スカーレット家長男の憂鬱   作:ユウキです

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10話

今日は人里に買い物だ、客が来るようなのでお茶菓子を買うのと米を買ってくるように言われ一人で来ている。仮にも妖怪なので米ぐらいなら一人で持てるが正直な話をすると面倒臭い、帰って昼寝でもしてご飯食べてまた寝たい。まあ居候させてもらってる身でそんなことを言えば確実に居場所が無くなるので絶対にそんな事言わないが。

 

マヨヒガから森の中に出て直進したとこにあるようなので迷うことも無いだろう、問題はこの森に妖怪がいる場合だ。中級妖怪までならギリ倒せる程度の実力しか無い俺にとってはここに長居したくない、意識的に足を速めて進んでいく。

ところでどれぐらい直進なのだろうか、こんな時に空を飛べたら話は別だろうがあいにく俺は飛べないんだ、悲しいな。

 

特に飛べなくても不便はしていないのでそんな卑屈にはならないが、飛べた方が便利なのもまた事実。帰ったら紫様あたりに翼無くても飛べる方法とか聞いてみようかな。あの人普通に何も無くても飛んでるし俺も努力すればいけるだろ。妖怪としての格は確実にあっちの方が上だからなんて言われるかはわからんが。

 

そんなこんな考えながらとぽとぽと歩いていく、ていうかこのショタボディでは歩幅が小さいから全然進まん。吸血鬼って何歳になれば成長するんだろうか、今でも結構歳はとってる気がするんだけどな。ふと、俺より年上の姉様達の姿を思い出し納得する。たぶん吸血鬼は成長が遅いんだろう。そう言い聞かせながら歩く、すると

 

「ばぁ〜〜!驚け〜!!」

「うぉおおおぉおぉお!?」

 

横から何か出てきたので雄叫びを上げながら魔力弾を撃つ。正直めちゃくちゃビビった、魔力弾は見事に当たりその何かは沈黙した。

いやしゃーなししゃーなし、こんなん絶対びびるやつやん。心霊スポット行って白装束の女が襲いかかってきたらびびるだろ?それと同じだって。まだドクドクと鼓動を鳴らしている心臓を落ち着けつつその物体に近寄る。

 

なんだこれ、傘か?目と舌がある、気持ち悪っ。そしてその下に居る妖怪らしき女を見る。中々の美少女だ、魔力弾を撃たれて白目を剥いていなかったらさぞかし可愛かっただろう。傘をそっとその女に被せつつ立ち上がる。とりあえず起きる前にここから立ち去ろう、バレなきゃ犯罪じゃない。

 

そもそも俺悪くないだろこれ、いきなりなんかしてこようとしたから反撃しただけであって悪気があったわけじゃないし。スタスタ歩きながら言い訳がましいことを心の中で垂れ流す。しかしあいつはなんであんな所であんなことしていたんだろうか。疑問に思うばかりである。

 

 

 

そこからは何事も無く人里の近くまで一直線に行く事が出来た。門番のようなやつが俺を見ても何も言わなかったところを見ると明らかな妖怪でもない限りは通して貰えるみたいだな。良かった良かった。

安堵しつつ里を回りお茶菓子と米を買った。その後は特にすることも無いので団子屋で団子を食べつつゆっくりする。一応小遣いは貰っているので安心だ、橙より少ないのは少し不満だがな。

 

「そういえば聞いたか?」

「ああ、あの鍛冶屋の唐傘妖怪が誰かにやられたらしいぞ」

「死んではないみたいだがひでぇ話だな…」

 

…ふぅ、帰るか。

 

そう思い立ち上がろうとする、お代はもう払ったし団子は食べたし人里にやり残したことは無くなったからな。早く帰らないと茶菓子が傷んでしまうし、米も早く炊かないと晩御飯に間に合わなくなってしまう。仕方ないことなんだ、別に逃げようとしてるわけじゃない。

 

「おい」

「ヒッ」

 

いきなり後ろから声をかけられる、声質は少女のものだったがそこには確かな凄みがあった。ヤクザかなにかやってらっしゃる?

そう思い振り向くとそこにはもんぺを着た白髪の目付き悪すぎな美少女がいた。明らかに纏っている覇気は少女のものではないということを除けばどストレートの容姿だ、致命的な欠点だな。

 

「お前妖怪だろ」

「い、いえそのようなことは…」

 

ガチビビりしているがここはどうにかこうにか切り抜けなければ見世物のように殺される、いや殺されはしないだろうけど絶対監禁されて尋問されるだろう。そうなれば八雲家の皆に迷惑がかかる上に姉様達が人里に攻め込んでくる可能性がある、オイオイ俺死んだわ。

 

ぷるぷる、俺は悪い吸血鬼じゃないよ。アルクは仲間になりたそうにヤンキー少女を見た。アルクは無視された。アルクは逃げ出した。知らなかったか?ヤンキー少女からは逃げられない。

そんなやり取りを繰り返しているとため息をつかれた。ため息つきたいのは俺だっていうのに。

 

「別に今すぐ何かする訳じゃないよ、大人しく付いてきてくれたら何もしないし」

「いや、本当に買い物来ただけなんです…!信じてください!」

 

そんなこと信じるわけ無いだろ!いい加減にしろ!絶対何が目的かをジワジワ拷問しながら聞き出そうとするにちがいない。この女が放っている威圧感がこの後起こる残虐ショーの凄惨さを教えてくれている。俺は絶対に屈しないからな!

