学園黙示録〜暁の芸術家になった転生者〜   作:☆桜椛★

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第9話だ…うん!

デイダラside…

 

 

「て、テメェ!!なんで2人いやがる《バキャッ!!》ガハァッ!!?」

 

「ギャーギャーうるせぇぞ!…うん!!」

 

 

オイラは銃を持っていた手を押さえて睨んでくる男の腹を蹴って【粘土分身】の方に吹っ飛ばし、分身に男を羽交い締めにさせた。こいつはオイラが起爆粘土で作った分身だ。残っていた起爆粘土を全部使ってギリギリ作れた。

オイラが麗の悲鳴を聞いた時、スタンドの陰から麗がいかにも俺不良って感じの奴に捕まっていたのが見え、残った起爆粘土を使って分身を作り、本体のオイラは【土遁・土竜隠れの術】で軟質化した地面に潜って男の背後に廻り、隙を見て警棒で拳銃を持つ手を殴り付けたのだ。

しかし迂闊だったぜ。こんな世界になっちまったんだ。そりゃ色々ぶっ壊れて普通に犯罪を犯す奴がいるだろう。

麗だって〈奴ら〉と戦っていたとは言え一般人だ。それに〈奴ら〉なら兎も角、まだ生きてる人間と殺り合うなんて出来るはずもねぇ。1人にしとくのは失敗だったな。

オイラは自分の選択ミスに溜め息を吐きながら男から解放された麗に歩み寄り、先ずは謝罪した。

 

 

「すまねぇ宮本。今回の事はオイラの選択ミスだ…うん。お前を1人にしなきゃこんな目に遭わなかったのによ」

 

「い、いえ。気にしてない…って言ったら嘘になりますけど、最悪な事になる前に助けて貰いましたから……あ、後私の事は麗で構いませんよ?」

 

「本当にすまなかった。オイラもデイダラでいいし、敬語も使わなくていいぜ…うん」

 

「分かりま……分かったわ。デイダラ」

 

 

麗はあんな事があったのに思ったより普通に接してくれた。しかし1年ですっかり鈍ったか?元警察だったらこの位覚えてねぇといけないだろ普通。

オイラがそう思っていると、体を曲げて呻いている男を羽交い締めにしているオイラの分身を指差して麗が質問してきた。

 

 

「ねぇ、あそこにいるもう1人のデイダラって……あの有名な分身の術?」

 

「あぁ、まぁ分身って言ってもオイラの起爆粘土を使った【粘土分身】だがな…うん」

 

 

オイラが麗の質問に答えていると、ようやく腹の痛みが治まったのか、【粘土分身】に羽交い締めにさせた男が騒ぎ出した。

 

 

「おいテメェ!!なんで2人いるんだよ!?こいつをどうにかしやがれ!!ぶっ殺されてぇのか!?あぁ!?」

 

「ッ!あんた……ッ!!」

 

 

麗は男の声を聞くと紫藤の名前を聞いた時並みの怒りや憎悪が混じった様な顔をすると、地面に落としていたモップで作った槍を拾い上げて男に近付いて行った。男は麗に気付いて「ヒィッ!?」と情けない悲鳴を上げた。

 

 

「あんた……よくも…よくもッ!」

 

「おっと、麗。悪いが急いでここを離れるぞ」

 

「でもッ!!こいつ、私を…」

 

「そいつが騒ぎまくったから〈奴ら〉があちこちから大量に来てんだ…うん。気持ちは分かるが我慢してくれ」

 

 

オイラがバイクに乗りながら麗に頼むと、麗は悔しそうな顔をしたが、渋々といった様子でオイラの後ろに乗った。それを見た男は慌ててオイラ達に助けを乞うた。

 

 

「ま、待ってくれ!俺を1人にする気かよぉ!?なぁ!助けてくれよ!」

 

「じゃあその分身を置いて行ってやるよ。すぐに出番が来るからよ…うん」

 

 

オイラ達は男をひと睨みしてから【粘土分身】を置いてガソリンスタンドを離れた。後ろからあの男の絶望した様な声が聞こえて来たが、気にせずバイクを走らせた。

………この辺りでいいか。

オイラは十分ガソリンスタンドから離れた場所でバイクを停車させ、スコープでガソリンスタンドの方を見た。すると急に止まったオイラを不思議に思ったのか、麗が後ろから聞いてきた。

 

 

「デイダラ?行かないの?」

 

「さっき言ったろ?あの【粘土分身】の出番がすぐ来るってよ…うん」

 

 

スコープには多数の〈奴ら〉がガソリンスタンドに集結している様子が映っていた。オイラが印を結ぶと、それを見た麗が何かに気付いた様に後方のガソリンスタンドを見た。

 

 

「分身は起爆粘土で作ったオイラのアートだ。当然それも爆発する。一度やってみたかったんだ…夜に起こす芸術的大爆発(・・・)をな…うん!芸術は、爆発だァ!…喝ッ!!」

ドゴオォォォォォォォォンッ!!!!

