スカーレット家長男の憂鬱   作:社畜マークII

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13話

どうもっ古明地さとり14歳ですっ☆

 

嘘です、多分500歳は超えてると思います。そこから数えるのやめたので今何歳かは不明です。今日は失意のまま家に帰ったのでさっさと寝てしまおうと思っていたのですが、どうやら今日こいしの友達がうちに来てるようですね。羨ましいです。

 

心の中でも律儀にですです言いながら布団に潜っていたんですが、いきなりこいしが部屋に突撃してきました。羨ましいという私の思いが届いたのでしょうか、まあこいしは心の中を読むことは出来ないのでそれはありえませんが。

 

突然ですが世界一硬い食べ物ってなにか知ってますか?かつお節なんですよ。今貴方「へーそうなんだ」ぐらいしか心が動かなかったでしょう、心を読まなくてもわかりますよ。こいしの友達からしたらそんなどうでもいい豆知識ぐらいにどうでもいい存在なんですよ私は。

 

だというのにこいしは何故か私を友達に会わせようとしてきます。

これは由々しき事態ですね、友達の姉というなんだか気まずい存在が遊ぶ場に居たら絶対空気が悪くなります、こいしにとっても私にとってもそれはダメなことだと思います。こいしにそう言いめちゃくちゃ拒否ったのですが全然聞いてもらえずボードゲームも奪われこいしの部屋まで連行されました。あ、それ友達ができたとき用に買った人生ゲーム…

 

「こいし…ほんと迷惑になるから…」

「大丈夫大丈夫!二人共いい子だから!」

 

相変わらず声がでかくて可愛げもあって私と正反対の子ですね。いやまあ、それに嫉妬することはあっても嫌いになることは無いんですけど。ここまで対人スペックが違うと、ある種諦めがつきますし。

それでもやっぱり私もこんなふうになれたらなぁと思わないでもないです。

 

憧れ、焦がれ、喉から手が出るほどに欲しいコミュニケーション能力を手放したのは自分だというのに、勝手なことを内心で嘯きながら妹に手を引かれる姿に地霊殿の主としての威厳はゼロですね。

 

「お姉ちゃんは自然体でいいよ!」

 

自然体も何も話すという行為が私にとって自然な行為では無いんですけど。

 

「…もう何も言いません…」

 

妹の押しの強さに戦慄しつつ部屋の扉から中に入ります。相変わらず何も無い部屋ですね、まあ無意識が発動していると家に居ないので仕方ないことでしょうけど。しかし最近はコントロールも次第に出来てきているので近い未来、普通の人間にも見えるようになるだろうと思います。

 

「その人がこいしのお姉さん?」

「うん!お姉ちゃん自己紹介してくれる?」

 

自己紹介とか何十年ぶりでしょうか、とりあえず息を整えましょう。ひっひっふー、ひっひっふー。

 

「ふぅ…私の名前は古明地さとりと言います…妹がいつもお世話になっております」

「あっ、ご丁寧にどうも。私はフランドール・スカーレットです!こいしには私の方こそお世話になってて…」

 

いかにもコミュ力高そうな金髪美少女ですね、個人的には私よりスペック高そうなのでお友達にはなれませんね。怖いです。

とりあえず無難な友達の姉という感じでいこうと思います、距離感大事です。

あともう一人の子は…

 

「ぼ、僕の名前はアルク・スカーレットです!今日はよろしくお願いします!」

 

アルク?どこかで聞いた気がしますね…どこでしたっけ?確か…

目を瞑り思い出そうと考えを巡らせます。

あ、紫さんの新しい式の人がそんな名前だった気がします。まあこんな自信なさげな美少年が紫さんの式な筈がないので同姓同名の別人ですね。可愛いとか言ってた気もしますが、まあ気の所為でしょう。

 

というかこの子はかなりいい感じです、オロオロした雰囲気が新鮮です。地底にこんな子は居ないですからね。

 

「アルクさんですか…よろしくお願いします。いきなりですがご趣味は?」

「しゅ、趣味ですか?読書ですっ」

 

読書、いいご趣味をしてますね。かく言う私も読書は好きです、一人でも時間を潰せますから。

 

