スカーレット家長男の憂鬱   作:ユウキです

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ランキング結構上位に居て嬉しさの極み、評価とかお気に入りありがとうございます!


14話

今俺は凄まじい修羅場が目の前で繰り広げられているのを目の当たりにしている。まるで金縛りに会ったように身体が動かない。蛇に睨まれた蛙とも言えるだろう。

 

え、誰と誰の修羅場だって?まあ、それは見ればわかる。

 

居間にある机に座るのは紫のドレスに身を包んだ我が主、そして対面に座るのは紫色の髪をした知り合い。

 

「それでは地霊殿の主である古明地さとりさん、面接を開始します」

「はい」

 

いやなにやってんだあんたら。

 

「アルクの友達になるからには貴方にはそれ相応の何かが求められます」

 

別に求めてねぇよ。というか紫様の方こそいい加減失くしてしまった何かを自分に求めろ、威厳とか。

 

「何か資格とか持ってる?」

 

そもそもこの幻想郷にも資格の概念ってあるのか?流石のさとりさんでもこれは顔色が変わるだろ。

 

「調理師免許と栄養士免許と乙種第4類危険物取扱者の資格を持ってます」

 

いやなんで普通に持ってんだよ。ていうかなんで乙種第4類危険物取扱者の試験受けたんだよこの人は。謎だらけだよこっちは。

 

「ほう…やるわね」

 

なんだよその胡散臭い笑み。というかまだちゃんと資格持ってるさとりさんに比べてあんたはなんか持ってんのか。

 

「私は看護士と保育士とアロマテラピーを持っているわ」

 

いやあんたもなんでそんなもん持ってんだよ。ていうか俺の枕から凄くいい匂いするのあんたのおかげだったんかい!ありがとな!

 

「資格面では問題無いならあとは人間関係ね」

 

あんたは娘の恋人に対して警戒する父親か。友達の人間関係とかどうでもいいだろ普通。

 

「貴方の友達はどんな人?一人か二人でいいから言ってみて」

 

まあ…これぐらいなら地霊殿の主であるさとりさんならスラスラ言えるだろう、って…

 

「…………」

 

めっちゃ動揺してるー!!冷や汗ダラダラじゃねーか!おい、こいつ友達居ねーぞ!

 

「あら、どうかしたのかしら?」

 

煽っていくー!紫様煽っていくー!いやマジで最低だなこの人。

 

「……ません」

「ん?」

 

その瞬間さとりさんが椅子を引き倒し立ち上がり紫様に掴みかかった。

 

「いないって言ってるでしょうが!ああ!?」

「え」

 

ちょっこれはまずいですよ!?

 

鬼の形相で紫様に詰め寄るさとりさん。どうやら地雷を踏んでしまったらしい。

 

「どいつもこいつも友達が居たら正義みたいなツラして!私はそんな安い関係いらないんですよ!」

「ひぇえ…」

 

紫様、なんて声出してやがる…完全にさとりさんに圧倒されてるじゃないか。

 

「友達っていうのは…もっとこう…あれなんですよ!」

 

ダメだ、友達が居ないからさとりさんの友達に対するイメージが枯渇してる。

 

「とりあえず私は私の方でアルクさんに会って友達になりますから!」

「はい…」

 

紫様負けてんじゃねえか、いつもの胡散臭い笑みはどうした。

 

「ふぅ…もう帰りますかね…」

 

そう言って歩き始めるさとりさん。そして顔を上げた瞬間

 

───目が合った

 

どちらも石の彫像のように固まる。俺も不用意に動けず買い物袋を持ったまま佇んでいたので仕方ないだろう。

 

「あ、アルク帰ってたの。おかえりなさい」

 

さっきまでの半泣き顔が一転して満面の笑みに変わる紫様。逆に泣きそうな顔になるさとりさん。

 

「あ、あのアルクさん…」

「はい」

 

意を決したのかおずおずとこちらに話しかけてくるさとりさん。涙目で少し可愛い。

 

「どこから聞いてましたか…?」

「あの、紫様が面接を始めると言ったときから」

「初めからじゃないですか!」

 

そう言って自分の足元にあった座布団に頭から突っ込んで顔を隠すさとりさん。おいおいこっちに尻を向けるな、揉むぞ。

 

「これは夢だ、これは夢だ、これは夢だ」

 

残念、夢じゃありません!これが現実です!と言いたいところだが…

 

「さ、さとりさん」

「これは夢だ…」

 

まだ言ってるよこの人。

 

「さとりさん!」

「ひゃいっ」

 

