学園黙示録〜暁の芸術家になった転生者〜   作:☆桜椛★

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第16話だ…うん!

デイダラside…

 

 

女の子…ありすちゃんを助けた日の朝、オイラ達は沙耶の家に向かう為に準備をしていた。孝とコータはそれぞれリカの【イサカ M37】と【AR-10】を持って準備完了。オイラは起爆粘土を入れたポーチとは別のポーチに手裏剣と苦無、それと起爆札や煙玉などを入れ、ロッカーの中に入っていた巻物をボンサックに詰め込んで準備を終えた。

因みにちゃんと画用紙とかに入れていた食品や飲み物は、ちゃんと巻物や破れにくい専用のカードに封入している。

で、オイラ達男性陣は準備が終わり、女性陣の準備が終わるのを待っている……のだが。

 

 

「お前等ぁ、準備は終わったか?…うん?」

 

「もう少し待って〜!今着て行く服を決めている最中なの〜!」

 

「同じ言葉をオイラは20分前に聞いたんだがな…うん」

 

 

そう、オイラ達が準備を終えてかれこれ30分ぐらいは経っているのだが、女性陣の準備がまだ終わらないのだ。服はリカから事前に許可を得て、リカの服を着る事になっている。なので、あいつ等の着替えが終わるまでオイラとコータで孝に【イサカ M37】の扱い方を教えていた。

 

 

「…後、この銃は反動が強い。撃つ時は突き出すように構えて、胸の辺りを狙えば大体当たる…うん」

 

「う〜〜ん、一度に聞いたって分からないっスよ。最悪棍棒代りに使いますよ」

 

「でも小室、扱いには十分注意しないと。それに多分小室が思ってるより反動も強いし」

 

 

銃を棍棒代わりとは…随分高価な棍棒だな。しかしそんな事をしたら元の持ち主のリカにぶっ殺されちまうぞ?

オイラが銃をバットみたいに振る孝に深い溜め息を吐いていると、孝の足元にいたあの仔犬がワン!と吠えた。

 

 

「お!相変わらず元気だなぁ」

 

「けど、あんまり吠えるなよ《ジーク》」

 

「「ジーク?」」

 

 

孝が抱き上げる仔犬にそう言ったコータにオイラ達は聞き返した。コータは仔犬を指差しながら説明した。

 

 

「そいつの名前さ。ジークってのは大平洋戦争でアメリカが零戦に付けた渾名さ。小さくてすばしっこいから、そう呼ぶ事にしたんだ」

 

「成る程な。そんじゃジーク、これからよろしくな…うん」

 

「ワン!」

 

 

仔犬改めジークは元気良く1回吠えた。本人…いや、この場合は本犬か?とにかくジーク自身はこの名前を気に入っている様子だ。そんな会話をしていると、やっと着替え終えた女性陣が2階に上がって来た。オイラ達がそっちの方を見てみると、リカの服を着た静香達がいた。麗や沙耶は若干ドヤ顔しているがまぁいいか。

 

 

「やっとか…おぉ?結構似合ってるじゃねーか…うん」

 

「………ホゥ」

 

「フッ…フッ…フッ…フッ…」

 

「ワン!」

 

 

孝は頬を赤らめて呆けており、コータに至ってはなんか不気味な笑い方をしながら顎に手を当てながらじっくり女性陣を眺めている。オイラがちょっとコータから距離を取ると、眼鏡をクイッ上げながら沙耶が話し掛けてきた。

 

 

「それで?準備は終わったけど、なんで2階に来る必要があったのよ?」

 

「確かにそうね。駐車場にあった車も巻物の中にしまっちゃったし」

 

 

駐車場にあった車とはリカの軍用モデルのハンヴィーの事だ。まぁそれで行くのもいいんだが、今は起爆粘土に余裕があるから安全な方法で沙耶の家に向かおうと思ったので、ハンヴィーは巻物に封入してみんなには2階に集まってもらった。

 

 

「ハンヴィーで行くのもいいんだが、橋は塞がってるから無駄に時間が掛かっちまう。川を直接行くのもいいがそれでも日が暮れちまうからな…うん。別の方法で高城の家に向かおうと思ってな」

 

「ならばどうするのだ?」

 

「まぁ、見てろって…うん」

 

 

