デイダラside…
オイラ達はモトクロスバイクですっかり暗くなっちまった夜道を走り、東署を目指している途中、休憩がてら町を見渡せる場所に停車して町の様子を観察していた。下に見える街灯によって照らされている道路は〈奴ら〉が列を成してどこかへ向かっているのがスコープを使わなくても見える。
「誰か助けに来てくれないのかしら?」
「来てくれるならありがたいが、望みは薄いだろうな…うん」
オイラに抱き着く形でバイクの後ろに乗っている麗がそう言ってきたが、来る可能性は低いだろう。これだけの騒ぎなのに、ここに来るまで
それにコレだけの事態だ。警察も手が回り切れてないんだろうな。多分、空港に行っているリカも〈奴ら〉の対処に大忙しだろうな。
・・・あ、リカに静香無事だったって連絡するの忘れてた。
「どうしてですか?」
「コレだけの事態なのにパトカー1台見掛けてねぇだろ?だが、警察が出動していない訳がない…となると?」
オイラが麗に聞き返すと、彼女は少し考える素振りをして、やがてハッとした表情になる。
「……警察も救助に手が回っていない?」
「正解だ…うん。まぁちゃんと警察は動いているだろうが、完全に人手不足だろうな…うん。……っと、そろそろお話は終わりだ。しっかり掴まれよ」
オイラが麗の後ろを見ながらそう言うと、麗も釣られて自分の背後を見た。少し離れた暗闇で複数の人影があり、街灯に照らされて現れたのは〈奴ら〉だった。
麗はオイラに抱き着くように掴まるが、正直に言ったらもう少し離れて欲しかったりする。別に彼女が嫌いって訳じゃないんだが…その…
オイラは頭を振って気を取り直し、バイクを走らせた。
★
高城 沙耶side…
『外は危険です!決して車外には出ないで下さぁい!!』
午後11時45分。宮本とあの暁月って男と別れた私達は、見事に渋滞に巻き込まれてしまった。あちこちからクラクションが鳴る中、外では警察の人が拡声器を使ってみんなに車の外に出ないよう言っている。
「1時間で1キロ…と言ったところか…」
「この調子だと、朝までに橋を越えられるかどうか…」
私はそう不安を口にした。すると私の隣に座るデブオタ…平野のお腹からグゥ〜〜ッと聞こえて来た。私もお腹が空いてるのにそんな大きな腹の虫を鳴かせるデブオタに私はつい怒鳴ってしまった。
「うるさいわね!黙りなさいよ!」
「黙れって言われても…お腹空いたな…」
「落ち着けよ高城。態とやってる訳でもないんだろ?」
小室がそう言っているが、私だってお腹空いてるのよ。私が少しムッとしながら小室を見ると、外から銃声が聞こえて来た。
どうやら車のクラクションやエンジン音に釣られて〈奴ら〉が近付いて来るのを撃退しているようね。
パンッ!パパパンッ!パパンッ!
「「きゃあぁ!!」」
後ろの方の席から2人分の女の悲鳴が聞こえて来た。どうやら銃声が怖いみたいね。私が腕を組みながらそっちを向いてみると、紫藤が2人の席に歩み寄って話し掛けた。
「大丈夫。この中は安全です。大丈夫…」
「…先生」
「何も心配要りません。だいじょ〜〜〜ぉぶ…」
紫藤は2人の女子生徒に腕を回して抱き締めながらそう言っている。普通ならセクハラよ?セクハラ。宮本が紫藤を嫌がる理由がよく分かったわ。
そういえば宮本達は無事かしら?あの暁月って男が一緒だから大丈夫かも知れないけど、絶対って訳じゃないし……。
いや、それよりあの男は本当に何者なの?自分を忍者だと言い、私そっくりに変身したり、変な爆弾粘土作品を生き物みたいに操って爆発させたり、おまけに両手に『口』だなんて……どういう原理なのかしら?