やっとこっちに目を合わせてくれた。うわ、鼻水出てる、汚ねぇ。

 

「あの、俺と友達になりたかったんですか?」

「ぐ、まあ、そうですね…けど今回のことで失望したでしょう?私はこういうややこしい奴なんですよ」

 

確かにややこしいしめんどくさい、けどそれでも地霊殿の主だ。この人と何かしらの関係を持っておけば損はしないだろう。

 

「そんなことないですよ」

「え…?」

 

トゥンク…という音でも聞こえてきそうだな。我ながら相当クサイ行為をしてる気がする。

 

「むしろ俺はさとりさんのそういう面を見れて良かったと思います」

「ひえぇ…」

 

顔を覆うさとりさんだったが耳が赤いのがバレバレだ。

 

「ですから俺は余計にさとりさんと友達になりたいと思いました。あの、ですから」

「ちょっと待ってください!」

「え」

 

どうした、なんかやばかったか!?

 

「あの…そこから先は私が言いまひゅ」

 

あ、噛んだ。余計に真っ赤になっていくさとりさんだったが覚悟を決めたような顔でこちらに向き直る。そして

 

「あの、その、私と…友達になってくれませんか?」

「もちろん!」

 

えんだぁあぁぁぁぁぁあ!!いやぁぁぁあぁあああ!!

 

「私の愛しい式が天然タラシだった…」

 

うるさいよ。俺だって好きでこんなことやってるわけじゃない。だが紫様は納得がいかないようでゴロゴロと居間を転がり続ける。普通に邪魔だ。

 

「ずるいずるいずるい!さとりだけずるいー!!私もアルクにそんなこと言われたいー!!」

「この人が妖怪の賢者ですか、幻想郷も終わりですね」

 

ようやく調子を取り戻してきたさとりさんが紫を見て嘲笑する。あ、なんでこの人に友達が居なかったのかわかった気がする。

 

「なんですって!?あんたこそその性根叩き直してやるわ、そこに直りなさい!」

「アルクさん助けてください、紫さんが私をいじめます」

「ちょっ、それはずるいわよ!」

 

どっちもどっちだな。後ろに隠れてほくそ笑んでいるさとりさんを見ると本当にこれで良かったのかと思う。

 

「お二人共何をやっているんですか?」

 

あっ、藍さん丁度いい所に。

 

「藍さん」

「ああ、アルクは何も言わなくていい。大体わかった」

 

そう言ってフワフワの尻尾でこちらの頭を撫でてから手をコキコキ鳴らす藍さん。その時既に俺の後ろに居たさとりさんは意識を刈り取られてまっすぐになって寝ていた。全く見えなかった…何したんだあの人。

 

「紫様」

「ら、藍。いやこれは違うの」

「問答無用」

 

そう言って泣き叫ぶ紫様を引きずって何処かに消えていく。いやーやっぱり藍さんは頼りになるな。そう思い俺は少し寝転がり休むことにする。

 

「藍様ー?どこですかー?」

 

前言撤回、逃げるとしよう。

 

「あ、アルク!藍様見なかった?」

 

まわりこまれてしまった!

 

「いや、さっき紫様と何処かに行ってしまったから知らないよ」

「そっかぁ…じゃあアルク遊ぼ!」

 

脈絡の無い会話だな、会話のドッジボールでもする気か?

 

「じゃあおままごとしよ!私はお母さんで…アルクはペットね!」

 

どんな複雑な家庭環境だよ、未亡人か?その年で未亡人演じるとか業が深すぎるだろ。

 

「あの人が死んで今日で3年が経ったわね…そろそろあの人の死を乗り越えないと…」

 

やっぱ未亡人だったわ。

 

「ほら、アルク。アルクは犬だよ」

 

この光景を姉様達に見せたら橙消し炭にされそうだな。

 

「わ、ワンワン」

「………」

 

な、なんだよ。めっちゃ視線切らずにこっち見てるんだけどこの子。なんか恥ずかしいしやめて欲しい。

 

「ど、どうしたの橙」

「いや、今アルクの四つん這いになって犬の真似してる姿見たら私の身体がゾクゾクってしたからなんでだろうって思って」

 

ちょっと頬を上気させて橙はこちらを見てくるが俺は恐怖しかない、まさか橙こいつ…

 

「そ、そっか…じゃあ今日はもうこれで終わりにしよ。風邪引いてるかもしれないし」

「うん、そうだね…」

 

 

それから少し橙と距離をとろうと決めた俺であった。

 

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