクはそのまま〈奴ら〉の隙間を縫う様に走って行った。私と宮本君がそれを見送っていると、背後から声を掛けられた。

 

 

「やっぱり小室の奴は動いたか…うん」

 

「ッ!暁月さん…」

 

 

私達が振り返るとそこには朱色の雲模様がある黒い外套を着た暁月さんが立っていた。いつの間にそこにいたのだろうか?全く気付かなかった。

 

 

「んじゃ、オイラもオイラで迎えの準備をするか…うん」

 

 

暁月さんはニヤリと笑いながら腰にあるポーチに左手を入れながら中に入って行った。彼は自身の作品で小室君の手伝いをするつもりなのだろう。確かに女の子を連れて戻るのは彼の向かった方向にいる〈奴ら〉の数を見て難しい。

彼には本当に世話になってばかりだな。小室君も、私達も。


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