スカーレット家長男の憂鬱   作:社畜マークII

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アルクってこんな熱い奴だったっけ?(もう何もわからん)
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26話

 

「グッ…クッソ…カハッ…」

 

せり上がってきた血をビチャビチャと吐きつつアルクは悪態をついた。目の前に居る敵を睨みつけつつ、現状を把握する為に頭を冷やす。

 

「…」

「言葉すら無くしたか?ふざけんなよてめぇ…」

 

()()()()()()()()()、夜刀は先程までは人間の範疇の動きでアルクと戦っていた。しかし、まるで今は野生動物のような…いや、もっと言ってしまうとその戦い方は()()だった。

 

夜刀の剣術に更に中級妖怪並のパワーが乗っている、その事実にアルクは顔を顰めるしか無かった。どう足掻いてもこのままでは殺されてしまう。

 

「いきなり叫んでパワーアップってか?創作物の中だけにしとけ、そんなもん」

 

「(せめて武器があれば…だが、こんな森にそんなご都合主義なもん無いわな…)」

 

刀とは言わない、せめてナイフ一本でもあればこの状況を打破してみせるのに、というアルクの独り言は突進するように凄まじいスピードで前身してきた夜刀の斬撃に阻まれる。

 

「とうとう人であることも手放しやがったか!お前の自尊心はどこに行った!人間であるという誇りまで捨てて、お前は何がしたいんだ!!」

 

「五月蝿い…五月蝿い…五月蝿い!!!!」

 

「うおっ!!」

 

袈裟斬りを間一髪、皮一枚で躱しつつ返すように下段蹴りを放つ。しかし、まるで鋼鉄でも蹴っているような感触にアルクは違和感を感じた。

 

「お前まさか…煙を纏ってるのか!?」

 

全身から煙を出したかと思ったら、こいつ鎧みたいに使いやがった!と、こんなことまで出来る夜刀の能力の応用の幅に嫉妬心が湧くアルク。

 

「そんな恵まれた能力も持って、恵まれた剣術の才も持ち合わせ、それでもそんなしょーもないことしか出来ないお前のおつむの悪さには脱帽だぜ!」

 

「そもそも、お前は見下してるんだよ。俺も、俺を含めた()()と呼ばれる者をな!」

 

「何がこの幻想郷を変えるだぁ!?まず変わらなきゃいけねぇのは!」

 

「てめぇだろ!!!」

 

勝てない、そんなことはアルク自身も理解していた。だがあえて攻める、避けきれない攻撃は致命傷を避け、カウンターを入れる。実践経験は皆無だが、脳内でシュミレートする時間はアルクにはたっぷりあった。先を見据え、ここで出来るだけ時間を稼ぐ、外に居るバケモノ達に望みを託すために。

 

「俺だって怖ぇよ!あんな破壊の能力とか、吐きそうな程濃い妖力とか!いつ手違いで死ぬかもわかんねぇ!毎日毎日胃痛との戦いだよこちとら!!」

 

殴る、どこを殴っても硬い、殴った自分の拳がダメージを受ける

 

「でも、俺はお前とは違う」

 

蹴る、蹴ったはずの脚が折れた、骨が見えてしまった。

 

「どれだけ怖くても、どれだけ辛くても、どれだけ奪われても」

 

頭突きをかます、額から血が吹き出し、目の前がチカチカした。

 

「誇りだけは捨てない」

 

投げる、むしろ投げ返され、吹き飛ばされてしまった。

 

「てめぇのその、腐った魂に焼き付けやがれ」

 

アルクはそれでも、自らの足で立っていた。目は死なず、相手をしっかりと見ていた。

 

「俺の名はアルク・スカーレット、誇り高きスカーレット家の血統に名を連ねる者。そして、お前を倒す者だ」

 

そうだろ、アルク?と、自分に問いかける。返事は期待しない、ただの呪いのようなものだ。中途半端に他人の魂に入り込んだ自分の願掛け。

 

ただ、少しだけ足が軽くなった気がした。

 

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「くっ…壊れない!なんで!?」

 

「フラン、無駄よ。そもそもこれは私達の能力を完全に遮断してる」

 

「やってみなきゃわかんないじゃない!ていうか、なんでお姉様はそんなに冷静でいられるの!?アルクがどんな目にあってるかわかんないんだよ!?なのに…」

 

