「や、夜刀さん…ですか?」
俺は呆然と、目の前の黒髪美少女を前にしてそう問掛ける以外の行動を取れなかった。いや、普通にオッサンと思ってた。声めちゃくちゃ渋かったし。
「ん?…ああ、この姿だと分からないか…」
「お、お声も全然違うんですね…」
鈴の鳴るような声で返答が返ってきた。マジでこいつ全然さっきと違うやんけ!
「身元がわからないように普段は能力で変化させているからな、これが本来の俺だ」
「そ、そうですか…」
「ところでアルク、何か急ぎの用事があったみたいだがどうかしたのか?」
「あっ、そうでした!」
俺は同居人に速攻でバレたこと、ここを拠点にするのは難しいことを伝えた。今思うと幻想郷最強格である藍さんに侵入者の存在が分からない訳が無いしな。これはある意味しょうがないことだ。
「そうか…まさか気づかれていたとはな」
そう言うと少し考えるそぶりを見せる夜刀さん。なんか、なまじ顔が良いからさまになるな、腹立つ。
「あっ、それとこれ軽いものですが食事です。持ち運べるようにもしたので良ければどうぞ」
「む、お前は男子なのに家事が出来るのか」
夜刀さんは少し意外そうな顔をする。まぁ、一応時代的には結構男尊女卑とまではいかないけど、わりと亭主関白な思想が多いのが現状だしこの言葉も当然だろう。
「ええ、居候の身なのでこれぐらいは出来ないと…」
「…そうか、ならば余計に都合が良い」
いきなりすくっと立ち上がる夜刀さん。すると俺の両肩を掴み顔をグイッと近づけてきた。
「お前を攫うぞ、アルク」
「へ?」
その言葉を最後に、俺の意識は完全に途切れた。
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目が覚める、何してたっけ…?夜刀さんに住まわせるのは無理だって言って…ご飯だけ渡して…家事が出来ることを伝えてから…そっからだ、そっから全然記憶が無い。
「おい、起きたか。少し当身を強くしすぎたみたいでな、何か身体の不調は無いか?」
「夜刀さん…ここ、どこですか?」
「ここか?ここは一応妖怪の山の洞穴だな、急作りにはなるがここに拠点を作ろうと思う。心配するな、生活に必要なものは今から
そう言うと夜刀さんは身体全体から煙を出し、洞穴の中に充満させた。そして、煙が晴れてくると。そこには簡素だが寝床と台所があった。
「俺の能力は、『煙を操る能力』だと私自身解釈してる。まぁ、この煙に付随している力を考えると、少し違うような気がしないでもないが」
少し得意気に夜刀さんは語る。明らかにそれ、そんな範囲で収まる能力じゃないでしょ。煙に物体を収納できる能力とか聞いたことないし!
「俺は幻想郷を支配するつもりだ、だからそのときお前の望むものを全て与えてやろう。だから、そのときまで俺をここで支えてくれ」
「いや、夜刀さんその前に言いたいことが…」
「なんだ?金でも女でも酒でも、言えば持ってきてやろう。強者から奪ったものに限るがな」
いや、さすがに八雲の家を出るのは困る、何が困るって確実に夜刀さんがボコボコのフルボッコだドン!ってされる。良くて半殺し、悪くて全殺しにされる。マジでこの人子供すぎるだろ…勘弁してくれ…。
「いえ、流石に僕あの家を出るのはダメで…」
「よし、そうと決まれば俺は今から外に少し出る。留守番は頼んだぞ」
「え」
話聞かなすぎだろ!?待て待て待て待て!!
「ちょっ!」
「晩飯時には一度戻る。それまで待て」
「待て」はこっちのセリフだコルルァ!!だが、俺の言葉は夜刀さんには届かず、そのまま行ってしまった。
「いや、流石にまずいだろこれは…」
俺は途方に暮れた顔で洞穴の入口を見るしか無かった。
ちょっと途中のやり取り編集しました、自分でも分からない伏線は入れないのも大事。