学園黙示録〜暁の芸術家になった転生者〜   作:☆桜椛★

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第3話だ…うん!

sideデイダラ…

 

 

「この人殺し!!どうして…どうして永を…永を殺したのよ!?」

 

「おい麗!よせっ!」

 

 

先程まで永の体があった場所で泣いていた麗は恨みの篭った目で永を爆破したオイラを睨み、有らん限りの罵声をオイラに浴びせている。

そりゃ恨むだろう。なんたってオイラは理由はどうであれ、彼女の彼氏を殺したんだからな。麗を抑えていた孝は今にも手に持つ槍でオイラを殺さんとする彼女を止めようと必死になっていた。

 

 

「恨むな…とは言わねぇよ…うん。確かにオイラはお前の彼氏を殺した。恨んで当然だ…うん。だが、オイラはあいつの覚悟を無駄にしたくなかったんだ。そしてあいつは最後の最後までお前等を思って人間のまま死んだ。それだけは絶対に忘れるなよ…うん」

 

 

オイラの言葉を聞いて麗は槍を落とし、その場に座り込んで再び泣き始めた。

さて、最後の言葉を使ってまで頼まれた事だ。この2人の面倒は見ねぇといけねぇ。それにさっきの爆発で他の奴も階段に向かい始めやがった。早くここを離れて静香も回収しなくちゃいけねぇしな。

オイラがこれからの行動を考えていると、麗をなんとか泣き止ませた孝が話し掛けてきた。

 

 

「あの…これからどうするんですか?」

 

「悪いが永君にお前等の事を頼まれたからな。悪いがオイラと一緒に行動してもらうぞ…うん。それでどうするかだが、先ずは職員室に向かおうと思う…うん。静香の奴は多分、自分の車で脱出する為に車の鍵を取りに向かう筈だ。職員室の場所は分かるか?…うん?」

 

「あ、はい。分かります」

 

 

なら道に迷って時間を無駄にする心配は無いな。起爆粘土もまだ残っているし、脱出する際ある程度無茶は出来そうだな。チャクラ量も問題ないから起爆粘土が切れたら別の術でなんとか出来そうだ。

オイラがウエストポーチの中にある起爆粘土の残りを確かめていると、泣き止んだ麗が近寄って来た。

 

 

「あの、さっきは…酷い事言って、ごめんなさい」

 

「気にする事はねぇよ…うん。そもそもオイラは恨まれて当然の事をしたんだ。罵詈雑言を浴びせて当然だ…うん」

 

「で、でも……」

 

「納得いかねぇならあいつの分も生き延びろ。それでチャラだ。さて、悪いがさっきの爆音に反応して〈奴ら〉が集まってやがる。これから職員室に向かうぞ…うん」

 

「ッ!!……はい!!」

 

 

麗は一瞬また泣きそうになったが、それどころじゃないと涙を拭って落とした槍を拾い上げた。孝の方も見てみると緊張した顔で金属バットを握っていた。オイラはポーチの中に手を入れて蜘蛛型起爆粘土を2つ用意した。これだけあればバリケードごと〈奴ら〉を吹き飛ばせる。オイラは蜘蛛型起爆粘土をバリケードの向こうに向かわせた。そして印を結んでから隣の2人に目配せをする。

 

 

「オイラがバリケードごと〈奴ら〉を吹き飛ばす。準備はいいか?…うん?」

 

「「はい!!」」

 

「んじゃ…行くぜ!…喝ッ!!」

ドゴォォンッ!!

 

 

起爆粘土の爆発で予想通りバリケードごと〈奴ら〉を吹き飛ばせたが、思ったより強い爆風によって麗が転びそうになった為すぐに手を貸して転ばないようにした。

 

 

「悪いな、ちと爆風の威力が大きかった…うん」

 

「だ、大丈夫です!早く行きましょう!」

 

 

麗は少し顔を赤くしながらも槍を構えて階段を降りて行った。オイラと孝もすぐにその後を追って階段を駆け下り、3人で職員室に向かった。

 

 

 

 

 

 

宮本 麗side…

 

 

(どうしてこんな事になっちゃったんだろう…?ほんの数時間前までいつも通りだったのに…)

 

 

私はそんな事を思いながら廊下を走っていた。永がモップの先端を捻じ切って作ってくれた槍で偶に遭遇する〈奴ら〉を倒しながら幼馴染の孝とさっき屋上で私を助けてくれた金髪の男の人と一緒に職員室を目指す。私はチラッと隣を走る私を助けてくれた人を見る。

