両腕千切れてもニタニタ笑ってるような女の子が好き(変態クソ野郎)
「アルクって誕生日いつ?」
唐突に橙がそう聞いてきた。俺にその質問が地雷だということにも気がつかずに。
俺は自分の誕生日を知らない。俺の誕生日祝いだけやってなかったのでお姉様達も実は知らないらしく俺の誕生日を把握しているものはこの世に居ないことになった。
え?出産の立ち会いはしたんじゃないかって?いやあのクソ親父が低脳が移るとか言って赤ん坊の時ですら俺を姉様達に会わせなかったらしい。ほんとクソだわ。まあ自立出来るようになり姉様達に会いに行っていたが、その後すぐに監禁だ。どんだけハードモードだよアルクの人生。
「俺、自分の誕生日知らないんだ。だから誕生日わかんないや、ごめんね」
「ぐふぅ!!がはっ!!」
申し訳なさそうにそう言うと橙が吐血した。いや今の発言でなんでそんな口から大量の血が出てくんだよ。まるで槍にでも刺されたかのような吐血の仕方だな。
「こんなの望んでない、こういうのじゃないんだよぅ。あっ、良心の呵責で死ぬ」
「別にそんなことで罪悪感覚えなくて良いよ」
「私は気にするんだよぅ」
そう言ってぐすぐすと泣き出す橙。なんか俺が悪いことしたみたいじゃねえか、やめろよ。
「俺はここに来れただけでも幸せだから」
「あるくぅうぅ、うっ、ぐすっ」
いきなり抱きついて押し倒してきた橙。離れろ離れろ、そこから先は有料だぞ。
「私、ちゃんとアルクの誕生日祝ってあげるからね。あっ、そうだ毎日アルクの誕生日にしようよ、そうしよう」
「流石にそれは」
「いい事を言ったわ!橙!」
襖がガラッと開き、紫様が出てくる。なんでいつもここぞというタイミングで現れるんだよ。無駄に目をキラキラさせやがって。
「アルクの誕生日パーティをしましょう!盛大にね!」
誕生日わからないのに?
「アルクの誕生日パーティ?」
「そうよ、一応呼んでおいた方がいいかと思って。ほんとは呼びたくなかったけど。あ、ちなみに一週間後ね」
「もし呼んでなかったら刺し違えてでも殺してたぞ」
私は立ち上がり、何をどうするかを考える。何せこの誕生日パーティは普通ではない、愛する弟のものだ。張り切るに決まっている。今までも落ち着いたらそういうイベントをしようと考えていたが狂気のせいで無理だった。しかし今は当然大丈夫。ならば盛大に盛り上げてやろう。
「やはりサプライズにすべきかしら…」
「あまり派手なのはアルクは好まないわ、やり過ぎないようにね」
「貴様に指図される筋合いは無い」
正直こいつは今になっても好きになれない。いや大嫌いだ。この世で一番嫌いと言っても差し支えないだろう。なし崩し的にアルクを預けることにはなったがいつか必ず奪ってみせる。
「あとアルクは和食の方が好きみたいよ」
「なにっ!」
それは聞き捨てならない。まさかアルクが和食の方が好きとは…しかしこの館に和食を完璧なレベルに作れるものは居ない。ならばどうするか…あ、和菓子なら咲夜が作れたな確か。
「料理はアルクの希望ですき焼きにしようかと思ってるわ」
すき焼き、一度だけ食べた覚えがある。中々に美味しかった。特に目を見張ったのはあの醤油とかいう調味料だ。豆を発酵させて作ると聞いたときは驚いた。
「まあそれはいい、アルクの望みならそれを叶えるまで。和食ならそっちの方が理解はあるだろう、メインの料理は任せる」
「お安い御用よ」
そう言って胡散臭い笑顔で笑うスキマ妖怪。イライラさせてくれるな。
「しかしメインの菓子はこちらで用意させてもらう、それでいいな」
「別に構わないわ」
そうと決まれば早速咲夜に和菓子を練習させよう、一週間しか時間は無いが咲夜なら能力使ってでもなんとかしてくれるだろう。相変わらず有能な従者だと実感する。
「ダメです」
「な、なんでよ咲夜!」
まさかの従者の裏切りに驚愕しながら咲夜の返答を待つ。返答次第では私は怒り狂うだろう。しかし、帰ってきた答えは全く予想もしないことだった。
「正確には私だけが作ることを良しとはしません」
「それはどういう…」
「お嬢様達も作ってください」
「な、何故!?」
ほんとなんでなんだ。私達が作ったところで咲夜やあのスキマ妖怪の従者レベルのものを作れるわけがない。恥を晒すだけだ。
「いいですか、お嬢様。今お嬢様は完成度が高くなければいけないという固定概念に囚われているのです」
どういうことだ…?