オイラは両手の『口』に起爆粘土を食わせながらベランダに向かった。麗はオイラの行動を見て何をしようとしているのか察したらしいが、他のみんなはただジッとオイラの行動を見ていた。オイラはベランダから向かいの家の屋根にジャンプして飛び移った。

 

 

「うわ!!凄いジャンプ力!!」

 

「流石は忍だな」

 

 

みんながオイラのジャンプ力を見て驚いている中、オイラは両手の『口』が吐き出した起爆粘土を握って1つの大きめの作品を作り出し、片手で印を結んだ。するとオイラごと包み込む様にボフン!!と煙が立ち上がり、煙が晴れるとオイラは起爆粘土で作った巨大な竜…【C2・ドラゴン】の頭の上に乗っていた。

 

 

「うっわスッゲェ!!ドラゴンじゃんか!!」

 

「凄〜い!ありすドラゴンなんて始めて見た♪」

 

「これは……凄いな」

 

 

ベランダから見ていた孝達は【C2・ドラゴン】を見て驚愕していた。今回はあの沙耶や冴子もかなり驚いた様子だ。

 

 

「この作品で空から行くぞ…うん」

 

 

オイラは【C2・ドラゴン】を操って尻尾をリカの家のベランダにつけた。孝達はそれぞれ荷物を持って恐る恐るといった様子で尻尾を渡って胴体の部分に乗った。全員乗ったのを確認し、落ちない様念の為に胴体の起爆粘土を一部紐状に変えて腰に巻きつけて固定した。

 

 

「じゃ、飛ぶぜ?落っこちるんじゃねーぞ…うん!」

 

 

オイラが印を結ぶと【C2・ドラゴン】は翼を羽ばたかせ、ゆっくりと空へ舞い上がった。段々高くなって行く度に孝達は興奮した様子ではしゃぎ出した。

 

 

「うわぁ!たっか〜〜〜い♪」

 

「なかなか良い景色だな。暁月さんの忍術はこんな事も出来るのか」

 

「やっぱりいい景色ねぇ♪風が気持ちいい♪」

 

「宮本、あんた前に経験した事あったの?」

 

「流石デイちゃんね♡」

 

「デイちゃんは止めろって言ってんだろーが!…うん!」

 

 

静香の奴は相変わらずオイラをデイちゃんと呼びやがるな。いや、注意するだけ無駄だと分かってはいるんだが、言わないと気が済まないからな。

オイラは【C2・ドラゴン】を高城の家に向けて飛ばしながら小さく溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

宮本 麗side…

 

 

「川で阻止出来た……訳じゃないみたいね」

 

「世界中で〈奴ら〉が大量発生したんだ。川1つで防げたら苦労しねーよ…うん」

 

 

私達はデイダラの粘土で出来たドラゴンのお陰で無事に川を渡り、上空から町の様子を観察していた。町は全く人気が無く、〈奴ら〉の姿すら見当たらなかった。みんな生きた人達を追いかけて行ったのかしら?

 

 

「それで高城、お前の家は東坂の2丁目でいいのか?…うん?」

 

「えぇ、そうよ。そこの大きな屋敷が私の家」

 

「もしかしてあの馬鹿デカイ家か?お前あそこの家の奴だったのかよ…うん?」

 

 

高城さんの家かぁ…確かにアレは凄い家だったものね。デイダラの気持ちがなんとなく分かる気がするわ。

 

 

「しかし、妙だな。なんでさっきから〈奴ら〉の姿が見当たらないんだ?」

 

「あ、孝も気付いた?そうなのよね」

 

「…………いや、そうでもねーみてーだ…うん」

 

 

デイダラが下を覗きながらそう言った。私達も落ちない様に下を覗くと、ポツリポツリと〈奴ら〉の姿が見え始めた。やっぱりまだこの辺りにいたんだ。

……あれ?