朱色の雲模様がある黒い外套の様な服を着た彼は屋上で〈奴ら〉に殺されそうになった私を助けてくれた。どうやったのかは分からないけど、彼はポーチから取り出した生き物の形をした物を動かして爆発させて〈奴ら〉を倒していた。そして、私の恋人の永を人間として殺した人だ。

 

 

『この人殺し!!』

 

「……ッ!!」

 

 

私は彼に酷い事を口走ってしまった。彼は永の頼みで永を人間として殺してくれた人だ。彼がやってくれなかったら私か孝が永を殺していたかも知れないのに、私は永を殺した彼に『人殺し』と言ったのだ。

それなのに彼は何も言い返さず、それどころか恨んで当然だと怒らずに私の罵声を目を離さず聞いていた。そして私は涙を出し尽くし、自分が口走った事に気付いた。

そしてさっき、職員室に向かう為にバリケードを爆破する前に謝罪したけど、気にするなと許してくれた。それどころか爆風で転びそうになった所を体を支えて転ばない様にしてくれた。

あの時は少し恥ずかしかったからさっさと階段を駆け下りたけど……悪い気はしなかった。

彼は私の事をどう思ってるのかな?

そんな疑問がふと頭をよぎり、彼を再びチラッと見ていると、職員室の方から悲鳴が響き渡った。

 

 

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!』

 

「ッ!?職員室の方からです!」

 

「何ッ!?急ぐぞ!…うん!」

 

 

私達は廊下を走って職員室に向かった。そこにはガス式の釘打ち機に色々取り付けた物を持っている少し太った体に眼鏡を掛けているクラスメイトの《平野(ひらの) コータ》君と、同じクラスメイトのピンク色の髪をツインテールにしている《高城(たかぎ) 沙耶(さや)》さんが〈奴ら〉に襲われていて、高城さんが〈奴ら〉の頭に電気ドリルを刺していた。その音を聞きつけて他の〈奴ら〉が10体程集まって来たがそれを見て彼が動いた。

 

 

「お前等!!〈奴ら〉から離れろ!!」

 

 

その時、私は見間違いかと思った。何故なら、ポーチから出した彼の手に、舌を使って白い塊を吐き出している『口』があったように見えたから。

 

 

 

 

 

 

デイダラside…

 

 

悲鳴を聞きつけて急いで職員室に来てみれば、そこにはガス式の釘打ち機を銃のように構えた眼鏡を掛けた太った少年と、〈奴ら〉の頭に電気ドリルを食らわせているピンク髪のツインテールの少女がいた。

彼女の悲鳴や戦闘の音を聞きつけて廊下の向こうからヨロヨロと歩み寄ってくる〈奴ら〉を見つけた時、その近くに木刀を構えた紫色の長髪美少女と金髪の長髪天然校医の静香がいた為オイラはすかさず両手をポーチに入れて起爆粘土を用意した。

 

 

「お前等!!〈奴ら〉から離れろ!!」

 

「ッ!?分かった!!」

 

「ふぇ?デイちゃん!?わっ!ちょっと待って!!」

 

「デイちゃん言うなっていつも言ってるだろ静香!…うん!」

 

 

オイラはついいつもの調子で静香に怒鳴り返してしまった。

『デイちゃん』ってのは静香が髪を下ろした姿が女の子みたいだと言ってオイラに付けやがった渾名だ。オイラは何度も何度もその渾名は止めろと言っているのだが、「だってぇ、デイちゃんはデイちゃんでしょ?」と、こんな感じで首を傾げるのだ。

まぁオイラの渾名はどうでもいい!…いや、どうでも良くないが、今は戦闘に集中だ。オイラは4体のムカデ型起爆粘土で〈奴ら〉の動きを封じた。眼鏡少年と木刀美少女は何やら驚いた顔をしているが、気にせず印を結ぶ。

 

 

「芸術は、爆発だ。……喝ッ!!」

ドゴォォンッ!!!