「家族の誕生日を祝う為の料理を家族が作らなくてどうしますか。私は所詮アルク様から見れば他人。そんな他人の作った菓子で真にアルク様が喜ぶわけがございません」
青天の霹靂、驚天動地、雷に打たれたような言葉だった。考えてもみなかった。そりゃそうだ、私は完璧主義だったから。しかし今の咲夜の言葉で家族というものの複雑さを学んだ気がした。
「ですから今からフラン様も交えて一緒に作りましょう。安心してください、そんな難しいものを作る気はないですから」
そこから一週間、咲夜の料理教室が始まった。
「誕生日パーティですか」
「ええ、来るでしょう?」
「友達なので聞くまでもないですよ」
友達っぽいイベントがきたことで私のテンションは有頂天です。当然のことながら何をあげようか考える。あ、ペアでつける指輪とかどうですかね?旧地獄で採れたダイヤモンドを使ったやつ。え?重い?
「相変わらず友達に拘るわねー」
「ふん、友達や知り合いが沢山居るあなたにはわからないでしょうね」
妖怪の賢者とかいう人に慕われるような日の目を見る役職の方にはねぇ!わからないでしょうねぇ!
「まあ、誕生日パーティではあんまりギスギスしないでね」
「当たり前です」
それはアルクさんにとって負担になるので絶対にしてはいけないことだ。
「こいしちゃんにも聞いておかないとね」
「あの子なら絶対来るでしょうけどね」
最近は良く部屋にこもって何かしているようだがあの明るいこいしの事だ、必ずアルクさんのお祝いをしに来るだろう。
「しかし姉妹で見事に性格が反対ね」
「ほっといてください」
それは自分でも理解してるし今更言わなくていいことだ。
「じゃあ一週間後に私の家でやるから、宜しくね」
「了解です」
とりあえず今はアルクさんに送るプレゼントのことだけを考えておこう。そうしよう。
そこから一週間さとりは旧地獄の各地の鉱石場を渡り歩いた。
誕生日当日。俺は結構ワクワクしていた。前世の時も祝ってもらうことなど皆無だったのであまり誕生日を意識したことがない。
そんな俺が誰かに誕生日を祝ってもらえるのだ、気分が高揚しても仕方ないだろう。
「すき焼きの用意はもう出来てるぞ」
「あ、はい!ありがとうございます」
そんな様子を見て藍さんはどうやらお腹が空いたとでも思ったらしい。頭に尻尾を置きながらすき焼きの様子を教えてくれる。
「しかしすき焼きが食べたいとはまた意外なことだな、寿司でも良かったんだぞ?私が握ってやろう」
「た、多彩ですね」
「紫様の右腕ならばこれぐらいできなくてはな」
そう言って腕をまくる藍さん、まるで板前のようだ。
「でもすき焼きで良かったんですよ、食べたかったので」
「まあアルクがいいならいいんだがな、少しチョイスが渋かったから笑ってしまった」
まあすき焼きは美味しいから仕方がない。しかもあれは後日すき焼き丼にして食べられるというお得感まである。
「あ、もう皆来たみたいですね」
「みたいだな」
外から話し声が聞こえる。これは姉様達と紅魔館の皆だ。あとさとりさんとこいしさんにお燐と、あと誰かの声。
「来たわよ!アルク!」
「私も来たよ!」
二人が障子をガラッと開けて入ってきた。相変わらず姉妹で凄い仲良いなこの人達。
「私達もいるよアルクくん」
「私もです」
さとりさんとこいしさんも横からひょっこりと出てきた。
「これで全員集まったわね、じゃあアルクの誕生日パーティを始めるわよ!」
