学園黙示録〜暁の芸術家になった転生者〜   作:☆桜椛★

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第7話だ…うん!

デイダラside…

 

 

なんとか藤見学園から脱出したオイラ達は、静香の運転するマイクロバスで床主市の町中を走っていた。いつもは通行人や自動車などで賑わっていた町は不気味な程人気が無く、道端や建物の窓には血痕が付いている。偶に見掛ける人影は全て〈奴ら〉だった。

……それより、オイラは後ろで騒いでいる金髪チャラ男にイライラしてしょうがない。

 

 

「チッ!だからよぉ!このまま進んでも危険なだけだってばぁ!」

 

 

後ろの方の席では、あの紫藤と一緒に乗り込んで来た金髪の不良みたいなガキが喚き続けていた。あいつ、さっきからギャーギャーうるせぇんだよな。

 

 

「大体よぉ、なんで俺等まで小室達に付き合わなきゃならねぇんだ!?お前等勝手に町に戻るって決めただけだろぉ?学校の中で安全な場所を探した方が良かったんじゃねーのかぁ!?」

 

「そうだよ!どこかに立て篭もった方が…さっきのコンビニとか!」

 

 

金髪のガキに続いて今度は気の弱そうなガキも混ざりやがった。

オイラ以外にも沙耶やコータ、孝に麗が後ろで喚く金髪のガキを睨んでいる。するとさっきから黙って運転していた静香が急ブレーキを掛け、運転席から後ろを向いた。

 

 

「いい加減にしてよ!!こんなんじゃ運転なんか出来ない!!」

 

 

静香が珍しく怒鳴った。確かに真剣に運転している最中にずっと喚き続けられたら運転に集中出来ない。しかし、静香に怒られた金髪のガキは負けじと言い返そうとした。

 

 

「ッ!……()んだよ!!」

 

「ならば君はどうしたいのだ?」

 

「クッ……!!!」

 

 

しかしそれは先程から腕を組んで目を閉じていた冴子の問いによって防がれた。すると金髪のガキは一瞬悔しそうな顔をしたが、今度は何故か孝に指を指して喚き始めた。

 

 

「気に入らねぇんだよ!!こいつが、気に入らねぇんだ!!」

 

 

それを聞いたコータが釘打ち機を構えて立ち上がろうとするが、隣に座っていた沙耶に止められた。一方で、矛先を向けられた孝は金髪のガキを睨みながら立ち上がった。

 

 

「何がだよ?…俺がいつお前になんか言ったよ?」

 

「ッ!!…テンメェ!!」

 

 

金髪のガキは孝の言葉が癇に障ったのか、孝に向かって殴り掛かった。それを見た瞬間、麗がモップで作った槍を構えた。このままオイラが何もしなくても問題無いだろうが……。

 

 

ドゴッ!「ゴハァッ!!?」

 

「小室と宮本を頼むって頼まれてるんでな…うん」

 

 

オイラは金髪のガキと孝の間に入り、金髪のガキの腹に少し強めに蹴りを打ち込んだ。金髪のガキは胃液を逆流させながらバスの後方へ吹っ飛び、腹を押さえて蹲った。

 

 

「さっきからギャーギャーうるせぇんだよ…うん。喚きてぇなら今すぐバスを降りろ。そもそも、なんでテメェ等はこのバスに乗ったんだ?学校に篭った方が安全なんだろ?…うん?」

 

「ゴホッ!ゴホッ!…んだよ…テメェ…」

 

 

腹を押さえながらオイラを睨むガキを鼻で笑っていると、パチパチと拍手しながら紫藤が歩み寄って来た。

なんの用だよ?

 

 

「いやぁ〜、素晴らしい身のこなしでしたねぇ?貴方は学校の者ではないようですが、どちら様でしょうか?」

 

「あ?テメェに名乗る気はねぇよ…うん」

 

 

こいつ、まるでオイラを品定めする様な目を向けて来やがる。オイラが名乗らないと言っても笑みをほとんど変えずに「そうですか。それは残念です」と笑いながら肩を竦めた。

 

 

「まぁしかし、こうして争いが起こるのは、私の意見の証明にもなっていますねぇ?」

 

「何が言いてぇんだ?」

 

 

紫藤はオイラの問いに眼鏡をクイッと上げてオイラの顔を覗き込む様にしながら質問に答えた。

 

 

「やはり、リーダーが必要なのですよ。我々には」

 

「で?候補者は1人きりって訳?」

 

「私は教師ですよぉ?高城さん。そして皆さんは学生です」

 

 

紫藤が肘を乗せている席に座っていた沙耶が紫藤を睨みながら聞くが、紫藤は顔の表情を変える事なく質問に答えた。紫藤は両手を広げながらまるで選挙の演説の様な話し方をする。

 

 

「それだけでも資格の有無はハッキリしています!私なら…問題が起きない様に手を打てますよ!?ど〜ですか皆さん!?」

 

 

紫藤はバスの前側…つまりオイラや孝、麗などのチームが自分を快くないと思っているのを察知すると、自分が連れて来た生徒達が座っている後方を向きながら演説を続ける。

てか、教師で資格があるなら静香だって教師だし、オイラに至っては辞めたとは言え、1年前まで県警特殊急襲部隊の隊員だったぞ?