くっ殺くっ殺と心の中で叫びながらビクビクと怯える、どれだけ虚勢を張ろうが怖いものは怖いのだ、気分的にはオヤジ狩りに遭った中年の気分。もしくは何も怪しくないのに職質されて荷物全部出されたときの気持ち。

 

「とりあえずこっち来い」

「ヒッ、ごめんなさい!ごめんなさい!」

「ちょっ、やめろよ。私が悪いみたいじゃないか」

 

「おい…妹紅さんがちっちゃい男の子連れて行こうとしてるぞ…」

「まさかそういう趣味か…?」

「まじか…俺ファンだったのに…」

 

「おいお前ら!違うからな!」

 

こうなったらありったけの風評被害をばらまいてやる、こいつ真性のショタコンですよ!親御さんは自分の息子さんを家に保護してあげてください!俺が犠牲になっているうちに!

まるで何かの小説の名脇役のようなセリフを心中で叫びながら引きずられていく。全然かっこつかないな、ダサすぎだろこれ。

 

引きずられ連れてこられたのは少し大きめの建物の前だった、ここが拷問部屋か。ああ、今までありがとう姉様達、メイド長、八雲家の皆…半ば諦めつつ手を引かれる。

俺は功労、体は能動、心は焦燥、イェア!やけくそになり心でライムを刻み出す。俺、幻想郷でラッパーになって食っていくわ(錯乱)

 

「とりあえず慧音に判断してもらうから」

「け、慧音…?」

「中入ればわかる」

 

そう言ってドンッと背中を押された、すると中には気の強そうな目をした青みがかった髪の毛がこちらを見据えていた。

余りに強い視線なので自然に目を逸らしてしまう、ああいう目力強い人苦手なんだよな。全部見通したみたいな目だ、怖い。

 

「慧音、こいつ妖怪だ。どうする?」

「妹紅、あまり虐めてやるな、怖がってる」

「そんなつもりは無いって、皆勘違いしてる」

 

妹紅と呼ばれた少女は頬を膨らましそっぽを向く、いやめちゃくちゃ睨んでましたよね俺のこと。目だけで殺すという意思を感じそうな程に情熱的な視線を向けてきた人がする表情じゃないよそれ。ヤのつく人がいちごパフェ食ってるみたいなもんだよ。

 

「それで、お前はなんて名前なんだ」

「アルクです…」

「そうか、私はこの寺子屋で教師をしている上白沢慧音だ」

「教師を、ですか」

「ああ、それでお前に聞きたいんだが」

「な、なんですか?」

「お前はこの人里に危害を加える気はあるか?」

「ないです!ないです!ないったらないです!」

 

首が取れるほどにブンブン回す、ここで疑わしきは罰するとか言われたら俺と人里が終わる。槍と破壊の力が躊躇うことなく奮われるだろう。慧音さんは俺を探るような視線を向けた後、妹紅にも視線を向け首を振った。

 

なんだこのジェスチャー、どういう意味だ。めちゃくちゃ不安になりながら神に祈る、悪魔である吸血鬼が神に祈るとはおかしいとは思うが今は祈ることしかできない。ああ、どんな神でもいいので俺を助けてください…

 

「おい」

「ひえっ」

「そんな怖がらなくていい、お前は害がないと判断された。すまなかったな」

 

えっ、マジで!やったぁ!いやそりゃそうだよ、俺みたいなくそ雑魚妖怪が人里に危害を加えるわけないじゃんか、手間を取らせやがって。妹紅さんが出ろと言ったので言われるがままに寺子屋から出る。でも何故俺が害が無い妖怪だと判断されたのだろうか。まあいいか、結果良ければ全て良しだ。

 

とりあえず背後から恨みがまじく妹紅さんを見ながら人里に出る、この人が居なければもっと早く帰れたのに、余計なことしやがって。

そうするといきなりこっちに振り返ってきた。ヒッ、ごめんなさい。

ビクビクしつつ妹紅さんの反応を待つ。

 

「悪かったな、最近妖怪の被害が多くてピリピリしてた。今日も知り合いの鍛冶師がやられてな」

「い、いえ…大丈夫です」

 

それ俺です。

 

「また人里に来たら昼飯でも奢ってやるよ」

「あ、ありがとうございます」

「まあ…気をつけて帰れよ」

「はい…」

 

なんかいきなり優しくなったな。捨て猫を拾うヤンキーに対する感情を妹紅さんに抱きつつ人里を出る。まあ別に暴行を加えられた訳でもないし暴言を吐かれた訳でもないから許してやろう。俺は優しいからな。

 

 

そうして俺の人里デビューは終わった、帰ったら藍さんが人里にお前のことを紹介するの忘れていたと言ってきてちょっとイラッとしたが、藍さんは相変わらず美人だったのですぐ許した。

 

そして、次は絶対に妹紅さんに昼飯を奢ってもらうことを決心しながら今日も寝床についた。

 

 

 

 

「私見たんだよ!雄叫びを上げながら私に弾幕を撃ってきた悪魔を!私はちょっと怖がらせようとしただけなのに…うぅ…ひどい」

「妹紅、どう思う」

「まあ何にせよ巡回は厳しくすることは決まりだな、あとは何かあれば守衛にすぐに報告させる。これでひとまずは安心だろ?」

 

何故かアルクは人里で顔も名前も知らない悪魔として指名手配される、しかしまさか穏やかなアルクがその本人だとは人里の人間も思わず永久に捕まることは無かったという。

 

 

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