私は暁月 デイダラに少し興味を持っていた。
★
デイダラside…
オイラ達は無事に町の中に入れたが、ここはもう〈奴ら〉に襲われた後のようだ。店や建物には所々明かりが灯っているが、人の気配が全くしない。それに幾つかの窓には血がベッタリと付いている。
道路には偶に車が停まっているが、大破していたり、座席に血が付いていたりした。そして烏や猫の姿は見かけるが、〈奴ら〉の姿は1体も無かった。
「誰も…いない…」
「逃げたか、〈奴ら〉に喰われて死んだかのどちらかだろうな…うん」
「でも、死んだら〈奴ら〉になるじゃないですか」
「生きた人間を追い駆けて行ったんだろうよ」
オイラが一度停車して後ろに座って町を見回す麗と会話する。それにしても見事に人がいねぇな。コレだけ無人だったら盗みとかし放題だろうな…やる前に喰われてたら意味ねぇが。
オイラがそんな事を思っていると、麗が嬉しそうな声を上げた。
「ッ!暁月さん!あれ!」
「あん?〈奴ら〉か?…って、アレは…」
オイラが麗の指差す方に視線を向けると、そこには半分建物の陰に隠れているが、ヘッドライトが点いているパトカーが停まっていた。ランプも点灯している。
今日初めて見たな。まだ無事なヤツがあったのか…?
そう思いながらパトカーに近付いたが、パトカーはトラックに後ろ半分を潰されていた。警官も2人乗っているが、絶命している。
「マジかよ…こう来たか。……よし、宮本。ちょっとあのパトカーから使えそうな物回収するぞ…うん」
「ッ!分かりました」
オイラ達はバイクから降りてパトカーに近付いていく。念の為に麗に槍で警官の頭を刺してもらい、確実に死んだのを確認してからパトカーを漁った。オイラが漁った警官から手に入れたのは手錠と鍵、警棒、そしてラッキーな事に、警察に支給されている拳銃…【S&W M37】が手に入った。弾はちゃんと5発入っている。
「こんなもんか…うん。宮本、そっちはどうだ?」
「こっちも似た感じ…でも銃は握る所が折れてたから、弾だけ抜き出しておきました。…はい、どうぞ」
オイラは麗から血を拭き取られた弾を手渡そうとする。しかしオイラはそれを手で制し、M37を麗に差し出した。実銃を差し出された麗は驚いた表情でオイラと銃を交互に見る。
「コレはお前が持ってろ…うん」
「え?で、でも…」
「オイラには起爆粘土と忍術があるからな…うん。警棒1本と手錠があれば十分だ。撃ち方はオイラが教えてやる。これでも去年まで県警特殊急襲部隊の隊員だったんだぜ…うん」
「そうだったんですかぁ!?」
オイラは驚愕の表情を浮かべる麗にM37の撃ち方と注意事項を教え、オイラが教えた事を復習をしている麗を再び後ろに乗せてバイクを走らせた。
★
しばらく走り続けていると、ガソリンが無くなりそうになっているのに気付いた。すぐにガソリンスタンドを探したが簡単には見つからず、結局15分程走ってようやくガソリンスタンドを見つけた。
近くには〈奴ら〉がいないようなので、さっさとガソリンを入れたいのだが……。
「オイラ金持ってねぇぞ…うん。宮本、お前は持ってるか?」
「アハハ…私も、お財布学校に置いて来ちゃって…」
選りに選ってセルフ式のガソリンスタンドとはな…運がねーなぁ。麗はガソリンが残っているかを心配しているが、今時のガソリンスタンドはどこも乗用車千台分のガソリンがあるから問題無いだろう。
「はぁ…元県警の特殊部隊の隊員が金銭泥棒かぁ。でも他に方法は無いしな…うん。よし、宮本はここで待っててくれ。オイラはちょっと建物の中に入ってお金を拝借して来るぜ…うん」
「元県警特殊急襲部隊の隊員なのに大丈夫なんですか?」
「仕方ねーだろ!オイラだって複雑な気持ちなんだ…うん!」
オイラはクスクス笑う麗を置いてガソリンスタンドの建物の中に入った。中は荒れまくっており、近くの自販機には血が付着していた。
オイラはカウンターにレジが置かれているのを見つけてお金を引き出そうとするが、当然開いてくれない。
「ま、そうだよな…うん。こういう時は……フンッ!!」バキャッ!!