しかし紫藤の演説は効果を発揮し、1人、また1人と、席を立ち上がって紫藤にパチパチと拍手を送った。紫藤はそれを聞いてクネクネしながらお辞儀をし、再びこっちを向いた。

 

 

「と、いう訳で…多数決で私がリーダーという事に成りました」

 

(これ多数決で決めるんだったのかよ…うん)

 

 

オイラがニヤニヤ笑っている紫藤に呆れていると、背後でバンッ!と勢い良く扉が開く音がして、振り返ると麗がバスから降りて歩き出していた。孝は麗の行動に驚いてバスの中から呼び止めた。

 

 

「麗!?おい!ちょっと待てって!」

 

「…ッ!嫌よ!そんな奴と、絶対に一緒に居たくなんかない!!」

 

 

麗の迫力に孝はグッと押し黙った。オイラはリーダー(仮)殿はどうするのかとチラッと紫藤の方を見ると、無駄にイラッとする動きをしながら困った様な顔で口を開いた。

 

 

「う〜〜ん、行動を共に出来ないと言うのであれば、仕方ありませんねぇ」

 

「ッ!?何言ってんだあんた!!」

 

 

こいつ麗を止めようと思いすらしなかった!オイラが紫藤の言葉に驚いていると、外にいる麗が紫藤を睨んで歩き出した為、オイラは急いでバスを飛び出して彼女を引き止めた。

 

 

「ちょっと待て!1人で歩いて行くのは危険過ぎるぞ…うん!」

 

「ッ!離して下さい!!私は絶対にあんな奴と一緒に行動したくない!だから孝にも言ったのよ!絶対に後悔するって!」

 

 

参ったな。こりゃバスに連れ戻すのは難しいぞ…てか、オイラもあのリーダー(笑)は気に入らねーんだよなぁ?さてと…どうしたものか……。

 

 

「……はぁ、じゃあ…ッ!!ヤベッ!!」

 

「え?…きゃああ!!?」

 

 

オイラが解決策を言おうとすると、オイラ達が乗って来たマイクロバスとは違うもっと大きい車のエンジン音が聞こえてきた。オイラがそっちに視線を向けると、1台のバスがこっちに猛スピードで走って来た。だが様子がおかしく、左目のスコープで見えたのは、バスの車内で〈奴ら〉に運転手と乗客が襲われている光景だった。するとバスは近くに停まっていた車に激突し、横転してオイラ達に向かって来た為、反射的に麗を抱き上げて近くにあったトンネルの中に入った。バスはちょうどトンネルを塞ぐ様に激突し、炎上した。

 

 

「おい、怪我はねぇか?」

 

「え、えぇ…暁月さんのお陰でなんとか…」

 

 

オイラは麗を下ろしながら怪我がないか確認した。怪我は無い様で安心したが、トンネルの中に避難するのは選択ミスだったな。お陰で静香達と分断されちまった。トンネルと炎上するバスの間の隙間目掛けて飛び越えようにも、思ったより火の勢いが激しくて麗を抱えながら飛び越えることは出来ない。

 

 

「宮本君!暁月さん!大事無いか!?」

 

「デイダラさん!麗!無事か!?」

 

 

オイラが一度トンネルを抜けて残った起爆粘土で鳥型を作って空から戻るかと考えていると、炎上するバスの向こうから冴子と孝の声が聞こえて来た。心配になってバスから降りて来たのだろう。

 

 

「あぁ!オイラ達は無事だ!…うん!」

 

「良かった!ここはもう通れません!警察で…東署で落ち合いましょう!時間は午後7時に!…今日が無理なら…明日もその時間で!」

 

「は?…いや、オイラ達は…ッ!!危ねぇ!!」

 

 

孝にオイラが自分の案を言おうとすると、バスの上から火達磨になっている〈奴ら〉が落ちて来た為話を中断して退がった。〈奴ら〉は火も効かないのかと思ったが、少ししたら自分から倒れて動かなくなった。どうやら火は時間が少し掛かるが効くようだ。

オイラが新しい発見をしていると、エンジン音が遠去かって行くのに気付いた。これ、もしかしなくても置いていかれたか?