フランは、二の句を繋げなかった。あまりにも自身の姉が辛そうで、悔しそうで、怒りに打ち震えていたからだ。

 

「フラン、もう、それ以上は言わないで…」

 

「お姉様…」

 

「守るって約束したのに、なんで私はこんなにも無力なのよ…何がスカーレット家当主だ…何が最愛の弟よ…何も出来てないじゃない…」

 

レミリアの眼から一筋の涙が溢れた、血が出る程に自分の拳を握りしめ、レミリアは泣いていた。

 

「とりあえず、この煙はどうにも出来ないみたいですね。こいし、無意識でここに入るとかは出来そうですか?」

 

「いや、無理そうだねこれは。そもそも無意識にも反応しないレベルにここは()()()()()。象が針の穴を通ろうとしてるもんだよ、これ」

 

「やはりですか…ここは待つしかないですね」

 

さとりは冷静に分析しつつ、こいしもどうにか打開案を模索していた。

 

「誰かが人間の女児レベルまで力場を落とせたら入れそうですが…まぁまずそんな細かい調整出来ないですし、そんなことしたら私達の存在が消えますね」

 

「おい、八雲紫連れて来たぞ。あと、慧音と第一発見者の寺子屋の子供も」

 

藤原妹紅が後ろからここに集まった者に声をかける。バッと振り返り、皆が皆八雲紫に殺気を叩きつけた。

 

「今更何をしに来たんですか、殺されたいのですか?」

 

真っ先にさとりが口を開いた。おちゃらけ、適当な雰囲気はそこには無く、ただただ大妖怪としての恐怖と絶望がそこにはあった。

 

「何を言っても言い訳にしかならないけど、ここを打破するための作戦があるわ。少し協力してちょうだい」

 

「嫌です、信用が無い。私達で勝手に考えるので貴女はとっとと帰るか自刃するか選んでください」

 

「お願い、協力して」

 

「だから、嫌だと言ってるだろ…」

 

さとりが振り返ると、そこには八雲紫が頭を下げ、涙を流していた。いつも胡散臭くプライドが高い八雲紫が、深深と頭を垂れていたのだ。その姿に、さとりは()を感じた。

 

「あー、もう、わかりましたよ!!今は貴女の行動に免じて不問とします!でも、しっかりと解決したあとには責任はとってもらいますからね!!」

 

「ありがとう、さとり」

 

「で?その作戦とはなんですか?あと、そこの二人はどうします?」

 

そう言うと、さとりはレミリアとフランを一瞥した。レミリアは少し迷ったような顔をしたが、溜息を少し着いた後に軽く頷いた。

 

「あの二人も大丈夫だそうです、はやく作戦を言ってください」

 

「ええ、あの煙は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それは承知してます」

 

「だから、今からこの寺子屋の子と私達の感覚の境界を操って、状況の視認と把握が出来るようにする」

 

「そんなことが可能なのですか?」

 

理論上はね、と少しだけ自信なさげに話す紫。それに対して慧音が少し苦言を呈した。

 

「改めて聞くがこの子の安全は保証されてるんだろうな、少しでも危険だと判断したらこの子を連れて逃げるぞ」

 

「ええ、そうしてちょうだい」

 

「それでその後はどうするんです?まさかそれだけですか?」

 

「いえ、認識さえ出来たらそこに干渉することも可能だと思うから、通常より時間は大幅にかかるけど、この能力の効果を『破壊』してもらうわ」

 

「私の出番だね」

 

ええ、と肯定する紫。フランは作戦は自分にかかってると考え、一層張り切った様子だ。

 

「私達は特にすることは無いの?」

 

「いえ、フランが破壊するのが主だけど、貴女達にもあの煙に向けて魔術や能力で攻撃してもらうわ。少しでも抵抗を削ぐためにね」

 

レミリアはそれを聞くと顔を歪ませ嗤う。自らの弟を脅かす存在をこの世から抹消できるという喜びだった。

 

「とりあえずすぐにやるわよ、準備して」

 

幻想郷において最強の存在達が今、一人の吸血鬼のために力を合わせた。

 

 




次の話はわりと愉悦部が喜びそうな話になりそうです
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