「私も読書好きですよ、特にミステリーが好きです」

「僕もミステリー好きです!」

 

ミステリーが好きなら地霊殿に来るといいですよ、お空やお燐による完璧な殺人事件が毎日起きてますから。

 

「でしたらこの後書庫に案内しましょうか?気に入る本があれば貸してあげます」

「それは流石に悪いですよ…」

 

首を横にブンブン振って断るアルクさん、しかしここで逃したらもう後が無さそうなので攻めていきます。

 

「いえ、読書仲間が増えるのは私としても嬉しいので問題ないです」

「そ、そうですか?」

 

平気な顔で話をしているが心臓バクバクです。鼓動の音が聞こえてないかビクビクしながら果敢にも距離感を詰める。

 

しかし私はそこで致命的なミスをしてしまった。

私は普段サードアイを閉じることが出来ているんですよ、心を読むことが嫌いなので努力しました。しかし、それによってオンオフ切り替え可能になったのはいいのですけど気を抜いたときにふと、サードアイがオンになってしまうのです。それが今起きてしまいました、ヤバいです。ですが

 

「(あれ、この子の心読めませんね)」

 

この子が私と同格だとは考えにくいので誰かに守られているのだろうと予想をつける。ならば誰が?私のサードアイを通さないぐらいにガチガチに結界を張れる者というと結構限られてくると思うんですがね。

 

「あ、あの…なにか?」

「あ、すいません。顔が良かったのでつい」

 

誤魔化す為の一言の筈が空気が凍った、主に後ろのフランさんからの殺意のせいで。肩を凄い力で掴まれる、めちゃくちゃ痛い。あ、そうかフランさんが結界張ってるんですねこれ、納得。

 

「アルクに親しい人が増えるのは嬉しい事だけど…ちょっと距離感近づきすぎじゃないかなぁ?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

痛い痛い痛い、本気じゃないですかこの子。いかに私が大妖怪クラスでもこれは流石に…し、死ぬ…!?

 

「ちょっ、姉様離してあげて!」

 

アルクさんの一言で事なきを得ました。肩が可動域の逆を向いている気がしますが気の所為でしょう、うん。とりあえずこいしに肩をはめてもらい元の体勢に戻りました。全く、ひどい目にあいました。

 

「ふぅ…アルク、ちょっとこいしと外に出といて貰えるかな?」

「えっ」

 

あっ、これヤバイかもしれないです。タコ殴りで済めばいいですが…最悪の場合……

 

「あー、とりあえずアルク君。行こっか」

 

こいし、お姉ちゃんを早々に見捨てる気ですね、くそぅ。

 

「あっ、は、はい」

「本いっぱいある部屋あるからそこで待っとこ」

 

そう言ってこいしはパタンと扉を閉めて行ってしまいました。この部屋にはフランさんと私の二人きり、めちゃくちゃ気まずい雰囲気に冷や汗がドバドバ出てきます。

 

「さとり…さんでいいのかな」

「呼び捨てでもいいですよ」

 

何故こんなときでも私の表情筋は全くと言っていいほどに動かないんですかね。自分で自分のことが嫌になってきます。

 

「ならさとり。さとりはアルクとどんな関係になりたいの?」

「友人になれればそれが一番だと考えています」

 

今まで会った妖怪から人間まで全ての中で一番良識ありそうな人でしたからね、逃がしてたまるかって話ですよ。そう思いながらフランさんの方をジッと見つめる。するとフランさんは肩を竦めて首を横に振る。

 

「さとりとアルクが友達になることは反対しないんだけどさ、こっちはこっちでいろいろ敏感にならなきゃいけない部分があるんだよ」

「それは…どうしてですか?」

 

そこからフランさんに説明された内容は想像を絶するものだった。親からの虐待、何百年にも及ぶ監禁、私の妖怪としての人生も中々のものだったが私には一応家族と言えるこいしやお燐やお空などが居た。そう考えると孤独に蝕まれながら何百年も一人で生きるなど正気の沙汰では無い。

 

「…一つだけ気になるところがあるのですけど」

「どうしたの?」

 

私はさっき自分のサードアイでアルクさんの心の中を見てしまったことを話した。フランさんは少し眉をひそめていたが、すぐに目を閉じて考え始めた。

 

「おかしいね」

 

読めなかったことか?それとも他の要因だろうか?