 

 

オイラが声高々に唱えると〈奴ら〉の体に巻き付いていたムカデ型起爆粘土は爆発を起こし、〈奴ら〉を吹き飛ばした。他に〈奴ら〉がいないのを確認すると、「お〜!」と言いながら能天気に拍手している静香に呆れながらも、見た所〈奴ら〉に噛まれていない様子でホッとした。

取り敢えずオイラ達は音を立て過ぎた。これ以上集まってもらっても困るので、翼が4つある鳥型起爆粘土を2つ作って遠くに飛ばした。それを目で追っていた木刀美少女がオイラに話し掛けて来た。

 

 

「失礼、先程の爆発は貴方のもので間違いないだろうか?それと貴方は?鞠川校医と知り合いの様だが……」

 

「悪いが、それに答える前に職員室に入った方がいい、話は安全を確保してからだ…うん。……そろそろだな。…喝ッ!!」

 

 

オイラが印を結んで唱えると遠くの方で2つの爆音が聞こえて来た。これで〈奴ら〉は爆発地点に集まる筈だ。

さて、それよりもあのピンク髪の少女が心配だな。さっきから俯いたまま顔を上げようとしないし、手が震えてるしな。

オイラが話し掛けようかと思っていたら、その前に先程の木刀美少女が彼女に歩み寄った。

 

 

「君、怪我は無いか?」

 

「ッ!あ、当たり前よ。私は天才なんだから…こんな奴等なんか、天才の私が本気を出したら……」

 

 

大丈夫そうに振る舞おうとしているが、声が震えているし、無意識なのか自分の体を抱き締めている。それに気付いた木刀美少女は彼女の肩にポンと手を置いて落ち着かせる様な声で話し掛けた。

 

 

「…もういい。十分だ」

 

「…ッ!………あ」

 

 

ピンク髪の少女は視線を逸らした先にある鏡に映る自分の姿を見た。制服は先程の攻撃による返り血で汚れており、顔にも血が付着していた。

 

 

「あぁ…こんなに汚れちゃった。……ママに言って、クリーニングに出さないと…」

 

 

震えながらそんな事を言う彼女を孝が背後から見つめていた。彼女はそれに気付くと耐え切れなくなったのか、木刀美少女に抱き付いて泣き声を上げた。オイラ達は、ただ彼女が泣き止むまで見守っていた。

 

 

 

 

 

 

毒島 冴子side…

 

 

私は《毒島(ぶすじま) 冴子(さえこ)》。これでも剣道部の主将をしている。

私は剣道場にいた為教室棟の混乱には巻き込まれずに済んだ。それに私の愛用する木刀を置いてあったのも幸いした。

教室棟に向かう頃には既に学校中で人が人を喰らう事が行われていた。あちこちから悲鳴が上がり、噛まれて死んだ生徒達も喰らう側として蘇り、生者を襲っていた。

彼等は私にも襲い掛かって来た。血を流し、呻き声を上げながら私を喰らおうとしてくる様は最早人間とは思えなかった。しかも普通の人間より力が強く、1体ずつなら余裕を持って倒せるが、囲まれでもしたら、私に勝機は無いだろう。

生き残った人間を探して校内を進んでいると、保健室で鞠川校医を助ける事が出来たが、彼女を守っていた男子生徒…2年生の《石井(いしい)》君を助ける事が出来なかった。彼も噛まれた者がどうなるか知っており、彼が人である内に私がとどめを刺した。

彼の最後を見届けた後、私は鞠川校医を連れて血塗れの生徒を避けながら職員室に向かっていた。鞠川校医の車の鍵が職員室にあると言うのだ。

 

 

「職員室とは…まったく面倒な事を言ってくれる」

 

「だってぇ、車のキーはみんなあそこなんだもん」

 

 

ここから少し離れた場所にある職員室に向かっているが、途中で鞠川校医のスカートが走るのに向かなかった為少し破かせてもらった。鞠川校医は文句を言っていたが、私はそれより先程から聞こえる爆発音が気になる。音の大きさからして、敷地内である事に間違い無いだろう。

ようやく職員室に辿り着いたが、そこには2年生の生き残り達と、黒い服を見に纏った金髪の男性がいた。どうやら鞠川校医と知り合いらしいが、彼には驚かされた。

彼が投げた小さなムカデの形をした物が煙に包まれて巨大化した上に動き出し、血塗れの生徒達に巻き付いて拘束すると爆発した。先程まで聞こえて来た爆発音は彼の仕業だろう。

だがそれだけではなかった。彼の姿を見た瞬間、彼がこの中で1番強いと感じたのだ。彼から発せられた指示に反射的に従ったのもその所為だろう。

鞠川校医と知り合いの様だが…彼は一体何者なのだろうか?


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