 

 

「最悪だ…うん。仕方ねぇ、東署であいつ等と合流す《バチバチッ!》あん?」

 

 

何かが弾けるような音が聞こえた為、オイラは音の聞こえた方を向いた。そこには燃え盛るバスが有る。

……ま、まさか!?

 

 

「クソッ!バスが爆発する!走るぞ!」

 

「は、はい!…きゃ!!?」

 

 

オイラ達はトンネルの出口に向かって走り出したが、途中で麗が躓いて転んでしまった。オイラはすぐに足を止めて麗を連れて行こうとするが、バスは爆発寸前になっていた。オイラは素早く麗の前に移動し、印を結んで手を地面につけた。

 

 

「【土遁・土流壁】!!」

 

 

するとオイラの少し前にある地面から岩で出来た壁が出現した。壁がトンネルを塞ぐと同時に火花がバスの燃料に引火して大爆発を起こした。しかしその爆発はオイラの【土流壁】によって完全に防がれた。

 

 

「はぁ…ま、間に合ったぜ…うん。おい宮本、大丈…ッ!!?」

 

「………ッ!!」

 

 

オイラが後ろにいる麗の安否を確認しようと振り返ると、腹の辺りに衝撃が走った。突然の事に尻餅をついてしまったが、衝撃の正体が麗だと分かっていたから問題ない。

・・・・・いや、滅茶苦茶問題だわ。

 

 

「ちょ!いきなりどうしたってんだ!?」

 

 

暗くなっているトンネルの中で麗みたいな美少女に抱きつかれるってのはかなり問題だ!オイラは慌てて麗を引き剥がそうと肩に手を置いたのだが、ここで麗の肩が震えているのに気付いた。

 

 

「お、おい?ホントにどうした?怪我でもしたのか?…うん?」

 

「……うっ…し、死ぬかと…思った…ッ!!」

 

 

あぁ、成る程な。学校で〈奴ら〉への恐怖心はどうにか出来ても、さっき見たいに明確な死に対する恐怖はどうにも出来ないからな。オイラだって死ぬのは怖いし御免だ。

オイラは小さく泣き始めた麗の頭を撫でてやり、麗が落ち着いて泣き止むのをジッと待った。

 

 

 

 

 

 

宮本 麗side…

 

 

「さ、さっきは…その、ありがとうございました」///

 

「気にする事はねぇ…うん」

 

 

私はさっきの爆発から守ってくれた事と、いきなり抱き付いて泣いてしまった私を黙って受け入れてくれた事を合わせて暁月さんにお礼を言った。

私はあいつ…紫藤と一緒に行動するのが嫌でバスから降りた。勝手な事だと分かっているが、どうしても嫌だったからだ。そしたら暁月さんが引き止めてくれて嬉しく思ったが、それでも私は戻ろうとしなかった。

結果、突然突っ込んで来たバスによって私と暁月さんは孝達と分断され、暁月さんにはバスの爆発から守ってもらった。

その時私は恐怖した。普通では有り得ない忍術を使う暁月さんにではない。爆発に巻き込まれるという明確な死に恐怖したのだ。暁月さんがいなかったら、私は今頃死んでいただろう……。

だから私を心配して声を掛けてくれた彼に私はつい抱き付いて泣いてしまった。彼は驚いた様子だったが、黙って私が泣き止むまで頭を撫でてくれた。

……〜〜ッ!今思い出しただけでも恥ずかしい事したなぁ///

私は少し顔が赤くなるのを感じながら頭を振って暁月さんにこれからどうするのかを聞いた。

 

 

「あの、これからどうするんですか?」

 

「静香達はもう行っちまったし、オイラ達で東署に行くしかねぇだろ…うん。静香達の方も心配だが、静香は忍術の使用を許可してるし、大丈夫だろ。ホントは空からバスに戻ろうとしたんだが…もう行っちまったからな…うん」

 

 

そう言えば暁月さんは鷲みたいな粘土に乗って飛んで来てたわね。

 

 

「それにお前はあの紫藤とかいう奴と一緒にいたくねぇんだろ?」

 

「ッ!!……はい」

 

 

私は紫藤の名前を聞いて殺意を持ったが、今あいつはいないのですぐに収まった。

 

 

「ま、兎に角行くぞ…うん。道中武器になりそうなもんや食料を回収しながらな…うん」

 

 

暁月さんはそう言ってトンネルの出口に向かって歩き出し、私も後に続いた。トンネルを出るとバイクのヘルメットを被った〈奴ら〉に襲われたが、暁月さんが簡単に撃退し、その人の物らしきバイクが落ちていたから2人でそれに乗って、夕日が赤く染める町の中を走って行った。


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