 

 

「ねぇ、なんだか高城さんの家の方に近づく度に〈奴ら〉の数が増えてない?」

 

「確かに…我々が高城君の家へ近づく度に数が増えていっているな」

 

 

毒島先輩も双眼鏡で下を確認しながら同意した。しばらく飛んでいると、デイダラが何かを見つけた様にある方向をジッと見始めた。私も同じ方向を見てみると、妙な光景が目に入った。

〈奴ら〉が沢山道路を歩き回っているのだが、ある場所を境に〈奴ら〉が前に進んでないのだ。

 

 

「ありゃ……ワイヤーか?」

 

「ワイヤー?」

 

 

私もデイダラから借りたスコープで拡大してよく見てみると、道路を分断する様に、細い線の様なものが太陽の光を反射して見えた。あれで〈奴ら〉が通れない様にしているのね。

 

 

「ワイヤーが張ってあるって事は……この先に生存者がいるんじゃないですか?デイダラさん!」

 

「確かにな。じゃ、このまま高城の家に《パァーン!!》うお!!?」

 

 

デイダラさんが話している途中、突然銃声が鳴り響き、ドラゴンの翼を貫通した。

 

 

 

 

 

 

デイダラside…

 

 

「あっぶねーな!!どこのどいつだ!?撃ってきやがったのは!?アァ!?」

 

「……ッ!暁月さん!一時の方向!!」

 

 

突然撃たれたことに驚いていると、コータが【AR-10】のスコープを覗きながら叫んだ。すぐに左目のスコープで確認すると、ほぼ真下辺りに黒い制服の様なものを着た男性4人組が見えた。1人がアサルトライフルをこちらに向けているところを見ると、撃ってきたのは奴等で間違いないだろうな。

オイラが4人組を観察していると、またさっきの奴が発砲した。オイラは【C2・ドラゴン】を操作して回避行動を取った。放たれた弾丸は先程まで起爆粘土の頭があった場所を通過して行った。

 

 

「きゃあ!!ちょ、ちょっと暁月!気を付けなさいよ!!」

 

「弾が当たるよりかはマシだろうが!…うん!」

 

 

4人組は続けて発砲してきた為オイラは右へ左へと【C2・ドラゴン】を動かして弾を避ける。だが巨体な為1、2発は命中し、翼を貫通、または胴体に減り込むなどしている。

 

 

「野郎!オイラと殺り合おうってか!?上等だぜ…うん!」

 

 

オイラは両手を合わせて印を結んだ。すると【C2・ドラゴン】の球体が連なった様な尻尾が少し短くなり、オイラが乗っている頭部の口がパカッと開いた。口の中には【C2・ドラゴン】が小型化した竜型起爆粘土がいつでも発射出来るようになっている。

オイラが竜型起爆粘土を発射させようとすると、さっきから下の連中を覗いていた沙耶が慌てた様子で止めてきた。

 

 

「あ!ちょ、ちょっと待ちなさい!あの人達は爆破しないで!!」

 

「ハァ!?何言ってんだ高城!こっちはさっきから撃たれてんだぞ…うん!」

 

「あの人達、パパの部下達なのよ!!」

 

「「「「「はぁ!!?」」」」」

 

 

高城の親父さんの部下だと!?そんな奴等がなんでアサルトライフルなんか持ってやがんだ!?お前の親父さん何者!?

 

 

「じゃあ、なんでその人達は私達を撃ってるの?」

 

「普通こんな状況で突然白いドラゴンが飛んで来たら敵だと思うわよ。それにあの人達がいるのはほぼ真下。多分太陽の逆光で私達の姿が見えないから敵と判断して撃ち墜とそうとしてるんだと思うわ」

 

「マジかよ。仕方ねーな、だったら近くを爆撃して怯ませてから逃げるぞ…うん!」

 

 

オイラは4人組の近くにあるバリケードに群がる〈奴ら〉に向けて竜型起爆粘土を発射させた。風邪を切るような音で竜型起爆粘土は飛んで行き、最後尾あたりにいる〈奴ら〉にぶつかりそうな所で声高々に唱えた。

 

 

「喝ッ!!」

ドゴォォォンッ!!!!!

 

 

竜型起爆粘土は〈奴ら〉を巻き込んで盛大に爆発し、4人組は爆発に驚いてそっちの方を向いた。オイラはそのまま4人組の頭上を通り過ぎ、高城の家である屋敷の敷地内にある庭に高城の許可を得て着陸した。

んだがなぁ……。

 

 

「動くな!!銃を捨てて手を上げろ!!」

 

「やっぱ、こうなると思ったぜ…うん」

 

 

着陸した瞬間屋敷の中からさっきの4人組と同じ制服を着た奴等が沢山出て来て、オイラ達に銃を向けて包囲した。


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