紫様がそう宣言する。まあそんな大層なパーティでもないけどな。とりあえずすき焼き食おう、楽しみで仕方ないんだこっちは。もう藍さんが用意してくれていたみたいなのであとはすき焼きの具材を入れるだけだ。
「よし、すき焼きを作っていくぞ。手順としてはまず最初に牛脂をひく、そしてネギを焼いてから牛肉を焼く。ここまでいいか?」
ジューっと肉を焼いていく、どうやらメイド長がメモを取っているみたいだ。藍さんが懇切丁寧に解説してるわけがわかった。
「そして両面がこのように程よくピンク色が残るぐらいまで焼けたら、用意していた割り下を入れる。そこから他の具材を入れるんだ、手順が違うだけで大きく味が変わるから気をつけろ」
「ありがとうございます、勉強になりました」
「別に構わない。主同士で仲が悪いからといって私達まで険悪になる必要は無いからな」
そう言って少し微笑む藍さん、紫様よりよっぽど大人の女性という感じがする。この前橙と一緒にコマ回しをして大人気ない姿を見せていた紫様に見習って欲しいものだ。
「よし、そろそろだな…アルク、皿を貸してくれ。入れてあげよう」
「あ、ありがとうございます」
肉、白ネギ、豆腐、糸こんにゃくと満遍なく入れてくれる。卵に浸かったそれらはキラキラと輝いてまるで宝石のようだ。
「いただきます」
「冷めないうちに召し上がれ」
肉を選ぶ、めちゃくちゃデカい。黒毛和牛とかいう幻のお肉らしい。俺の前世でも見たことない肉だ。それを卵にタップリと潜らせて口に入れる。
舌がとろけた。
比喩や嘘では全くなく本当にとろけてしまった。まるで飲み物のように柔らかく肉本来の旨味が口内で爆発物のように弾ける。それは例えるなら肉の兵器。肉のC4爆弾だ。
「う、美味すぎる…」
「はっは!それはよかった!作ったかいがある!」
俺の素が出るほどに美味い。これがすき焼き…?俺が今まで食ってきたすき焼きって何だったんだ?
「ほぉ…中々美味しいわね」
「お姉様!めっちゃ美味しい!はぐっ!むぐっ!お肉柔らかくて…もぐもぐ…美味い!」
フラン姉様は少し落ち着いて食え。まるでスラム街の子供が初めてまともな食事をとったかの如くがっつく姉を見ていると少し将来が心配になる。
「私は中華しか作れませんからねー。和食作れる人は凄い憧れます」
「あら、じゃあ美鈴藍さんのところに弟子入りでもしてきたらどうかしら」
「私門番なので…」
美鈴さんは意外にもゆったりと食べているようだ。この人めっちゃガツガツ食いそうなイメージだったんだけど。
「私も…私もこれぐらい上手く和食を作れたなら…」
「まあ一応お姉ちゃんも調理師免許持ってるしいいんじゃない?」
「確かに作れる料理の種類なら勝てるかもですけど…」
あ、そういえばさとりさん調理師免許持ってたなそういえば。
「私もタイ料理とかならさとり様にお教え出来るんですけどねー」
「私は料理はダメかな…」
お燐さんと…誰だこの人。あれ、今更だけどほんと誰だこれ。
「あの」
「んー?どうしたの?」
カラスのような羽根を持った黒髪の女の子だ。こんな子見たことない。お燐さんの隣にいるということは地霊殿関係の人だろうけど。
「はじめまして、ですよね?お名前は?」
「ああ、そういえば。私の名前は霊烏路空、お燐と同じさとり様のペットだよ。君さとり様の友達なんだよね、宜しくね」
「よ、よろしくお願いします」
へえ、やっぱりお燐さんと同じような人か。
「あ、あと誕生日おめでとね。特になにかあるというわけじゃないけどさとり様からのプレゼントは私も手伝ったよ!」