 

 

夜の町が一瞬昼間の様に明るくなった。後方で起きた大爆発は夜の町を爆炎で照らし、しっかり備えていなければ吹き飛ばされそうな爆風を発生させて周囲の建物のガラスを割った。

オイラは今までにない芸術をその爆発から感じた。街灯や看板を照らす光ぐらいしかない暗い町中で、他より明るい光に群がる様に集まる〈奴ら〉を吹き飛ばす巨大な爆発!まさにアートだ!!

 

 

「うん!うんうんうん!これぞ芸術だ!夜の町を照らす一瞬の巨大な爆発!残り物で作った割にはいい出来だ…うん!」

 

「ちょ、ちょっと!何してるのよ!?デイダラは警察よね!?」

 

「元だ元!今はアーティストだ!さてと、そろそろ行くか…うん」

 

 

オイラは予想以上の大爆発にオロオロしている麗を気にせずにバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

宮本 麗side…

 

 

「よし、オイラからあまり離れるなよ…うん」

 

「分かってるわよ」

 

 

午前4時頃、私とデイダラは今、道中見つけたスーパーマーケットの中にいる。ここも〈奴ら〉に襲われたようで、ガラスが割れていたり、商品が散らばっていたりしている。壁や床にも血が付着している。〈奴ら〉は生き残った人達を追いかけて行ったのか見当たらない。

 

 

「先ずは紙だな…うん。後筆と墨が必要だな」

 

「え?こういう場合って、映画とかなら食料とかを回収するんじゃ?」

 

「食料は回収するぞ?後、飲み物と他にも役に立ちそうな物もだ」

 

 

デイダラの言っている事が理解出来ない。食料や飲み物を回収するのは分かる。それは分かるけど、それと紙と筆とどう関係があるのかしら?

私が不思議に思っている内に文房具コーナーに入った。デイダラは商品棚から画用紙と筆と墨汁を取り出すと、画用紙を地面に置いて何か模様のような物を描き始めた。

それにしても描くの速いわね…慣れてるのかしら?

 

 

「良し、先ずは食料からだ…うん」

 

 

デイダラは画用紙3枚、トランプのカード位の大きさに切った紙数枚に同じ様な模様を描くと、それ等を持って食品売り場に向かった。

食品売り場は既に誰かが漁ったのか、いくつかお肉や魚の棚が無くなっていた。デイダラは画用紙を床に置くと、缶詰やカップ麺、更には残っている肉や野菜などを回収し始めた。

 

 

「あん?何してんだ?麗も手伝え」

 

「手伝えって、そんなに沢山どうやって持ち出すのよ?」

 

「いいから手伝え。口で言うより見せた方が早いからな…うん」

 

 

見せた方が早い?もしかしてデイダラの忍術?

私は首を傾げつつも、商品棚から食品を回収し、デイダラの指示に従って彼が置いた紙の前に置いていった。やがてデイダラがもういいぞと声が掛かり、デイダラが置いた紙の前には食品の山が出来ていた。

 

 

「デイダラ、貴方コレをどうする気なの?」

 

「まぁ見てなって…うん!」

 

 

デイダラは床に置いていた画用紙を1枚持ち上げると、模様が描かれている方を食品の山に向けた。

 

 

「【封入の術】!」

 

「え、えぇ!!?」

 

 

私は自分の目を本気で疑った。デイダラの持った画用紙がまるで掃除機の様に食品の山を吸い込んでいった。やがて最後の1つを吸い込むと、画用紙に先程の模様の中心に『食』という文字が浮かび上がった。

 

 

「ハハハハッ!驚いたか?…うん?」

 

「な、何よ今の!?今何が起きたの!?」

 

 

私は笑いながら画用紙を巻くデイダラに混乱しながらなんとか質問した。

 

 

「今のは【封入の術】って言ってな。こんな風に紙や巻物、またはカードなんかに食料や武器なんかを入れて保存する術だ…うん。保存されている間は劣化しないし、この術の対になる【開封の術】を使えばいつでも好きな時に取り出す事が出来る。まぁ、破いたりしたらその場で中身が全部出て来ちまうがな…うん」

 

