アルクは何百年という監禁生活の中で、ひたすらに自分が出来ることを考えていた。それは暇潰しの意味合いもあったのだろう、なにかしていないと狂ってしまう。だからひたすらに熱中出来るものを探したのだ。
そのなかでもアルクは『魔法』『魔術』といわれるものに興味を示した。今までの自分の価値観を一新する革命的な力の奔流。しかし、アルクには外側に魔力を放出する才能が著しく欠けていた。いや、才能云々では無い。
指先から魔力を飛ばすのが精一杯、それ以上となると身体に負荷がかかってしまう。アルクは悩んだ、せっかく魔法などの自分の理の外の力を使えるというのにここまで素質がないとは。
だが、アルクは諦めなかった。外に放出するのがダメならば、内側で循環させ、自らの身体能力と頑丈さを上げるまで。いちおう、前述の通り外に対する素質は無いが、内の魔力の素質は並程度にはあった。
そこからは毎日毎日、体内に魔力を巡らせ続けた。身体の各部位に集中させてみたり、硬くなる性質を持たせ基礎戦闘能力を向上させることに成功した。
しかし、アルクはそれでも限界を知ってしまった。これ以上は無駄な努力だと感じた瞬間があった。普通の鍛錬、普通の魔法の使用では自分はこれ以上強くはなれないと確信した。
だから、アルクは考えた。そこで閃いたのだ。それはアルクにしか考えつかない事だった、弱いからこその戦法。
「実は俺は日頃から
まぁ、魔力があっても最低限の魔法しか使えないけど、とアルクは独白するように語った。ようやく準備が整ったと言わんばかりの顔で。
「ならその魔力で何をすると思う?まぁ、まともに魔法を使えない俺が魔力を貯めたところでって感じだよな」
「だが、何十年、何百年と貯め続けた魔力を
アルクの周囲を何かがを解放されたかのように、蒼と金の奔流が走り始める。
夜刀はそこで初めて焦燥感を滲ませた顔でアルクに突貫した。あれは止めなければならない。あれは、大妖怪にも
「遅せぇよ」
「っ!!?」
夜刀は、認識すら出来ずに吹き飛ばされた。何も分からない、何処から何の攻撃が来たのか。夜刀は完全に認識外からの攻撃を喰らったのだ。
「(やべぇえぇ!初めて使ったけど、くっそ身体痛い!そりゃそうだよな!この魔法完成してないし!てか、俺の身体が耐えられんわこれ!)」
使った本人であるアルクは普通に後悔していた。内心半泣きのまま攻撃を仕掛ける。
「(制限時間は三分ってとこか!?無理して死ぬ間際まで使って五分程度!それまでに確実にこいつを戦闘不能にする!!)」
猛攻を仕掛けるが、煙の鎧のせいで決定打にならない。硬すぎるのだ、どれだけ殴っても中に衝撃が伝わらない。
「なら…」
「なにッ…がはっ!!!」
掌底を夜刀の腹に当て、思い切り踏み込み、衝撃を中に浸透させた。
「『鎧通し』ってところかな…これならダメージ入んだろ」
「かハッ…ゥオエッ…」
夜刀は、吐瀉物を撒き散らしながらもんどり打って苦しむ。
「この技、一気に踏み込むから衝撃が凄いな。一歩間違えたら俺の腕がおシャカになってた」
ビリビリと震える自分の手を見ながらアルクは言った。打てるとしたらもう一度、アルクは構え、そのチャンスを伺った。
「フーッ!フーッ!まだだ!まだ…終わってない!」
ヨロヨロ…っと起き上がる夜刀。その顔は目が血走り、凶悪な顔つきになっていた。なまじ顔が整っているため、凄まじい威圧感を放つその姿にアルクは気圧された。
「なんだこれ…!!」
「ここで…ここでやめたら、何も意味が無い。私のやってきたことに、何の価値もなくなってしまう!それだけは、耐えられないんだ!!」
そう言うと、何処に力を残していたのか、先程よりも速い一太刀を放つ夜刀。避けるが、全身が悲鳴を上げるアルク。痛みに顔を歪ませ、もう身体強化の制限時間も過ぎようとしていた。
「お前さえ居たら私は、お前さえ手に入ったらもっと強くなれるんだ私は!あの日私を守ってくれたお母さんみたいに!」
「くっそ…マジで、もうダメだろこれ…」
目がかすみ、もう限界だと諦めの表情を浮かべるアルク。
だが、煙が晴れるのが横目に見える。やっと、やっとあのバケモン達が何とかしてくれたのかと安堵の気持ちが湧いてくると同時に、
アルクの心臓に夜刀の凶刃が、突き刺さった。
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「フラン!もっと力込めなさい!アルクが戦ってるの見えないの!!」
「わかってるってのぉぉ!!ふんぎぎぎ!!オラァ!!」
煙の外では、阿鼻叫喚の騒ぎだった。レミリアがフランに発破をかけて、皆が皆煙に向かって自分の最高火力の技を繰り出していた。
「アルクさん…!もう少しです、もう少しですから…」
さとりも涙を浮かべながら、初めて出来た自分の友人を応援していた。斬られ、殴られ、吹き飛ばされても、果敢に攻めることを辞めない。そんな友人の初めて見る姿にさとりはもう限界だった。
「お姉ちゃん…」
こいしもそんな姉の姿を見て、アルクと会わせたのは間違いでは無かったと確信した。今までは、何に対しても卑屈でネガティブな姉は、友人が出来たことによって確実に良い方向に向かっていると、そう思ったのだった。
「アルク…!頑張って…!」
紫は、自分の息子にも等しい吸血鬼の奮闘する姿に目を逸らしたくなる。しかし、それはしてはいけない、だから、涙を溢れさせながらも紫は目を逸らさなかった。
全員が全員、アルクを救うために自分が出来ることを、最善を尽くした。
「「「「「アルク!!」」」」」
煙による帳は、ピシピシという音を響かせ始めた。
「もうすぐだ!フラン!やれぇ!!」
「ギュッとして…ドカーン!!!」
パリン、という音がその場に響く。煙が晴れ始め、境界による共有をしなくても目の前の状況がハッキリとわかるまでに鮮明に鳴る視界。
煙が晴れ、その視界が初めて捉えたものは、
「あっ」
愛すべき人の胸が、凶刃によって貫かれている姿だった。
運命というのはときに残酷で、決まりきった未来を変えることなど許してはくれなかった。
まぁ、最善尽くして無理なら仕方ないよね!仕方ない仕方ない!でも、もっと前から注意してればどうにかなったんじゃないかな!!だから、今回のことは誰のせいなのかな!!ねぇ!!ねぇ!!(どうしようもないクズ)