「あ、ありがとうございます」
お礼を言うとにへへと笑う、邪気のない人だな。
そんなことを言ってるうちにすき焼きを食べ終えた。お腹いっぱい肉を詰め込んだので満足だ。しかししょっぱいものを食べると甘いものが食べたくなる。なにか甘いものは無いだろうか。そう思ってるとレミリア姉様がいきなり声をかけてきた。なんだろう。
「アルク。アルクって、和菓子って好き?」
「はい、大好きです」
和菓子は洋菓子より好きだ。特に餅類の和菓子が。
「あの、和菓子、食べる?」
「え、食べたいです!」
やった、この世界に来てから和菓子は結構食べたがそれでもやはり嬉しいものは嬉しい。
「おはぎ…なんだけど」
「凄く嬉しいです!」
「あっ、そうなの?」
やった、やった。おはぎは大好きです。俺の和菓子ベスト3に入ってる。
「これがそうだから…開けてみて」
「ありがとうございます!」
受け取った重箱をパカッと開けてみると形は不揃いだが確かにちゃんとおはぎが入っていた。感動だ。
「その形の不揃いなのは、あの、私とフランの作ったやつで。あとは咲夜のやつだから、咲夜のやつ食べなさい」
なにかレミリア姉様が言っていたが俺は聞いてなかった。真っ先に不揃いなやつを手につけて食べる。
美味い
甘いものというのは口に入れるだけで幸せになれるとはまさにこの事。小豆と餅の相性の良さを噛み締めながら一つ二つと口に放り込む。
「あ、アルク。それ私達の作ったやつで…」
「美味かったです!全部!」
「え!?もう食べたの!?」
一気に食べてしまった。喉を詰めるか不安だったがそんなことを気にしないほどうまかった。やはり菓子は和の方がいい。
「…こんなに嬉しいものなのね、自分の作ったものを美味しいといって貰えるのは」
「私も作ったんだよ!」
あの不揃いなやつは姉様達が作ったのか。全然話聞いてなかったから今気づいたわ。
「ありがとうレミリア姉様、フラン姉様」
「ええ、こちらこそ」
「うん!また作るね!」
じゃあ次はきな粉餅で。
そこからは誕生日パーティ恒例のプレゼント渡しだった。姉様達含めた紅魔館からは大量の本と魔道具をいくつか。そして八雲家からは何やら武器を贈られた。
「まあ護身用だ、一応身長と重心に合わせて作ってあるから持ってみろ」
それは一本の刀だった。小太刀ほどの長さの小ぶりのもので俺にピッタリとフィットする長さと重さだ。いい刀だなコレ。まあ使う時がくるかはわからんけど。
まあここまでは良かった、実用的だし特になにか重いわけじゃないし。本とかは特に俺にとって嬉しいものだ。
しかし問題はさとりさんのプレゼントだった。
「こちら旧地獄で採ったダイヤを鬼の研磨師に削らせたもので作ったペアリングです」
いろんな意味で重いわバカ。
「これで一層私とアルクさんの友情は深まるわけです」
「あれ流石に重いわよね?」
「シッ…紫様、ここは黙っておきましょう」
しかもなんで左手薬指につけてんだ!このバカは!
「あ、私がつけてあげますよ。ふふ、アルクさんに絶対似合います」
「あ、ありがとうございます…」
そんなハプニングもありながらも最終的には平和に終わった。そして最後まで誕生日の主役の気持ちを味わってみた感想だが
まあ、悪くないんじゃないかな。
アルクの誕生日にガチになる集団を書きたかった
なろうでも「俺はギルドマスターを辞められない」って小説書き始めたので宜しくね…(自信なさげ)