スカーレット家長男の憂鬱   作:ユウキです

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書きながら考えてるので脳味噌死にそうになりながら書いてます(満身創痍)


12話

とりあえず藍さんに連絡用の御札で帰りが遅れることを伝え姉と姉の友人について行く、どうやら幻想郷の下にある旧地獄に行くようだ。存在自体は本で見て知っていたのでそこまで驚きは無い。旧地獄は幻想郷に適応出来なかった荒くれ者達の住む俺が苦手なタイプの場所だ。

 

特に鬼という種族は絶対に会いたくない。戦闘狂にアル中に傍若無人な態度、会ったら確実に絡まれる。絡まれたら俺は指先ひとつでダウンだろう、いや頭が吹き飛ぶな。もし吹き飛んだら新しい頭を橙あたりに持ってきてもらおうか、そうやって現実逃避しながら旧地獄に向かう。美味しい飯屋があればもっとテンションが上がっていたんだけどな、多分飲み屋しか無いだろう。

 

飲み屋といえば今日は紫様が宴に行っているらしい、何処に行くとか何も聞いてないけど楽しんでいるだろうか、あの胡散臭さを世間に見せつけていると考えるとなんだか心配になってくる。

 

「もうそろそろ旧地獄への入口につくよー」

 

もう着くのか近いな、お手軽に行ける地獄とはこれ如何に。まあ旧と名前についているのだから本当の地獄では無いのだろう。俺はそんなどうでもいいことを考えながら入口の前に立った。大きな穴のようなそこは底が全く見えず絶望の感情を掻き立ててくる、本当にここ降りるの?

 

俺は内心ガクブルだった、いや内心だけでは無く表情にまでバリバリ出てた。演技とかもう関係なく怖い、俺高所恐怖症だったんだな。今思ったが高いところが怖い人は落ちた時のことをめちゃくちゃ脳内で反芻してしまうのが怖い原因だと思う。現状俺がそうだもん。

 

「ひえー高いねー」

「フランは空飛べるでしょ?」

「うんでも、アルク飛べないから」

「じゃあフランが運べばいいんじゃないかな?」

「いや、あのちょっと諸事情で我慢出来なくなりそうっていうか…」

 

おい!マシになったんじゃないのか狂気!そんな怒りを覚えながら目の前の姉の目が泳いでるのを見て確信した。こいつちょっと見栄はりやがったな、と。これはちょっと世間は許してくれませんよ。

俺は憤慨しつつちょっとフラン姉様を責めるような視線を向けた。すると涙目になってきた、泣くぐらいなら初めから嘘をつくな。

 

「うーん、じゃあ私が運ぶよ。アルク君もそれでいい?」

「はい、そうして頂けると助かります」

「あ、アルクごめん…」

「ふぅ…会いたい気持ちはわかるけど、嘘は駄目だよ」

「うん…ごめん」

「別にいいよ、僕も今日は姉様に会えて嬉しいから」

「うん!えへへ…」

「もう行くよー?」

「あっごめんねこいし!」

「いいよいいよ、でもまあ時間も無いしすぐに行こう!」

 

そう言うとこいしさんは俺をお姫様抱っこした。もう一度言う、お姫様抱っこした。いやおかしいだろこれ、もっと持ち方考えてよ。姉の友人の男前な部分をまざまざと見せられて俺の心の乙女な部分が刺激されるという誰得なことが起こりつつ、地底への穴を降りていく。

 

そういえば前から気になってたんだけどなんで幻想郷の女の子って空飛んだり落ちたりしてもなんでスカートめくり上がらないんだろう。別に見たいというわけでも無いがいざ意識して見るとそういうとこが気になってしまう。パンツ丸見えになってもおかしくないと思うんだけどな。

 

「アルク君、スカート気になるの?」

「い、いえ別に…」

「ふ〜ん?」

 

ニヤニヤとするこいしさん、ほんとやめて欲しい。俺が思春期男子真っ盛りみたいな空気出すのやめて。ほら横のフラン姉様が凄い目で俺のこと見てるから。フラン姉様も、俺何もしてないですからそんな目で見ないで。

 

一応表面上は照れているていをとりながら内心では呪詛を吐く姉に怯える。忙しいなまったく、やれやれ。

やれやれ系主人公のような余裕な発言をしているがガクブルである。話し方や態度を真似たところで所詮俺は俺だということが改めて理解出来た。悲しい。

 

「アルク」

「ひゃいっ」

「ほら、パンツならこっちを見なよ」

「ええっ!?」

 

飛びながらスカートをダイナミックに捲り上げる姉様。なんでだろう、まったく色気を感じない。ドロワーズだということもあるだろうが男らしすぎるパンツの見せ方に少し笑ってしまいそうになる。演技しなくていいのなら爆笑していたところだ。こいしはプルプル震えて笑いを堪えている。この人も大概だな。

 