 

「私は結界なんてもの張れないし、紅魔館のメンバーでも張ろうとするならまず私とお姉様に相談する。だから私達が張ったものじゃない。ならアイツかもしれないけど…それも無いだろうね、張るなら絶対前もって私達に言うだろうし」

 

アイツというのが気になったがどうやらアレは結界によるものではなかったようだ。ならば何故?そんな疑問が頭に湧いてくる。しかし私はいくつかの仮説を既に立てていた。

 

「考えたくありませんが…アルクさんはこいしと同じような症状かもしれません」

「こいしと?」

 

一応こいしのことについても話す、こいしの友人というのなら話しておいた方が良さそうだと感じたからだ。フランさんはその話に憤慨していたが姉として妹の為に怒ってくれているその姿は好意的に写った。

 

「けどそれならアルクは今も心を閉ざしているってこと?」

「ええまぁ、それも仮説のひとつというだけです。ですがこれを立証するには少し不自然なところもあります。その大きな要因としてはアルクさんはどもりながらもきちんと会話出来ているということですかね」

 

一番酷い時のこいしは会話すらできていなかった、だがアルクさんはきちんと意思疎通ができている。類まれなる精神力の賜物だろうと思うがそんなアルクさんが完全に心を閉ざしていると言えるだろうか。ならばもう一つの仮説だ。

 

「もう一つはアルクさんが無意識のうちに能力を発現している可能性です」

「アルクに能力は無いはずだけど…」

「ええ、ですから無意識による発現です」

 

無意識に発現する能力というものは前例がある、それの最たるものがこいしだ。あの子は言葉通りの能力、『無意識を操る程度の能力』を持っている。それと同じようにアルクもまたなにか能力を持っていたのなら?本人は自覚していなくても発動していたのなら?

 

「今のところこれが私の思う最有力な説ですね」

「うーん…」

「どうしましたか?」

 

フランさんはなんだか納得いかないような顔をしているので疑問に思った。家族にしかわからないこともあるのでフランさんの判断が一番正確だろうと思うのでなにかあったらすぐに言って欲しい。

 

「いや、なんか違和感があるっていうか。見落としてる感じがして…」

「見落としてる…ですか」

「まああんまり深く考えるタイプじゃないし別に良いんだけどねー、結構私の勘ってアテにならないし」

 

まあいいやーと言って苦笑するフランさん、まあ何も無い時でも不安になることがあるのはわかりますよ。私いつもそうですし。

 

「まあ、こんだけアルクのこと考えてくれる人なら友達になっても大丈夫かな」

「本当ですか」

「友達になるかどうか決めるのはアルクだけどね」

 

なりますよ、なってみせますよ。あと今回のことでフランさんも中々良い人だとわかったので姉弟共々仲良くして貰えると嬉しいですね。あの威圧感は少々怖いですが。

 

「とりあえずアルク呼びに行って一緒に遊ぼっか」

「はい、そうしましょう」

 

近年稀に見る程にテンションが高くなっていることを自覚しつつ私は本のいっぱいある部屋こと書庫に向かいます。恐らくそこに二人が居るでしょうから。そんなアタリをつけながら歩いているとふと疑問が浮かび上がりました。

 

 

───何故アルクさんは何百年も監禁される必要があったんでしょうか。

 

 

あんな人畜無害な少年ならば外に追放してしまえば良かったというのに。当たり前の疑問だった、今まで誰も突っ込まなかっただけで。

 

しかし、その事がわかるのはアルクさんの両親だけですね、と思考を放棄する。これから楽しいボードゲーム大会が始まるのに余計な思考は挟まないでおこうと私は思った。

 

 

 




評価の一言で会話間の描写が足りないと言われたので一話から気になるところを修正しておこうと思います!話の内容は変わらないので御安心を!

いや本当に悩んでたところをズバリとストレートに言っていただき感謝です!

あと一応アルク(中の人)が必要以上にビクビクしてるのも伏線だったり…不快になった方はすいません…
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