オイラはレジを蹴り砕き、中に入っていたお金を取り出した。コレだけ有れば足りるだろうと思ったその時だ。
「きゃああぁぁぁぁぁあ!!!」
「ッ!?宮本!!?」
建物の外から麗の悲鳴が響き渡ってきた。
★
宮本 麗side…
「ッ!いや!離して!!」
「チッ!おい!暴れんな!!」
私は暁月さんにここで待つように言われたからスタンドにもたれ掛かって暁月さんを待っていたら、突然この男に捕まった。男は私の首にナイフを突きつけると、私の体を舐め回すように見てきた。
「ヘヘッ♪…いい体してんじゃねぇか?あぁ?」
「………ッ!!」
今度は私の体を撫でるように触り始めた。気持ち悪い…もの凄く嫌な気持ちだ。男は私のスカートの方に手をやり、ポケットに入れていた銃を見つけてしまった。
「ッ!?おいおい!いいもん持ってんじゃねぇか!!」
「クゥッ!!………」
銃は当然取られてしまい、今度はナイフを仕舞って銃を私に突きつけた。実弾の入った銃は怖いが、それ以上に今の私はこの男から離れたかった。
「クククッ♪こりゃあいい拾いもんだぜぇ!ヒハハハハッ!!」
「拾ってすぐで悪いが、その子を返してもらおうか?」
すると私の悲鳴を聞きつけたのか、スタンドの陰から暁月さんが現れた。私を捕まえた男は私に銃を突きつけたまま暁月さんの方を向いた。男は暁月さんをしばらく見た後、急に笑い出した。
「…ククッ…ハハハハハハ!!兄ちゃん!可愛い彼女を連れてるじゃねぇかよぉ!?」
「そんな事より、その子を離してもらおうか…うん」
暁月さんはまるで作り物みたいに冷たい感じの無表情で私を捕まえる男を睨みながらそう言った。
「バァ〜カ!離すかよ。化け物だらけになっちまった世界で生き残るには…女がいねぇとなぁ!ハハハハハッ♪」
「ッ!暁月さん!!」
私は男の腕を振り解いて暁月さんの方へ走ったが、すぐにまた捕まってしまった。しかもこいつ、今度は私の胸を触ってきた!!
「はぁ…こいつは最高だぁ。おいお前!レジぶっ壊したんだろ!?今すぐバイクに給油しろ!でないとこの女を殺す!いいなぁ!?」
「………分かった」
暁月さんはそれだけ言うとスタンドに歩み寄ってお金を入れ、バイクの給油を始めた。普通ならこんな奴あっと言う間に倒しちゃうんだろうけど、私がそれを邪魔しているみたいで、申し訳ない気持ちで一杯だった。
やがて給油は終わり、男は暁月さんにバイクから離れるよう命じた。
「給油を終えたな!?よし、今すぐバイクから離れろ!」
「…分かった。だが、お前に1つだけいい事を教えてやるよ…うん」
「あぁ?」
「自分の背後は常に気を付けた方がいいぜ…うん」
暁月さんはバイクから離れると、ニヤリと笑いながらそんな事を言い出した。男も私も彼がいきなり何を言っているのか分からなかったが、突然男の銃を持つ手が何かに叩かれ、男は痛そうに呻きながら銃を落とした。私が後ろをなんとか振り返ると、そこには