「あっ!こいしなんで笑ってるの!?」

「バッサァ…!って、ブッフォ!ちょっ、アッハッハ!反則だって…!」

「もう!」

 

顔を赤くしてプリプリ怒る姉様、納得がいかないという顔だが俺も仕方ないことだと思う。でも姉様のこんな姿は新鮮だと感じた、いい感じに友情してるじゃないか。良かった良かった、このまま俺に執着する癖を無くしていってくれ。俺はそんなふうに祈りながらこいしさんに運ばれていた、そろそろ遠くの方に地面が見えてきたのでそろそろだと思う。

 

「そろそろ着くよー」

「はい、ありがとうございます」

「いいよー、連れてきたの私だしねー」

 

こいしさんが中々いい人だということにも気づけたし良かっただろう、俺の周りはクセの強い人が多いからこういう人は新鮮だ。特に紫様はクセが強すぎるのでついていけない時がある、藍さんは良い人だけどな。

橙?いや…あいつは俺のこと弟扱いしてくるからなんか調子が狂う。お姉ちゃんになったことが嬉しいんだろうな。

 

そういえば今日美鈴さんという門番が紅魔館に居たことに気がついた。俺は今まで中にしか居なかったから気が付かなかった、めちゃくちゃ美人だったが白目剥いて犬のように門の前で寝ていたから幻滅だった。残念な美人とはああいうことを言うんだな。などと考えてる間に地面に着いた。

 

「よっ…と」

「こ、こいしさん。ありがとうございました」

「大丈夫だよ」

 

ニコニコしながら俺をまるで姫のように降ろすこいしさん、なんだこの人イケメンかよ。ギリギリ歯を鳴らしながら後ろに佇んでいるフラン姉様は優雅の欠片も無いけどな。

俺の乙女心を刺激してくる当の本人は余裕の表情をしながら俺達についてくるように促してくる。こういうところも女の子というよりイケメンな感じだな、理想の彼氏という感じだ。

 

「この先に水橋パルスィっていう妖怪が居るんだけど、変なことしなければ何も言われないから普通にしててね」

 

変なことしなければということは、変なことしたらヤバいのではないだろうか。即殺されたりするのならば俺は今すぐ帰りたい。そして藍さんの尻尾をひとしきりモフモフした後寝る。

 

「パルパルパルパル…男女カップルとは妬ましい…」

「あれ本当に大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫」

 

そう言ってこいしさんは橋を何事もないかのように渡っていく、フラン姉様もスタスタ歩いていくので俺も慌ててついて行く。めちゃくちゃじっと見てくるんですけど、血眼なんですけど、怖いんですけど。

嫉妬というのはここまで強烈な感情なんだなぁ、と一人で納得しつつ渡り切る。本当に何も無くて良かった。

 

「私のこと見えてないみたいだったから二人だけに見えたみたいだね」

「アルク、男女カップルだって」

「そ、そうですか…」

 

いや別に何も感じねぇよ、実の姉とカップルに間違われたぐらいで俺が照れるとでも思ったか。ていうかめちゃくちゃ笑顔じゃないか、そんな笑顔今まで見たことないぞ。レミリア姉様に見せたら喜びそうだな。そういえばこいしさんの今の発言で少し気になったことがある。

 

「こいしさん、見えてないって…」

「ああ、そういう能力なんだ私。『無意識を操る程度の能力』っていうんだけどこれが中々ピーキーなんだよねぇ」

「へぇ…凄いですね、俺には能力が無いので羨ましいです」

 

パルスィさんではないが、本当に妬ましい。俺も破壊の能力とか運命操る能力とか欲しかったなぁ…能力さえあれば俺もクソザコナメクジから卒業出来るかもしれない、そんな淡い希望を抱き続けて何百年。いっこうに能力が現れる兆しが見えない。クソが。

だがその後のこいしさんの発言で俺も驚愕に目を見開いた。

 

「…え?じゃあなんで私のこと見えてるの?」

「あ、ほんとだ。なんでアルクはこいしのこと見えてるんだろ」

 

言われてみればそうだ。能力も無い俺がこいしさんの能力を打ち破ってこいしさんを見えるようにするにはこいしさんと同格の妖怪になるか能力で見えるようにするしかない。この人見た限りではフラン姉様と同じぐらい強い、俺なんかでは指ひとつ触れることは叶わないだろう。そんな俺が何故こいしさんを視認できてるんだ?