「そんな術もあるのね…なんだか忍術ってなんでも有りな気がしてきたわ」

 

「言っとくが、忍術は確かに便利だが、万能じゃねぇぞ…うん。ちゃんとデメリットも存在するからな?」

 

 

それでも効果が凄すぎるのよね。特にこの【封入の術】と【開封の術】だっけ?コレなんか荷物運びには凄く便利だし、保存した物が劣化しないなんて冷蔵庫要らずじゃないの。

 

 

「よし、次は飲み物だな…うん」

 

 

デイダラはスタスタと飲料コーナーに向かって歩いて行き、私も小走りでそれを追った。そしてそこから水やお茶、ジュースなどを回収して再び食品の山があった場所に持って行き、山になった所でデイダラがもう1枚の画用紙に飲み物の山を吸い込ませて封入した。画用紙の模様の中心に今度は『飲』と書かれている。

 

 

「コレでいい。次はライターとか絆創膏なんかの役に立ちそうなものを運ぶぞ…うん」

 

「?最後の画用紙はどうするの?」

 

「それは道中ドラッグストアがあった時用だ…うん」

 

 

成る程ね。確かにお薬とかは持って置いた方がいいと思うし…。

その後私達はライターや絆創膏などを小さい紙の方に幾つか分けて封入し、小さい紙はポケットの中に2人で分けて仕舞い、画用紙の方は更に小さい紙に封入してデイダラがポケットに仕舞った。

 

 

「良し、そろそろ行くぞ…うん」

 

「えぇ、分かったわ」

 

 

私は出口に向かって歩いて行くデイダラの後を追って外に出た。

 

 

 

 

 

 

デイダラside…

 

 

スーパーで物資を調達したオイラ達はバイクに乗り、道中見つけたドラッグストアで薬などを回収した。

因みにオイラが使っていた【開封の術】と【封入の術】この2つの術はオイラが修行してようやく使える用になった術だ。原作では木の葉のチャイナ娘のテンテンや、後の2代目『畜生道』のアジサイが使っていた時空間忍術で、便利そうだったから習得した。

 

 

「さて、そろそろ行くか…うん」

 

「本当に便利よね?その【封入の術】と【開封の術】」

 

 

麗が薬や包帯などがあった場所とオイラが持っている小さめの紙を交互に見ながら感心していた。この小さい紙には薬や包帯を保存した画用紙が入っている。これで持ち運びが楽になったし、小さい方が破けても画用紙の方が無事なら食料とかが散らばる心配も無い。その気になればさっきのスーパーの商品全部回収出来たが、生き残りがいたら必要になるだろうから残しておいた。

オイラ達はドラッグストアから出て、バイクのある方へ向かう。麗は一足先にバイクに跨るが、悪いがここからはバイクは使わない。

 

 

「麗、悪いがここからはバイクは使わないぞ?…うん」

 

「え?じゃあどうやって行くの?」

 

 

オイラは麗が降りたバイクを残った少し大きめの紙に封入した。不思議そうにオイラを見る麗から少し離れて腰のポーチに左手を入れた。

既に起爆粘土はポーチいっぱいになっている。オイラの左手の『口』は起爆粘土を噛み続け、しばらくすると吐き出した。それをグッと握り、手を開くと、そこには梟の形をした起爆粘土があった。

麗はそれを見て驚きの声を上げた。

 

 

「わぁ!凄い!今のどうやったの?握るだけじゃ絶対作れないわよコレ」

 

「企業秘密ってヤツだな…うん。あ、麗は高い所って平気か?」

 

「え?うん、大丈夫よ。でもなんで?」

 

「なら好都合…うん!」

 

 

オイラが梟型起爆粘土を投げて印を結ぶと、ボフンと煙が上がって人が乗れる程の大きさになった。驚いて固まっている麗を置いて先に起爆粘土に飛び乗り、麗の方に手を伸ばした。

 

 

「こっから先は、空の旅だ…うん」

 

 

麗は恐る恐るといった様子でオイラの手を取り、梟型起爆粘土に乗った。オイラにしっかり掴まるよう言って、麗がしっかりオイラに掴まったのを確認してから梟型起爆粘土を飛ばした。巨大な翼を羽ばたかせて空に舞い上がると、最初は悲鳴を上げていた麗も次第に落ち着いて今日何度目か分からない驚きの声を上げる。

 

 

「うわぁ!ホントに空を飛んでる!」

 

「なかなかいい眺めだろう?…うん。〈奴ら〉がいなけりゃ、もっと良かったんだがな…うん」

 

 

オイラ達は段々と朝日が昇って行く中、町の上空を進み始めた。


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