 

「私の無意識が狂ったのかな…」

「まあアルクについてはまだ私達も知らないことが多いしねー。これから沢山知っていくつもりだけど…」

 

フラン姉様は後半小声でボソッと言うのやめてもらっていいですかね、バッチリ聞こえてるからめちゃくちゃ怖いんですけど。

まあ考えてても仕方ないことだろう、俺自体もアルクの記憶は持っていてもアルクのことについてはそこまで知らない。結局俺はアルクの認識でしかアルクを語れないのだ。

 

「考えてたらもうすぐ旧都だね、ここを抜けたら私の家だよ」

「へぇーここが旧都かー」

 

うわっ、酒臭っ!色々な妖怪が至る所で酒を飲んでいるせいか酒の臭いが酷い。強い妖怪では無い俺は酒にもそんな強くないんだ、勘弁してくれ。ていうか鬼らしき奴らの数がすごいな、目を合わせないようにしないと。

 

「ここはうるさいからねー、さっさと行こうか」

「私は嫌いじゃないけどね、誰か適当にぶっ飛ばしても問題にならなさそうだし」

 

スイスイと人混みをかき分け進んでいく、フラン姉様が手を引いているので迷うことは無いが何だか子供のようで恥ずかしいな。吸血鬼的にいえば俺もまだ子供なんだろうが前世では成人していたので姉に手を引かれるのは少し照れが入る。

 

手を引かれるといえば妹紅さんに前に昼飯を奢ってもらったんだった。うまい飯屋というから何処なのかと思ったが自分で営んでいる焼き鳥屋に連れていかれたのはびっくりしたな。しかも性格とは反対に丁寧な仕事をしていたので少し見直した。まあ相変わらず顔は怖いけど。

 

「旧都抜けたね、もう着くよ!」

「なんかめっちゃ燃えてるけどここ行くの?」

「この上にあるから仕方ないねー」

 

そこは例えるなら火山の火口のようなところだった。その中心に館のような建物があり、そこがこいしさんの家だと容易に想像出来た。俺は飛べないので、すかさずこいしさんがお姫様抱っこをして飛んでくれたが俺は恐怖でそれどころではなかった。熱気だけで死んでしまいそうだ。

 

「あっついね」

「私はもう慣れっこだけど、初めての子は熱いと思うよー」

 

そう言っているうちに上まで登りきった、そしてこいしさんが館の扉を開ける、中は紅魔館よりも暗めな感じの玄関ホールがあった。

するとどこからともなく尻尾が二又の黒猫が現れ瞬く間に赤髪の美人に変わる。この間わずか十数秒である、目まぐるしく変化が起きすぎて何がなんやらと言った感じだ。

 

「おかえりなさいませー!こいし様!」

「お燐、ただいま。友達来てるからお姉ちゃんにもそう伝えといて」

「はっ!噂はかねがね聞いておりました!あたいはここ地霊殿でペットをしているお燐です!長い名前は嫌いなのでお燐とお呼びください!」

「お燐さんかー、よろしくー」

「よろしくお願いします」

 

結構ビジュアルはタイプかもしれない。しかし姉の友人のペットに劣情を抱く自分が嫌になったのでやめる。俺はそこまで落ちちゃいない、流石にペットにはダメだ。

 

自分を諌めながらこいしさんに屋敷内を案内される、どうやらここにはお燐さんともう一人、人型のペットが居るらしい。ほかは全部動物などの普通のペットなのに何故この二人だけ人型なんだろうか。この地霊殿の主であるこいしさんの姉の業の深さに戦慄しつつこいしさんの部屋に向かう。

 

「私の部屋なんにも無いからお姉ちゃんも呼んでくるね!ボードゲームとかいっぱい持ってた筈だから!部屋で待ってて!」

 

そう言うとこいしさんは走ってどこかに行ってしまった。図らずにフラン姉様と二人になってしまうことに少しの恐怖を感じながらフラン姉様を見るとめっちゃこっちをガン見してた。怖い。

 

「二人っきり、だね」

 

いやここあんたの友達の家でしょうが、何無理やりムード良くしようとしてるんだよ。狂気が無くなっていってるときに正気も無くしたか?

 

「そういえばアルク、こいしのスカートガン見してたよね。私のときは全然見てなかったのに」

「い、いやそんなことは…」

「興奮した?」

「え」

「こいしみたいな子が良いのかな?」

「いやほんと何言ってるの?」

 

思わず若干素が出る程度には困惑していた。酒でも飲んでんのかこの人。

 

「こいしは良い子だからアルクを任せ…任せ…ああ!やっぱりダメ!無意識に破壊の道を選んでしまう!まさかこれもこいしの能力…!?」

 

ただあんたがアホなだけだよ、座ってろ。

 

「来たよー!お姉ちゃんも一緒にー!」

「こいし…やっぱり私は駄目です…迷惑になります…」

「そんなこと無いって!」

 

こいしさんに引きづられてきたのは紫の髪をした少女だった。この人がこいしさんの姉か、物静かな雰囲気の人だな。やっぱりこういう人が好きかな俺は。藍さんにしろメイド長にしろ淑女な人がやっぱり俺のタイプだ。

 

 

だがこの人が俺にとってかなり厄介な存在になっていくとは微塵もこの時は思いもしなかった。

 

 

 




こいしはさとりと反対の性格にしようとしたらイケメンの陽キャみたいな子になりました(白目)
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